知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

かんな

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三章 〜半年が経って〜

十六話 『見覚えのある人たち』

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クロゼットに押し込まれた後、外から声が聞こえてくる。男の声とリリィの声がする。


「部屋に明かりがついていて何を思ったらリリィ!お前!イザベラ・ディグルムのスパイをしてるんじゃないのか!?何で戻ってきている!?」


「申し訳ございません。……分身しているから一人くらい戻っても問題ないと思いまして」


……リリィ、分身出来るの?私は驚愕しつつも二人の会話を聞く。男の会話はナタリーのおじいちゃんではなく……誰だ?


「…そ、そうか……ならいい。だが……怠るなよ。ナタリー様は最近めちゃくちゃ不機嫌だ!ローラ・クレーヴとレオン・メルヴェルが婚約を結んだときからな!」


「勿論ですとも。お任せください」


リリィが答えると男は去っていったようで、廊下からは何も聞こえなくなった。それを確認したのかリリィは私をクローゼットの中から出した。
 

「ふぅ……危なかったですね。全く……ジュースさんも空気読めよなー」


クロゼットを開きながらため息を吐くリリィ。……ジュースさんなんていたかしら?少なくとも、私がナタリー・アルディだったときにはいなかった……よね?私が困惑していると


「あ、ごめん。独り言です。気にしないでください。さて、奈緒。言ってもいいですか?」


「う、うん。前世の名前だね?」


私が問うとリリィは頷く。緊張するわー!一体どんな名前なんだろう? 私はドキドキしながら待つ。すると、リリィは満面の笑顔で口を開く。


「私の前世の名前は――「おーい!メイド!」


……またしても邪魔が入った。何なの!?今日は邪魔される日なの!? 私がドアの方を睨みつけると、そこには銀髪で青い目をした美少年がいた。…レオン様じゃん。


「……執事から聞いてお前が帰って来た、と言われたから呼びに来たぞー。……って……何だ。この女は……?侵入者か?」


レオン様は私を睨みつけながら呟く。何でここにレオン様が……?!とも思ったけども、今はそれよりもこの状況を何とかしなければ!……と、言っても私は何にもできないんだけどね! 私がオロオロしているとリリィが口を出す。


「レオン様。この者は大丈夫です。侵入者ではありませんよ」


「本当か?どうもお前の言うことは信用できん」


「人聞きが悪いですねー!大体、私がここで嘘をついてどんなメリットがあると言うのですか?」


「………それもそうなのだが……お前の言うことはどうも信用ならん」


「何で!?……とゆうか、アシュリー様は?一緒じゃなかったんですか?」


「アシュリーは今ローラと一緒にいる。それより、この女は何者だ?」


え……?アシュリーにローラもいるの?何の集まり? 私が首を傾げていると、リリィは……


「よりにもよって今日かよ…ナタリー様、何でこんなときに!」


と、頭を抱えて言った。……今日?何があるの?とゆうか、元のナタリー・アルディってそんなことするような性格でもなさそうだし……。
 

「……とりあえず、私も行きます。ナタリー様の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいきませんし」


ため息混じりにリリィが言う。
すると、レオン様は……


「そうか……それはいいが……この女はどうするんだ?置いていくのか?」


「あー……そうですね」


チラリ、とリリィは私を見る。……え、まさか置いていかれる感じ……?冗談じゃない!ただでさえ、今の状況を全く理解していないのに……!


「……この人は……そうですね…レオン様連れていっても大丈夫ですか?」


「何故、俺に聞く?連れていけばいいだろう?お前がそうしたいなら」


レオン様は面倒くさそうに言う。…私を連れて行くのはどうでも良さそうだ。とゆうか、興味がなさそうなんだけど……
それからリリィは少し考えてから、


「じゃあ、連れて行きます」


リリィはそう言って私の腕を引っ張る。私はそれに逆らわずに素直についていくことにした――。
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