転生先では幸せになります

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幼少期 旅立ち編(前)

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目を覚ますと朝日が昇っており窓から光が差していた。

隣のベットを見るとアルクが熟睡している。

私はアルクを起こさないように民家からでるとクラークさんが盗賊達の側に座っていた。

「クラークさん、おはようございます。」

「アーシェンリファーさん、おはようございます。よく眠れましたか?」

「はい、お陰様でぐっすり寝ちゃいました」

「それはいい事です、おそらく後数時間で馬車が来ますのでもう少し待っていてください」

「分かりました、ゆっくり眠って魔力が大分回復したので、少しトレーニングでもしてますね」

「流石アーシェンリファーさん、精が出ますね」

「ありがとうございます」

クラークの言葉にお礼をした後に自身に対して【回復ヒール】をかける。昨日みたいに魔力ギリギリでの治療ではないおかげか治りが早い。

あっという間に自分の身体が元に戻った。

「本当に【回復ヒール】を使えるんですね~」

「はい…器用貧乏でして…今は水属性を鍛えているのですが、こんなに怪我をするなら光属性も練習するべきだったと少し後悔してます」

頭を少し掻きながら言う。

「いや、アーシェンリファーさんは身体が未成熟ですから、まだまだ魔力量と身体に差があるのでしょう。焦らず順番にやった方がいいですよ」

「やっぱり、そう思いますか?」

「はい、急がば回れ、なんて言いますが、魔力の増加と並行して自分の中で優先順位の高い属性の順に一つずつマスターしていくのが1番だと思います。身体を壊したら本末転倒ですからね」

「そうですね…焦らず頑張ります」

「はい、それにしても貴方は凄いですね。年齢にそぐわない身体能力も含めて、魔法の腕前も相当なもので」

「そう思いますか?確かに、生まれつき私は他の人とは違うのかも、とは思ってはいましたので…」

そう、前世の記憶がある事とか、アーシェンリファーは今回が2週目だ、とか…
身体能力だって、何故か普通の人間より遥かに高い。まだ子供だから目立たないだけで、大人になればきっともっと普通の人間と差が出てくるだろうと考えていた。

それは、きっとこの世界にとっての異物でしかなくて、どうしても他の人との間に壁を感じてしまうのだ。

「…他の人と比較して、自分が違うのだと貴方本人が認識してるのであれば、きっと本当にそうなのかもしれませんね…」

クラークさんの返しに私は何も言えなくなってしまう。

「これは、僕の考えですが…力なんて、結局は使い方だと思いますよ。どんなに強い力を持っていたとしても、使い方を間違わなければ、普通の人と変わりません。逆に個人の力が弱くても間違った使い方をすれば、それは立派な脅威になり得ると思います。実際、この世界に存在するSSランク冒険者の方達は何かしらのイレギュラーが認められてS Sランクになっている方が殆どですから、正直アーシェンリファーさんの気にする所の人間の枠からは外れていると思います。しかし、彼らは他の人から嫌煙なんてされていない。それがいい例だと思いますよ?」

クラークさんが励ましてくれているのが分かる。
大事なのは、人との違いを認識して力の使い方を選ぶって事だ。

「そうですね…ありがとうございます!なんか、私らしくもない事でウジウジしてすみません!」

珍しく暗い事を考えていた自分に喝を入れる。

「いえいえ~。元気が戻ったみたいで良かったです。まさか6歳の子供相手にこんな話をするなんて思いませんでした。アーシェンリファーさんは大人び過ぎているので、たまに年齢を忘れてしまいますね~」

「そ、そんなっ」

「でも、年相応な一面も見れて良かったです。貴方はまだこれからなんですから」

「…はい!私、もっと頑張ります!」

「アハハ~、程々に頑張って下さいねぇ~」

クラークさんと話をした後にいつものトレーニングを始める。
ランニングが終わりストレッチに入る所でアルクが起きたようでこちらに来た。

「アーシャ、おはよう」

「アルク、おはよう」

アルクは少し眠たそうにしながらもこちらに近寄り私と一緒にストレッチを始めようとする。

「あ、アルク。怪我が残ってるから回復するよ。」

「え?昨日のおかげで大分良くなってるから大丈夫だよ?」

「だーめ、治療させて?」

「わかったよ、じゃあ、お願いしようかな」

「うん」

私はアルクに【回復ヒール】をかけて身体の傷を治した。
先程自分にも【回復ヒール】を使っていたため、魔力が少し心配だったが、意外と余裕でアルクの怪我を完治させることが出来た。

「アーシャ、ありがとな」

「いえいえ、じゃあ、今日もトレーニング、頑張ろう!」

「おう!」

2人でストレッチを始める。

回復ヒール】は光属性の基礎魔法であるため、先程みたいに時間と魔力を使えば傷を完治する事は出来るが、今のスピードでは実戦では大して使えないだろう。
もっと【回復ヒール】の精度を上げるか、3段魔法である【高度治癒アルティヒール】を使いこなせるようにした方がいいのではないか、などと考えたが

(ま、クラークさんには焦るなって言われたし、地道に頑張るしかないか…)

前世では母が居なくなってから自暴自棄になっていて、正直寿命なんて全然考慮していなかった。だからこそ、無理な魔法の習得をして血反吐を吐いていた。
でも、今世ではそんなことはしたくない。
だって、今世では幸せになると母と約束したから。
創造完成の副作用は除外して…

などと自分の言い聞かせる。
創造完成の力をもっと使いこなせれば絶対もっと強くなれる。
確信は持てるがどうやってあの力を使いこなせばいいのかが見当もつかない。
あの副作用を軽減する明確なトリガーが分からないのである。
今の自分に不相応な力って何を基準にしてるんだろう…、それが分かればそれに沿った鍛え方をするのにと考えるが一向に分からない。

(…今考えても分からないものを考えてもしょうがないか…気長に頑張ろ…)

隣で黙々とストレッチをしているアルクを見る。
少し楽しそうである。

(私も、アルクのこういうところを見習わないとな…)

ストレッチに集中する。


それから、アルクと2人で筋トレまで終わらせて魔力向上の精神統一をしているとクラークさんから、盗賊を運ぶ用の馬車が村に到着したと知らせがきた。

「2人とも、精が出ている所申し訳ないですが、捕らえた盗賊達を連れて行く為に一旦ルクシアまで向かいましょう。」

「は、はい!」
「今行きます!」

クラークさんの言葉にアルクと一緒に返事をして馬車まで向かう。
私が予想していた以上に大きくて立派な馬車が何台も到着しており、中から騎士のような人達が出てきて私達が捕らえた盗賊達が順番に馬車に運ばれて行く。

「なんか、すげーな…」

「そうだね」

その動きをアルクと一緒に見ていた。
最後にラインハルトが馬車に運ばれる時、ラインハルトは他の盗賊の違い意識を取り戻しており、馬車に乗り込む寸前にこちらを見た。

「…」
「…」

少しの間私と目が合うがラインハルトが先に目を逸らした。

「俺はここまでだ。精々元気にやるんだな」

「言われなくてもそのつもり」

「ハッ…まだまだ青クセェな」

「…」

ラインハルトは私に対して吐き捨てると馬車に乗り込んで行った

「なんだ?アイツ?よくわかんねぇけど、アーシャはあんまり気にし過ぎるなよ?」

「うん!アルク、ありがとう」

「では、2人共、盗賊達を全員乗せたのでルクシアに向かいましょう」

「はい!」「分かりました!」

私達は盗賊達とは違う馬車に乗り込みクラークさんと一緒にルクシアまで向かうのであった。











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