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第7章 麗しき惑星リスタル
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ともあれ。
へろへろ状態のセロリをどうにか、オフロード・ビークルまで引っ張って行き、後部座席に寝かせる。
羽衣のデータによれば、恐らく小一時間で効果は切れるだろう、と云うことだった。
サンタは仕方なく、絡み付いてくるセロリの成すがままになり、小一時間、後部座席に一緒に座り、じっとセロリの攻撃を耐えるしかなかった。
「見てられないね、サンタ」
「うるさい!」
そんなサンタにとって地獄のような一時間が過ぎた頃、突然、セロリが、ハッと我に返った。
「!」
慌てて、サンタから飛びのく。
「戻ったみたいだな」
セロリは、何が起きたのかわからない、と云うふうに、あたりをキョトキョトと見回す。
そして、自分の修道衣が乱れているのに気づくと、慌てて胸元をしっかりとガードして、サンタを恐ろしい形相で睨みつけた。
「サ、サ、サンタ、わ、私に何をしたんですか?」
「何もしてない。おまえの胸なんか見ても、どうも思わん」
「え? どうも思わないって、失礼な! それはそれで、何か悔しいです。なぜ、何もしないのですか?」
「どっちだよ?」
お決まりのやりとり。
どうやら、本当に効果は切れたらしい。
サンタは胸を撫で下ろした。
「さて、と、それで大丈夫か、セロリ? 怪我は?」
「今さら、間抜けな質問ですね」
「おまえがへろへろだったから、今まで聞けなかったんだろ?」
「体は大丈夫です。ちょっと乱れていたことは、ぼんやりと自覚はありますが、でも、心配いりません」
薬が効いている間のことは、ぼんやりとは憶えているらしい。
が――。
「体は大丈夫なんです……けど、ただ……」
言葉を濁す。
セロリの表情が、見る見る暗くなって行く。
サンタが羽衣を横目で見ると、羽衣も沈痛な表情でわずかに頷いて見せる。
セロリは彼女らしくない消え入りそうな声で、続けた。
「……ただ、あいつらの云ったことが、気になります。亜人をつれていけばお金になる、とか。それはどう云うことなんでしょうか? まさかこのリスタルで恐るべき犯罪が行われている、と云うことなんでしょうか?」
その声は、涙を堪えているように聞こえた。
「サンタ、どう思いますか? 私にはとても信じられません。私のこの国でそんなことが……」
すがるようにサンタを見る。
サンタはセロリに頷いて見せた。
「セロリ……」と、サンタ。
「おまえはしっかりと物事の判断が出来る大人だ。そうだな?」
「何ですか、突然? 確かに体は発展途上ですが、心は十分に大人です」
「その発言は、少々、おれを不安にさせるが、ともかくそんな噂が横行しているのは確かなようだ」
しかしかれはユズナから聞いた情報をセロリに話すことは出来なかった。
自分の故郷で犯罪が行われていると聞いただけでこれだけのショックを受けるセロリである。
まさかそれにリステリアス宮が、大公家が関わっているかも知れないなどと云う話はとても聞かせられなかった。
「は……い……」
セロリは俯いてそう答えるだけだった。
「おれたちは、おまえからの『運び』の依頼を受けた。だから『運び屋』として、おまえを責任持ってリステリアス宮まで送り届ける。これ以上誰にも手出しはさせない。わかるな?」
セロリは黙って頷く。
「それから――」と、サンタは続ける。
「リステリアス宮がもしかしたらおまえの知っているリステリアス宮ではないかも知れない」
「え? それはどう云う意味ですか?」
「わからん。ただどうにもキナ臭い匂いがするんだ。おれの直感がそう告げている。リステリアス宮に入れば安心だ、と、おまえは云うし、それは確かなのだろうが、油断はするな、と云うことだ」
「何でそんなことを?」
「アズナガ神父やシスターがおまえに対しておかしな行動をとったことを忘れるな。だからおまえはここまで来たのだろう? リステリアス宮だって昔と同じとは限らない。思い当たることはないのか?」
セロリは上目遣いにじっとサンタを見つめていた。
彼女は、小さな胸の中で、必死に考えていた。
「ありません」
「そうか。何もなければそれでいいんだ。ただ、心構えはしておけ、と云うことだ」
彼女は黙り込んだ。
じっと黙り込んでいた。
次に目を上げてサンタを見た時には、セロリの顔には決意に満ちた表情が浮かんでいた。
「わかりました。いずれにしてもつれて行ってくれますか? リステリアス宮へ。私は自分の目でそれを確かめます」
サンタはその言葉に、笑顔を返した。
「ああ、もちろんだ。おれは『運び屋』だからな」
へろへろ状態のセロリをどうにか、オフロード・ビークルまで引っ張って行き、後部座席に寝かせる。
羽衣のデータによれば、恐らく小一時間で効果は切れるだろう、と云うことだった。
サンタは仕方なく、絡み付いてくるセロリの成すがままになり、小一時間、後部座席に一緒に座り、じっとセロリの攻撃を耐えるしかなかった。
「見てられないね、サンタ」
「うるさい!」
そんなサンタにとって地獄のような一時間が過ぎた頃、突然、セロリが、ハッと我に返った。
「!」
慌てて、サンタから飛びのく。
「戻ったみたいだな」
セロリは、何が起きたのかわからない、と云うふうに、あたりをキョトキョトと見回す。
そして、自分の修道衣が乱れているのに気づくと、慌てて胸元をしっかりとガードして、サンタを恐ろしい形相で睨みつけた。
「サ、サ、サンタ、わ、私に何をしたんですか?」
「何もしてない。おまえの胸なんか見ても、どうも思わん」
「え? どうも思わないって、失礼な! それはそれで、何か悔しいです。なぜ、何もしないのですか?」
「どっちだよ?」
お決まりのやりとり。
どうやら、本当に効果は切れたらしい。
サンタは胸を撫で下ろした。
「さて、と、それで大丈夫か、セロリ? 怪我は?」
「今さら、間抜けな質問ですね」
「おまえがへろへろだったから、今まで聞けなかったんだろ?」
「体は大丈夫です。ちょっと乱れていたことは、ぼんやりと自覚はありますが、でも、心配いりません」
薬が効いている間のことは、ぼんやりとは憶えているらしい。
が――。
「体は大丈夫なんです……けど、ただ……」
言葉を濁す。
セロリの表情が、見る見る暗くなって行く。
サンタが羽衣を横目で見ると、羽衣も沈痛な表情でわずかに頷いて見せる。
セロリは彼女らしくない消え入りそうな声で、続けた。
「……ただ、あいつらの云ったことが、気になります。亜人をつれていけばお金になる、とか。それはどう云うことなんでしょうか? まさかこのリスタルで恐るべき犯罪が行われている、と云うことなんでしょうか?」
その声は、涙を堪えているように聞こえた。
「サンタ、どう思いますか? 私にはとても信じられません。私のこの国でそんなことが……」
すがるようにサンタを見る。
サンタはセロリに頷いて見せた。
「セロリ……」と、サンタ。
「おまえはしっかりと物事の判断が出来る大人だ。そうだな?」
「何ですか、突然? 確かに体は発展途上ですが、心は十分に大人です」
「その発言は、少々、おれを不安にさせるが、ともかくそんな噂が横行しているのは確かなようだ」
しかしかれはユズナから聞いた情報をセロリに話すことは出来なかった。
自分の故郷で犯罪が行われていると聞いただけでこれだけのショックを受けるセロリである。
まさかそれにリステリアス宮が、大公家が関わっているかも知れないなどと云う話はとても聞かせられなかった。
「は……い……」
セロリは俯いてそう答えるだけだった。
「おれたちは、おまえからの『運び』の依頼を受けた。だから『運び屋』として、おまえを責任持ってリステリアス宮まで送り届ける。これ以上誰にも手出しはさせない。わかるな?」
セロリは黙って頷く。
「それから――」と、サンタは続ける。
「リステリアス宮がもしかしたらおまえの知っているリステリアス宮ではないかも知れない」
「え? それはどう云う意味ですか?」
「わからん。ただどうにもキナ臭い匂いがするんだ。おれの直感がそう告げている。リステリアス宮に入れば安心だ、と、おまえは云うし、それは確かなのだろうが、油断はするな、と云うことだ」
「何でそんなことを?」
「アズナガ神父やシスターがおまえに対しておかしな行動をとったことを忘れるな。だからおまえはここまで来たのだろう? リステリアス宮だって昔と同じとは限らない。思い当たることはないのか?」
セロリは上目遣いにじっとサンタを見つめていた。
彼女は、小さな胸の中で、必死に考えていた。
「ありません」
「そうか。何もなければそれでいいんだ。ただ、心構えはしておけ、と云うことだ」
彼女は黙り込んだ。
じっと黙り込んでいた。
次に目を上げてサンタを見た時には、セロリの顔には決意に満ちた表情が浮かんでいた。
「わかりました。いずれにしてもつれて行ってくれますか? リステリアス宮へ。私は自分の目でそれを確かめます」
サンタはその言葉に、笑顔を返した。
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