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第7章 麗しき惑星リスタル
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巨漢の男が麻袋を担いで、石畳の路地を走っていた。
もう一人、やや小柄な男がその前を、様子を窺いながら先導していた。
路地の奥の奥。
袋小路になったあたりで、かれらは足を止める。
そのあたりには人影はなかった。
「おい。そいつを下ろせ」
小男である。いかにも残忍そうな面構えだ。
巨漢が麻袋を、ゆっくりと石畳の上に置いた。
麻袋は、ごそごそと動き、やがてそこからネコ耳の娘が、ひょっこりと顔を出す。
セロリである。
彼女は状況を理解すると、小男と巨漢を睨みつける。
男たちは、そんなセロリを陰険な顔に薄笑いを浮かべて見下ろしていた。
「『ネコ』属性か。珍しいな。高く売れそうだぜ」
小男の甲高い声が、耳につく。
その言葉に、何か厄介事に巻き込まれた、と悟ったセロリは袋から飛び出し、石畳を走り出そうとした。
しかし、それよりも早く巨漢がセロリの両肩を、がっちりと捉えた。
セロリは反射的にその腕から逃れようと暴れるが、相手はセロリの倍はありそうな巨漢であった。
彼我の力の差は歴然としている。
それでも彼女はあきらめようとせず、どうにかその呪縛から逃れようともがき続けた。
「はん、さすが『ネコ』だな。よく暴れやがる」
小男が面白くもなさそうに吐き捨てると、巨漢に向かって、命令した。
「おい、連れてく前に剥いちまえ。こいつくらいの年頃は、裸に剥いとけば、逃げるに逃げられないからな」
どうやら、小男の方が主犯格、と云うことらしい。
「早く、剥いちまいな!」
小男の言葉に、巨漢がセロリを乱暴に突き飛ばす。
小柄な彼女はひとたまりもなく、路地裏の石畳に投げ出された。
考えている場合ではなかった。
今は、この状況から逃れるのが、最優先だった。
巨漢が再び近づいて来て、彼女の修道衣に手を伸ばそうとする。
セロリはとっさに修道衣の隠しポケットを探った。
次の瞬間、彼女の手には剣呑な銃が握られていた。
ハンド・ミサイルの異名を持つ44マグナム。
護身用、と云うにはあまりにもごついそれである。
巨漢の動きが止まる。
セロリの持つ44マグナムの銃口が、真っ直ぐに巨漢を狙っていた。
至近距離である。的の大きい巨漢を、いかに素人であったとしても、外すとは思えない距離であった。
しかし、小男は、その物騒な銃を目にしても、口許を不敵に歪めただけだった。
「そんなものを出すのか? なかなか勇ましいじゃねえか」
「近づいたら、撃ちます」
云いながらも、銃身が小刻みに震えている。
いかに護身用として渡されたからと云って、もともとそんなものを扱い慣れている訳ではない。
この距離で外しようがないだろう、とは思いつつも、実際に引き金を引くには相当の勇気が必要であった。
それでも相手を威嚇するくらいの効果はあるはずだ、と、セロリは自分に云い聞かせる。
しかし。
「そんなのを扱えるのかい、お嬢ちゃん!」
叫ぶなり、小男はズボンのポケットから何かを取り出し、セロリの足許に叩きつけた。
「え? 何?」
煙?
小男が何かを叩きつけた石畳のあたりから、モクモクと薄紫色の煙が立ち昇り始めた。
セロリは咄嗟に、鼻と口を腕で覆ったが、すでに遅かった。
頭の中で何かがスパークする。
(これは??)
天地がひっくり返る。
頭の中がくらくらする。
目の前の男たちが、ぐるぐると回る。
そのまま、彼女は石畳に倒れこんだ。
小男が笑っている。
嗤っている。
意識は混沌としていた。
全身の力が抜けて、指先一本、自由に動かない。
小男は、そんなセロリを満足そうに眺めている。
「なるほど、効くもんだな。亜人一般に効果はあるとは聞いていたが、やっぱり『ネコ』には一番効くんだな、〈マタタビ〉って奴は」
へろへろ状態のセロリは、小男の言葉をぼんやり聞いていたが、その言葉の意味さえも理解できなかった。
ただ、今度は全身が火照り出し、身裡から何か今まで感じたことのない感覚が湧き上がってくるのを感じていた。
「ほう。とろんとして目つきで、涎まで垂らしてやがる。大した効き目だ。おい、早いとこ、裸にひん剥いて袋に詰めろ。もたもたしていて誰か来たら、それこそヤバイからな」
小男が命令すると、巨漢が再び近づいて来て、セロリの修道衣に手をかけた。
しかし、セロリにはまったく抵抗する術はなかった。
***
『……!』
空気が震えた。
小男はそれをかすかに感じた気がした。
何だ? と、かれは自問する。
しかし、その答えを見つける前に。
今、まさにセロリの服に手をかけようとしていたツレの巨漢が、ゆっくりとその場に昏倒する。
「な、なに?」
巨漢はその場で、ぴくぴくと痙攣している。
何が起こったのか、小男にはわからなかった。
「しばらく、目を覚まさないわよ」
背後からの声。
小男が振り返ると、建物の二階窓を覆うひさしの上に、見たこともない服を着た美女が腰掛けて、冷たい視線で見下ろしていた。
「だ、誰だ?」
その声を発するか発しないか、と云うタイミングで、かれは脇腹に激痛を覚え、そのまま自分が壁に叩きつけられたのを感じた。
「あ……、ぐぅ……」
呻き声を上げる。口から鮮血がしたたり落ちた。
目を上げると、そこに革ジャンパーを着た一人の男。
その双眸は凶悪な暗い光を湛えて、小男を見つめていた。
サンタである。
「おまえが、誘拐犯か?」
へたり込んだ小男の襟元を掴んで、睨みつける。
その目の奥にある何かに、小男は戦慄した。
こいつは、ヤバイ、と、かれは思った。
「い、いや、ち、違う。ほ、ほんの出来心なんだ」
小男は愛想笑いを浮かべる。
「あの、そ、つまり、誘拐犯と云う訳じゃねえんだ。ただ、城に亜人をつれて行くと、た、高く買ってくれるって話を聞いて……」
「そう云うのを誘拐犯って云うんだぜ」
「ああ、ああ、そうかも知れないが、ただ、おれたちはまだ三人しか……。もっと、大々的に組織立ってやっている奴らに較べれば、ほ、ほんの可愛いもんなんだ」
へへへ、と、笑う。
敵わないとわかった相手には、媚び諂うものだ、と、小男はそんな習慣が身についているようだった。
それがこの場ではまったく役に立たないスキルだとわかっていたとしても。
「だ、だから……」
その後の台詞を、小男は最後まで云うことはできなかった。
サンタの右ストレートが小男の顔面に炸裂し、かれは数メートルも吹っ飛んで、意識を失った。
口の端から折れた奥歯と血の泡が溢れて、石畳を汚した。
「よかったな、チンピラ、セロリを城に連れて行かなくて。連れて行けば、おまえらふたりとも、命がなかったぜ。何せ、お姫様を誘拐しようとしたんだからな」
サンタは冷たい視線で小男に吐き捨てると、それ以上は興味を失って、羽衣に抱え起こされているセロリに駆け寄った。
セロリはうつろな目でサンタを、ぼんやりと見た。
いつもの快活さは微塵もない。
「何か、薬か?」
羽衣に訊ねる。
「たぶん、〈マタタビ〉よ」
「〈マタタビ〉?」
「うん。亜人だけに効果がある麻痺薬。以前、まだ、亜人に人権がなかった頃に、亜人反乱の鎮圧用に開発された薬の通称のはずよ。麻痺の効果と、媚薬効果もあるらしいわ」
「なるほど。亜人の誘拐にはちょうど良い薬だな。……って、今、何て云った? 媚薬効果があるって?」
「そうだよ」
少しだけ嫌な予感がして、サンタはセロリを見た。
セロリの目が、とろん、としている。
口許から涎を垂らしながら、サンタを見て笑っている。
「えへ♪」
サンタは一歩、引きそうになる。
しかし、遅かった。
セロリが羽衣の手から飛び出すと、サンタに抱きついた。
「サンタ~、ナンかヘン~。あのね、あのね、私ね、ナンか体が熱いのぉ~」
呂律の回らない口調で、そんなことを口走る。
「でへへへ~。サンタ、だいすき~」
だらしなく、サンタにもたれかかると、耳に齧りついた。
「あらま。セロリったら、〈マタタビ〉がかなり効いちゃってるみたいね」
羽衣が楽しそうに、サンタに微笑みかける。
「好き、好き、好き~♪」
好き、を連呼しながら、サンタの首筋や頬にキスをし出した。
「セロリ、ちょっと、待て。しっかりしろ!」
それから、すがるような目で羽衣を見た。
「面白がってないで、何とかしてくれ、羽衣」
「自然に効果が切れるまで、待つしかないね。まあ、しばらくセロリの感触を楽しんだら?」
笑いを堪えて、答える羽衣だった。
サンタと羽衣が〈マタタビ〉に酔っ払ったセロリを、どうにか担いでその場を離れると、路地裏からひょっこり顔を出したのは、香水の露店にいた婆さんであった。
婆さんはそこに転がっている小男と巨漢を一瞥すると、ふん、と鼻を鳴らして唾を吐きかける。
「まったく、こいつらと来たら、クソの役にも立たないね」
婆さんは云うと、小男の頭を蹴飛ばした。
「それにしても、あの亜人娘、上玉だと思ったらお姫さんだったのかい。何でまた、お姫さんがこんなところをうろうろしてるんだろうね」
婆さんは首を傾げて、サンタたちが消えて行った方を名残惜しそうに眺める。
それから思い直したように「まあ、さわらぬ神に祟りなしか」と呟いて肩を竦めて、この件についてはすっぱり忘れることにしよう、とそう思った。
もう一人、やや小柄な男がその前を、様子を窺いながら先導していた。
路地の奥の奥。
袋小路になったあたりで、かれらは足を止める。
そのあたりには人影はなかった。
「おい。そいつを下ろせ」
小男である。いかにも残忍そうな面構えだ。
巨漢が麻袋を、ゆっくりと石畳の上に置いた。
麻袋は、ごそごそと動き、やがてそこからネコ耳の娘が、ひょっこりと顔を出す。
セロリである。
彼女は状況を理解すると、小男と巨漢を睨みつける。
男たちは、そんなセロリを陰険な顔に薄笑いを浮かべて見下ろしていた。
「『ネコ』属性か。珍しいな。高く売れそうだぜ」
小男の甲高い声が、耳につく。
その言葉に、何か厄介事に巻き込まれた、と悟ったセロリは袋から飛び出し、石畳を走り出そうとした。
しかし、それよりも早く巨漢がセロリの両肩を、がっちりと捉えた。
セロリは反射的にその腕から逃れようと暴れるが、相手はセロリの倍はありそうな巨漢であった。
彼我の力の差は歴然としている。
それでも彼女はあきらめようとせず、どうにかその呪縛から逃れようともがき続けた。
「はん、さすが『ネコ』だな。よく暴れやがる」
小男が面白くもなさそうに吐き捨てると、巨漢に向かって、命令した。
「おい、連れてく前に剥いちまえ。こいつくらいの年頃は、裸に剥いとけば、逃げるに逃げられないからな」
どうやら、小男の方が主犯格、と云うことらしい。
「早く、剥いちまいな!」
小男の言葉に、巨漢がセロリを乱暴に突き飛ばす。
小柄な彼女はひとたまりもなく、路地裏の石畳に投げ出された。
考えている場合ではなかった。
今は、この状況から逃れるのが、最優先だった。
巨漢が再び近づいて来て、彼女の修道衣に手を伸ばそうとする。
セロリはとっさに修道衣の隠しポケットを探った。
次の瞬間、彼女の手には剣呑な銃が握られていた。
ハンド・ミサイルの異名を持つ44マグナム。
護身用、と云うにはあまりにもごついそれである。
巨漢の動きが止まる。
セロリの持つ44マグナムの銃口が、真っ直ぐに巨漢を狙っていた。
至近距離である。的の大きい巨漢を、いかに素人であったとしても、外すとは思えない距離であった。
しかし、小男は、その物騒な銃を目にしても、口許を不敵に歪めただけだった。
「そんなものを出すのか? なかなか勇ましいじゃねえか」
「近づいたら、撃ちます」
云いながらも、銃身が小刻みに震えている。
いかに護身用として渡されたからと云って、もともとそんなものを扱い慣れている訳ではない。
この距離で外しようがないだろう、とは思いつつも、実際に引き金を引くには相当の勇気が必要であった。
それでも相手を威嚇するくらいの効果はあるはずだ、と、セロリは自分に云い聞かせる。
しかし。
「そんなのを扱えるのかい、お嬢ちゃん!」
叫ぶなり、小男はズボンのポケットから何かを取り出し、セロリの足許に叩きつけた。
「え? 何?」
煙?
小男が何かを叩きつけた石畳のあたりから、モクモクと薄紫色の煙が立ち昇り始めた。
セロリは咄嗟に、鼻と口を腕で覆ったが、すでに遅かった。
頭の中で何かがスパークする。
(これは??)
天地がひっくり返る。
頭の中がくらくらする。
目の前の男たちが、ぐるぐると回る。
そのまま、彼女は石畳に倒れこんだ。
小男が笑っている。
嗤っている。
意識は混沌としていた。
全身の力が抜けて、指先一本、自由に動かない。
小男は、そんなセロリを満足そうに眺めている。
「なるほど、効くもんだな。亜人一般に効果はあるとは聞いていたが、やっぱり『ネコ』には一番効くんだな、〈マタタビ〉って奴は」
へろへろ状態のセロリは、小男の言葉をぼんやり聞いていたが、その言葉の意味さえも理解できなかった。
ただ、今度は全身が火照り出し、身裡から何か今まで感じたことのない感覚が湧き上がってくるのを感じていた。
「ほう。とろんとして目つきで、涎まで垂らしてやがる。大した効き目だ。おい、早いとこ、裸にひん剥いて袋に詰めろ。もたもたしていて誰か来たら、それこそヤバイからな」
小男が命令すると、巨漢が再び近づいて来て、セロリの修道衣に手をかけた。
しかし、セロリにはまったく抵抗する術はなかった。
***
『……!』
空気が震えた。
小男はそれをかすかに感じた気がした。
何だ? と、かれは自問する。
しかし、その答えを見つける前に。
今、まさにセロリの服に手をかけようとしていたツレの巨漢が、ゆっくりとその場に昏倒する。
「な、なに?」
巨漢はその場で、ぴくぴくと痙攣している。
何が起こったのか、小男にはわからなかった。
「しばらく、目を覚まさないわよ」
背後からの声。
小男が振り返ると、建物の二階窓を覆うひさしの上に、見たこともない服を着た美女が腰掛けて、冷たい視線で見下ろしていた。
「だ、誰だ?」
その声を発するか発しないか、と云うタイミングで、かれは脇腹に激痛を覚え、そのまま自分が壁に叩きつけられたのを感じた。
「あ……、ぐぅ……」
呻き声を上げる。口から鮮血がしたたり落ちた。
目を上げると、そこに革ジャンパーを着た一人の男。
その双眸は凶悪な暗い光を湛えて、小男を見つめていた。
サンタである。
「おまえが、誘拐犯か?」
へたり込んだ小男の襟元を掴んで、睨みつける。
その目の奥にある何かに、小男は戦慄した。
こいつは、ヤバイ、と、かれは思った。
「い、いや、ち、違う。ほ、ほんの出来心なんだ」
小男は愛想笑いを浮かべる。
「あの、そ、つまり、誘拐犯と云う訳じゃねえんだ。ただ、城に亜人をつれて行くと、た、高く買ってくれるって話を聞いて……」
「そう云うのを誘拐犯って云うんだぜ」
「ああ、ああ、そうかも知れないが、ただ、おれたちはまだ三人しか……。もっと、大々的に組織立ってやっている奴らに較べれば、ほ、ほんの可愛いもんなんだ」
へへへ、と、笑う。
敵わないとわかった相手には、媚び諂うものだ、と、小男はそんな習慣が身についているようだった。
それがこの場ではまったく役に立たないスキルだとわかっていたとしても。
「だ、だから……」
その後の台詞を、小男は最後まで云うことはできなかった。
サンタの右ストレートが小男の顔面に炸裂し、かれは数メートルも吹っ飛んで、意識を失った。
口の端から折れた奥歯と血の泡が溢れて、石畳を汚した。
「よかったな、チンピラ、セロリを城に連れて行かなくて。連れて行けば、おまえらふたりとも、命がなかったぜ。何せ、お姫様を誘拐しようとしたんだからな」
サンタは冷たい視線で小男に吐き捨てると、それ以上は興味を失って、羽衣に抱え起こされているセロリに駆け寄った。
セロリはうつろな目でサンタを、ぼんやりと見た。
いつもの快活さは微塵もない。
「何か、薬か?」
羽衣に訊ねる。
「たぶん、〈マタタビ〉よ」
「〈マタタビ〉?」
「うん。亜人だけに効果がある麻痺薬。以前、まだ、亜人に人権がなかった頃に、亜人反乱の鎮圧用に開発された薬の通称のはずよ。麻痺の効果と、媚薬効果もあるらしいわ」
「なるほど。亜人の誘拐にはちょうど良い薬だな。……って、今、何て云った? 媚薬効果があるって?」
「そうだよ」
少しだけ嫌な予感がして、サンタはセロリを見た。
セロリの目が、とろん、としている。
口許から涎を垂らしながら、サンタを見て笑っている。
「えへ♪」
サンタは一歩、引きそうになる。
しかし、遅かった。
セロリが羽衣の手から飛び出すと、サンタに抱きついた。
「サンタ~、ナンかヘン~。あのね、あのね、私ね、ナンか体が熱いのぉ~」
呂律の回らない口調で、そんなことを口走る。
「でへへへ~。サンタ、だいすき~」
だらしなく、サンタにもたれかかると、耳に齧りついた。
「あらま。セロリったら、〈マタタビ〉がかなり効いちゃってるみたいね」
羽衣が楽しそうに、サンタに微笑みかける。
「好き、好き、好き~♪」
好き、を連呼しながら、サンタの首筋や頬にキスをし出した。
「セロリ、ちょっと、待て。しっかりしろ!」
それから、すがるような目で羽衣を見た。
「面白がってないで、何とかしてくれ、羽衣」
「自然に効果が切れるまで、待つしかないね。まあ、しばらくセロリの感触を楽しんだら?」
笑いを堪えて、答える羽衣だった。
サンタと羽衣が〈マタタビ〉に酔っ払ったセロリを、どうにか担いでその場を離れると、路地裏からひょっこり顔を出したのは、香水の露店にいた婆さんであった。
婆さんはそこに転がっている小男と巨漢を一瞥すると、ふん、と鼻を鳴らして唾を吐きかける。
「まったく、こいつらと来たら、クソの役にも立たないね」
婆さんは云うと、小男の頭を蹴飛ばした。
「それにしても、あの亜人娘、上玉だと思ったらお姫さんだったのかい。何でまた、お姫さんがこんなところをうろうろしてるんだろうね」
婆さんは首を傾げて、サンタたちが消えて行った方を名残惜しそうに眺める。
それから思い直したように「まあ、さわらぬ神に祟りなしか」と呟いて肩を竦めて、この件についてはすっぱり忘れることにしよう、とそう思った。
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