28 / 65
〜青春編〜
二十一話 『勘違い…?』
しおりを挟む
――時が止まったような感じがした。俺も、松岡と石崎さんも笹川さんも同じで、完全に思考停止していたように目を点にして固まっていたと思う。
唯一、固まっていないのは羽沢だけでニコニコしながらこう言った。
「私、洋介くんのこと好きよ」
二回目だった。さっきよりもはっきりと聞こえたその言葉だ。
「か、揶揄ってるんだよな?」
俺がそう言うと、羽沢は首を横に振って笑いながら答える。
「揶揄うわけないじゃない!私は本当に洋介くんが好きだよー」
……これ本当に揶揄ってないのか!?羽沢って小悪魔なところがあるからよくわからないぞ……!
「ち、ちょっと!優香!急にどうしたの!?」
松岡が慌てるようにして口を開いた。すると、羽沢はまた同じように笑顔で答えた。
「瞳は好きじゃないの?洋介くんのこと……」
「いや……そ、そりゃあ……す、好きだけど……そういう意味じゃなくて!」
顔を赤くしあたふたする松岡を横目に俺は石崎さんの方を見ると、
「ち、ちょっと待ってよ!優香ちゃん!私も中村くんのこと好きよ」
石崎さん、また俺のことを揶揄ってんのか!?揶揄うのはいいとしても!今!この時じゃねーだろ!
「……で?みのりちゃんはー?」
羽沢はニヤリとして今度は笹川さんの方を向いた。笹川さんは顔を真っ赤にし石崎さんの後ろに隠れながら、
『私も好き』と言った。……えっ?嘘だよね?冗談だよね?何この流れ……?みんなで俺を驚かそうとしている?裕介が仕掛けたドッキリとか……?そんなことを考えていると
「ほーら。美少女四人が告白してるぞ~?洋介くんは早く返事をしなさい~」
唐突なハーレム状態に俺は混乱している。何だこの状況……!?いや、俺も好きだけどそれは恋愛じゃなくて友達的な意味なんだけど……。
「黙ってるわね……!この優柔不断男め!」
「優柔不断!?こんな状況で優柔不断って言われるのは流石に理不尽じゃないか!?」
俺は思わず声を上げてしまった。だってそうだろ!普通に考えておかしいじゃん!いきなり女の子達に告られて急に返事を求められても困るし……
『………ごめんなさい。中村くん』
「え……?」
笹川さんにグイッと手を引っ張られ、その場から離れるように連れ出された。
「え!?笹川さん!?」
足は遅いし、体力もない笹川さんなのに意外にも力強く引っ張られたことに驚いた。そしてそのまま――。
「な、なか……む……く……」
「さ、笹川さん!?どうしたんだ!?大丈夫か?あ、アプリは!?」
『ごめんなさい……気が動転していて忘れてました……』
顔を赤くし息を整えながら謝ってくる笹川さん。俺は慌てて背中をさすりながら、
「いや、寧ろありがとう。助かったよ」
と言うと、笹川さんは安心したような表情をして微笑んでくれた。またドキドキしてきた。心臓が痛いくらい鼓動を打っている。これは走ったせいなのか、それとも別の理由かわからないけど、とにかく落ち着かない。
何でか分からないけど、このままだとまずいと思った俺は話を変えようと口を開く前に――
『ごめんなさい。あれは……そのあれは宮沢くんの罰ゲームだったんです』
…………やっぱり、裕介が仕組んだことなんだな……!あいつ絶対に許さないからな!! でも、これで少しだけホッとした部分もある。あの告白は本気のものじゃないってことだもんな……うん、よかった……。
『だから、気にしないでください。本当にごめんなさい』
本当に申し訳なさそうに何度も頭を下げる笹川さんを見て、こっちが申し訳なくなってきた。
「いや、俺も……何かごめん」
そう言うと、笹川さんはびっくりしたように目を見開いてこちらを見た後、
『何故、中村くんが謝るのですか?中村くんは何も悪くないですよ?』
「いや、まぁそうなんだけど…」
確かに笹川さんの言う通りだけど別に笹川さんも悪くねーし。笹川さんが必死に謝るほどのことでもないと思うし。
「じゃ、あれも全部罰ゲームってことか。あーあ、良かった。変な期待持たなくて」
きっと、あの場で真面目に返事をしていたら羽沢あたりには笑われていただろうし。……ったく、俺以外の男だったら勘違いするぞ……!
『勘違い、してもいいよ』
「え?」
俺の心を見透かすようにそう言った笹川さんは、顔を赤くしながら恥ずかしそうに俯いて、
『じ、じゃあ!またね!』
そう言って笹川さんは走り去って行った。追いかけることなんて出来るはずもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。
唯一、固まっていないのは羽沢だけでニコニコしながらこう言った。
「私、洋介くんのこと好きよ」
二回目だった。さっきよりもはっきりと聞こえたその言葉だ。
「か、揶揄ってるんだよな?」
俺がそう言うと、羽沢は首を横に振って笑いながら答える。
「揶揄うわけないじゃない!私は本当に洋介くんが好きだよー」
……これ本当に揶揄ってないのか!?羽沢って小悪魔なところがあるからよくわからないぞ……!
「ち、ちょっと!優香!急にどうしたの!?」
松岡が慌てるようにして口を開いた。すると、羽沢はまた同じように笑顔で答えた。
「瞳は好きじゃないの?洋介くんのこと……」
「いや……そ、そりゃあ……す、好きだけど……そういう意味じゃなくて!」
顔を赤くしあたふたする松岡を横目に俺は石崎さんの方を見ると、
「ち、ちょっと待ってよ!優香ちゃん!私も中村くんのこと好きよ」
石崎さん、また俺のことを揶揄ってんのか!?揶揄うのはいいとしても!今!この時じゃねーだろ!
「……で?みのりちゃんはー?」
羽沢はニヤリとして今度は笹川さんの方を向いた。笹川さんは顔を真っ赤にし石崎さんの後ろに隠れながら、
『私も好き』と言った。……えっ?嘘だよね?冗談だよね?何この流れ……?みんなで俺を驚かそうとしている?裕介が仕掛けたドッキリとか……?そんなことを考えていると
「ほーら。美少女四人が告白してるぞ~?洋介くんは早く返事をしなさい~」
唐突なハーレム状態に俺は混乱している。何だこの状況……!?いや、俺も好きだけどそれは恋愛じゃなくて友達的な意味なんだけど……。
「黙ってるわね……!この優柔不断男め!」
「優柔不断!?こんな状況で優柔不断って言われるのは流石に理不尽じゃないか!?」
俺は思わず声を上げてしまった。だってそうだろ!普通に考えておかしいじゃん!いきなり女の子達に告られて急に返事を求められても困るし……
『………ごめんなさい。中村くん』
「え……?」
笹川さんにグイッと手を引っ張られ、その場から離れるように連れ出された。
「え!?笹川さん!?」
足は遅いし、体力もない笹川さんなのに意外にも力強く引っ張られたことに驚いた。そしてそのまま――。
「な、なか……む……く……」
「さ、笹川さん!?どうしたんだ!?大丈夫か?あ、アプリは!?」
『ごめんなさい……気が動転していて忘れてました……』
顔を赤くし息を整えながら謝ってくる笹川さん。俺は慌てて背中をさすりながら、
「いや、寧ろありがとう。助かったよ」
と言うと、笹川さんは安心したような表情をして微笑んでくれた。またドキドキしてきた。心臓が痛いくらい鼓動を打っている。これは走ったせいなのか、それとも別の理由かわからないけど、とにかく落ち着かない。
何でか分からないけど、このままだとまずいと思った俺は話を変えようと口を開く前に――
『ごめんなさい。あれは……そのあれは宮沢くんの罰ゲームだったんです』
…………やっぱり、裕介が仕組んだことなんだな……!あいつ絶対に許さないからな!! でも、これで少しだけホッとした部分もある。あの告白は本気のものじゃないってことだもんな……うん、よかった……。
『だから、気にしないでください。本当にごめんなさい』
本当に申し訳なさそうに何度も頭を下げる笹川さんを見て、こっちが申し訳なくなってきた。
「いや、俺も……何かごめん」
そう言うと、笹川さんはびっくりしたように目を見開いてこちらを見た後、
『何故、中村くんが謝るのですか?中村くんは何も悪くないですよ?』
「いや、まぁそうなんだけど…」
確かに笹川さんの言う通りだけど別に笹川さんも悪くねーし。笹川さんが必死に謝るほどのことでもないと思うし。
「じゃ、あれも全部罰ゲームってことか。あーあ、良かった。変な期待持たなくて」
きっと、あの場で真面目に返事をしていたら羽沢あたりには笑われていただろうし。……ったく、俺以外の男だったら勘違いするぞ……!
『勘違い、してもいいよ』
「え?」
俺の心を見透かすようにそう言った笹川さんは、顔を赤くしながら恥ずかしそうに俯いて、
『じ、じゃあ!またね!』
そう言って笹川さんは走り去って行った。追いかけることなんて出来るはずもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ぼくたちのたぬきち物語
アポロ
ライト文芸
一章にエピソード①〜⑩をまとめました。大人のための童話風ライト文芸として書きましたが、小学生でも読めます。
どの章から読みはじめても大丈夫です。
挿絵はアポロの友人・絵描きのひろ生さん提供。
アポロとたぬきちの見守り隊長、いつもありがとう。
初稿はnoteにて2021年夏〜22年冬、「こたぬきたぬきち、町へゆく」のタイトルで連載していました。
この思い入れのある作品を、全編加筆修正してアルファポリスに投稿します。
🍀一章│①〜⑩のあらすじ🍀
たぬきちは、化け狸の子です。
生まれてはじめて変化の術に成功し、ちょっとおしゃれなかわいい少年にうまく化けました。やったね。
たぬきちは、人生ではじめて山から町へ行くのです。(はい、人生です)
現在行方不明の父さんたぬき・ぽんたから教えてもらった記憶を頼りに、憧れの町の「映画館」を目指します。
さて無事にたどり着けるかどうか。
旅にハプニングはつきものです。
少年たぬきちの小さな冒険を、ぜひ見守ってあげてください。
届けたいのは、ささやかな感動です。
心を込め込め書きました。
あなたにも、届け。
君よ、土中の夢を詠え
ヒロヤ
ライト文芸
24歳。両親を亡くした白井麻人は、母親の遺品整理をするため高校時代の友人宇佐見と共に、空き家となった実家に向かう。そこで見つけたのは、墓地の所有証明と亡き母の手で書かれた一筆の歌だった。
白井は宇佐見の知人である司法書士の藤石の力を借りて、母と一族の隠された過去を辿っていくが――。
謎の墓地と歌をめぐり、明らかになる見知らぬ人たちの息吹。そして聞こえる儚い呼び声。
孤独を強いられた若者が多くの悲しみを抱いて前を向く物語。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【1】胃の中の君彦【完結】
ホズミロザスケ
ライト文芸
喜志芸術大学・文芸学科一回生の神楽小路君彦は、教室に忘れた筆箱を渡されたのをきっかけに、同じ学科の同級生、佐野真綾に出会う。
ある日、人と関わることを嫌う神楽小路に、佐野は一緒に課題制作をしようと持ちかける。最初は断るも、しつこく誘ってくる佐野に折れた神楽小路は彼女と一緒に食堂のメニュー調査を始める。
佐野や同級生との交流を通じ、閉鎖的だった神楽小路の日常は少しずつ変わっていく。
「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ一作目。
※完結済。全三十六話。(トラブルがあり、完結後に編集し直しましたため、他サイトより話数は少なくなってますが、内容量は同じです)
※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。(過去に「エブリスタ」「貸し本棚」にも掲載)
青い死神に似合う服
fig
ライト文芸
テーラー・ヨネに縫えないものはない。
どんな洋服も思いのまま。
だから、いつか必ず縫ってみせる。
愛しい、青い死神に似合う服を。
寺田ヨネは洋館を改装し仕立て屋を営んでいた。テーラー・ヨネの仕立てる服は特別製。どんな願いも叶える力を持つ。
少女のような外見ながら、その腕前は老舗のテーラーと比べても遜色ない。
アシスタントのマチとチャコ、客を紹介してくれるパイロット・ノアの協力を得ながら、ヨネは日々忙しく働いていた。
ある日、ノアの紹介でやってきたのは、若くして命を落としたバレエ・ダンサーの萌衣だった。
彼女の望みは婚約者への復讐。それを叶えるためのロマンチック・チュチュがご所望だった。
依頼の真意がわからずにいたが、次第に彼女が受けた傷、悲しみ、愛を理解していく。
そしてヨネ自身も、過去の愛と向き合うことになる。
ヨネにもかつて、愛した人がいた。遠い遠い昔のことだ。
いつか、その人のために服を縫いたいと夢を見ていた。
まだ、その夢は捨ててはいない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中
「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨
悠里
ライト文芸
高校生になる前の春休み。自分の16歳の誕生日に、幼馴染の悠斗に告白しようと決めていた心春。
会う約束の前に、悠斗が事故で亡くなって、叶わなかった告白。
(霊など、ファンタジー要素を含みます)
安達 心春 悠斗の事が出会った時から好き
相沢 悠斗 心春の幼馴染
上宮 伊織 神社の息子
テーマは、「切ない別れ」からの「未来」です。
最後までお読み頂けたら、嬉しいです(*'ω'*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる