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二章 〜思惑〜
三十話 『悩み』
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ローラのことを考えるとどんどん好きになっていく。彼女と過ごす時間は本当に楽しいし、幸せなのだ。
もっと彼女のことを知りたいと思うし、愛したいとも思うのだ。しかし――。
『殺せ殺せ殺せ……!あの女を殺せ!ローラ・クレーヴを殺せ!』
ナタリー・アルディの声がまた聞こえる。最初は夢の中だけだったのに。だんだん、現実でも聞こえるようになってきた。まるで悪魔のように囁いてくる。幻聴なのかわからない。
でも、このままだとローラを殺めかねないのは事実。それだけは絶対に避けなければならない。だから私はローラと距離を置こうと決めた。
これ以上彼女の側にいると、ナタリー・アルディに心を乗っ取られてしまうような気がしたから……
こんなこと誰にも相談できない。ローラにはもちろん、リリィにも相談できない。だってこんなこと相談したって信じてもらえないに決まっているし、正直言ってどう対処すれば良いかわからないし。
だからもう――。一人で抱えるしかない、と思っていたのに……。
「どうして最近のナタリー・アルディはあんなに露骨にローラのことを避けているんだ?」
レオン様の言葉にドキッとした。
やっぱりレオン様も不審に感じているんだ………でも、それを言うわけにいかないし……。
「気のせいですわよ、レオン様」
だから誤魔化すことにした。ローラとのことを知られるわけにはいかない。
「そうか?だが……」
レオン様が何か言おうとしているが、私はそれを遮って続ける。
「私はもうローラのことなんか……」
言ってしまえ。そう言ってしまえばいい。そうすれば楽になるはずだからっ!
「好きなんかじゃ……ないです…」
胸が苦しい。喉に何か詰まっているように息苦しい。はぁ、はぁと呼吸が荒くなるのがわかる。
レオン様の顔を見ることができない。思わず俯いてしまう。
「………そうか。お前にはがっかりだ」
レオン様はそれだけ言って教室から出て行った。がっかりだって?レオン様はこっちの方が好都合でしょう?だって彼はローラのことが好きなのだから。
「(だというのに……何なの?この胸騒ぎは……)」
辛くて、苦しくて、痛い。まるで心臓を鷲掴みされているようだ。ライバルが減れば嬉しいはずでしょう?なのに、どうしてこんなにも胸が苦しいの……?
「ローラ……」
最近、変なんだ。ローラといるとドキドキするのと同時に『殺せ!殺せ!』と悪魔のようなナタリー・アルディの声が聞こえるし、彼女と近づくたびに『殺せ!』と叫んでいる。
幻聴ならもはや病気だが、恐らく幻聴じゃない。彼女はずっと側にいるのだ。私の頭の中にいて、私のことを常に邪魔してくる。
『返せよ!返せ……!私の身体を……!』
恨み言が聞こえてくる。確かにナタリー・アルディからしたらこれは乗っ取りなのかもしれない。しかし、私だって何も好きでこの身体に転生したわけじゃないのに!
「ナタリー様……大丈夫ですか?」
リリィにも心配される始末だ。いつもはナタリー×ローラのカップリングの良さを熱弁しているリリィも最近はしないし。
「何でもないわ。大丈夫よ」
無理やり笑顔を作ってそう答えるが、リリィは納得していないようだった。まぁ、これでずっと誤魔化しているし、いい加減不審に感じられるのは当たり前だろう。
でも、言えないんだ。言っても信じてもらえないし、下手したら変人扱いされて距離を取られてしまうかもしれないから。いや、リリィになら相談しても大丈夫かもしれないが、それでも言いたくない。
「(だって言ったら……)」
怖い。自分が自分じゃなくなるような気がして怖い。自分が自分じゃなくなった時、私は一体どうなってしまうのだろう。
「(……死にたい…)」
もし、私が死んだらナタリー・アルディは身体を乗っ取れない。でも、それは自殺と同じだ。自ら命を絶つなんてしたくない。
でも、どうすればいいの?わからない。わからないよ……誰か教えてよ……と思っても誰も教えてくれることはなかった。
もっと彼女のことを知りたいと思うし、愛したいとも思うのだ。しかし――。
『殺せ殺せ殺せ……!あの女を殺せ!ローラ・クレーヴを殺せ!』
ナタリー・アルディの声がまた聞こえる。最初は夢の中だけだったのに。だんだん、現実でも聞こえるようになってきた。まるで悪魔のように囁いてくる。幻聴なのかわからない。
でも、このままだとローラを殺めかねないのは事実。それだけは絶対に避けなければならない。だから私はローラと距離を置こうと決めた。
これ以上彼女の側にいると、ナタリー・アルディに心を乗っ取られてしまうような気がしたから……
こんなこと誰にも相談できない。ローラにはもちろん、リリィにも相談できない。だってこんなこと相談したって信じてもらえないに決まっているし、正直言ってどう対処すれば良いかわからないし。
だからもう――。一人で抱えるしかない、と思っていたのに……。
「どうして最近のナタリー・アルディはあんなに露骨にローラのことを避けているんだ?」
レオン様の言葉にドキッとした。
やっぱりレオン様も不審に感じているんだ………でも、それを言うわけにいかないし……。
「気のせいですわよ、レオン様」
だから誤魔化すことにした。ローラとのことを知られるわけにはいかない。
「そうか?だが……」
レオン様が何か言おうとしているが、私はそれを遮って続ける。
「私はもうローラのことなんか……」
言ってしまえ。そう言ってしまえばいい。そうすれば楽になるはずだからっ!
「好きなんかじゃ……ないです…」
胸が苦しい。喉に何か詰まっているように息苦しい。はぁ、はぁと呼吸が荒くなるのがわかる。
レオン様の顔を見ることができない。思わず俯いてしまう。
「………そうか。お前にはがっかりだ」
レオン様はそれだけ言って教室から出て行った。がっかりだって?レオン様はこっちの方が好都合でしょう?だって彼はローラのことが好きなのだから。
「(だというのに……何なの?この胸騒ぎは……)」
辛くて、苦しくて、痛い。まるで心臓を鷲掴みされているようだ。ライバルが減れば嬉しいはずでしょう?なのに、どうしてこんなにも胸が苦しいの……?
「ローラ……」
最近、変なんだ。ローラといるとドキドキするのと同時に『殺せ!殺せ!』と悪魔のようなナタリー・アルディの声が聞こえるし、彼女と近づくたびに『殺せ!』と叫んでいる。
幻聴ならもはや病気だが、恐らく幻聴じゃない。彼女はずっと側にいるのだ。私の頭の中にいて、私のことを常に邪魔してくる。
『返せよ!返せ……!私の身体を……!』
恨み言が聞こえてくる。確かにナタリー・アルディからしたらこれは乗っ取りなのかもしれない。しかし、私だって何も好きでこの身体に転生したわけじゃないのに!
「ナタリー様……大丈夫ですか?」
リリィにも心配される始末だ。いつもはナタリー×ローラのカップリングの良さを熱弁しているリリィも最近はしないし。
「何でもないわ。大丈夫よ」
無理やり笑顔を作ってそう答えるが、リリィは納得していないようだった。まぁ、これでずっと誤魔化しているし、いい加減不審に感じられるのは当たり前だろう。
でも、言えないんだ。言っても信じてもらえないし、下手したら変人扱いされて距離を取られてしまうかもしれないから。いや、リリィになら相談しても大丈夫かもしれないが、それでも言いたくない。
「(だって言ったら……)」
怖い。自分が自分じゃなくなるような気がして怖い。自分が自分じゃなくなった時、私は一体どうなってしまうのだろう。
「(……死にたい…)」
もし、私が死んだらナタリー・アルディは身体を乗っ取れない。でも、それは自殺と同じだ。自ら命を絶つなんてしたくない。
でも、どうすればいいの?わからない。わからないよ……誰か教えてよ……と思っても誰も教えてくれることはなかった。
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