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〜青春編〜
四話 『助け』
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授業が始まっても、笹川さんの質問攻めは終わってなかった。転校生の宿命とはいえ、こんなに質問されたら笹川さん、パニックになってしまうんじゃないかなあ……?
幸い、お昼休みのときは笹川さんはみんなに捕まってなかったけど、放課後は見事にみんなに捕まっている。
笹川さんは喋るの苦手だしな……どうしたものか…と、思っていると、
「ねぇ、どうして笹川さんは入院したの?」
そんな質問が不意に俺の耳に届いた。そんなの答えられるわけないじゃないか……とゆうか、そんなの聞くとか失礼だろ……。俺は思わず声の主を睨みつけていると、周りも…便乗するようにこう言った。
「なぁ。どうして?なんで入院したんだ?」
――そんなの言う必要性もなければ聞く必要性も感じられない質問をするのはちょっといただけない。
だから俺は思わず――。
「笹川さん、ちょっといい?」
気付いたら、そう言って笹川さんの手を引いていた。何で、自分でもこんなことしちゃったのかわからないけど――。
それでも、何か言わずにはいられなかったのだ。
△▼△▼
笹川さんの手は正に女の子のそれだった。柔らかくて、白くて、温かくて……って俺キモッ!変態みたいじゃん!! とにかく、その手を握っている間中ずっとドキドキしていたなんてことは絶対に言えないと思う。
教室を出てから少し歩いたところで俺は手を離した。そして振り返ると――そこには困惑している表情を浮かべた笹川さんがいた。そりゃそうだよね……。
「あ、あの……」
か細い声が聞こえてくる。半年前と変わらない、弱々しい声音だけど、どこか懐かしく感じるような気がする。
「あ、ごめん……急に……何か困っているように見えたからさ」
笹川さんは俺のこと、覚えているだろうか……?半年間会ってなかったし、忘れていてもおかしくはないかもしれないけれど……
しかし、笹川さんはすぐに笑顔になって言った。
「あ、ありがとうございます。中村くん……」
そう言いながら笹川さんは深々と頭を下げる。別に俺は何にもしていないんだけどな……
「いや、俺は特に……とゆうか、俺のこと覚えててくれたんだね」
忘れててもおかしくない筈だ。半年間も連絡してなかったし、忘れてた方が自然だと思う。なのに、彼女はしっかりと俺の名前を覚えていてくれていたようだ。
それが妙に嬉しかったりなんかして……。
笹川さんは小さく微笑んで答える。
「わ、忘れませんよ。逆に中村くんの方が私のこと忘れているのかと……」
まぁ、半年も経っていれば忘れられてる可能性だってあるだろう。連絡もしなくなったし。だから、そう思われるのは仕方ないことだとは思う。
「ごめんな。俺も忙しくてさ……なかなか連絡できなくて……」
これは本当だ。今年受験生だし、勉強に集中したかったという理由もあったし、笹川さんも受験だったし、お互い連絡取りづらい状況だったからで別に忘れているわけではない。ただ単にタイミングの問題なのだ。
それにしても――。
「(美人だな……笹川さん)」
肩まで伸びた茶髪。整った顔立ち。大きな茶色の瞳。華奢な体つきに、白い肌。触れてしまえば壊れてしまいそうなくらい繊細な見た目をしている。
「な、中村くん……?」
笹川さんの声で我に帰る。しまった。つい気持ち悪いことを考えてボーっとしてしまった。これじゃまるで変質者じゃないか。
「ご、ごめん……ぼーっとしてた。あ……下校時間過ぎちゃうし帰ろうか」
「そ、そうですね。帰りましょう!」
俺たちが荷物を取る為に教室に戻ろうとすると、人はあまりいなかったものの、何人かのクラスメイトたちがこちらを見ていた。
その視線はめっちゃくちゃ痛かったし、居た堪れなくなってすぐにその場を離れた。
幸い、お昼休みのときは笹川さんはみんなに捕まってなかったけど、放課後は見事にみんなに捕まっている。
笹川さんは喋るの苦手だしな……どうしたものか…と、思っていると、
「ねぇ、どうして笹川さんは入院したの?」
そんな質問が不意に俺の耳に届いた。そんなの答えられるわけないじゃないか……とゆうか、そんなの聞くとか失礼だろ……。俺は思わず声の主を睨みつけていると、周りも…便乗するようにこう言った。
「なぁ。どうして?なんで入院したんだ?」
――そんなの言う必要性もなければ聞く必要性も感じられない質問をするのはちょっといただけない。
だから俺は思わず――。
「笹川さん、ちょっといい?」
気付いたら、そう言って笹川さんの手を引いていた。何で、自分でもこんなことしちゃったのかわからないけど――。
それでも、何か言わずにはいられなかったのだ。
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笹川さんの手は正に女の子のそれだった。柔らかくて、白くて、温かくて……って俺キモッ!変態みたいじゃん!! とにかく、その手を握っている間中ずっとドキドキしていたなんてことは絶対に言えないと思う。
教室を出てから少し歩いたところで俺は手を離した。そして振り返ると――そこには困惑している表情を浮かべた笹川さんがいた。そりゃそうだよね……。
「あ、あの……」
か細い声が聞こえてくる。半年前と変わらない、弱々しい声音だけど、どこか懐かしく感じるような気がする。
「あ、ごめん……急に……何か困っているように見えたからさ」
笹川さんは俺のこと、覚えているだろうか……?半年間会ってなかったし、忘れていてもおかしくはないかもしれないけれど……
しかし、笹川さんはすぐに笑顔になって言った。
「あ、ありがとうございます。中村くん……」
そう言いながら笹川さんは深々と頭を下げる。別に俺は何にもしていないんだけどな……
「いや、俺は特に……とゆうか、俺のこと覚えててくれたんだね」
忘れててもおかしくない筈だ。半年間も連絡してなかったし、忘れてた方が自然だと思う。なのに、彼女はしっかりと俺の名前を覚えていてくれていたようだ。
それが妙に嬉しかったりなんかして……。
笹川さんは小さく微笑んで答える。
「わ、忘れませんよ。逆に中村くんの方が私のこと忘れているのかと……」
まぁ、半年も経っていれば忘れられてる可能性だってあるだろう。連絡もしなくなったし。だから、そう思われるのは仕方ないことだとは思う。
「ごめんな。俺も忙しくてさ……なかなか連絡できなくて……」
これは本当だ。今年受験生だし、勉強に集中したかったという理由もあったし、笹川さんも受験だったし、お互い連絡取りづらい状況だったからで別に忘れているわけではない。ただ単にタイミングの問題なのだ。
それにしても――。
「(美人だな……笹川さん)」
肩まで伸びた茶髪。整った顔立ち。大きな茶色の瞳。華奢な体つきに、白い肌。触れてしまえば壊れてしまいそうなくらい繊細な見た目をしている。
「な、中村くん……?」
笹川さんの声で我に帰る。しまった。つい気持ち悪いことを考えてボーっとしてしまった。これじゃまるで変質者じゃないか。
「ご、ごめん……ぼーっとしてた。あ……下校時間過ぎちゃうし帰ろうか」
「そ、そうですね。帰りましょう!」
俺たちが荷物を取る為に教室に戻ろうとすると、人はあまりいなかったものの、何人かのクラスメイトたちがこちらを見ていた。
その視線はめっちゃくちゃ痛かったし、居た堪れなくなってすぐにその場を離れた。
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