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〜番外編〜
『新しい恋の行方 〜茜編〜』
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番外編です。先に、三十一話を見ることをお勧めします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの日から数ヶ月が経った。あれ以来茜は奏太との交流を続けている。
最初はただの知り合い程度だったが、今では友達と呼べるほど親しくなっていた。
そして――胸がドキドキした。こんな感情になるのは透以来だった。そしてこの胸のざわめきが何なのか。茜は知っている。
分かっているからこそ、認めたくなかった。だと言うのに会うたびに奏太に惹かれてゆく。そして今日もまた会う約束をしている。待ち合わせ場所はいつもの喫茶店だ。
あの日以来……茜と奏太はここで会っていた。話の内容は何気のない会話がほとんどだ。最近あったことや好きな食べ物や嫌いな物など、他愛もない話をするだけ。
ただそれだけのことなのだけれど、話していて楽しい、と感じている自分がいた。……それこそ、透と付き合っていた頃とは比べものにならないくらいに。
「(……でも……奏太さんは……)」
『最近親がいい加減結婚しろとかうるさい』と、そう言っていた。つまり、彼は今付き合っている人はいないし、この先も付き合う気はいないということだろう。
「……ごめんね!待った?」
そんなことを思っていると、奏太がやってきた。息を切らしていることから急いで来たのだろうとわかる。
「いえ。待っていません。大丈夫です。奏太さん」
「そう………よかった」
安心したようにほっとため息をつく奏太。そんな彼に茜は笑みを浮かべ、
「さ、座ってください。奏太さん。今日も愚痴でも話しましょう?」
日常的に茜と奏太はそんなやり取りをしていた。そして、お互いに恋人がいないという共通点もあって、よく話すようになったのだ。
「………ありがとうございます」
少し間を置いてから、彼は言った。
△▼△▼
数時間が経った。いつもみたいに喫茶店でコーヒーを頼み、適当に雑談しているうちに時間は過ぎていく……というのがいつものパターン……と、そう思っていた。
だが――。
「ここが僕の家です」
何故か奏太の家に来てしまっていた。奏太の家は超が付くほどの豪邸だった。庭には噴水があり、広い芝がある。玄関の前には大きな門があって、その先にはこれまた大きな屋敷があった。
豪邸自体は透やカナの家にも行ったことがあるので別に驚きはしない……と思っていたが、それでもやはり驚くものは驚いた。
「…す、すごいですね……仕事、何されてるんですか?」
「あー……一応、歌関係の仕事をしてます」
「歌関係……?」
聞けば、高宮奏太は作曲家らしい。ペンネームは『たかそう』という名前で活動しているらしい。最近ではゲーム実況もしているらしいが、茜は聞いたことがなかった。
「………すみません。聞いたことないです……」
「まぁ、そりゃ……そうですよね。曲はあまり売れてないですし。どっちかというとゲーム実況の方が伸びてますからね」
「へぇ~……」
確かに言われてみると納得できる気がした。彼の声は澄んでいて綺麗だし、それになんと言っても顔立ちが良い。彼目当てに来る女性ファンもいるのではないかと思えるほどだった。
「だから……まぁ、本業は作曲なんですけど、ゲーム実況の方が伸びてて、利益化出来たのもこんな家に住めるのもゲーム実況のお陰なんですよね」
「そ、そうなんですか。でも、ゲーム実況が伸びるだけでもいいと思いますけど……」
……公務員よりも不安定で、いつか飽きられて忘れられてもおかしくない職業なのに、それで生計を立てられるというのは素直に凄いなと思った。
「………それですね、茜さん、ここに一緒に住みませんか?」
「……………え?」
突然の申し出に茜は戸惑った。
この人は何を言っているんだろう? そんな疑問しか頭に浮かばなかった。
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あの日から数ヶ月が経った。あれ以来茜は奏太との交流を続けている。
最初はただの知り合い程度だったが、今では友達と呼べるほど親しくなっていた。
そして――胸がドキドキした。こんな感情になるのは透以来だった。そしてこの胸のざわめきが何なのか。茜は知っている。
分かっているからこそ、認めたくなかった。だと言うのに会うたびに奏太に惹かれてゆく。そして今日もまた会う約束をしている。待ち合わせ場所はいつもの喫茶店だ。
あの日以来……茜と奏太はここで会っていた。話の内容は何気のない会話がほとんどだ。最近あったことや好きな食べ物や嫌いな物など、他愛もない話をするだけ。
ただそれだけのことなのだけれど、話していて楽しい、と感じている自分がいた。……それこそ、透と付き合っていた頃とは比べものにならないくらいに。
「(……でも……奏太さんは……)」
『最近親がいい加減結婚しろとかうるさい』と、そう言っていた。つまり、彼は今付き合っている人はいないし、この先も付き合う気はいないということだろう。
「……ごめんね!待った?」
そんなことを思っていると、奏太がやってきた。息を切らしていることから急いで来たのだろうとわかる。
「いえ。待っていません。大丈夫です。奏太さん」
「そう………よかった」
安心したようにほっとため息をつく奏太。そんな彼に茜は笑みを浮かべ、
「さ、座ってください。奏太さん。今日も愚痴でも話しましょう?」
日常的に茜と奏太はそんなやり取りをしていた。そして、お互いに恋人がいないという共通点もあって、よく話すようになったのだ。
「………ありがとうございます」
少し間を置いてから、彼は言った。
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数時間が経った。いつもみたいに喫茶店でコーヒーを頼み、適当に雑談しているうちに時間は過ぎていく……というのがいつものパターン……と、そう思っていた。
だが――。
「ここが僕の家です」
何故か奏太の家に来てしまっていた。奏太の家は超が付くほどの豪邸だった。庭には噴水があり、広い芝がある。玄関の前には大きな門があって、その先にはこれまた大きな屋敷があった。
豪邸自体は透やカナの家にも行ったことがあるので別に驚きはしない……と思っていたが、それでもやはり驚くものは驚いた。
「…す、すごいですね……仕事、何されてるんですか?」
「あー……一応、歌関係の仕事をしてます」
「歌関係……?」
聞けば、高宮奏太は作曲家らしい。ペンネームは『たかそう』という名前で活動しているらしい。最近ではゲーム実況もしているらしいが、茜は聞いたことがなかった。
「………すみません。聞いたことないです……」
「まぁ、そりゃ……そうですよね。曲はあまり売れてないですし。どっちかというとゲーム実況の方が伸びてますからね」
「へぇ~……」
確かに言われてみると納得できる気がした。彼の声は澄んでいて綺麗だし、それになんと言っても顔立ちが良い。彼目当てに来る女性ファンもいるのではないかと思えるほどだった。
「だから……まぁ、本業は作曲なんですけど、ゲーム実況の方が伸びてて、利益化出来たのもこんな家に住めるのもゲーム実況のお陰なんですよね」
「そ、そうなんですか。でも、ゲーム実況が伸びるだけでもいいと思いますけど……」
……公務員よりも不安定で、いつか飽きられて忘れられてもおかしくない職業なのに、それで生計を立てられるというのは素直に凄いなと思った。
「………それですね、茜さん、ここに一緒に住みませんか?」
「……………え?」
突然の申し出に茜は戸惑った。
この人は何を言っているんだろう? そんな疑問しか頭に浮かばなかった。
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