知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

かんな

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三章 〜半年が経って〜

十話 『精神世界』

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「……様、…りー……様」


誰かが呼んでいる声で意識が浮上した。……誰?ここはどこ?私は一体どうなったの?


「ナタリー様!」


「……って。リリィか」


私を呼んでいる声の正体はリリィだった。……なんだか、リリィを久しぶりのような気がする。なんでだろうか? 


「リリィですが……それすら認識出来なくなったんですか?」


「違うよ!?ただ、少し混乱してただけ!」


毒舌を吐くリリィに反論しつつ、私は今の状況を把握するために頭を働かせながら、ため息を吐いているとリリィが話しかけてきた。


「まぁ、そんなことはどうでもよくて……ナタリー様。イザベル様のことを話しましょう」


「イザベル様のこと?もしかして、なにか進展があったの?」


「はい。実は……と、言いたいところなんですが。学校に遅れるので話は朝食を食べた後でもよろしいでしょうか?」


「えっ、今話してよ」


「ダメです。ほら、早く準備してください」


急かしてくるリリィに私は渋々起き上がり、支度を始めた。
制服に着替え、朝食を食べるために1階のリビングへと降りて行き、椅子に座る。そして、机の上にあったパンを齧り、紅茶を一口飲んだ。


「そ、それで……進展は?」


「ナタリー様。食べることに集中してください」


むー、こいつ……!意地でも話さないつもりだな……! 私はイラッとしながらも、朝食を食べ終わり、制服を着て、鞄を持ち、リリィと共に家を出て馬車へと乗り込む。そして、馬車に揺られながらイザベル様のことを聞いた。


「それで。どういうことなの?イザベル様がどうしたの?」


「それはですね……」


リリィは真剣な表情をして、話し始める。


「まず、イザベル様はナタリー様のことを恨んでいます。……調べたところ、ナタリー様はイザベル様を階段から突き落とした疑惑がかけられています」


「……はぁ?」


何言ってるの?私がイザベル様を階段から突き落とした?元のナタリー・アルディならしそうだが、私はそんなことしないし。


『あははっ。私を忘れちゃ困るわよ。偽者さん?』


「っ!」


頭に響いた声に私は思わずビクッとする。……元のナタリー・アルディの声が脳裏に響く。自称〝冬眠〟していたと言っていたナタリー・アルディ。なんで、今現れるわけ?!


『ようやくよ!貴方を追い出す方法がわかったの!貴方を……排除する方法がね!』


排除……ってどういうこと? 私は不安になりながらも、ナタリー・アルディに問う。すると、彼女は笑いながら答えた。


『もう、うんざりなのよ!この状況に!だから……もう返してもらうわ!私の身体!』


次の瞬間。私の頭に激しい頭痛が走った。私は頭を押さえながら、歯を食いしばる。
痛い……痛い……!!頭が割れそう……!! やがて、痛みが引いた頃には私の意識は途絶えていた。


△▼△▼


――私はずっと虐げられていた。私は出来損ないと呼ばれ、妹は愛想が良く、可愛がられていた。私はそんな妹に嫉妬した。そして、妬ましいと思った。


でも、そんなこと言えるはずもなく。私はただひたすらに我慢し続けた。どれだけ妹にバカにされようとも。……だって私には彼がいたから。だけど、その彼も妹に取られてしまった。


唯一の生き甲斐だった彼を失い、私は生きる意味を失った。そして、そのまま死んだ。……死ぬはずだったのに。


「ここは……どこ?」


私が目を覚ますと、そこは真っ暗闇の世界だった。何も見えない。私は困惑しながら周囲を見渡すが……黒しか見えない。あれ……私、馬車の中に乗ってなかったっけ? とりあえず、私は歩いてみる。しかし、どれだけ歩いても景色は変わらず、進んでいるのかさえ分からない。


「(ああ……思い出した。私排除されたんだ)」


望んでもないのにナタリー・アルディの身体に入ったあげく、返せと言われたんだ。まぁ、それを私に言われても困るんだけどね……。それに……


元のナタリー・アルディはちゃんと入れたのだろうか。ならば、リリィがめちゃくちゃ心配だ。二人っきりだしなぁ……まぁ、あいつはめちゃくちゃタフだし大丈夫か……


「(にしても本当にここは何処だ?夢の世界か?にしては現実味がありすぎるが……)」


私がそんな風に悩んでいると、後ろから足音が聞こえてくる。……え?この精神世界みたいなところで足音?え、怖。
私は恐る恐る後ろを振り返る。すると、そこには……


「お、お嬢様……ではない!誰ですか!?お嬢様を何処にやったんですか!」


そこにいたのはリリィだった。恐らく、このリリィは……


「貴方が元のリリィね?」


と、私がそう言うと、リリィは驚いた様な表情をしながらも頷いた。
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