【完結】君に伝えたいこと

かんな

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〜青春編〜

九話 『予定』

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今日も相変わらず、サッカーの練習をしている。この前みたいな例外もなく、いつも通り一人きりだと、そう思ったけど。


『お疲れ様です。中村くん』


スマホの音声アプリから、そんな声が聞こえた。
見上げるとそこには、笹川さんがいた。


「笹川さん!?どうして?」


笹川さんは病弱だし、こんなところにいて大丈夫なのだろうか……?と思っていると、


『中村くん、つばめさん……いますか?』


「石崎さん?ああ……先までいたんだけど」


彼女はマネージャーなので他の部員に話しかけて行ったのだろう。マネージャーだし、ドリンクをみんなに渡しているんだろうと思う。


『そっか……ありがとう』


彼女は少し残念そうな顔をした。石崎さんのこと本当に好きなんだなぁ……と思ったらなんだか微笑ましく思えた。
すると石崎さんがこっちに駆け寄ってきた。


「みのりちゃん、どうしたの!?何か用事?」


石崎さんの問いに対して、笹川さんは何も言わずただ首を横に振って、


『いえ。お兄ちゃんに言われて、様子を見に来ただけですよ』


と言った。その言葉に石崎さんは慌てた表情になった。……?なんでだろ??と思いつつも、
 

「じゃ、俺、練習に戻りますね!」


そう言って俺は練習に戻った。


△▼△▼


二時間ぐらい経った頃だ。こんなに毎日練習するのに全く飽きないのかなぁ……と思っていた時だった。


「おーい、洋介ー」


そんな祐介の声が聞こえてきた。声がする方に視線を向けると祐介の隣には何故か松岡がいた。


「祐介に松岡?どったの?」


「なぁ、お前、明日の夜暇か?」



明日の夜は……特に予定はない。でも何故急に? 疑問に思いながらも答える。
明日は特に何もなかったはずだし。


「なら、良かった。松岡と羽沢と俺で夏祭り行こうぜ!せっかくだからさ!!」


……えっ?羽沢と松岡と祐介と俺で夏祭り?いや、いいけど何でそのメンツなんだ……?祐介と松岡はともかく、羽沢とか話したことほぼないし。……まぁ、でも――。


「いいよ。その日用事ねーし」


断る理由もないから承諾することにした。


「おっけー!!んじゃまた後で詳しいことは連絡すんわ!」


と言って二人は去っていった。
それからさらに一時間が経ち、部活が終わったあとのことだった。俺はいつも通り一人で帰ろうとしていると、


『中村くん!』


後ろの方から笹川さんと石崎さんに声をかけられた。 


「笹川さんに石崎さん?どうしたんですか?」


二人ともめっちゃくちゃ息を弾ませているな……!?一体どうしたんだろう……?


「ねえ、中村くん。明日の夜空いてない?もし良ければ私達と一緒に夏祭り行かない?」


夏祭り……一時間前に、祐介に誘われたばっかりなんだけど……。


「うーん。実は俺、先約があるんですよね……」


そう言うと、二人は残念そうな顔をしていた。………うっ……そんな顔をされると心が痛む。誘ってくれたのは嬉しいこと自体は嬉しいし。


「そっか…残念だけど仕方ないね…」


『そうだね。残念だけど……』


二人が落ち込んだ様子で言う。なんか罪悪感がエグイなぁ……うーーん……悩んだ末、出た言葉は――


「じ、じゃあ、一緒に行く?」


思わずそんな提案をしていた。
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