上 下
21 / 21
〜番外編〜

『パーティ⑤』

しおりを挟む
 
石田カナは聖女のように優しく清楚で美しい女性だった。だから皆から好かれていたし、愛されていた。


街を歩けば誰もが振り返り、立ち止まって見惚れる程に美しく、そして可愛らしい少女であった。そして今日も例外じゃなく――。


「石田さん、綺麗だね!そして誕生日おめでとう!一曲踊らない?」


そう言いながら早口で捲し立て、手を差し伸べる男たちが沢山いた。……綺麗という言葉は透以外に言われても特に響かない。


光輝には揶揄って言っていただけであって綺麗なんて言葉は愛する人にしか言わないと嬉しくないのだと、そのくらい分かっている。


めんどくさい、と思っていると、


「………すみません、ちょっとカナを借ります」


そう言って手を引かれた。いつもなら絶対にしない透の行動に驚きつつも、少し嬉しい気持ちになった。



会場から離れた廊下の端っこまで連れてこられたかと思うと、急に手を引っ張られ抱きしめられた。一瞬何が起こったのか分からなかったが、すぐに理解して顔が熱くなるのを感じた。


「と、透さっ……」


「ごめん。嫉妬、したんだ……。俺以外の男に触られて欲しくなかったんだよ」


恋人になってから初めて見る彼の独占欲。こんなにも自分を求めてくれることに喜びを感じると同時に――


「(私だって同じなのになぁ)」


心の中で呟きながらも、今自分が出来る精一杯のことをするべく、目の前にある背中に腕を回した。
すると更に強く抱き締め、


「……私も透さん以外の男には触れたくないです」


「ありがとう」


お互いに微笑み合い、キスをした。



あれから数時間が経ち、パーティもそろそろお開き、という時間になっていた。食事も食べ尽くしたし、ダンスやらなんやらもやったためもう満腹であるので解散となった。



△▼△▼


「ねぇ、氷室春人」


「おん?何?松崎カナ」


唐突に声をかけてきたカナを見て首を傾げる春人。今は帰る準備を整え、帰っているところでカナは春人に声を掛け、


「このパーティに行く前にさ、言ってたじゃない。透さんに頼まれて私を喫茶店に連れて行くように頼まれたって」


「え?あー……うん?そうだけど?それがどうかした?」


首を傾げ、不思議そうな顔をしている春人を横目に見て溜め息をつきながら、


「もう!察してよ!どんな話をしていていたの!?」


グイッと近づき問い詰めると春人はうわっと顔を歪ませ、


「分かった。話すから。てゆうか、後ろにいる男が怖いからささっと離れろ。俺は和馬以外に近寄られても嬉しくないので!」


そう言いながら、カナの耳元でこう言った。


「俺はあの男に松崎を遠ざける役割だったんだよ。正直嫌だったし断りたかったけど、圧があったから仕方なく引き受けただけだ!これが話のオチ。ほら、面白くも何ともないだろ?俺はもう帰るからな!」


春人はそう言ってさっさと和馬と春香の元に向かって行った。


その後ろ姿を眺めながら、


「さ、私達も帰りましょう。透さん♪」


そう言ってカナは透に抱きついた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

【完結】君に伝えたいこと

かんな
ライト文芸
  食中毒で倒れた洋介は一週間の入院をすることになった。    治療をしつつ、入院生活をする洋介。そんな中、1人の少女と出会う。 美しく、そして綺麗な少女に洋介は思わず見惚れてしまったが――? これは病弱な女の子と人気者の男の子の物語である。 ※表紙の絵はAIのべりすとの絵です。みのりのイメージ画像です。

病気呼ばわりされて田舎に引っ越したら不良達と仲良くなった昔話

ライト文芸
弁護士の三国英凜は、一本の電話をきっかけに古びた週刊誌の記事に目を通す。その記事には、群青という不良チームのこと、そしてそのリーダーであった桜井昴夜が人を殺したことについて書かれていた。仕事へ向かいながら、英凜はその過去に思いを馳せる。 2006年当時、英凜は、ある障害を疑われ“療養”のために祖母の家に暮らしていた。そんな英凜は、ひょんなことから問題児2人組・桜井昴夜と雲雀侑生と仲良くなってしまい、不良の抗争に巻き込まれ、トラブルに首を突っ込まされ──”群青(ブルー・フロック)”の仲間入りをした。病気呼ばわりされて田舎に引っ越したら不良達と仲良くなった、今はもうない群青の昔話。

隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい

四乃森ゆいな
ライト文芸
『この感情は、幼馴染としての感情か。それとも……親友以上の感情だろうか──。』  孤独な読書家《凪宮晴斗》には、いわゆる『幼馴染』という者が存在する。それが、クラスは愚か学校中からも注目を集める才色兼備の美少女《一之瀬渚》である。  しかし、学校での直接的な接触は無く、あってもメッセージのやり取りのみ。せいぜい、誰もいなくなった教室で一緒に勉強するか読書をするぐらいだった。  ところが今年の春休み──晴斗は渚から……、 「──私、ハル君のことが好きなの!」と、告白をされてしまう。  この告白を機に、二人の関係性に変化が起き始めることとなる。  他愛のないメッセージのやり取り、部室でのお昼、放課後の教室。そして、お泊まり。今までにも送ってきた『いつもの日常』が、少しずつ〝特別〟なものへと変わっていく。  だが幼馴染からの僅かな関係の変化に、晴斗達は戸惑うばかり……。  更には過去のトラウマが引っかかり、相手には迷惑をかけまいと中々本音を言い出せず、悩みが生まれてしまい──。  親友以上恋人未満。  これはそんな曖昧な関係性の幼馴染たちが、本当の恋人となるまでの“一年間”を描く青春ラブコメである。

「今日でやめます」

悠里
ライト文芸
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。 ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。 「もうすぐ死ぬみたい」 ――――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。

旧・革命(『文芸部』シリーズ)

Aoi
ライト文芸
「マシロは私が殺したんだ。」マシロの元バンドメンバー苅谷緑はこの言葉を残してライブハウスを去っていった。マシロ自殺の真相を知るため、ヒマリたち文芸部は大阪に向かう。マシロが残した『最期のメッセージ』とは? 『透明少女』の続編。『文芸部』シリーズ第2弾!

「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

悠里
ライト文芸
高校生になる前の春休み。自分の16歳の誕生日に、幼馴染の悠斗に告白しようと決めていた心春。 会う約束の前に、悠斗が事故で亡くなって、叶わなかった告白。 (霊など、ファンタジー要素を含みます) 安達 心春 悠斗の事が出会った時から好き 相沢 悠斗 心春の幼馴染 上宮 伊織 神社の息子  テーマは、「切ない別れ」からの「未来」です。 最後までお読み頂けたら、嬉しいです(*'ω'*) 

従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。

みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。 ――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。 それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……  ※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。

処理中です...