1 / 5
プロローグ「芽生え」
しおりを挟む
この世界には全ての憎しみ、恨み、不幸を集めて煮詰めたような、神にすら忘れられた地が存在した。
荒れ狂う風はまるで踊るように姿形を変える。吹き荒れる風は大きく、小さな国一つを丸呑みにするような暴風は互いに消える事はないまま、何かの力が宿ったようにぶつかり合い、混じっては新たな暴風が踊り狂う。荒れ狂う暴風によって巻き上げられた岩は砕かれ、研磨し、小さな石礫となって弾き飛ばさる。
遮るモノのない空はカラカラに乾き、水を運ぶ雲のない空は暴風によって濁った青空が広がる。生物を跡形もなく消し去ってしまうような強烈な陽の光が大地に降り注ぎ、ベールのような意志無き影が揺らめく。
水を奪われ続けた大地は何かが這いずったように切り裂かれ、抉り取ったような跡がそこら中にあり、今もなお新しく刻まれ続ける。
鈍色混じりの茶色の大地を破り鬱蒼と生い茂るような葉はなく、枯れ朽ちた葉さえも陽の光に焼き尽くされてしまう。
生物が生きるのに必要な水は無く、濃淡の差が現れる大地に生物が存在する事を許さないような平穏とは程遠い死と不毛の大地。
生きとし生けるものを拒んだ大地は常に変化を刻み続けるだけで根本的な部分では何も変わりはしなかった——
〔※※自我の芽生えが検出されました…、……15%の自我を確認…、………29%の自我を確認…………50%の自我を確認……——〕
「……………。」
〔———……89%の自我を確認………、……99%の自我を確認——〕
「…………?」
——その日、変化が起きた。
生物の影すらなかった大地に突如として意志を持った生き物が目覚めた
〔——確認しました。称号〈覚醒者〉を獲得しました。※※〕
〔条件を満たしました。称号〈覚醒者〉により___による枷が消滅しました———〕
「……っ…ぁっ………っ?!」
イタッ……いたい?…あつい、あついアツイ……ネムッ…
………うるさい…チクチクする…いたい……ねむい、ネムイからネカセ……
「ヤッ!!」
いたく、ない……あつい…コノ、まま寝た……ぃ…。
〔固有スキル【溜める】、【吸収】のLvが10になりました。〕
〔固有スキル【溜める】に派生スキル【保管庫】が追加されました。〕
「…んぅ……?」
暑くない…ん?熱くない?…違うの?
「あ、うごく……?ん…?あー、あー……。ボク?そっか…ぼくの声か…うぅ、凍えるぅ?毛皮がないから?」
ぼくの体、変。毛が頭しかない。それにお肌がぽかぽかして土より柔らかい…。
「うぶぁっ?!」
うわーうわーど、どうしよぉ…頭がない、どうしようか、どうする?どうすれば…あ、戻った。
「び、びっくりした……ふはは、あははは!今の、今のおもしろかった!もう一回!」
僕の座っていた場所の近くに僕の掌ぐらいの石礫が落ちていた。唐突に吹き飛ばされる感じにドキドキする。体がキュッと縮こまる感じが可笑しくて、それから何度も何度も、趣向を変えては僕が飽きるまで遊んだ。その間も吸収は続け、気づけば固有スキルのレベルが50を超えて80に近づいていた。
その間に新しく追加された派生スキルは四つ。固有スキル【溜める】からはレベル20まで上げた時に派生したスキル【精製】、更にレベル40まで上げた時に派生したスキル【分類】。
固有スキル【吸収】からは【溜める】とは違ってレベル20まで上げた時に初めて派生したスキル【吸引】、更にレベル40まで上げた時に派生したスキル【支配】だ。
派生スキル【精製】は保管庫に入れてる石礫を2つから5つ用意して精製すると見た事ない透き通る黒に色んな色を閉じ込めた丸い石に変わる。最近は吸収した魔力も精製出来るって知って常に魔力の精製してる。
派生スキル【分類】は保管庫のモノが分かりやすくなった。精製した石礫や精製した魔力を間違える事が無くなった。最近だと石礫の精製に必要な石礫の数が保有している魔力量に関係していると気づき、今まで5つ用意していた石礫を2つまで減らす事に成功した。
派生スキル【吸引】は吸収より早く一定範囲のモノを一度に吸収出来る。ただ吸収と同じように常に吸引すると少し疲れる。最近は範囲を広げる事で目で見える範囲の風を吸引したり、範囲を狭める代わりに風と一緒に大地を削り取れるようになった。
派生スキル【支配】はより強く吸収したモノを思い通りに出来る。溜め込むだけだった魔力を思い通り動かせる様になってからは細かい微調整が出来るようになった。最近では魂も支配出来る事を知って支配している。
吹き飛ばされる遊びも飽きた僕は最近までスキルのレベル上げと副産物として得られる知識を求めて彷徨い続けた。
魂を支配した事で吸収していた時よりも格段に増えた知識によって知ったが、スキルとは不思議だ。スキルの本当の効果はステータスを見るまでは分からない。しかしスキルの使い方は魂に刻まれると言う。実際、分からなくてもスキルは使えた。
僕は固有スキルを持っているけど知識では固有スキルを持つ生き物は少ない。固有スキルそのものが強力な力であって、レベルを上げるのも困難だと言う。僕の派生スキルに関しては今のところ知識がない。
殆どが『二つに分かれた青白い光のいちごは精霊の好物だ』や『海に住む人魚にとって山菜が高級食材だ』等、断片的な知識が増えるばかりだった。
更に吸収しても最近は新しい魂がなかなか見つからなくて、僕は考えた。随分前に吹き飛ばされる遊びは飽きてしまった。固有スキルのレベル上げは常にしている事で、これ以上彷徨っていても新しい知識が得られる事がないように思える。
でももっと知りたい。僕が知らない事、スキルや知識だけじゃ物足りない。知識だけじゃない事を見てみたい。まだ知らないこの世界の事を想像すると、初めて石礫に吹き飛ばされた時とは違う胸の高まりを感じていつもと変わらない景色が少し輝いて見えた。
「ああ、楽しみだ!」
荒れ狂う風はまるで踊るように姿形を変える。吹き荒れる風は大きく、小さな国一つを丸呑みにするような暴風は互いに消える事はないまま、何かの力が宿ったようにぶつかり合い、混じっては新たな暴風が踊り狂う。荒れ狂う暴風によって巻き上げられた岩は砕かれ、研磨し、小さな石礫となって弾き飛ばさる。
遮るモノのない空はカラカラに乾き、水を運ぶ雲のない空は暴風によって濁った青空が広がる。生物を跡形もなく消し去ってしまうような強烈な陽の光が大地に降り注ぎ、ベールのような意志無き影が揺らめく。
水を奪われ続けた大地は何かが這いずったように切り裂かれ、抉り取ったような跡がそこら中にあり、今もなお新しく刻まれ続ける。
鈍色混じりの茶色の大地を破り鬱蒼と生い茂るような葉はなく、枯れ朽ちた葉さえも陽の光に焼き尽くされてしまう。
生物が生きるのに必要な水は無く、濃淡の差が現れる大地に生物が存在する事を許さないような平穏とは程遠い死と不毛の大地。
生きとし生けるものを拒んだ大地は常に変化を刻み続けるだけで根本的な部分では何も変わりはしなかった——
〔※※自我の芽生えが検出されました…、……15%の自我を確認…、………29%の自我を確認…………50%の自我を確認……——〕
「……………。」
〔———……89%の自我を確認………、……99%の自我を確認——〕
「…………?」
——その日、変化が起きた。
生物の影すらなかった大地に突如として意志を持った生き物が目覚めた
〔——確認しました。称号〈覚醒者〉を獲得しました。※※〕
〔条件を満たしました。称号〈覚醒者〉により___による枷が消滅しました———〕
「……っ…ぁっ………っ?!」
イタッ……いたい?…あつい、あついアツイ……ネムッ…
………うるさい…チクチクする…いたい……ねむい、ネムイからネカセ……
「ヤッ!!」
いたく、ない……あつい…コノ、まま寝た……ぃ…。
〔固有スキル【溜める】、【吸収】のLvが10になりました。〕
〔固有スキル【溜める】に派生スキル【保管庫】が追加されました。〕
「…んぅ……?」
暑くない…ん?熱くない?…違うの?
「あ、うごく……?ん…?あー、あー……。ボク?そっか…ぼくの声か…うぅ、凍えるぅ?毛皮がないから?」
ぼくの体、変。毛が頭しかない。それにお肌がぽかぽかして土より柔らかい…。
「うぶぁっ?!」
うわーうわーど、どうしよぉ…頭がない、どうしようか、どうする?どうすれば…あ、戻った。
「び、びっくりした……ふはは、あははは!今の、今のおもしろかった!もう一回!」
僕の座っていた場所の近くに僕の掌ぐらいの石礫が落ちていた。唐突に吹き飛ばされる感じにドキドキする。体がキュッと縮こまる感じが可笑しくて、それから何度も何度も、趣向を変えては僕が飽きるまで遊んだ。その間も吸収は続け、気づけば固有スキルのレベルが50を超えて80に近づいていた。
その間に新しく追加された派生スキルは四つ。固有スキル【溜める】からはレベル20まで上げた時に派生したスキル【精製】、更にレベル40まで上げた時に派生したスキル【分類】。
固有スキル【吸収】からは【溜める】とは違ってレベル20まで上げた時に初めて派生したスキル【吸引】、更にレベル40まで上げた時に派生したスキル【支配】だ。
派生スキル【精製】は保管庫に入れてる石礫を2つから5つ用意して精製すると見た事ない透き通る黒に色んな色を閉じ込めた丸い石に変わる。最近は吸収した魔力も精製出来るって知って常に魔力の精製してる。
派生スキル【分類】は保管庫のモノが分かりやすくなった。精製した石礫や精製した魔力を間違える事が無くなった。最近だと石礫の精製に必要な石礫の数が保有している魔力量に関係していると気づき、今まで5つ用意していた石礫を2つまで減らす事に成功した。
派生スキル【吸引】は吸収より早く一定範囲のモノを一度に吸収出来る。ただ吸収と同じように常に吸引すると少し疲れる。最近は範囲を広げる事で目で見える範囲の風を吸引したり、範囲を狭める代わりに風と一緒に大地を削り取れるようになった。
派生スキル【支配】はより強く吸収したモノを思い通りに出来る。溜め込むだけだった魔力を思い通り動かせる様になってからは細かい微調整が出来るようになった。最近では魂も支配出来る事を知って支配している。
吹き飛ばされる遊びも飽きた僕は最近までスキルのレベル上げと副産物として得られる知識を求めて彷徨い続けた。
魂を支配した事で吸収していた時よりも格段に増えた知識によって知ったが、スキルとは不思議だ。スキルの本当の効果はステータスを見るまでは分からない。しかしスキルの使い方は魂に刻まれると言う。実際、分からなくてもスキルは使えた。
僕は固有スキルを持っているけど知識では固有スキルを持つ生き物は少ない。固有スキルそのものが強力な力であって、レベルを上げるのも困難だと言う。僕の派生スキルに関しては今のところ知識がない。
殆どが『二つに分かれた青白い光のいちごは精霊の好物だ』や『海に住む人魚にとって山菜が高級食材だ』等、断片的な知識が増えるばかりだった。
更に吸収しても最近は新しい魂がなかなか見つからなくて、僕は考えた。随分前に吹き飛ばされる遊びは飽きてしまった。固有スキルのレベル上げは常にしている事で、これ以上彷徨っていても新しい知識が得られる事がないように思える。
でももっと知りたい。僕が知らない事、スキルや知識だけじゃ物足りない。知識だけじゃない事を見てみたい。まだ知らないこの世界の事を想像すると、初めて石礫に吹き飛ばされた時とは違う胸の高まりを感じていつもと変わらない景色が少し輝いて見えた。
「ああ、楽しみだ!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる