30 / 66
幼少期 旅立ち編(前)
29
しおりを挟む
アルクと朝一のトレーニングを終わらた後、宿を出た私達は、現在はルクシアの街の入り口に来ていた。
「良い天気だなっ!絶好の旅日和だ。」
アルクが張り切ったように身体を伸ばしながら言う。
「そうだね。」
私も次の街に向けて張り切っている自信がある。
「じゃあ、行こうか。」
「おう。」
2人はルクシアの街を出て歩き出す。
「とりあえず、今日から4日くらいは野宿だと思う。地図を確認した感じだとリクドウまでの道中にある人が住む街や村なんかは、合計で6箇所で、ここから1番近い街は此処だから…」
アルクにも見えるように地図を広げながら説明する。
「ふんふん、」
「アルク…わかってないでしょ?」
「…バレたか?」
「もうっ!」
「あははっ‼︎悪い!」
自分が一生懸命説明をしたが、アルクにはいまいち理解が出来ていなかったようで、軽口を言い合った。
街を出てからは見渡す限りの草原の中を歩いている。次の村は森の中に位置しているそうで、今は草原を歩いているが、向かっている方角には森が見える。
「次の村は森の中にある村みたいだから森の中の移動になるね。」
アルクにもわかるように次の村について話す。
「森かぁ…Eランク試験を思い出すな。」
アルクは思い出話をするように呟く。
「そうだね。あの時はクラークさんに助けられたよね?」
「だな。そういえばなんであの時ダークウッドが大量に居たんだろうな?」
「確かに。クラークさんの言う通りで、ダークウッドは普段はもっと危険な区域に生息しているはずなんだけどね。」
「偶然にしちゃ、出来すぎてるよな。」
アルクが首を傾げながら言う。
「悪魔には自分よりも弱い魔物を使役する力があったりするのかな。」
「かもな、なんかあの時に襲撃してた奴ら、親玉の言う事聞いてたんだろ?あり得るのかもな。」
「大悪魔に出会うことなんて滅多にないはずなのにね。」
「ありがた迷惑な運を使っちゃったな。」
「だね…、そろそろ森に入るみたい。」
話をしながら歩いているとあっという間に森の入り口に着く。ここからは見渡す限りの木々ばかりとなっている。
「森は魔物も多く出るし、危ない人に会うかもしれないからいつも以上慎重に行こう。」
「おう。」
私の言葉にアルクが返事をして2人は森へ入って行った。
森の中は静かだか風が吹くたびに森の木々が揺れる音がする。
「風が気持ちいいなぁ…」
「確かに、そうだね」
2人は森という自然の中で感じる風の心地良さを感じていた。
暫く歩いていると奥の方から物音がする。
「アルク、何かいるかも」
「だな」
2人は音に気付くとゆっくり木影に隠れながら近づき、音の正体を確認する。
ゴブッ
ゴブゴブ
フゴッ
ゴブリンの鳴き声がする。
ゴブリン3体が何かを漁っているようだった。
「ゴブリンだね、何してるんだろう。」
「う~ん…何か食ってるのかな?」
アルクからはゴブリンが何かを食べているように見えるらしく、私も目を凝らす。
「っ⁈共食い…」
「えっ⁉︎」
なんとゴブリンたちは同じゴブリンを食べていたのである。
「雑食とは聞くが共食いもするのかよ…」
「うん…でも流石に珍しい光景だと思うよ。」
「どうするよ?」
「3体くらいなら大した事ないだろうし、討伐しちゃおう。でも、あいつら匂いに敏感だからあんまり部位を持ち運ぶとゴブリンを誘き寄せるかも…。」
「そうか。なら完全な討伐になるな。」
「耳を持ち帰ればギルドの依頼を先取り出来るけど、仕方ないよね。」
「だな。」
2人は耳打ちしながら話す。
「とりあえず、やっちゃお。」
「りょうかい」
2人は会話を交わすや否木影から飛び出す。
アルクはゴブリンに斬りかかり腹を切って討伐。
自身もいつものように拳に魔力を込めてゴブリンを討伐する。
一体が逃走しようになるが逃さずに攻撃をする。
「よし!こんなものか?」
「うん。」
「とりあえず先進むか。」
「そうだね。」
ゴブリンを討伐した時に出てきた核だけ回収し、2人は再び歩き出した。
「それにしても共食いって本当にあるんだな。」
アルクがさっきのゴブリンを見て思ったのかそんな言葉を吐く。
「う~ん…さっきも言ったけど、大分珍しいパターンじゃないかな…ゴブリンって凄い雑食で有名だから、基本食べ物に困らない筈なんだけどね…それでも尚共食いをするって事は…この森には魔物が少ないじゃないかな…。」
「そういう考えもあるのか…でも魔物が少ないならいいんじゃないかな?」
「うん、単純に少ないなら良いんだけど…強い魔物がいて、その魔物がゴブリンの本来の捕食対象者を食べちゃってるって話になってくると別問題かなって思う。」
「その発想は無かったな…強い魔物か…。大悪魔とはどっちが強い「大悪魔より強い魔物は基本的にはダンジョンにしか居ないよ。」だよな…」
アルクの言いたい事が分かったので言葉を発し切る前に重ねるようにして答えを返す。
大悪魔以上の魔物がそんなウロチョロしている筈はないのである。
あ、でもこれフラグ建てたかもしれない。
自分でツッコミを入れたが心の中ではそんな事も考えた。
とりあえずゴブリンの事は覚えておこう。
それから暫く歩いていると気がついたら日が沈んでおり夜になりつつあった。
辺りは昼より一層静かになり風も少し肌寒ささえ感じるほどになっていた。
「急に暗くなったし、今日はこの辺りで休む?」
「そうだな…ん?なんか水の匂いがするぞ?」
アルクがクンクンの嗅ぎながら言う。
「水の匂い…?」
「うん!こっちこっち!」
アルクが足早に移動します。
「あっアルクっ?待って!」
アルクを追いかける。
するとアルクの言った通りで小さな池があった。
少し高い崖の上から水が滝になって落ちてきておりその下の池のようだ。
水底も目視で分かるほどの深さで水質もとても澄んでいて綺麗だ。
「綺麗な池だね…。」
「だな。」
2人は池の中を見ながら感想を言う。
池の中には魚も泳いでいる。
辺りも静かで生き物の気配もしない。
「今日はここで休もっか。」
「そうだな!俺、ここの池の魚食いたいな!」
お腹が空いた…と自分の腹に手を当てながらアルク呟く。
「そっか…確かに…食べれそうな魚だし、いいんじゃない。私は火の準備してるから、アルクその間に魚、獲っててよ!」
「任せろ!」
アルクはそう言うと靴を脱いでズボンを膝上まで捲ると池の中に入る。
「うひゃー!冷てぇー!」
アルクがはしゃいでいる。
(アルクったらはしゃいで…子供みたい。あ…子供か…)
そんなアルクの姿に微笑ましくなるも、自分の火の準備をしなくてはいけない事を思い出す。
自身も木の辺りに落ちている枝と落ち葉を集め出す。
ある程度集まったらそれを積み重ねる。
石とかもあると良いんだけど…あ、池の辺りにあるかな
「よっしゃっ‼︎アーシャの魚ゲットだ!」
池のそばに近寄ると丁度アルクが魚を獲ったようで腕に魚を持って喜んでいた。
「魚、獲れたの?」
「おう!これはアーシャの魚だぞ!」
アルクが嬉しそうな顔をして私に魚を見せにきた。
魚はまだ生きておりアルクの手の中でピチピチと動いている。
「わぁ~アルク、凄い!ありがとう!」
アルクから魚を受け取り一旦自分の荷物をいた所に戻り魚を置く、そしてまた池のそばに戻り石を探す。
石も池の側や中に沢山落ちておりそれを回収して落ち葉と枝の山に持ってくる。
魚を焼くための串になる枝もなるべく真っ直ぐな枝を集める。
魚の内蔵を取るために腹から捌き、内臓も落ち葉と枝に混ぜるように入れ込む。
捌いた魚は直ぐに焼けるように一旦地面に立てておき、落ち葉と枝を火属性魔法で燃やす。するとあっという間に簡易キャンプが出来上がる。
再びアルクの方を眺めるとあれから更に魚を獲ったのか池の縁に魚が置かれている。
その魚を回収して同じように捌いてその魚にルクシアの街で買っておいて塩をふる。
「アルクっ!もう大分魚獲ってくれてるから大丈夫だよ!」
「お?そうか?なんか楽しくて忘れてた!」
アルクは返事をすると駆け足で戻ってくる。
「アーシャ!魚、焼いてくれてありがとう!」
「いえいえ、アルクが獲ってくれたからそれを焼いてるだけだよ。」
アルクはアーシェンリファーにお礼を言いながら焚き火の前に座り込む。
「しかし、結構冷えるな…」
アルクが足を焚き火で乾かしている。
それを見てある事を思いつく。
「アルク、足、こっち向けて?」
「?おう。」
アルクがこちらに足を向けると水魔法でアルクの足の汚れを落とす。
「お?足洗ってくれてるのか?ありがとう。に、しても水、温かいな。」
「うん、水属性魔法に火属性も混ぜ込むと温水が出せるだよ。」
「…へぇ…それって凄い事なんじゃ…」
「あはは、ノーコメントで。」
「なんだそりゃ」
アルクの足を洗った後風属性に火属性を混ぜて温風にして足を乾かす。
「足が乾いた…ありがとうな」
アルクはそう言うと池に入る前に脱いだ靴下と靴を吐く。
「どういたしまして」
アルクのお礼に答えると焼いている魚の方に視線を向けて焼き加減を気にする。
魚は大分焼けているようで焚き火に当てられて良い音を出している。
魚の焼け具合を確認して頃合いになった魚の串を焚き火から外しアルクに渡す。
「はい!これなら今から食べれるよ!」
「先にもらって良いのか?」
「勿論!アルクが獲った魚じゃん!」
「そうか…ありがとう、じゃあ、貰うな」
アルクはそう言うと魚の串を受け取りそれを食べる。
「お!良い塩加減で美味いな!自分で獲ったから旨さが倍増だしな?」
「それはそうかもね?自分で獲った物って美味しいよね?」
あははと2人で笑い合う。
「いや、自分で獲っておいて言うのも変だけどさ、結構大きいの獲ったよな?」
「うん、しかも6匹も獲るんだもん。一応焼いてるけどこんなに食べれないんじゃない?」
「いや、俺なら食える!」
「本当?じゃあ私が残しそうになったら代わりに食べてね?」
「任せろ!」
2人で会話をしながら自分の分の魚を手に取る。
それを食べると良い感じに塩加減が効いており美味しかった。
「うん、美味しい…。なんか食べ出すと全部食べれる気がしてきた。」
「なんだよそれ?」
アルクが2本目の魚に手を伸ばす。
2人で笑い合いながら魚を食べる。
すると意外とあっという間に完食してしまった。
「はぁ~。食った食った!」
ご馳走様です。
とお決まりの言葉を発して焚き火の片付けをする。
片付けながらも自身の胸にぶら下げている時計を確認するともう20時を過ぎていた。
そそくさと片付けを進めて2人で少しくつろぐ。
「私、少し汗かいたから身体綺麗にするけど、アルクもやる?」
「はっ⁈」
アーシェンリファーの急な発言にアルクは青を真っ赤にしながら驚く。
そんなアルクの様子に最初は頭にハテナを浮かべたが直ぐに意図を察して言葉を続ける。
「違うからね?そこの池で水浴びとかじゃないからね?私の魔法で身体を綺麗にできるって話しだからっ‼︎」
「そ、そうか…」
ビックリした…とアルクが呟くのに対して自身も心臓がドクドクと音を立てていた。
(もう…アルクは子供とはいえ、目の前で服を脱ぐわけないでしょ…)
自分で言っておいて流石に恥ずかしくなり顔に熱が集まっているのが分かる。
それを落ち着かせるように手を顔に向けてパタパタとさせる。
気を取り直すとその場で立ち上がり自分の身体を綺麗にする力を使おうとする。
この力は今世ほどではないけど、前世でもさっきのように魔法でお湯を出して同じような事をしてたな…と考える。
この力は便利だけど、そこまで強い力じゃ無かったようで、【異空庫】創造後の吐血事件後に試しで創造した際の副作用は少し筋肉痛になったくらいで済んだ。
そんな事を考えながると目の前に手をかざす。
「【清めの水】」
唱えると目の前に人が1人入れるくらいの水の膜ができ、その膜の中に入る。
「ふぅ…」
身体から汚れが落とされていき、綺麗になっていくのが自分でもわかる。
「なんだよそれ?」
「これは自分の身体を綺麗にする力だよ。アルクも入れてあげる。」
自分の身体がさっぱりしたのを感じると膜から出てきてアルクを中に入れる。
「うおっ!溺れ…ないな。」
アルクは水の中だから息ができないと思っていたらしく驚いていたが水の膜に入ると気持がいいのか満足そうな顔をした。
「アーシャ!これ、凄いな!野宿の革命だぞ!」
「アハハッ‼︎大袈裟だよ…でも、気に入ってくれて良かった。」
アルクの言葉に笑いながら返事をする。
アルクは清めの水の膜から出てきて身体を伸ばす。
「いや、これまじで便利だな。」
少し興奮したように話す。
「便利でしょ?身体を綺麗にしたいなぁ…って思った時に思いついたの!」
アルクのリアクションが嬉しくなり上機嫌で返す。
「魔法って…凄いんだな。」
「あ…でも多分他の人は出来ないので、これも内密に…」
アルクだから見せました、と少し困ったように伝える。
「そうか!アーシャの凄さにはもう驚かないと思っていたけど、それは無理そうだ。」
アルクは笑顔で返した。
「ま、もう21時になるし、明日も早いから、寝よ?」
「だな。」
2人はそれぞれ寝床を用意して寝る準備をする。
「おやすみ。」
「うん。アルク、おやすみなさい。」
「良い天気だなっ!絶好の旅日和だ。」
アルクが張り切ったように身体を伸ばしながら言う。
「そうだね。」
私も次の街に向けて張り切っている自信がある。
「じゃあ、行こうか。」
「おう。」
2人はルクシアの街を出て歩き出す。
「とりあえず、今日から4日くらいは野宿だと思う。地図を確認した感じだとリクドウまでの道中にある人が住む街や村なんかは、合計で6箇所で、ここから1番近い街は此処だから…」
アルクにも見えるように地図を広げながら説明する。
「ふんふん、」
「アルク…わかってないでしょ?」
「…バレたか?」
「もうっ!」
「あははっ‼︎悪い!」
自分が一生懸命説明をしたが、アルクにはいまいち理解が出来ていなかったようで、軽口を言い合った。
街を出てからは見渡す限りの草原の中を歩いている。次の村は森の中に位置しているそうで、今は草原を歩いているが、向かっている方角には森が見える。
「次の村は森の中にある村みたいだから森の中の移動になるね。」
アルクにもわかるように次の村について話す。
「森かぁ…Eランク試験を思い出すな。」
アルクは思い出話をするように呟く。
「そうだね。あの時はクラークさんに助けられたよね?」
「だな。そういえばなんであの時ダークウッドが大量に居たんだろうな?」
「確かに。クラークさんの言う通りで、ダークウッドは普段はもっと危険な区域に生息しているはずなんだけどね。」
「偶然にしちゃ、出来すぎてるよな。」
アルクが首を傾げながら言う。
「悪魔には自分よりも弱い魔物を使役する力があったりするのかな。」
「かもな、なんかあの時に襲撃してた奴ら、親玉の言う事聞いてたんだろ?あり得るのかもな。」
「大悪魔に出会うことなんて滅多にないはずなのにね。」
「ありがた迷惑な運を使っちゃったな。」
「だね…、そろそろ森に入るみたい。」
話をしながら歩いているとあっという間に森の入り口に着く。ここからは見渡す限りの木々ばかりとなっている。
「森は魔物も多く出るし、危ない人に会うかもしれないからいつも以上慎重に行こう。」
「おう。」
私の言葉にアルクが返事をして2人は森へ入って行った。
森の中は静かだか風が吹くたびに森の木々が揺れる音がする。
「風が気持ちいいなぁ…」
「確かに、そうだね」
2人は森という自然の中で感じる風の心地良さを感じていた。
暫く歩いていると奥の方から物音がする。
「アルク、何かいるかも」
「だな」
2人は音に気付くとゆっくり木影に隠れながら近づき、音の正体を確認する。
ゴブッ
ゴブゴブ
フゴッ
ゴブリンの鳴き声がする。
ゴブリン3体が何かを漁っているようだった。
「ゴブリンだね、何してるんだろう。」
「う~ん…何か食ってるのかな?」
アルクからはゴブリンが何かを食べているように見えるらしく、私も目を凝らす。
「っ⁈共食い…」
「えっ⁉︎」
なんとゴブリンたちは同じゴブリンを食べていたのである。
「雑食とは聞くが共食いもするのかよ…」
「うん…でも流石に珍しい光景だと思うよ。」
「どうするよ?」
「3体くらいなら大した事ないだろうし、討伐しちゃおう。でも、あいつら匂いに敏感だからあんまり部位を持ち運ぶとゴブリンを誘き寄せるかも…。」
「そうか。なら完全な討伐になるな。」
「耳を持ち帰ればギルドの依頼を先取り出来るけど、仕方ないよね。」
「だな。」
2人は耳打ちしながら話す。
「とりあえず、やっちゃお。」
「りょうかい」
2人は会話を交わすや否木影から飛び出す。
アルクはゴブリンに斬りかかり腹を切って討伐。
自身もいつものように拳に魔力を込めてゴブリンを討伐する。
一体が逃走しようになるが逃さずに攻撃をする。
「よし!こんなものか?」
「うん。」
「とりあえず先進むか。」
「そうだね。」
ゴブリンを討伐した時に出てきた核だけ回収し、2人は再び歩き出した。
「それにしても共食いって本当にあるんだな。」
アルクがさっきのゴブリンを見て思ったのかそんな言葉を吐く。
「う~ん…さっきも言ったけど、大分珍しいパターンじゃないかな…ゴブリンって凄い雑食で有名だから、基本食べ物に困らない筈なんだけどね…それでも尚共食いをするって事は…この森には魔物が少ないじゃないかな…。」
「そういう考えもあるのか…でも魔物が少ないならいいんじゃないかな?」
「うん、単純に少ないなら良いんだけど…強い魔物がいて、その魔物がゴブリンの本来の捕食対象者を食べちゃってるって話になってくると別問題かなって思う。」
「その発想は無かったな…強い魔物か…。大悪魔とはどっちが強い「大悪魔より強い魔物は基本的にはダンジョンにしか居ないよ。」だよな…」
アルクの言いたい事が分かったので言葉を発し切る前に重ねるようにして答えを返す。
大悪魔以上の魔物がそんなウロチョロしている筈はないのである。
あ、でもこれフラグ建てたかもしれない。
自分でツッコミを入れたが心の中ではそんな事も考えた。
とりあえずゴブリンの事は覚えておこう。
それから暫く歩いていると気がついたら日が沈んでおり夜になりつつあった。
辺りは昼より一層静かになり風も少し肌寒ささえ感じるほどになっていた。
「急に暗くなったし、今日はこの辺りで休む?」
「そうだな…ん?なんか水の匂いがするぞ?」
アルクがクンクンの嗅ぎながら言う。
「水の匂い…?」
「うん!こっちこっち!」
アルクが足早に移動します。
「あっアルクっ?待って!」
アルクを追いかける。
するとアルクの言った通りで小さな池があった。
少し高い崖の上から水が滝になって落ちてきておりその下の池のようだ。
水底も目視で分かるほどの深さで水質もとても澄んでいて綺麗だ。
「綺麗な池だね…。」
「だな。」
2人は池の中を見ながら感想を言う。
池の中には魚も泳いでいる。
辺りも静かで生き物の気配もしない。
「今日はここで休もっか。」
「そうだな!俺、ここの池の魚食いたいな!」
お腹が空いた…と自分の腹に手を当てながらアルク呟く。
「そっか…確かに…食べれそうな魚だし、いいんじゃない。私は火の準備してるから、アルクその間に魚、獲っててよ!」
「任せろ!」
アルクはそう言うと靴を脱いでズボンを膝上まで捲ると池の中に入る。
「うひゃー!冷てぇー!」
アルクがはしゃいでいる。
(アルクったらはしゃいで…子供みたい。あ…子供か…)
そんなアルクの姿に微笑ましくなるも、自分の火の準備をしなくてはいけない事を思い出す。
自身も木の辺りに落ちている枝と落ち葉を集め出す。
ある程度集まったらそれを積み重ねる。
石とかもあると良いんだけど…あ、池の辺りにあるかな
「よっしゃっ‼︎アーシャの魚ゲットだ!」
池のそばに近寄ると丁度アルクが魚を獲ったようで腕に魚を持って喜んでいた。
「魚、獲れたの?」
「おう!これはアーシャの魚だぞ!」
アルクが嬉しそうな顔をして私に魚を見せにきた。
魚はまだ生きておりアルクの手の中でピチピチと動いている。
「わぁ~アルク、凄い!ありがとう!」
アルクから魚を受け取り一旦自分の荷物をいた所に戻り魚を置く、そしてまた池のそばに戻り石を探す。
石も池の側や中に沢山落ちておりそれを回収して落ち葉と枝の山に持ってくる。
魚を焼くための串になる枝もなるべく真っ直ぐな枝を集める。
魚の内蔵を取るために腹から捌き、内臓も落ち葉と枝に混ぜるように入れ込む。
捌いた魚は直ぐに焼けるように一旦地面に立てておき、落ち葉と枝を火属性魔法で燃やす。するとあっという間に簡易キャンプが出来上がる。
再びアルクの方を眺めるとあれから更に魚を獲ったのか池の縁に魚が置かれている。
その魚を回収して同じように捌いてその魚にルクシアの街で買っておいて塩をふる。
「アルクっ!もう大分魚獲ってくれてるから大丈夫だよ!」
「お?そうか?なんか楽しくて忘れてた!」
アルクは返事をすると駆け足で戻ってくる。
「アーシャ!魚、焼いてくれてありがとう!」
「いえいえ、アルクが獲ってくれたからそれを焼いてるだけだよ。」
アルクはアーシェンリファーにお礼を言いながら焚き火の前に座り込む。
「しかし、結構冷えるな…」
アルクが足を焚き火で乾かしている。
それを見てある事を思いつく。
「アルク、足、こっち向けて?」
「?おう。」
アルクがこちらに足を向けると水魔法でアルクの足の汚れを落とす。
「お?足洗ってくれてるのか?ありがとう。に、しても水、温かいな。」
「うん、水属性魔法に火属性も混ぜ込むと温水が出せるだよ。」
「…へぇ…それって凄い事なんじゃ…」
「あはは、ノーコメントで。」
「なんだそりゃ」
アルクの足を洗った後風属性に火属性を混ぜて温風にして足を乾かす。
「足が乾いた…ありがとうな」
アルクはそう言うと池に入る前に脱いだ靴下と靴を吐く。
「どういたしまして」
アルクのお礼に答えると焼いている魚の方に視線を向けて焼き加減を気にする。
魚は大分焼けているようで焚き火に当てられて良い音を出している。
魚の焼け具合を確認して頃合いになった魚の串を焚き火から外しアルクに渡す。
「はい!これなら今から食べれるよ!」
「先にもらって良いのか?」
「勿論!アルクが獲った魚じゃん!」
「そうか…ありがとう、じゃあ、貰うな」
アルクはそう言うと魚の串を受け取りそれを食べる。
「お!良い塩加減で美味いな!自分で獲ったから旨さが倍増だしな?」
「それはそうかもね?自分で獲った物って美味しいよね?」
あははと2人で笑い合う。
「いや、自分で獲っておいて言うのも変だけどさ、結構大きいの獲ったよな?」
「うん、しかも6匹も獲るんだもん。一応焼いてるけどこんなに食べれないんじゃない?」
「いや、俺なら食える!」
「本当?じゃあ私が残しそうになったら代わりに食べてね?」
「任せろ!」
2人で会話をしながら自分の分の魚を手に取る。
それを食べると良い感じに塩加減が効いており美味しかった。
「うん、美味しい…。なんか食べ出すと全部食べれる気がしてきた。」
「なんだよそれ?」
アルクが2本目の魚に手を伸ばす。
2人で笑い合いながら魚を食べる。
すると意外とあっという間に完食してしまった。
「はぁ~。食った食った!」
ご馳走様です。
とお決まりの言葉を発して焚き火の片付けをする。
片付けながらも自身の胸にぶら下げている時計を確認するともう20時を過ぎていた。
そそくさと片付けを進めて2人で少しくつろぐ。
「私、少し汗かいたから身体綺麗にするけど、アルクもやる?」
「はっ⁈」
アーシェンリファーの急な発言にアルクは青を真っ赤にしながら驚く。
そんなアルクの様子に最初は頭にハテナを浮かべたが直ぐに意図を察して言葉を続ける。
「違うからね?そこの池で水浴びとかじゃないからね?私の魔法で身体を綺麗にできるって話しだからっ‼︎」
「そ、そうか…」
ビックリした…とアルクが呟くのに対して自身も心臓がドクドクと音を立てていた。
(もう…アルクは子供とはいえ、目の前で服を脱ぐわけないでしょ…)
自分で言っておいて流石に恥ずかしくなり顔に熱が集まっているのが分かる。
それを落ち着かせるように手を顔に向けてパタパタとさせる。
気を取り直すとその場で立ち上がり自分の身体を綺麗にする力を使おうとする。
この力は今世ほどではないけど、前世でもさっきのように魔法でお湯を出して同じような事をしてたな…と考える。
この力は便利だけど、そこまで強い力じゃ無かったようで、【異空庫】創造後の吐血事件後に試しで創造した際の副作用は少し筋肉痛になったくらいで済んだ。
そんな事を考えながると目の前に手をかざす。
「【清めの水】」
唱えると目の前に人が1人入れるくらいの水の膜ができ、その膜の中に入る。
「ふぅ…」
身体から汚れが落とされていき、綺麗になっていくのが自分でもわかる。
「なんだよそれ?」
「これは自分の身体を綺麗にする力だよ。アルクも入れてあげる。」
自分の身体がさっぱりしたのを感じると膜から出てきてアルクを中に入れる。
「うおっ!溺れ…ないな。」
アルクは水の中だから息ができないと思っていたらしく驚いていたが水の膜に入ると気持がいいのか満足そうな顔をした。
「アーシャ!これ、凄いな!野宿の革命だぞ!」
「アハハッ‼︎大袈裟だよ…でも、気に入ってくれて良かった。」
アルクの言葉に笑いながら返事をする。
アルクは清めの水の膜から出てきて身体を伸ばす。
「いや、これまじで便利だな。」
少し興奮したように話す。
「便利でしょ?身体を綺麗にしたいなぁ…って思った時に思いついたの!」
アルクのリアクションが嬉しくなり上機嫌で返す。
「魔法って…凄いんだな。」
「あ…でも多分他の人は出来ないので、これも内密に…」
アルクだから見せました、と少し困ったように伝える。
「そうか!アーシャの凄さにはもう驚かないと思っていたけど、それは無理そうだ。」
アルクは笑顔で返した。
「ま、もう21時になるし、明日も早いから、寝よ?」
「だな。」
2人はそれぞれ寝床を用意して寝る準備をする。
「おやすみ。」
「うん。アルク、おやすみなさい。」
21
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる