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三章 〜半年が経って〜

五話 『嘘みたいだけど本当の話』

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レオン様との関係は宣戦布告して一度亀裂が入ったものの、今では元通りの関係になっているし……そもそも、恋のライバルにすらなれていないのだから。


「無謀な恋だよな……」


そんなことは分かっている。この恋は半年前に終わった。そして、私はその恋をまだ引きずっているのだ。


だからもう……


『何を………諦めているの?』


また声がする。この声はナタリー・アルディの声だ。そして……。


「(こ、こいつお祓いした筈では!?)」


半年前……私はこの声をお祓いしようと試みたし、半年前もお祓いが出来て消えた筈だった。
なのに、また聞こえる……!?何故!?何で!!?


『あんなお祓いで消え去ったとでも思ったのかしら?甘いわねぇ……この半年間はただ……冬眠してただけよ』


冬眠って熊かよ!!と、ツッコミたくなったが今はそんな状況ではない。しかし、私は半年前の私とは違う。あのときの精神状態と今の精神状態では圧倒的に違うし!


『ローラ・クレーヴが好きだなんて私の身体でやらないでくれる?そんなくだらない茶番を』


くだらない茶番――その言葉に私はカチンときた。……好き勝手言いやがって……!


「私だって、好きで……貴方の身体に憑依したんじゃないわよ!!」


もし、この身体がレオン様に取り憑いたら。そしたらローラは私のものになるから……なんてこと考えたことは一度だけ……ほんの一度、あったかもしれない。
けど……そんな邪な考えを持ったのは最初だけだし。


「ナタリー様?一人で何をぶつぶつ言っているのですか?」


部屋の中で一人、喋りながら独り言を言っている私を不思議に思ったのか、リリィが話しかけてきた。リリィは夜の巡回か……


「……声が聴こえるの。ナタリー・アルディの声が。半年前、お祓いをしたら消えた筈の声が聴こえるの。半年前はちゃんとお祓いが出来て消えたと思ってたのに……。半年経って冬眠から目覚めて私の身体を乗っ取ろうとしてるの!」


自分でも何を言っているかよく分からないけど、全部本当なのだ。だから信じてほしい……! リリィは私の話を一通り聞くと、


「そうですか。奇遇ですね。私も半年前から聴こえるのです。リリィの声が」


と言った。
え?リリィにも同じ現象が起きている……?マジ?それにしても冷静だな……こいつ……!


「元の肉体の持ち主は漫画ではあんまり登場しないのにめちゃくちゃおもしれー女してるんですよねー」


「は、はぁ……」


リリィは何故か得意気にそう言った。おもしれー女って……そんなもん、少女漫画でしか聞かないよ!


「半年前から聴こえる声……その声が怖くてですねー。ナタリー様との出来事と合わせてショックだったんですよね」


「そう……なんだ……」


あの半年間にそんなエピソードがあったとは。全く知らなかった。……いや、知ろうとしなかっただけだ。


「ま、ナタリー様の言葉にはツッコミどころ満載なのはいったん置いておいて……」


「それはそうなんだけど本当なんだってぇ!信じてよぉ!」


「でも、冬眠から目覚めたとかお祓いとか……そんなこと言われても信用出来ませんよ」


それはそう。だけど信じてほしいのだ。私は切実なのだ……半年前にお祓いをしたからもう安心だと思っていたら、何故かまた聞こえるようになってしまったのだから……


「とりあえず……冬眠とかふざけたことを脳内のナタリー・アルディが言っていたんですね?」


「そうよ!」


「……分かりました。この件はまた別の日に。私は巡回に戻ります。ナタリー様はゆっくりお休み下さい」


そう言うとリリィは部屋を出ていった。………何かいろんなことありすぎて訳わからくなってきたし、頭が痛い。


「寝よう……」


私は考えることを放棄して寝ることした。
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