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3《彼女視点》
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一番に教室に来るようになったのは2年生からだった
少しでも一緒の空間に居たいと思い、朝早くにくるようになった
彼にはきっと、面倒だから早めに来て寝ているだけの子だと思われているだろうが、机に突っ伏した私は寝るフリして耳だけ彼の声を聞いていた
ほぼ毎朝来ている彼がいない時は寂しくて、それ以上に心配した
事故じゃないと良い、と思いながら待つのだ。
もう末期だと思う。
変態みたい…と自分に落ち込むけどそれすらどうでもいいと思った
そして今日彼の下駄箱に手紙を置いた
間違えないように何度も何度も確認して書いた手紙はメールより恥ずかしかったけど、元より伝えるつもりの無かった思いだと思うと、すぐに消せるメールよりも手紙を選んだ
トイレから帰ってきた私は彼の姿を見て、一瞬不安がよぎり反応が遅れたが、何とか取り繕った表情と声で席について眠るフリをした
心臓は破裂しそうな程にバクバクと煩く、自分の耳も顔も手すら熱を持ちつつある事に気づくと、更に恥ずかしさと不安が入り混じったよく分からない感情に目の前が歪み、涙を堪えるため唇を噛んだ
放課後になるまでの時間がいつも以上に遅く感じ、死を待つ罪人はこんな感じなのかな?と現実逃避した
6時間目の終わりを知らせる音が鳴り、とうとう来てしまった
幸か不幸か、彼は委員の仕事で終わるまでは時間がある
旧校舎に近づくにつれてドクドクと鳴り響く心臓
彼を前にした訳でもないのに息苦しさと、頬に触れれば熱く熱を持っており、自分の顔が赤くなっているだろう事は容易に想像できた
友達は教室の外からこちらを伺っているため、顔が赤くなっている事がバレたくない一心で廊下側を向いていた
「ごめん
遅くなった」
突然開けられたドアに彼の骨張った手が見えた
ただそれだけ、それだけだと分かっているがどうしても鼓動の速さが増してしまう
「あ…いや
さっききたところ…だから…」
何とか声に出たのはそんな言葉だったが、呼吸が浅かったらしい事に気がついた
「良かったー
本当、ごめんね」
「う、ううん…」
ごめん、と言葉にする彼の顔が見れず、変に解釈した私は勝手に傷ついてしまった
何とかいつも通りの表情で答えられているはずと思いながら、深呼吸をして冷静さを取り戻すと覚悟を決め、彼を睨むかのように見る
「それで…その…
手紙見たと思うけど…」
「…うん」
「…津田君が……す…」
たったの2文字、好きと言う言葉が出てこない
声に出せずにパクパクと開いては閉じるの繰り返しをしていたが、目が熱くなり、泣くものかと唇を噛む
「す…好、き…です」
何とか声に出たが、自分でも驚く程弱々しく震える声だった
おまけに罰ゲームと知らせてあるとはいえ、嘘でも好きな人に振られるのは覚悟を決めても怖くて、足は震えが止まっていないし、手汗は酷い
「…………」
だが彼、津田君から返事は来ない
罰ゲームだからそもそも相手の返事は無くていいのか?と不安になってきた時、見守っていた友達がカンペを掲げていた
〔もっと具体的に!!
どこがどう好きかも!!〕
そんなカンペと共に親指を立てていた
あまりにもあんまりな要求に血の気が引いている気がした
それでも唇を噛みしめた
覚悟を決めたはずの私は更に覚悟を決め、本心を言う事にした
例えそれで玉砕してもカンペを掲げて楽しそうな彼女達に泣きつく!
そう決めた!…要は焼けくそだった
「どこが?とか聞かれると困るけど…クラスの中心みたいな津田君も、寝ぼけてる時の津田君も好き!
他の男子と馬鹿騒ぎして笑う津田君が好き!…でも…1人でいる時の津田君が一番好き…側に居られるだけで…でも、もっと…津田君の特別になりたい…」
一気に捲し立てるように言ったが、恥ずかしいものは恥ずかしくて、最後は殆ど囁きに近い程小声だったし、最後の言葉は自分で思っていなかったはずの言葉だった
息も絶え絶えに、もう顔すら見れない程、恥ずかしさに俯いた
少しでも一緒の空間に居たいと思い、朝早くにくるようになった
彼にはきっと、面倒だから早めに来て寝ているだけの子だと思われているだろうが、机に突っ伏した私は寝るフリして耳だけ彼の声を聞いていた
ほぼ毎朝来ている彼がいない時は寂しくて、それ以上に心配した
事故じゃないと良い、と思いながら待つのだ。
もう末期だと思う。
変態みたい…と自分に落ち込むけどそれすらどうでもいいと思った
そして今日彼の下駄箱に手紙を置いた
間違えないように何度も何度も確認して書いた手紙はメールより恥ずかしかったけど、元より伝えるつもりの無かった思いだと思うと、すぐに消せるメールよりも手紙を選んだ
トイレから帰ってきた私は彼の姿を見て、一瞬不安がよぎり反応が遅れたが、何とか取り繕った表情と声で席について眠るフリをした
心臓は破裂しそうな程にバクバクと煩く、自分の耳も顔も手すら熱を持ちつつある事に気づくと、更に恥ずかしさと不安が入り混じったよく分からない感情に目の前が歪み、涙を堪えるため唇を噛んだ
放課後になるまでの時間がいつも以上に遅く感じ、死を待つ罪人はこんな感じなのかな?と現実逃避した
6時間目の終わりを知らせる音が鳴り、とうとう来てしまった
幸か不幸か、彼は委員の仕事で終わるまでは時間がある
旧校舎に近づくにつれてドクドクと鳴り響く心臓
彼を前にした訳でもないのに息苦しさと、頬に触れれば熱く熱を持っており、自分の顔が赤くなっているだろう事は容易に想像できた
友達は教室の外からこちらを伺っているため、顔が赤くなっている事がバレたくない一心で廊下側を向いていた
「ごめん
遅くなった」
突然開けられたドアに彼の骨張った手が見えた
ただそれだけ、それだけだと分かっているがどうしても鼓動の速さが増してしまう
「あ…いや
さっききたところ…だから…」
何とか声に出たのはそんな言葉だったが、呼吸が浅かったらしい事に気がついた
「良かったー
本当、ごめんね」
「う、ううん…」
ごめん、と言葉にする彼の顔が見れず、変に解釈した私は勝手に傷ついてしまった
何とかいつも通りの表情で答えられているはずと思いながら、深呼吸をして冷静さを取り戻すと覚悟を決め、彼を睨むかのように見る
「それで…その…
手紙見たと思うけど…」
「…うん」
「…津田君が……す…」
たったの2文字、好きと言う言葉が出てこない
声に出せずにパクパクと開いては閉じるの繰り返しをしていたが、目が熱くなり、泣くものかと唇を噛む
「す…好、き…です」
何とか声に出たが、自分でも驚く程弱々しく震える声だった
おまけに罰ゲームと知らせてあるとはいえ、嘘でも好きな人に振られるのは覚悟を決めても怖くて、足は震えが止まっていないし、手汗は酷い
「…………」
だが彼、津田君から返事は来ない
罰ゲームだからそもそも相手の返事は無くていいのか?と不安になってきた時、見守っていた友達がカンペを掲げていた
〔もっと具体的に!!
どこがどう好きかも!!〕
そんなカンペと共に親指を立てていた
あまりにもあんまりな要求に血の気が引いている気がした
それでも唇を噛みしめた
覚悟を決めたはずの私は更に覚悟を決め、本心を言う事にした
例えそれで玉砕してもカンペを掲げて楽しそうな彼女達に泣きつく!
そう決めた!…要は焼けくそだった
「どこが?とか聞かれると困るけど…クラスの中心みたいな津田君も、寝ぼけてる時の津田君も好き!
他の男子と馬鹿騒ぎして笑う津田君が好き!…でも…1人でいる時の津田君が一番好き…側に居られるだけで…でも、もっと…津田君の特別になりたい…」
一気に捲し立てるように言ったが、恥ずかしいものは恥ずかしくて、最後は殆ど囁きに近い程小声だったし、最後の言葉は自分で思っていなかったはずの言葉だった
息も絶え絶えに、もう顔すら見れない程、恥ずかしさに俯いた
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