転生先では幸せになります

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幼少期 旅立ち編(前)

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太陽の光で目が覚める。
横を見るとアルクがまだ寝ていた。
ひと足先に身体を起こし荷造りをすると、その場でストレッチを始めた。

「ん…アーシャ…おはよう。」

アルクが目を覚ましたようで眠そうに欠伸をしながらアーシャに話しかける。

「アルク、おはよう~。」

アルクは私の近くに腰掛けると私の真似をしてストレッチを始める。

「もうアルクもストレッチ慣れたもんだね?」

「そうだな~、まだアーシャに比べると身体も硬いけど、少し柔軟も出来るようになってきたしなぁ。」

「だね?」

アルクの言う通りで、最近のアルクの柔軟を見ていても以前に比べて身体が柔らかくなっているようで楽にストレッチが出来ている。

私達はしばらく無言でストレッチをする。
ストレッチと軽い筋トレをした後に2人で荷物を完全に片付けて移動の準備をする。

「よ~しっ!今日も1日、頑張ろう!」

「おぉー!」

2人でそんな事を言い合いながら池から離れて再び森の中の村に向けて移動を再開する。

「村まであと数日はかかるけど、アルク、大丈夫そ?」

「うん。全然大丈夫だぞ?じゃんじゃん行こう!」

「アハハッ!了解!じゃあ、ペースを上げよう!」

そう言うと先ほどより早足で歩く。

「あっ!アーシャ、待ってくれよ!」

私のスピードにアルクも負けじとついてくる。
そんなこんなをしながら2人は森を進み続けた。

━━━

森を探索して数日、ようやく1つ目の村に到着した2人は村の中でゆっくりしていた。

村の中は結構な人がいたが、男性が多い気がする。
畑仕事をしている男性も心なしが不慣れな動きをしている。
そんな村人の様子が気になったが隣のアルクを見ると少し疲れていそうだったので、近くにあったベンチに座る。

「アルク、お疲れ様~」

「アーシャ…お疲れ様…」

「疲れた顔してるね?」

笑顔で話しかける。

「そりゃあな…アーシャが元気すぎるんだよ。」

「体力はあるからね!」

2人が話をしていると急に話しかけられる。

「あらあら~見ない顔だねぇ?」

お婆さんが話しかけてきた。

「あ、はい。この村には今日来ました。リクドウの街に向かってるんです。」

お婆さんの質問に答える。

「リクドウたぁ、随分遠い所まで行くねぇ…ただ、この村からリクドウまでの道のりは道も大変そうだが、どうも治安が悪くてねぇ。」

お婆さんが困ったように話す。

「治安が悪い…?」

話が気になりお婆さんに尋ねる。

「そうなんだよ。なんでもこの先馬車なら2週間程で到着する村があったんだがね、最近盗賊に襲撃されて村人が殺されちまったって話しさ…この村はまだルクシアが近いだろ?だからまだ安全なんだかねぇ…」

「…そんな事があったんですね。」

「そうなんだよ。だから君達はここでゆっくりして行くといいよ。」

「そうなんですね…お婆さん、教えてくれてありがとうございます!」

お婆さんの言葉に元気にお礼をする。

なんか、引っかかるな。少し考え込む。

「…」

「アーシャ?どうした?」

アルクから声をかけてられる。

「ううん。なんでもない。(憶測で今のアルクを連れ出すのは気が引けるな…)」

とある疑問が浮かぶが今は隣で疲れているアルクが優先だ。

「あのおっきな家は村長さんの家かな?」

「どうだろ?」

「せっかく村にお邪魔してるんだし、少し挨拶に行こっか。」

「そうだな。」

2人はベンチから立ち上がり少し奥にある大きな家に向かう。

大きな家の周りには多くに人が集まっており家の前にある机で寛いでいた。

「こんにちは。旅の者ですが…」

建物の前の椅子に座っている男性に声をかける。

「おぉ!そうか、こんな山の中の村まではるばるいらっしゃい。」

椅子に座っていた中年くらいのおじさんが立ち上がりアーシェンリファーとアルクの元へ来る。

「こんにちは。」

アルクのそれに対して挨拶をする。

「こんなに小さいのに礼儀がしっかりしている。私はこの村の村長のラインハルトです。」

そう言うと目の前のおじさん、もとい村長のラインハルトさんが右手を差し出してきた。

「ご丁寧にありがとうございます。」

ラインハルトの手をに握る。

(…手が硬い。手にマメが出来てるんだ。)

ラインハルトは笑顔で手を握った後に言葉を続ける。

「ところで、この村にはどんなご用で?」

「あぁ…私達はルクシアからリクドウまでの道中でして…ちょうどこの村が見えたものですから、少し休憩を、と。」

「そうでしたか…でしたらこれも何かの縁です。うちに泊まっていってください。」

「いえいえ!そんなっ。少し休憩したら直ぐにお暇する予定でしたので…」

断ろうとするもラインハルトは言葉を重ねる。

「そんなっ⁉︎次の街まで距離もあるし、直ぐに行かれるのは危険です!外は魔物も出ますし…」

ラインハルトは困った顔で返す。

「アーシャ…折角だからお言葉に甘えようぜ…」

「アルク…わかりました。ラインハルトさん、1日だけ、お世話になります。」

「いえいえ!ではお部屋に案内します。こちらです。」

ラインハルトは大きな家に2人を招く。2人は家の中でお邪魔すると家の間取りの1番奥の部屋に案内させる。

「今日はこちらでお休みください。」

部屋の中は簡素な部屋になっており、中にはテーブルと棚、ベットが1つと閑散とした部屋だった。

「ベットが1つしかなくてすみませんが…」

ラインハルトさんが申し訳なさそうに謝罪する。

「いえいえ!お構いなく。ご用意頂きありがとうございます。」

「では、この部屋はご自由に使って貰って大丈夫ですので、困った事があれば言って下さい。」

「ありがとうございます。」

ラインハルトはそう言うと部屋から出ていった。

「はぁ…ラインハルトさん、いい人そうで良かったなぁ~」

アルクはそう言うと疲れ果てたのか、部屋にある椅子に座った。

「…うん。」

「アーシャ?」

自分の空返事アルクは心配そうに見つめる。

「ううん。何でもない!私少し見てきたいところがあるからアルクは今のうちにベットで休んでなよ。」

私はアルクに昼寝をするように提案する。

「う~ん…そうだな。少し疲れたから俺寝るな。」

「うん。おやすみなさい。」

「おやすみ」

アルクは私にそう言われるとそそくさとベットに入っていき直ぐに寝入ってしまった。

「…よし。少し調べよう。」

アルクが寝たのを確認して部屋を出る。
ラインハルトさんの自宅を出るとラインハルトさんは最初と同じ場所にいた。

「?旅の方。どちらへ?」

ラインハルトさんが先程と同じ笑顔で近寄ってくる。

「明日の準備のために少し村を出ようと思います。」

「お一人でですか?」

「はい。連れは部屋の中で準備させてますので、外へは私1人で行きます。」

「そうですか、お気をつけて。」

「ありがとうございます。」

ラインハルトと会話をすると村の外へ向かった。
村人からの視線が気になるが気付かない振りをして村の外に出た。

「はぁ~息苦しい…。」

この村は少しおかしいと考えていた。
明日の準備というのも嘘ではないが確認したい事があり村の辺りを探索する。
村人は村の外にもいるのかたまに見かけるが、村人に気づかれないように慎重に探索を続ける。

「何もない…」

この辺りに盗賊のアジトが無いかを探していたが、一向に見つからなかった。

私の考え過ぎか…

村へ戻ろうとした時、強い風が吹き、自身の足元に何かが飛んできた。

何だろう?

自分の足に絡みついた布を拾う。
何の布かはわからないが赤が基調だったであろう薄汚くなった布を見て最近の布では無い事が窺える。

布…?なんでこんな所に…

手に取った布をよく見ているとある事に気がついた。

この布…赤い布なんかじゃない。血がついてる。血で染まった布だ。

その布の正体に気がつくと布が飛んできた方に足早に移動する。そこで驚きの光景を目の当たりにする。

「ゔぅ…」

吐き気がするがそれを必死で抑える。

(酷い…こんなの…)

布の正体は亡くなった人の衣服だった。
辿り着いたのは大勢の人の遺体が山になって転がっている所だった。亡くなってから少し時間が経っているのか遺体は腐り出しており虫が沸いていた。

(この人達は…おそらく)

「おい!こいつらどうすんだよっ⁉︎クセェっちゃありゃしねぇよ。」

「お頭は何とも思わねぇのかよ!」

「っ⁈」

村人達がこちらへ向かってくる物音を聞きつけ、咄嗟に隠れる。
すると村人2人が遺体が捨てられてる場所までやって来た。

「たくっ!まじでクセぇ…」

「だよなぁ…いや、まぁしかし、お頭は本当に天才だよな⁈」

「だよな!こんな策、俺らじゃ浮かばないぜ。」

(やっぱり…この村人達…)

遺体を見にきた村人達にバレないようにその場から離れる。

この村は危険だ…アルクには悪いけど、今日の夜にでも出よう。

私は直ぐに村へ戻った。

「お嬢さん、おかえりなさい。外では何をしてたんですか?」

「どうも。外では明日の準備をしてました。」

「準備って何をなさるんですか?」

「食料の調達ですよ。あとは明日の経路の確認ですかね?」

「そうですか…お疲れ様です。今日はゆっくりしていって下さいね?」

「ありがとうございます。」

先ほどのお婆さんに話しかけられてたのを当たり障りなく答えると足早にラインハルトの自宅に向かう。
その途中でやはりラインハルトから声をかけられるが疲れているので…と適当な理由を付けてアルクの元へ向かった。

部屋に戻るとアルクは流石に起きており椅子に座っていた。

「お、アーシャ!おかえり。悪いな、ずっと寝てた。」

「うん。大丈夫。アルク、悪いけど荷物見せて。」

「?お、おう。」

アルクの荷物を確認する。特に異常は無さそうですアルクが寝ている間に何かをされた様子は無かった。

「?アーシャ?どうした?」

「アルク…疲れてる所悪いけど、今日の夜にでもこの村は出よう。」

「はぁ⁈急にどうしたんだよ。」

「出てから言うから…」

「いやいや!さっきアーシャが戻ってくる前にラインハルトさんが来てな、今日はご馳走を用意するからって言われたんだ。俺、結構楽しみにしてんだぜ?」

アルクはわからないと言うように反論してした。

「ご馳走…それは食べない方がいいね。」

「おいおい…それは失礼だぞ?どうしたんだよ?」

「はぁ…時間ないから手短に言うけど…この村は…ちょっと待って…」

話すのをやめて不意にタンスを見る。

(この気配…部屋の中に誰かいる?)

「おい?今度はどうした?」

アルクが怪訝な顔をするがアルクに構わずタンスの方へ移動する。そしてタンスの位置をずらす。
すると下に扉があるのがわかる。

「なんだこりゃ?」

アルクが呟くがそれに対して

「アルク…ここからは大きな声は決して出さないで、出すなら当たり障りない会話だけにして。」

自分でも分かるくらい表情が硬くなっていた。
アルクは最初こそ怪訝な顔をしたが、私の真剣な顔を見て、流石に何かあると察したのか黙った。
そのままタンスの下にあった扉を開ける。

「「はっ⁈」」

2人の声は重なる。
無理もない、扉の中には自分と同じくらいか少し下に見える女の子が入っていたのだ。
女の子は手足と口を縛られて動けなくなっていた。目には泣き腫らしたのか大量の涙が出ておりとても辛そうだった。




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