61 / 65
三章 〜半年が経って〜
十六話 『見覚えのある人たち』
しおりを挟むクロゼットに押し込まれた後、外から声が聞こえてくる。男の声とリリィの声がする。
「部屋に明かりがついていて何を思ったらリリィ!お前!イザベラ・ディグルムのスパイをしてるんじゃないのか!?何で戻ってきている!?」
「申し訳ございません。……分身しているから一人くらい戻っても問題ないと思いまして」
……リリィ、分身出来るの?私は驚愕しつつも二人の会話を聞く。男の会話はナタリーのおじいちゃんではなく……誰だ?
「…そ、そうか……ならいい。だが……怠るなよ。ナタリー様は最近めちゃくちゃ不機嫌だ!ローラ・クレーヴとレオン・メルヴェルが婚約を結んだときからな!」
「勿論ですとも。お任せください」
リリィが答えると男は去っていったようで、廊下からは何も聞こえなくなった。それを確認したのかリリィは私をクローゼットの中から出した。
「ふぅ……危なかったですね。全く……ジュースさんも空気読めよなー」
クロゼットを開きながらため息を吐くリリィ。……ジュースさんなんていたかしら?少なくとも、私がナタリー・アルディだったときにはいなかった……よね?私が困惑していると
「あ、ごめん。独り言です。気にしないでください。さて、奈緒。言ってもいいですか?」
「う、うん。前世の名前だね?」
私が問うとリリィは頷く。緊張するわー!一体どんな名前なんだろう? 私はドキドキしながら待つ。すると、リリィは満面の笑顔で口を開く。
「私の前世の名前は――「おーい!メイド!」
……またしても邪魔が入った。何なの!?今日は邪魔される日なの!? 私がドアの方を睨みつけると、そこには銀髪で青い目をした美少年がいた。…レオン様じゃん。
「……執事から聞いてお前が帰って来た、と言われたから呼びに来たぞー。……って……何だ。この女は……?侵入者か?」
レオン様は私を睨みつけながら呟く。何でここにレオン様が……?!とも思ったけども、今はそれよりもこの状況を何とかしなければ!……と、言っても私は何にもできないんだけどね! 私がオロオロしているとリリィが口を出す。
「レオン様。この者は大丈夫です。侵入者ではありませんよ」
「本当か?どうもお前の言うことは信用できん」
「人聞きが悪いですねー!大体、私がここで嘘をついてどんなメリットがあると言うのですか?」
「………それもそうなのだが……お前の言うことはどうも信用ならん」
「何で!?……とゆうか、アシュリー様は?一緒じゃなかったんですか?」
「アシュリーは今ローラと一緒にいる。それより、この女は何者だ?」
え……?アシュリーにローラもいるの?何の集まり? 私が首を傾げていると、リリィは……
「よりにもよって今日かよ…ナタリー様、何でこんなときに!」
と、頭を抱えて言った。……今日?何があるの?とゆうか、元のナタリー・アルディってそんなことするような性格でもなさそうだし……。
「……とりあえず、私も行きます。ナタリー様の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいきませんし」
ため息混じりにリリィが言う。
すると、レオン様は……
「そうか……それはいいが……この女はどうするんだ?置いていくのか?」
「あー……そうですね」
チラリ、とリリィは私を見る。……え、まさか置いていかれる感じ……?冗談じゃない!ただでさえ、今の状況を全く理解していないのに……!
「……この人は……そうですね…レオン様連れていっても大丈夫ですか?」
「何故、俺に聞く?連れていけばいいだろう?お前がそうしたいなら」
レオン様は面倒くさそうに言う。…私を連れて行くのはどうでも良さそうだ。とゆうか、興味がなさそうなんだけど……
それからリリィは少し考えてから、
「じゃあ、連れて行きます」
リリィはそう言って私の腕を引っ張る。私はそれに逆らわずに素直についていくことにした――。
10
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

気が付けば悪役令嬢
karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。
あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる