知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

かんな

文字の大きさ
上 下
2 / 65
一章 〜始まり〜

二話 『転生してしまった』

しおりを挟む

――目が覚めると、そこは見慣れない天井があった。


まさか、私は助かったのか?と思った。もし、そうなら最悪な気分だ。だが、私の身体は何処も痛みはなく、むしろ調子がいいくらいだった。
それにしてもここはどこだろうと思い、起き上がって辺りを見回すと――。


「え……?誰?」


鏡に映った自分を見て驚いた。そこには知らない女の子がいたからだ。……髪の色は金髪で肩まで伸びている。目は綺麗な碧眼をしており、肌の色も透き通るように白い。まるで人形のような容姿をしていた。


……私はこんな顔ではないはずだ。断じて違う。私はもっと地味な顔をしていたはずなのだ。それなのにこの子の……美少女は一体なんなんだ! 私が混乱していると扉が開かれ、一人の女性が入ってきた。


「お嬢様!?」


メイド服を身に纏い、長い髪を後ろにまとめた女性だ。彼女は慌てた様子でこちらに向かってくる。


「もう大丈夫なんですか?どこか痛むところとかありませんか?」


女性は心配そうな表情を浮かべると、矢継ぎ早に質問してくる。私は何が何だかわからず、とりあえず落ち着くように言った。すると、彼女はハッとしたような表情をして頭を下げた。


……なんかすごい謝られているんだけど。
怒ってはいないし、いきなり謝られるとは思わなかったよ。まぁ、それはさておき――、


「あの……私は誰でしょうか?」


まずはこの子が誰かを聞くことにした。すると、目の前の女性は目を大きく開き、信じられないものを見たかのような反応をした。


「お、お嬢様………まさか記憶喪失になってしまったんですか!?」


今にも泣き出してしまいそうな勢いで言われた。記憶喪失……ちょっと違うような気がするけど、『私は転生者です!』って言って信じてくれる人がいるとは思えないよね。うん、言わない方がいいな。


「……記憶喪失ですね。何も覚えていないのです……」


まぁ、この身体については何にも覚えてないしね。嘘じゃないからいいか……


「では旦那様に報告しなければなりません!すぐに支度致しますので少々お待ちください!」


「ち、ちょっと待って!その前に私の名前はなんなのか教えて!」


私がそう言うと、メイドの動きがピタリと止まった。それからゆっくりと振り返り、口を開いた。


「申し訳ございませんでした。お嬢様の名前はナタリー・アルディ様と言います」


そう言ってメイドは再び動き出し、部屋から出ていく。ナタリー・アルディ……?誰だよそれ……?聞いたことない名前だな?


「(小説とか漫画の世界?それとも、ゲームの世界?)」


私は自分の置かれている状況について考えてみた。しかし、全くわからないので考えることを止めた。だって考えたところで答えなんて出るわけがない。だって、ここがどんな世界かも分からないんだから……


「どれなのか検討もつかないや……」


そう呟くと再び扉が開かれた。今度は先ほどのメイドではなく、中年の男性が現れた。彼は白髪混じりの長い髭を生やしており、威厳のある雰囲気を放っていた。


「……記憶喪失になったというのは本当かね?」


男性は鋭い視線を向けると低い声で尋ねてきた。私はビクッとしながら答える。


「はい……。本当に何も思い出せないんです……」


恐る恐る返事をする。すると、男性は大きくため息をつくと言った。
――これからどうなるんだろうか? 不安を感じながら男性の次の言葉を待っていていると、


「そうか……でも、記憶がなくなったとしてもお前はわしの可愛い孫じゃ、安心せい!」


孫ということはこの人は私のおじいさんなのだろう。優しそうな人で良かった……。少しだけホッとした。


「明日から学校だが、大丈夫かい?」


学校……!学校には全くいい思い出はない……いじめられてばかりだったし、友達もほとんどいなかったし、行事ごともささっと終わらせて、いつも早く帰っていた。だから、あんまり行きたくないんだよな……でもなぁ……


「明日は休んで自分の状況を整理した方がいいと思うがナタリーの意見を聞こうじゃないか?」


「……私はまだ混乱していて何をどうしたらいいのか分かりません。だからこそ、学校に行こうと思います!」


私は覚悟を決めて言った。ここで行かなかったら後々後悔するような気がしてならなかったのだ。後、考えても仕方ないなら行動あるのみだと思うし。


「そうか……。ならば今日はゆっくり休みなさい」


「はい、ありがとうございます!」


そう言っておじいちゃんは出て行った。
しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

気が付けば悪役令嬢

karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。 あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...