【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

十話 『突然の言葉』

状況が全く掴めない私は、どうしようか……？そう悩んでいると、クラウス様の姿を見つけた。クラウス様も私に気付いたみたいで顔を少し赤くしながら私に駆け寄ってきた。


んん？なんで顔を赤く……と疑問に思いながら私は思わず、
――ドンッ！ クラウス様を壁際まで追いやった。いわゆる、壁ドンというやつだ。


「え……？なんですか……？急に……」


急な行動に私は思わず固まる。だって真面目に意味が分からない。
私はクラウス様の顔をじっと見つめた。すると、クラウス様は顔を真っ赤にしながら私を見つめ返した。


「あ、あの……クラウス様。どうかされたんですか？」


「いや、その……君に会いたくて……」


「え……？」


私が困惑しているとクラウス様はさらに顔を赤くした。何これ。揶揄われているの？と私は思わず疑いの目を向ける。
すると、クラウス様は慌てたように私に向かって口を開いた。


「本気だ！俺は本気で君に会いたくてここまで来たんだ！」


「は？急に何言ってるの？揶揄うのならやめてください」


私はクラウス様から距離を取ろうとしたが、何故か彼は私の腕を掴んで離さない。そして、そのまま私をじっと見つめた。何こいつ……怖いんだけど……！私が困惑していると、クラウス様は私の腕を掴んでいない方の手で私の頬に触れた。
え……なにこれ？と私はさらに混乱していると、


「ぷ……あははは！」


クラウス様は突然笑い出した。は？何こいつ……本当に怖いんだけど……！私は思わず、クラウス様から距離を取った。すると、クラウス様は笑いすぎたのか目に涙を浮かべながら私を見た。


「俺さー、君のそういうとこ好き」


「は……？え？何？」


私は困惑しながらクラウス様を見つめた。すると、クラウス様は私に向かって口を開いた。


「本気で君のことが好きなんだ」


クラウス様は真剣な目で私を見つめた。その目は嘘をついているようには見えない。私は思わず目を逸らした。
え？ちょっと待って……理解が追いつかないんだけど……クラウス様が私のことを好き……？


急に何……。私達そんなに〝好き〟とか〝嫌い〟とかの感情を抱くほど仲良くなかったよね？とゆうか……


「クラウス様って私のこと女として見たことないって言ったのは他でもないクラウス様ですよね？なのになんで急に好きとか言い出したのですが？」


「あー……それな。俺だって、まさかこんな気持ちになるとは思わなかったんだよ。でもさ、君と一緒にいるうちに気付いたんだ。俺は君のことが異性として好きなんだって」


クラウス様は恥ずかしそうにしながらも私にそう告げた。私は思わず顔を赤くした。


え……待って。本当に理解が追いつかないんだけど……。私のことが好き？いやいや、そんなことある……？だって、クラウス様って私の事女として見てないって言ったよね？なのに好きとかおかしくない……？


私は混乱しながらクラウス様を見つめた。すると、クラウス様は恥ずかしそうにしながらも私に向かって口を開いた。


「俺さ、君の事が好きなんだ。まぁ、確かに最初は？女として見てなかったけどさ？でも、君と過ごすうちに君のことを異性として好きになってた。だから、俺と付き合ってほしい」


「……そんなんで騙されませんよ？私は……もう傷つきたくありません。レオナルド殿下のことで学びましたし」


私はそう言ってクラウス様から距離を取った。だって本当にそうだもん。私はもう傷つきたくない。あれ以来、私は恋なんてしないと誓ったし。


すると、クラウス様は私の手を掴んだ。そして、私の目を見つめながら口を開いた。


「嘘じゃない。俺は君のことが好きなんだ」


「……私はもう恋なんてしないって誓ったんです。貴方が私の事を好きでも私は貴方を好きにならない」


私はそう言ってクラウス様から距離を取った。すると、クラウス様は私に向かって口を開いた。


「それでもいい。俺は君に振り向いてもらうために頑張るって決めたんだ」


「……勝手にしてください」


「あぁ、勝手にするさ」


クラウス様はそう言って私の手を離した。そして、そのまま私に背中を向けて歩いて行った。……本当に意味が分からない、と呟きながら。