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二章 〜思惑〜
三十三話 『真実』
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身勝手な言葉を聞いていると、心の奥底に閉じ込めた様々な感情が噴き上がってきた。
彼の……スティーブン様の配慮のない言葉を聞いていると、自分一人ではとても抱え切れない負の感情達が一挙に反応を示した。駄目だ。冷静にならなきゃ……!そうは思っても、一度溢れ出した感情は止まらない。
私は感情のままに叫んだ。
「スティーブン様に私の何がわかるんですか!私だって……私だってこんなことしたくないですよ!でも仕方ないじゃないですか……!こうするしかなかったんですよ!!」
私は肩で息をしながら叫ぶ。スティーブン様は驚いた様子で私を見ていたが、そんなもの知らない。今はただ感情を発散させたかった。八つ当たりと言えばそれまで。でも、感情が抑えきれないのだ。
「これは私一人だけの問題。私一人が我慢していれば、何も問題なかったはずなのに……!」
周りに人が集まってくるけどそんなものどうでもよかった。
「私は!私はただ普通に幸せになりたいだけなのに……!」
もう嫌だ、こんな世界。
私はただ幸せになりたいだけなのに、どうしてそれが許されないの……? 私が泣いている間、辺りには困惑した空気が流れていたが、私の知ったことではない。今はとにかく悲しかった。泣きたかった。
「……場所変える?ここじゃ目立つし」
スティーブン様が優しく声を掛けてくれる。私はこくりと頷き、彼の提案にのることにした。
△▼△▼
――何故提案を乗ったのかは分からない。ただ単に悲しかったから、誰かに聞いて欲しかったのか。それとも、スティーブン様に苛立ったから、見返してやりたかったのか……
どちらなのか分からないけど、とにかく私は彼と共に行くことにしたのだった。
スティーブン様に連れられやって来たのは……
「談話室?」
「そう。僕のお気に入りの場所だよ」
スティーブン様はそう言って扉を開けた。
部屋に入ると、そこにはソファーやテーブルがあり、壁には絵画が飾られていて、その隣には本棚があったし、紅茶やコーヒー豆も置いてある。
談話室、というよりはホテルのロビーに近い雰囲気だった。スティーブン様はソファに座るよう促した。
私が座ったのを確認してから、彼も向かい側のソファに座る。
彼は私を見据えると、ゆっくりと口を開いた。
「でさー。どうなの?実際さー。俺には分からないからさ、君の気持ち」
淡々した口調で彼は聞いてきた。私は俯きながら、こう言った。
「先は八つ当たりして大変申し訳ございませんでした。そこについては謝罪いたします。ただ、私個人の問題なのであまり詮索しないで頂けると助かります」
「……俺にあんだけの罵声を浴びせたん
だから、俺は聞く権利あると思うけど」
そう言いながら彼はふっと笑った。
確かにそうだ。私は感情に任せて彼に暴言を吐いてしまったのだから、スティーブン様にも聞く権利はあるだろう。でも……
「信じますか?どんな馬鹿げた話でも」
「信じるよ」
即答なことに驚いた。彼は私の目をじっと見つめている。その目は真剣なもので、嘘を言っているようには見えなかった。しかし、彼は………、
『人のことを憶測で語るのはどうかと思うんです』
そんな声が頭の中に響き渡る。ナタリー・アルディの声ではなく……
「(……美香?)」
前世の親友の声が脳裏に響く。私は混乱し、頭を抱える。その様子を見ていたスティーブン様は心配そうに声を掛けてきた。
……ヤリチン、責任逃げ、浮気症……というのはリリィから聞いた言葉で私も普段の言動から『女たらしで遊び人』の印象が強く、とてもじゃないが信用できない男なのだ。
しかし――、
『ねぇ。話しちゃいましようよ。このこと』
美香の声が響く。……話すべきなのか?信用できるのか?彼は。
私は少しの間悩みながら……
「……笑ったらその瞬間殺しますから」
「おうオッケー。殺せるものならやって見なさいな」
彼は余裕綽々といった様子で言い、笑みを浮かべていたが。
「………私は……前世の記憶を……持っているんです」
その言葉を口にした瞬間、スティーブン様の目が見開かれていた。
彼の……スティーブン様の配慮のない言葉を聞いていると、自分一人ではとても抱え切れない負の感情達が一挙に反応を示した。駄目だ。冷静にならなきゃ……!そうは思っても、一度溢れ出した感情は止まらない。
私は感情のままに叫んだ。
「スティーブン様に私の何がわかるんですか!私だって……私だってこんなことしたくないですよ!でも仕方ないじゃないですか……!こうするしかなかったんですよ!!」
私は肩で息をしながら叫ぶ。スティーブン様は驚いた様子で私を見ていたが、そんなもの知らない。今はただ感情を発散させたかった。八つ当たりと言えばそれまで。でも、感情が抑えきれないのだ。
「これは私一人だけの問題。私一人が我慢していれば、何も問題なかったはずなのに……!」
周りに人が集まってくるけどそんなものどうでもよかった。
「私は!私はただ普通に幸せになりたいだけなのに……!」
もう嫌だ、こんな世界。
私はただ幸せになりたいだけなのに、どうしてそれが許されないの……? 私が泣いている間、辺りには困惑した空気が流れていたが、私の知ったことではない。今はとにかく悲しかった。泣きたかった。
「……場所変える?ここじゃ目立つし」
スティーブン様が優しく声を掛けてくれる。私はこくりと頷き、彼の提案にのることにした。
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どちらなのか分からないけど、とにかく私は彼と共に行くことにしたのだった。
スティーブン様に連れられやって来たのは……
「談話室?」
「そう。僕のお気に入りの場所だよ」
スティーブン様はそう言って扉を開けた。
部屋に入ると、そこにはソファーやテーブルがあり、壁には絵画が飾られていて、その隣には本棚があったし、紅茶やコーヒー豆も置いてある。
談話室、というよりはホテルのロビーに近い雰囲気だった。スティーブン様はソファに座るよう促した。
私が座ったのを確認してから、彼も向かい側のソファに座る。
彼は私を見据えると、ゆっくりと口を開いた。
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「……俺にあんだけの罵声を浴びせたん
だから、俺は聞く権利あると思うけど」
そう言いながら彼はふっと笑った。
確かにそうだ。私は感情に任せて彼に暴言を吐いてしまったのだから、スティーブン様にも聞く権利はあるだろう。でも……
「信じますか?どんな馬鹿げた話でも」
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即答なことに驚いた。彼は私の目をじっと見つめている。その目は真剣なもので、嘘を言っているようには見えなかった。しかし、彼は………、
『人のことを憶測で語るのはどうかと思うんです』
そんな声が頭の中に響き渡る。ナタリー・アルディの声ではなく……
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前世の親友の声が脳裏に響く。私は混乱し、頭を抱える。その様子を見ていたスティーブン様は心配そうに声を掛けてきた。
……ヤリチン、責任逃げ、浮気症……というのはリリィから聞いた言葉で私も普段の言動から『女たらしで遊び人』の印象が強く、とてもじゃないが信用できない男なのだ。
しかし――、
『ねぇ。話しちゃいましようよ。このこと』
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私は少しの間悩みながら……
「……笑ったらその瞬間殺しますから」
「おうオッケー。殺せるものならやって見なさいな」
彼は余裕綽々といった様子で言い、笑みを浮かべていたが。
「………私は……前世の記憶を……持っているんです」
その言葉を口にした瞬間、スティーブン様の目が見開かれていた。
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