45 / 65
二章 〜思惑〜
三十六話 『失恋』
しおりを挟む
――あれから数日が経った。お祓いをしたお陰か、ナタリー・アルディの声は聞こえてこない。
私を油断させる罠か!?とも思ったが、今のところその気配はなく、至って平和な日々を過ごしていた。
そして――。
「レオン様、ローラ・クレーヴに婚約したらしいわよ」
「え、そうなの?」
教室の一角で令嬢達が噂話をしていた。その話に思わず耳をすます。あの日以来、ローラとはあまり会ってないし、レオン様ともお会いしていない。
でも……そうか。ついにレオン様がローラに婚約を申し込んだのか。
それ自体はもうどうでもいい。私の知ったことではない。
……でも、なんだろう?この胸のザワツキは……。
「平民のくせに生意気なのよね。どうせ身体使ってレオン様を誑かしたんでしょ?」
「ローラ・クレーヴっていつもニコニコしてて、愛想だけは良いものね」
シンプルな悪口だ。ローラがどれだけ努力家なのかも知らないで!お前らはローラの何を知ってるんだ!
「レオン様、ローラ・クレーヴに騙されているのよ。目を覚ましてくれればいいのだけれど」
ふざけるな!レオン様は騙されてなんかいない! ローラは誰にでも優しくて、愛想が良く、貴族にも平民にも優しい。
ローラが身体を使ってレオン様を誑かしてる?そんなわけないだろう!
「(ぼこぼこに殴りてぇーよ!)」
私は心の中で怒りを爆発させていたが、ここで私が怒るのは違う気がする。私は怒りを抑えるために深く深呼吸する。
落ち着け、私。ここで怒ったら意味が無いだろ。冷静にならなければ…!ここで私が怒っても、何も解決しないのだから。
私は拳を握りしめて怒りを鎮める。そして私は何事もなかったかのように私は廊下へと出て行った。
△▼△▼
あれから三日が経った。ナタリー・アルディの声は聞こえなくなった辺り本当にお祓いの効果があったらしい。
私はホッとした。もうあの声を聞かなくて済むと思うと、心が軽くなった気がする。
しかし、そんなことよりも……。
私は今、ものすごく悩んでいることがある。それは――。
「ナタリー様。レオン様とローラ様が婚約したのに何故何もしないのですか!好きなのでしょう!?何もしないのですか!?」
リリィが私の目の前でぎゃーぎゃー騒いでいる。そう、リリィの言う通り、私は何もしていない。しかし、それは……
「もういいのよ。リリィ……レオン様がローラと婚約したのであれば私は身を引くわ」
何もかもがどうでもいいのだ。レオン様とローラが婚約したのであれば、私の出る幕はないし。
「いいわけないでしょう!ナタリー様……!諦めていいんですか!?」
「諦めるも何も、もう終わったことだもの」
そう。終わったことなのだ。あの頃のナタリー・アルディはもう死んだのだ。今、ここにいるのはローラのことを諦めたナタリー・アルディなのだ。
だからもう……どうでもいいのだ。
私はもう疲れてしまったのだ。何もする気になれないし、何を考えても無駄な気がする。
だから、このままでいい。このままでいたい。
「ナタリー様!私は……私は絶対に諦めませんからね!」
リリィは泣きながらそう言うと、教室を出て行った。私はその背中を見送ると机に突っ伏す。
「何を諦めないのよ……」
もう終わったことなのに。今更何に期待すると言うのだろう? 私はもう……諦めたのに。何もかもを……諦めていると言うのに。
「ローラ……私は……」
ローラのことを思うと胸が苦しくなる。こんなことなら好きなんて自覚しなければよかった。
今更後悔しても遅いけれど。それでも、やっぱり考えてしまうのだ。
ローラのことが好きだということを……諦められないということを……
「(この恋は……)」
この恋が叶うことはない。だって、ローラが好きなのはレオン様だから。今更私がどうこう言ったところで何も変わらない。
「早く、諦めなきゃ……」
私は一人、そう呟いた。早くこの恋を忘れなければならない。じゃないと……私は前に進めないから。
でも、私はまだこの恋を諦めることができなかった。未練がましい自分が嫌になる。
「(ローラ……)」
私はローラの名前を心の中で呼びながら目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーー
ここで二章は終わりです。次で三章に入っていきます
私を油断させる罠か!?とも思ったが、今のところその気配はなく、至って平和な日々を過ごしていた。
そして――。
「レオン様、ローラ・クレーヴに婚約したらしいわよ」
「え、そうなの?」
教室の一角で令嬢達が噂話をしていた。その話に思わず耳をすます。あの日以来、ローラとはあまり会ってないし、レオン様ともお会いしていない。
でも……そうか。ついにレオン様がローラに婚約を申し込んだのか。
それ自体はもうどうでもいい。私の知ったことではない。
……でも、なんだろう?この胸のザワツキは……。
「平民のくせに生意気なのよね。どうせ身体使ってレオン様を誑かしたんでしょ?」
「ローラ・クレーヴっていつもニコニコしてて、愛想だけは良いものね」
シンプルな悪口だ。ローラがどれだけ努力家なのかも知らないで!お前らはローラの何を知ってるんだ!
「レオン様、ローラ・クレーヴに騙されているのよ。目を覚ましてくれればいいのだけれど」
ふざけるな!レオン様は騙されてなんかいない! ローラは誰にでも優しくて、愛想が良く、貴族にも平民にも優しい。
ローラが身体を使ってレオン様を誑かしてる?そんなわけないだろう!
「(ぼこぼこに殴りてぇーよ!)」
私は心の中で怒りを爆発させていたが、ここで私が怒るのは違う気がする。私は怒りを抑えるために深く深呼吸する。
落ち着け、私。ここで怒ったら意味が無いだろ。冷静にならなければ…!ここで私が怒っても、何も解決しないのだから。
私は拳を握りしめて怒りを鎮める。そして私は何事もなかったかのように私は廊下へと出て行った。
△▼△▼
あれから三日が経った。ナタリー・アルディの声は聞こえなくなった辺り本当にお祓いの効果があったらしい。
私はホッとした。もうあの声を聞かなくて済むと思うと、心が軽くなった気がする。
しかし、そんなことよりも……。
私は今、ものすごく悩んでいることがある。それは――。
「ナタリー様。レオン様とローラ様が婚約したのに何故何もしないのですか!好きなのでしょう!?何もしないのですか!?」
リリィが私の目の前でぎゃーぎゃー騒いでいる。そう、リリィの言う通り、私は何もしていない。しかし、それは……
「もういいのよ。リリィ……レオン様がローラと婚約したのであれば私は身を引くわ」
何もかもがどうでもいいのだ。レオン様とローラが婚約したのであれば、私の出る幕はないし。
「いいわけないでしょう!ナタリー様……!諦めていいんですか!?」
「諦めるも何も、もう終わったことだもの」
そう。終わったことなのだ。あの頃のナタリー・アルディはもう死んだのだ。今、ここにいるのはローラのことを諦めたナタリー・アルディなのだ。
だからもう……どうでもいいのだ。
私はもう疲れてしまったのだ。何もする気になれないし、何を考えても無駄な気がする。
だから、このままでいい。このままでいたい。
「ナタリー様!私は……私は絶対に諦めませんからね!」
リリィは泣きながらそう言うと、教室を出て行った。私はその背中を見送ると机に突っ伏す。
「何を諦めないのよ……」
もう終わったことなのに。今更何に期待すると言うのだろう? 私はもう……諦めたのに。何もかもを……諦めていると言うのに。
「ローラ……私は……」
ローラのことを思うと胸が苦しくなる。こんなことなら好きなんて自覚しなければよかった。
今更後悔しても遅いけれど。それでも、やっぱり考えてしまうのだ。
ローラのことが好きだということを……諦められないということを……
「(この恋は……)」
この恋が叶うことはない。だって、ローラが好きなのはレオン様だから。今更私がどうこう言ったところで何も変わらない。
「早く、諦めなきゃ……」
私は一人、そう呟いた。早くこの恋を忘れなければならない。じゃないと……私は前に進めないから。
でも、私はまだこの恋を諦めることができなかった。未練がましい自分が嫌になる。
「(ローラ……)」
私はローラの名前を心の中で呼びながら目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーー
ここで二章は終わりです。次で三章に入っていきます
20
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる