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十一話 『三嶋香澄の話 〜中編〜』
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――目が覚めるとそこは電車の中だった。
「え……?」
夢でも見ていたのだろうか?海に溺れ、そのまま意識が遠のいたはずだ。それなのに、私は今こうして電車の中にいるのに。それに――。
「ひ……っ」
私の身体が触れている。お尻の辺りから伝わるこの生温かい感触は……!
「(ち、痴漢!?)」
私は慌てて、痴漢と思われる男から離れようとするが……身体が動かない。
気持ち悪い、気持ち悪い……っ!そんなことを思っていると。
「…あ、あの」
別の声が聞こえてくる。男の人の声だ。
「え?」
私が思わず声の方向を見ると、そこには……見知らぬ男が立っていた。
その男の顔はお世辞にもかっこいいとは言えないし、服装だってお世辞にもかっこいいとは言えない。しかし、その時の私は……何故かこの見知らぬ男に見覚えがあった。
そして、それと同時に思い出す。あの時、海で溺れた私を助けてくれたのはこの男だということを。
私が呆然としていると、
「すみません。この席どうぞ」
男はそう言って、席を譲ってくれた。その言葉に痴漢は怯んだのか、私の身体から手を離し、別のところに行ってしまった。でも、そんなのどうでも良かった。私は席を譲ってくれた男にお礼を言おうとしたが――。
「(あれ?いない?)」
いつの間にか、男はいなくなっていたし、それに……
「(それに……この人生って二週目?)」
戻った瞬間が電車で痴漢に身体を触られた瞬間だなんて、私はなんて不幸なんだろう?そんなことを思いながら、私は二週目の人生をスタートさせた
△▼△▼
調べてわかったことがある。私を助けてくれた男の名前は天野亮司。年齢は私より一つ下だ。一つ下ということは小学生に助けてもらったのか……なんて、思いながらため息を吐く。
「(それにしても……)」
ぼーっとしながら、私は思う。
――二週目の人生をスタートさせたはいいけど、これからどうすればいいんだろう? お礼は言いたいけど住所が分からない。そして、何より……
「(天野君は…私のこと覚えてないよね?)」
私は二週目の人生をスタートさせたけど、天野君は二周目の人生をスタートさせたわけじゃない。だから、私のことも覚えていないだろう。それは嫌だった。
「(変だ。私……)」
天野亮司のことを考えるとドキドキする。こんな気持ちになるのは生まれて初めてだ。
「(……天野君)」
彼のことを考えると胸が苦しくなる、頬が熱くなる。話したのなんて一瞬だ。まともに話してもいないのに、私は彼のことを好きになってしまった。
「(頬が赤らむのがわかる……私、恋してるんだ)」
私は自分の気持ちが、恋だということを自覚した。これが恋。なんて素晴らしいんだろう!
「待ってなさい。天野亮司。絶対に私のこと、好きになってもらうんだから……!」
私はそう呟いた。
△▼△▼
それから、私は天野くんを会うために徹底的に調べ上げて、中学も割り出した。
奇跡的に彼は私が通っている中学と一緒だった。
その間話しかけようと努力はした。でも、緊張してしまって……私は彼に話しかけられずにいた。その代わりに彼がいじめに遭った、と聞いたらすぐ裏で根回しをした。
そして丁寧にお話しをしたらいじめをすぐやめてくれたのでそれはよかった。
「(ふふふ……)」
天野くんのことを思うと笑みがこぼれる。天野くんは私のヒーローだ。私を助けてくれて、私に恋を教えてくれた人。彼は私の初恋の人だ。そんなことを思いながら、私は日々を過ごした。
「え……?」
夢でも見ていたのだろうか?海に溺れ、そのまま意識が遠のいたはずだ。それなのに、私は今こうして電車の中にいるのに。それに――。
「ひ……っ」
私の身体が触れている。お尻の辺りから伝わるこの生温かい感触は……!
「(ち、痴漢!?)」
私は慌てて、痴漢と思われる男から離れようとするが……身体が動かない。
気持ち悪い、気持ち悪い……っ!そんなことを思っていると。
「…あ、あの」
別の声が聞こえてくる。男の人の声だ。
「え?」
私が思わず声の方向を見ると、そこには……見知らぬ男が立っていた。
その男の顔はお世辞にもかっこいいとは言えないし、服装だってお世辞にもかっこいいとは言えない。しかし、その時の私は……何故かこの見知らぬ男に見覚えがあった。
そして、それと同時に思い出す。あの時、海で溺れた私を助けてくれたのはこの男だということを。
私が呆然としていると、
「すみません。この席どうぞ」
男はそう言って、席を譲ってくれた。その言葉に痴漢は怯んだのか、私の身体から手を離し、別のところに行ってしまった。でも、そんなのどうでも良かった。私は席を譲ってくれた男にお礼を言おうとしたが――。
「(あれ?いない?)」
いつの間にか、男はいなくなっていたし、それに……
「(それに……この人生って二週目?)」
戻った瞬間が電車で痴漢に身体を触られた瞬間だなんて、私はなんて不幸なんだろう?そんなことを思いながら、私は二週目の人生をスタートさせた
△▼△▼
調べてわかったことがある。私を助けてくれた男の名前は天野亮司。年齢は私より一つ下だ。一つ下ということは小学生に助けてもらったのか……なんて、思いながらため息を吐く。
「(それにしても……)」
ぼーっとしながら、私は思う。
――二週目の人生をスタートさせたはいいけど、これからどうすればいいんだろう? お礼は言いたいけど住所が分からない。そして、何より……
「(天野君は…私のこと覚えてないよね?)」
私は二週目の人生をスタートさせたけど、天野君は二周目の人生をスタートさせたわけじゃない。だから、私のことも覚えていないだろう。それは嫌だった。
「(変だ。私……)」
天野亮司のことを考えるとドキドキする。こんな気持ちになるのは生まれて初めてだ。
「(……天野君)」
彼のことを考えると胸が苦しくなる、頬が熱くなる。話したのなんて一瞬だ。まともに話してもいないのに、私は彼のことを好きになってしまった。
「(頬が赤らむのがわかる……私、恋してるんだ)」
私は自分の気持ちが、恋だということを自覚した。これが恋。なんて素晴らしいんだろう!
「待ってなさい。天野亮司。絶対に私のこと、好きになってもらうんだから……!」
私はそう呟いた。
△▼△▼
それから、私は天野くんを会うために徹底的に調べ上げて、中学も割り出した。
奇跡的に彼は私が通っている中学と一緒だった。
その間話しかけようと努力はした。でも、緊張してしまって……私は彼に話しかけられずにいた。その代わりに彼がいじめに遭った、と聞いたらすぐ裏で根回しをした。
そして丁寧にお話しをしたらいじめをすぐやめてくれたのでそれはよかった。
「(ふふふ……)」
天野くんのことを思うと笑みがこぼれる。天野くんは私のヒーローだ。私を助けてくれて、私に恋を教えてくれた人。彼は私の初恋の人だ。そんなことを思いながら、私は日々を過ごした。
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