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二章 〜思惑〜
七話 『無駄な話し合い②』
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「で?ニコラス・シャトレ様はどのような根拠を持ってナタリー・アルディ様が嫌がらせをしたと言い張ったのですか?」
リリィは静かに、しかし怒りの感情を隠しもせずにニコラス様に問いかけた。
「まず、ナタリー・アルディがローラ・クレーヴをいじめていたと言う証言があった。それに、ローラ・クレーヴの手紙も見つかった。だから、ナタリー・アルディがやったに決まっているだろう」
そう言って手紙を机に置くニコラス様。それに対してリリィは呆れたようにため息をつきながらも、
「ローラ様。この手紙に心当たりはありますか?」
と、ローラに質問を投げかけた。ローラは恐る恐る手紙を見つめながら、
「……見てもよろしいですか?」
ローラがニコラス様にそう聞くと、ニコラス様は小さく頷く。それを確認した後、ローラはゆっくりと手紙を開いた。
そして、読み終わったあとに一言。
「………これは偽物です。私の字に似ていますが……似てるだけです」
ハッキリとそう言ったローラ。きっぱりと否定されたことに対して、少しだけ動揺を見せたもののすぐに持ち直し、 もう一度問い詰めてきた。
しかし、何度聞かれてもローラは首を横に振り、頑なに否定し続ける。
「ほら!ローラ様がこんなに言っているんです!ニコラス様!ささっと自分の非を認めてください!」
リリィはもう完全に怒っていて、今にも飛びかかりそうな勢いである。その一方で――。
「ほーん。……ま、ローラちゃん本人がそう言うならそれが証拠なんだろ?ささっと負けを認めようぜ。男として」
スティーブン様はそう言った。その言葉にリリィは目を丸くする。
スティーブン様の言葉は予想外だったようで、リリィはスティーブン様を呆然と見つめていたが――。
「おー。何?リリィちゃん。俺に惚れた?」
この場に不釣り合いすぎる冗談を言うスティーブン様にリリィは 今まで見たことがないような冷たい視線を向けている一方で……
「……」
無言でこの場を見ているレオン様。何を考えているのだろうか。
「そ、そんなはずはない!ナタリー・アルディは君をいじめた!そうだろうっ!?」
ローラの必死な訴えに、 ニコラス様はイラついた様子でこう返した。
それはまるで、 ナタリー・アルディの味方をするな、とでも言わんばかりの口調だった。しかし、
「私はナタリー・アルディ様に虐められていませんし、寧ろ助けてもらいました。ナタリー・アルディ様はそんなことする方ではありません。私を助けてくれた時のように優しいお方なのです」
きっぱりとした態度でそう返すローラに対し、ニコラス様は顔を真っ赤にして、 怒鳴るように、 ナタリー・アルディが犯人だと言ってきた。……違和感がある。こんな人じゃなかったよね?この人。少なくとも第一印象とめちゃくちゃかけ離れているし、彼と過ごした時間はそんなにないけどこんなに怒鳴る人じゃなかった……よね?
そんなことを思っているとレオン様は突然立ち上がり、
「認めろ。ニコラス・シャトレ。ナタリー・アルディはローラに嫌がらせをしていない。お前の勘違いだ。ナタリー・アルディがやったという証拠がない以上、これ以上は時間の無駄になるだけだ」
レオン様は冷静な様子だった。しかし、ニコラス様は納得できないのか、 まだ食い下がろうとする。……その行動に私は――、
「私はローラをいじめてません。ローラもそう言っている。これでこの話は終わりでしょ?」
ため息をつきながらそう言い放った。これ以上はレオン様の言う通り時間の無駄だと思ったからだ。
しかし、ニコラス様はそれでも引き下がる様子はなさそうだ。そんな態度にリリィは 怒りのオーラを放ち、
「いい加減にしてください!ナタリー様とレオン様の言う通りこれ以上は時間の無駄ですよ?」
と、リリィは声を荒らげた。
その迫力に押されたのだろう。
流石のニコラス様も黙ってしまった。
「……だんまりですか。では、私たちは失礼しますね。……ああ。そうそう。婚約破棄の件については承知しました。お爺様には私から言っておきますからご安心を。それじゃあ、さようなら。ニコラス・シャトレ様」
そう言って私は部屋を出て、そのまま学園を後にしたのであった。
「(あんな人だとは思わなかったわ)」
少しだけガッカリしながら。
リリィは静かに、しかし怒りの感情を隠しもせずにニコラス様に問いかけた。
「まず、ナタリー・アルディがローラ・クレーヴをいじめていたと言う証言があった。それに、ローラ・クレーヴの手紙も見つかった。だから、ナタリー・アルディがやったに決まっているだろう」
そう言って手紙を机に置くニコラス様。それに対してリリィは呆れたようにため息をつきながらも、
「ローラ様。この手紙に心当たりはありますか?」
と、ローラに質問を投げかけた。ローラは恐る恐る手紙を見つめながら、
「……見てもよろしいですか?」
ローラがニコラス様にそう聞くと、ニコラス様は小さく頷く。それを確認した後、ローラはゆっくりと手紙を開いた。
そして、読み終わったあとに一言。
「………これは偽物です。私の字に似ていますが……似てるだけです」
ハッキリとそう言ったローラ。きっぱりと否定されたことに対して、少しだけ動揺を見せたもののすぐに持ち直し、 もう一度問い詰めてきた。
しかし、何度聞かれてもローラは首を横に振り、頑なに否定し続ける。
「ほら!ローラ様がこんなに言っているんです!ニコラス様!ささっと自分の非を認めてください!」
リリィはもう完全に怒っていて、今にも飛びかかりそうな勢いである。その一方で――。
「ほーん。……ま、ローラちゃん本人がそう言うならそれが証拠なんだろ?ささっと負けを認めようぜ。男として」
スティーブン様はそう言った。その言葉にリリィは目を丸くする。
スティーブン様の言葉は予想外だったようで、リリィはスティーブン様を呆然と見つめていたが――。
「おー。何?リリィちゃん。俺に惚れた?」
この場に不釣り合いすぎる冗談を言うスティーブン様にリリィは 今まで見たことがないような冷たい視線を向けている一方で……
「……」
無言でこの場を見ているレオン様。何を考えているのだろうか。
「そ、そんなはずはない!ナタリー・アルディは君をいじめた!そうだろうっ!?」
ローラの必死な訴えに、 ニコラス様はイラついた様子でこう返した。
それはまるで、 ナタリー・アルディの味方をするな、とでも言わんばかりの口調だった。しかし、
「私はナタリー・アルディ様に虐められていませんし、寧ろ助けてもらいました。ナタリー・アルディ様はそんなことする方ではありません。私を助けてくれた時のように優しいお方なのです」
きっぱりとした態度でそう返すローラに対し、ニコラス様は顔を真っ赤にして、 怒鳴るように、 ナタリー・アルディが犯人だと言ってきた。……違和感がある。こんな人じゃなかったよね?この人。少なくとも第一印象とめちゃくちゃかけ離れているし、彼と過ごした時間はそんなにないけどこんなに怒鳴る人じゃなかった……よね?
そんなことを思っているとレオン様は突然立ち上がり、
「認めろ。ニコラス・シャトレ。ナタリー・アルディはローラに嫌がらせをしていない。お前の勘違いだ。ナタリー・アルディがやったという証拠がない以上、これ以上は時間の無駄になるだけだ」
レオン様は冷静な様子だった。しかし、ニコラス様は納得できないのか、 まだ食い下がろうとする。……その行動に私は――、
「私はローラをいじめてません。ローラもそう言っている。これでこの話は終わりでしょ?」
ため息をつきながらそう言い放った。これ以上はレオン様の言う通り時間の無駄だと思ったからだ。
しかし、ニコラス様はそれでも引き下がる様子はなさそうだ。そんな態度にリリィは 怒りのオーラを放ち、
「いい加減にしてください!ナタリー様とレオン様の言う通りこれ以上は時間の無駄ですよ?」
と、リリィは声を荒らげた。
その迫力に押されたのだろう。
流石のニコラス様も黙ってしまった。
「……だんまりですか。では、私たちは失礼しますね。……ああ。そうそう。婚約破棄の件については承知しました。お爺様には私から言っておきますからご安心を。それじゃあ、さようなら。ニコラス・シャトレ様」
そう言って私は部屋を出て、そのまま学園を後にしたのであった。
「(あんな人だとは思わなかったわ)」
少しだけガッカリしながら。
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