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幼少期 旅立ち編(前)
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「大丈夫?」
小声でそう言うと女の子の口の布を外す。
「うん…」
女の子は力なく返事をする。
「おい…どう言う事だよ。」
流石におかしいと気付いたアルクが聞いてきた。
「そうだね。この村は…もう滅んでるよ。」
「は?いや、でも村人居るだろ⁈」
「アルク、声がデカい。」
「わ、悪い…」
アルクは私に本気で怒られションボリしている。そんなアルクにお構いなしで話を進める。捕まっていた女の子も黙っている。
「最初村に来た時にお婆さんが言ってたよね。最近盗賊に襲撃されて村があるって。それは私達がこれから行く村じゃなくって、この村だよ。ルクシアに来た時にギルドの人から盗賊の目撃情報があるって聞いてたでしょ。ルクシアから近いから、安全なんじゃない。逆だよ。ルクシアから近いから狙われた。近いって言ってもルクシアからも4日かかる森の中、盗賊には打ってつけの村だ。村人に男性が多くて、畑仕事してる人も何故か不慣れなのにも違和感はあった…でも、全員が盗賊の一味だとは流石に思わなかったよ。この村人達は全員グルだよ。で、おそらく自称村長のラインハルトがボス。」
「…まじかよ。」
「盗賊しかいないって事は、元の村人はどうなったか、なんて言わなくてもわかるよね?村の外に沢山のご遺体があった。おそらく殺された村人。少し虫が沸いてたけど、おそらく殺害されて1週間経ってないくらいじゃないかな…この辺りには魔物が極端に少なくて、ゴブリンすら共食いをしていたのは、盗賊が潜んでいるからって言うなら色々合点がいくよね。」
そのまま話を続ける。
「君のご家族は…そのご遺体の中にいる…で間違いないかな?」
女の子に優しく声をかける。
「うん…多分。パパもママも私の目の前で死んじゃった。」
「…何だよそれ…俺、ラインハルトの野郎をぶっ飛ばしてく「待って。」」
「アーシャ…」
アルクが勢いに任せてラインハルトの所へ行こうとするのを止める。
「流石に今の私達でこの盗賊団をどうにかなんて出来ないよ。対人戦の経験がないんだから。」
「でもっ…」
「アルク…まずは私達が全員生きてここから脱出する事が最優先。捕獲はギルドに依頼すればいい。盗賊は魔物よりも人間と戦う方が得意なんだよ。今の私たちでは無理。しかも、あのラインハルトとかって盗賊頭、結構強いよ。」
今の私では色々無理しないと厳しいかな…
「そんな…。」
アルクが項垂れているが仕方がない。
縛られている女の子の紐を全て解く。
「辛いと思うけど…私達とここから逃げよう。ついて来れる?」
「うん。大丈夫、お姉ちゃん、ありがとう。」
女の子が小声で返す。
「偉いね、私はアーシェンリファー、貴方は?」
「私はエリン、4歳。」
「エリンちゃんだね?よろしくね。」
そう言うとエリンの頭を撫でる
「俺はアルクだ。よろしくな。」
アルクは得意の人懐っこい笑顔を浮かべる。
「うん。」
「で、逃げるって言ったっていつ逃げるんだ?」
「とりあえず、今からいつでもここを出れるように荷造りをしよう。で、私が疲れている事にして晩御飯は断る。正直何が入ってるかわかんないけど、私たちを捕獲するための睡眠剤とかが入っててもおかしくない…要は私たちが今晩この部屋でぐっすりしてくれればやつらはいいはず。疲れてるから直ぐに寝るとでも言えば盗賊達は強く出ないはず。夜、盗賊達が静かになって、かつ、この部屋に入ってくる前に私たちはそこの窓から逃げる。バレないように一気に走るよ。…エリンちゃんには悪いけど、もう少しこの中にいて。出る時にまた空けるから。」
「…うん。」
「了解だ。」
エリンを一度元の扉の中に戻す。そして何も無かったようにタンスをその扉の上に置いてエリンを隠した。
そして、時刻を確認する。16時過ぎとなっており、おそらくもう少しで食事に誘われる。
それまでに可能な限り脱走の準備をする。
荷物はそこまで出してないので、試しに窓を開けてみる。
窓の向こうには特に人は居ないようで村の外へは直ぐに出れそうだ。
「アーシャ…最初から可笑しいって思ってたのか?」
「…うん。実はね…」
「そうか…」
2人に沈黙が訪れる。
「ごめんな…俺が疲れたような態度を取ってたからだよな?」
「もう…アルクのせいじゃないでしょ?気にしないの!」
アルクを励ます。
そうこうしている間に時間が経ったのかラインハルトが部屋の前に来ていた。
「すみません。食事を用意したのですが、よろしければ召し上がって下さい。」
「…ごめんなさい…今日は長旅で疲れていて…直ぐに寝るつもりなので…。」
申し訳なさそうなフリをして返事をする。
「…そうですか…わかりました。ではゆっくりして下さい。何かあれば言って下さいね?」
ラインハルトはそう言うと部屋から離れていった。
「…はぁ…急にこの村が息苦しいぜ…」
「私は最初から息苦しいよ。」
「とりあえず、今直ぐにはどうにも出来ないから決行は20時だよ。だから3時間は本当に休憩…」
そう言うとイスに座る。
(少し…仮眠…)
自身も正直少し疲れており、眠りについた。
━━━━
目が覚めると外はすっかり暗くなっておりアルクも寝ている。
(はっ!時間は…)
少し焦ったように時計を確認する19時50分と20時ギリギリだった。
流石私、やれば出来るじゃん。
自画自賛をしながらも小声でアルクを起こす。
「…はよ。アーシャ。」
「うん。おはよう。エリンちゃんを出そう。」
そう言うとタンスの下に隠されたエリンを出す。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
「うん。歩ける?」
その問いにエリンは少しずつ歩いてみせる。
「多分…大丈夫…。」
「うん。良かった。」
エリンと会話をしている間にアルクは辺りの様子を気にしてくれていた。
部屋の向こうでは盗賊達が夜の宴会でもやっているのか騒がしくしていた。
「いやぁ~お頭!今日はガキが2人、引っかかってくれて豊作ですな!」
「あぁ…」
「女のガキは中々将来性のある顔つきしてましたし…良い値で売れるんじゃないですかい?」
「ところで、いつ捕えます?」
「あぁ…さっき疲れたとか言って爆睡してたからな…そろそろ縛りに行くか。」
「わかりました!じゃあ、俺がこの一杯を飲んだら行きますね!」
「わかった。」
盗賊達の会話が聞こえる。
「ご丁寧に情報提供ありがとうって事で…」
アルクがそれに言葉を返す。
「アーシャ、どうやら時間がそんないないみたいだ。行こう。」
「了解。」
アルクは窓の外を確認して自分が先に外に出る。
「エリンちゃん、お兄ちゃんについていって。」
「うん。」
エリンを抱えて窓から出し、アルクに抱えさせる。
エリンが無事に窓から出れた事を確認して自身も窓から出る。
少しでも時間稼ぎが出来るようにベットの中にタンスの中に入っていた村人の服をダミーで包み人が入っているように見えるようにした。
窓から脱出した3人は盗賊の目を盗んで村の外に出ようとする。
ラインハルトの家の影から村の中心部を覗き込むと盗賊達が何人かの見張りをしている。
しかし、酒でも飲んでいるのか盗賊同士の会話に呂律が回っていないようにも感じる。
「アーシャ、行けそうか?」
「微妙って所だね…」
2人は物陰に隠れながら小声で話す。
エリンはそんな2人の様子をじっと見ていた。
(あの見張り達に見つかると騒ぎになる…)
とはいえ、ラインハルト達の会話から察するに私達がいた部屋に入ってくるのも時間の問題。
思考を巡らせていたその時
「おいっ⁉︎あのガキどもが部屋に居ないぞ!」
「おいおい!逃げたって事か?」
私達が先ほど逃げた窓の中から盗賊達の声が聞こえる。
「気付かれたみたいだね」
「だな…どうするよ」
「仕方ないけど…なるべく隠れながら移動するしかないね」
「エリンちゃん…付いて来れる?」
小声でエインに声をかけ存在を気にしながらも、そう悠長な動きはしてられないと考えていた。
「うん…大丈夫…がんばる」
「えらいね。一緒にがんばろ」
エリンの頭をひと撫でして再び周りを見る。酒でベロベロになっているであろう盗賊達の目を盗んで建物の裏を移りながら村の出口を目指す。
盗賊達が騒ぎ出し自分達を探す姿がある。
村長宅の扉の前にはラインハルトが立っており、下っ端の盗賊達に指示を出している。
村の入り口付近まで移動は出来たが、入り口には常に見張りが立っており流石に直ぐには動けないでいた。
「あの見張り…どうにか出来ないかな…」
「村から出る時はあの道を一直線に走る必要があるから流石にバレずにって訳にはいかなそうだな…」
アルクが入り口を見ながら言う。
「そうだね…一瞬だけ、目を逸らさせて、その後はもう走るしかないね…。」
村の真ん中の広場にあるベンチを風魔法で大きく動かした。
「なんだ?」
見張りの男が物音がしたベンチの方に目を向ける。
「アルク、今だよ!」
「おう」
アルクに声をかけるとアルクとエリンが走り出す。
「キャ!」
「エリンちゃん⁉︎大丈夫?」
なんとエリンが走ろうとして転んでしまった。
「なんだぁ?あっ!ガキ共、こんな場所に居やがったのか!」
今の物音で見張りに見つかってしまった。
「しかも村のガキまで脱走させやがって!」
盗賊が他の仲間を呼ぶ。
「アルクっ!エリンちゃん!ここまで来たらもう走って逃げるよ!」
「了解だ!」
「ごめんなさいっ!」
2人に声をかけると一気に走り出す。
走りながらエリンの方を見ると涙を流していた。
「私のせいで…ごめんなさい」
「そんなの気にしなくていいよ」
「そうだぞ」
エリンが泣きながら謝罪をするのをアルクと2人で宥める。
村から強行突破したはいいが、村の盗賊達から追いかけられ続けている。
走りながらも魔法でトラップを仕掛けて盗賊達から距離を取る。
「まてゴラァ‼︎」
「ぶっ殺してやる!」
等々盗賊達から罵声が浴びせられる。
エリンはさらに号泣であった。
しかし、追いかけてくる盗賊の中にラインハルトがいない事が気になっていた。
「【爆破雷電】」
呪文を唱えると盗賊の目の前に雷の塊が発生して爆発する。
後ろから盗賊の叫び声が聞こえ魔法がヒットした事が伺えてる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
エリンが走るのに限界を迎えそうであった。
「あいつらとも少し距離ができたから隠れてやり過ごそう!」
私の提案で木の裏に隠れる。
全員息があがっている。
盗賊達はアーシェンリファーを探しながら道を走っており、3人が隠れている所には気付かず通過していった。
「はぁ~」
「疲れたな」
「…」
過ぎ去っていく盗賊を目にしながら三者三様の反応をする。
アーシェンリファー達が少し安心したその時
「こんな所まで逃げるなんて大したもんだ。」
驚きながら振り返るとそこにはラインハルトが立っていた。
小声でそう言うと女の子の口の布を外す。
「うん…」
女の子は力なく返事をする。
「おい…どう言う事だよ。」
流石におかしいと気付いたアルクが聞いてきた。
「そうだね。この村は…もう滅んでるよ。」
「は?いや、でも村人居るだろ⁈」
「アルク、声がデカい。」
「わ、悪い…」
アルクは私に本気で怒られションボリしている。そんなアルクにお構いなしで話を進める。捕まっていた女の子も黙っている。
「最初村に来た時にお婆さんが言ってたよね。最近盗賊に襲撃されて村があるって。それは私達がこれから行く村じゃなくって、この村だよ。ルクシアに来た時にギルドの人から盗賊の目撃情報があるって聞いてたでしょ。ルクシアから近いから、安全なんじゃない。逆だよ。ルクシアから近いから狙われた。近いって言ってもルクシアからも4日かかる森の中、盗賊には打ってつけの村だ。村人に男性が多くて、畑仕事してる人も何故か不慣れなのにも違和感はあった…でも、全員が盗賊の一味だとは流石に思わなかったよ。この村人達は全員グルだよ。で、おそらく自称村長のラインハルトがボス。」
「…まじかよ。」
「盗賊しかいないって事は、元の村人はどうなったか、なんて言わなくてもわかるよね?村の外に沢山のご遺体があった。おそらく殺された村人。少し虫が沸いてたけど、おそらく殺害されて1週間経ってないくらいじゃないかな…この辺りには魔物が極端に少なくて、ゴブリンすら共食いをしていたのは、盗賊が潜んでいるからって言うなら色々合点がいくよね。」
そのまま話を続ける。
「君のご家族は…そのご遺体の中にいる…で間違いないかな?」
女の子に優しく声をかける。
「うん…多分。パパもママも私の目の前で死んじゃった。」
「…何だよそれ…俺、ラインハルトの野郎をぶっ飛ばしてく「待って。」」
「アーシャ…」
アルクが勢いに任せてラインハルトの所へ行こうとするのを止める。
「流石に今の私達でこの盗賊団をどうにかなんて出来ないよ。対人戦の経験がないんだから。」
「でもっ…」
「アルク…まずは私達が全員生きてここから脱出する事が最優先。捕獲はギルドに依頼すればいい。盗賊は魔物よりも人間と戦う方が得意なんだよ。今の私たちでは無理。しかも、あのラインハルトとかって盗賊頭、結構強いよ。」
今の私では色々無理しないと厳しいかな…
「そんな…。」
アルクが項垂れているが仕方がない。
縛られている女の子の紐を全て解く。
「辛いと思うけど…私達とここから逃げよう。ついて来れる?」
「うん。大丈夫、お姉ちゃん、ありがとう。」
女の子が小声で返す。
「偉いね、私はアーシェンリファー、貴方は?」
「私はエリン、4歳。」
「エリンちゃんだね?よろしくね。」
そう言うとエリンの頭を撫でる
「俺はアルクだ。よろしくな。」
アルクは得意の人懐っこい笑顔を浮かべる。
「うん。」
「で、逃げるって言ったっていつ逃げるんだ?」
「とりあえず、今からいつでもここを出れるように荷造りをしよう。で、私が疲れている事にして晩御飯は断る。正直何が入ってるかわかんないけど、私たちを捕獲するための睡眠剤とかが入っててもおかしくない…要は私たちが今晩この部屋でぐっすりしてくれればやつらはいいはず。疲れてるから直ぐに寝るとでも言えば盗賊達は強く出ないはず。夜、盗賊達が静かになって、かつ、この部屋に入ってくる前に私たちはそこの窓から逃げる。バレないように一気に走るよ。…エリンちゃんには悪いけど、もう少しこの中にいて。出る時にまた空けるから。」
「…うん。」
「了解だ。」
エリンを一度元の扉の中に戻す。そして何も無かったようにタンスをその扉の上に置いてエリンを隠した。
そして、時刻を確認する。16時過ぎとなっており、おそらくもう少しで食事に誘われる。
それまでに可能な限り脱走の準備をする。
荷物はそこまで出してないので、試しに窓を開けてみる。
窓の向こうには特に人は居ないようで村の外へは直ぐに出れそうだ。
「アーシャ…最初から可笑しいって思ってたのか?」
「…うん。実はね…」
「そうか…」
2人に沈黙が訪れる。
「ごめんな…俺が疲れたような態度を取ってたからだよな?」
「もう…アルクのせいじゃないでしょ?気にしないの!」
アルクを励ます。
そうこうしている間に時間が経ったのかラインハルトが部屋の前に来ていた。
「すみません。食事を用意したのですが、よろしければ召し上がって下さい。」
「…ごめんなさい…今日は長旅で疲れていて…直ぐに寝るつもりなので…。」
申し訳なさそうなフリをして返事をする。
「…そうですか…わかりました。ではゆっくりして下さい。何かあれば言って下さいね?」
ラインハルトはそう言うと部屋から離れていった。
「…はぁ…急にこの村が息苦しいぜ…」
「私は最初から息苦しいよ。」
「とりあえず、今直ぐにはどうにも出来ないから決行は20時だよ。だから3時間は本当に休憩…」
そう言うとイスに座る。
(少し…仮眠…)
自身も正直少し疲れており、眠りについた。
━━━━
目が覚めると外はすっかり暗くなっておりアルクも寝ている。
(はっ!時間は…)
少し焦ったように時計を確認する19時50分と20時ギリギリだった。
流石私、やれば出来るじゃん。
自画自賛をしながらも小声でアルクを起こす。
「…はよ。アーシャ。」
「うん。おはよう。エリンちゃんを出そう。」
そう言うとタンスの下に隠されたエリンを出す。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
「うん。歩ける?」
その問いにエリンは少しずつ歩いてみせる。
「多分…大丈夫…。」
「うん。良かった。」
エリンと会話をしている間にアルクは辺りの様子を気にしてくれていた。
部屋の向こうでは盗賊達が夜の宴会でもやっているのか騒がしくしていた。
「いやぁ~お頭!今日はガキが2人、引っかかってくれて豊作ですな!」
「あぁ…」
「女のガキは中々将来性のある顔つきしてましたし…良い値で売れるんじゃないですかい?」
「ところで、いつ捕えます?」
「あぁ…さっき疲れたとか言って爆睡してたからな…そろそろ縛りに行くか。」
「わかりました!じゃあ、俺がこの一杯を飲んだら行きますね!」
「わかった。」
盗賊達の会話が聞こえる。
「ご丁寧に情報提供ありがとうって事で…」
アルクがそれに言葉を返す。
「アーシャ、どうやら時間がそんないないみたいだ。行こう。」
「了解。」
アルクは窓の外を確認して自分が先に外に出る。
「エリンちゃん、お兄ちゃんについていって。」
「うん。」
エリンを抱えて窓から出し、アルクに抱えさせる。
エリンが無事に窓から出れた事を確認して自身も窓から出る。
少しでも時間稼ぎが出来るようにベットの中にタンスの中に入っていた村人の服をダミーで包み人が入っているように見えるようにした。
窓から脱出した3人は盗賊の目を盗んで村の外に出ようとする。
ラインハルトの家の影から村の中心部を覗き込むと盗賊達が何人かの見張りをしている。
しかし、酒でも飲んでいるのか盗賊同士の会話に呂律が回っていないようにも感じる。
「アーシャ、行けそうか?」
「微妙って所だね…」
2人は物陰に隠れながら小声で話す。
エリンはそんな2人の様子をじっと見ていた。
(あの見張り達に見つかると騒ぎになる…)
とはいえ、ラインハルト達の会話から察するに私達がいた部屋に入ってくるのも時間の問題。
思考を巡らせていたその時
「おいっ⁉︎あのガキどもが部屋に居ないぞ!」
「おいおい!逃げたって事か?」
私達が先ほど逃げた窓の中から盗賊達の声が聞こえる。
「気付かれたみたいだね」
「だな…どうするよ」
「仕方ないけど…なるべく隠れながら移動するしかないね」
「エリンちゃん…付いて来れる?」
小声でエインに声をかけ存在を気にしながらも、そう悠長な動きはしてられないと考えていた。
「うん…大丈夫…がんばる」
「えらいね。一緒にがんばろ」
エリンの頭をひと撫でして再び周りを見る。酒でベロベロになっているであろう盗賊達の目を盗んで建物の裏を移りながら村の出口を目指す。
盗賊達が騒ぎ出し自分達を探す姿がある。
村長宅の扉の前にはラインハルトが立っており、下っ端の盗賊達に指示を出している。
村の入り口付近まで移動は出来たが、入り口には常に見張りが立っており流石に直ぐには動けないでいた。
「あの見張り…どうにか出来ないかな…」
「村から出る時はあの道を一直線に走る必要があるから流石にバレずにって訳にはいかなそうだな…」
アルクが入り口を見ながら言う。
「そうだね…一瞬だけ、目を逸らさせて、その後はもう走るしかないね…。」
村の真ん中の広場にあるベンチを風魔法で大きく動かした。
「なんだ?」
見張りの男が物音がしたベンチの方に目を向ける。
「アルク、今だよ!」
「おう」
アルクに声をかけるとアルクとエリンが走り出す。
「キャ!」
「エリンちゃん⁉︎大丈夫?」
なんとエリンが走ろうとして転んでしまった。
「なんだぁ?あっ!ガキ共、こんな場所に居やがったのか!」
今の物音で見張りに見つかってしまった。
「しかも村のガキまで脱走させやがって!」
盗賊が他の仲間を呼ぶ。
「アルクっ!エリンちゃん!ここまで来たらもう走って逃げるよ!」
「了解だ!」
「ごめんなさいっ!」
2人に声をかけると一気に走り出す。
走りながらエリンの方を見ると涙を流していた。
「私のせいで…ごめんなさい」
「そんなの気にしなくていいよ」
「そうだぞ」
エリンが泣きながら謝罪をするのをアルクと2人で宥める。
村から強行突破したはいいが、村の盗賊達から追いかけられ続けている。
走りながらも魔法でトラップを仕掛けて盗賊達から距離を取る。
「まてゴラァ‼︎」
「ぶっ殺してやる!」
等々盗賊達から罵声が浴びせられる。
エリンはさらに号泣であった。
しかし、追いかけてくる盗賊の中にラインハルトがいない事が気になっていた。
「【爆破雷電】」
呪文を唱えると盗賊の目の前に雷の塊が発生して爆発する。
後ろから盗賊の叫び声が聞こえ魔法がヒットした事が伺えてる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
エリンが走るのに限界を迎えそうであった。
「あいつらとも少し距離ができたから隠れてやり過ごそう!」
私の提案で木の裏に隠れる。
全員息があがっている。
盗賊達はアーシェンリファーを探しながら道を走っており、3人が隠れている所には気付かず通過していった。
「はぁ~」
「疲れたな」
「…」
過ぎ去っていく盗賊を目にしながら三者三様の反応をする。
アーシェンリファー達が少し安心したその時
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驚きながら振り返るとそこにはラインハルトが立っていた。
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