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幼少期 クラレンス王国編

21 シリシアンside

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シリシアンside


アーシェンリファーがアルクを連れて離れた所に避難する。
シリシアンはそんな2人を横目にマホブフを睨みつける。

「うちの大事な娘を番呼ばわりなんて、何様かしら?」

「ほ~う。君が番の母か?いい物を生み出したな?」

マホブフはシリシアンの睨みつけなど意にも介さずに答える。

「…腹立たしい」

シリシアンはそう言うとマホブフに向かって氷柱を打ち込むがマホブフはそれを軽々しく避ける。

「そんな物騒な物を出さないでほしいなぁ。」

マホブフはケタケタと笑う。

「気持ち悪いのよ。あんた」

シリシアンはアーシェンリファーや他の人には決して出さない軽蔑した態度でマホブフに吐き捨てる。

これが大悪魔…今までの魔物とは格が違うわね…正直…1人では厳しいわ…

シリシアンはそんなことを考えるが、遠目にアーシェンリファーがいるのが見える。

でも、私がここで負けたら娘は、アイファーは確実に連れていかれる。そんな訳にはいかない。

シリシアンはマホブフに向かって膨大な魔力を込めた氷と火の柱を無数に放つ。

「いやはや…流石僕の番の産みの親ってわけだ」

マホブフは愉快そうに頬を歪ませるとシリシアンが放った魔法を自身の黒い魔力で打ち消す。

チッ…やっぱり魔法は消してくるか。

シリシアンはそんなマホブフの行動に悪態を感じながらもマホブフにひたすら攻撃を仕掛ける。
マホブフも黙って攻撃をさせる気はないようで、シリシアンに対して黒い魔力を飛ばす。
シリシアンはそれを華麗に避けながらマホブフに近づく。

奴の黒い魔力はおそらく闇属性魔法…その多くは悪魔が持つと言われる独特の力…。直撃するとどうなるのかしらね…

シリシアンは相手の力を考察しながらも自身の攻撃を繰り出す。

「【氷華ひょうか】」

シリシアンの呪文により氷の薔薇がマホブフに咲き誇る。

「ウホホッ!いい力。」

マホブフはシリシアンの攻撃により腹に穴が空いているが、マホブフはヘラヘラしながら自身の腹の穴に手を入れている。

「気持ち悪い…不愉快。」

シリシアンはマホブフの無駄な行動に対して攻撃を止めず氷華を連発する。

「グッハッ…やれやれ…痛いもんだ。」

マホブフが自身の身体の怪我を魔力で治す。

「そろそろ、仕返し、してもいいよね?」

マホブフがギョロギョロと目を動かしながら炎を繰り出す。
シリシアンは炎に囲まれてそのままシリシアンを飲み込もうとする。
シリシアンはその炎を無理やり氷で凍結される。炎は相当強力なのかシリシアンの氷の中で抵抗するのにメラメラと燃えている。

「…やっぱり悪魔ってとんでもない化け物ね。」

「その氷。いいね。僕に頂戴?」

マホブフがそういうとシリシアンの氷魔力で無理やり動かし出した。

「っ‼︎」

シリシアンは流石に驚いたが、自身の出した氷を魔力で強引に破壊することでそれを防ぐ。

「へぇ…君、人間の割には凄いねぇ…僕、感動だよ。」

「あんたに感動されても、嬉しくないから。」

マホブフの言葉にシリシアンは冷たく返す。

お互いに魔法をぶつけ合いながら激しい戦いを繰り広げる。

このままじゃ埒が明かないわ…

シリシアンはこのジリ貧の状態では自分が先に魔力を尽きさせて負けてしまう事を想定していた。

マホブフは図ったように魔力を変速させるとアーシェンリファーの側に黒に魔力を出す。

「キャッ!」

「っ!アイファーっ!」

シリシアンは咄嗟にアーシェンリファー近くに発生した黒い魔力を自身の魔力で強引に打ち消す。

これは魔力消費が激しいから使いたくないのにっ!

シリシアンはアーシェンリファーを横目になんとかマホブフに攻撃する。

アーシェンリファーはシリシアンに視線に気付いたのか、アルクを抱え直し更に離れていく。

本当…賢い子ね…

シリシアンは自然と笑顔になる。

「あれぇ~?番が離れちゃう…困ったなぁ…」

マホブフが呟くとアーシェンリファーの行く手を阻むように黒い霧を出した。

「えっ⁈」

アーシェンリファーが立ち止まる。


「アイファーっ⁈」

シリシアンがそんなアーシェンリファーを気にするが、マホブフがシリシアンのその隙を逃すはずもなく、黒い魔力がシリシアンに当たる。

「くっ…」

「っ!お母さんっ!」

アーシェンリファーの声が聞こえる。
シリシアンは自身の横腹を見るとマホブフの魔力が当たった所が消えている。

一発当たっただけでこれっ⁈反則でしょ…。

シリシアンは消えた腹部から血が垂れるのを防ぐため自身の氷魔法で腹部を凍らす。

「う~ん…。惜しかったなぁ…」

マホブフはそんなシリシアンに対してまたケタケタ笑いながら言う。

「残念ね…そんな簡単にくたばってはあげないよ。」

シリシアンは強気で言うが正直今のがだいぶ致命傷になっていた。

ドオォォォン

ドゴォッ

激しい攻撃音が鳴り響く

シリシアンとマホブフの激しい攻防が繰り広げれられるが、シリシアンの体力と魔力に限界が来ている事はお互いがわかっていた。

「いつまで粘るんですかぁ~?」

「あんたが死ぬまでよ。」

2人は攻防をしながらも会話をする。

「僕はぁ…まだ全然余裕ですよぉ~?」

マホブフが挑発したように言う。
しかし、シリシアンは分かっていた。こいつは本当に余裕なのである。

このまま私がただ負ければ…アイファーは…。そんな事は絶対にさせないっ‼︎

シリシアンの目に魔力の色が宿る。

「…へぇ…まだそんな力を隠してましたか…いやはや…人間も隅に置けないですねぇ…まぁ、だからこそ、僕の番も人間を選んだ訳ですが…。」

マホブフはニヤッとしながら呟く。

「…だから…うちの娘を…あんたみたいなクソ悪魔に…くれてやるものですか…」

シリシアンはその言葉と同時に巨大は氷柱を作る。

マホブフの右手と右足に氷柱が直撃する。
マホブフは同じように直撃した自身の右半身を自ら引きちぎる。
そして修復しようとする、がなぜか出来ない。

「っ‼︎何っ⁈まさか…貴様っ!」

マホブフは初めて焦りを覚えていた。

「…アッハハッ‼︎流石にこれでは治せないかぁ…」

シリシアンが挑発する。

「へぇ…そこまでして…命の魔力を使ってまで僕を攻撃するんだね?いいねぇ…楽しくなってきた…。」

マホブフは明らかに怒りの表情をしている。

「ここで使わず、いつ使うの?」

シリシアンも更に挑発するように言う。
命の魔力とは、普段使用する魔力では無く、自身の寿命を消費して魔力を生産した力である。この力は通常の魔力より強力、且、この魔力で発動した魔法は対象に必中となり、必ずダメージを与えるが、名前の通り命を削ると言う最大のデメリットがある。魂の強さに応じて命の魔力の力も変わる。シリシアンはこの魔力でマホブフにダメージを当てられるかに賭けたのである。
この賭けに勝ったと思ったシリシアンは更に畳み掛ける。

「このまま、死んで?」

シリシアンが更に魔法を放つ。

「ぐっ…はっ…」

マホブフは必死に攻撃を避けるが少しづつ…それでも確実に攻撃が当たっていく。
氷が当たった箇所は都度破壊されてマホブフの身体が崩壊に近づいていた。
しかし、マホブフも負けじと魔法を繰り出す。
シリシアンはそれに対してマホブフに密着して相打ちで魔法を受けるという荒技に出た。

「なっ⁈貴様…自分諸共俺を殺す気だなっ⁈」

「あら…俺、なんて言っちゃって…それが本性?」

「クソっ‼︎」

シリシアンは更に挑発する。しかしシリシアンも自身の限界を悟っていた。

これで、こいつを倒しても…私はきっと…いいえ、今はそんな事より、こいつを倒さないと!

シリシアンはマホブフに密着した状態で更に魔力を高める。
マホブフはそれに気づき自身も魔力を高める。

「…お前は、ここで、確実に死んでもらうっ!」

シリシアンは攻撃をけしかける。

「負けんぞっ‼︎」

マホブフも自身に最大限の魔力を練る。
お互いの魔力がぶつかり合い辺りの瓦礫がグラグラと揺れている。
2人はそんな事はお構いなしにどんどん魔力を上げる。

これが…私の最期…これで…こいつを絶対にっ‼︎

シリシアンが覚悟を決める。

命の氷ライフ・ザ・アイスっっ‼︎】
「死ねぇぇえええ‼︎」

シリシアンとマホブフは同時に魔法を放った。

「キャァアッ‼︎」
アーシェンリファーの悲鳴が聞こえてくる。
しかし、流石にシリシアンも今アーシェンリファーを気にすることは出来ない。

アイファー…ごめんね…こんな母親で…でも、負けないっ!

「はぁぁぁあああ‼︎」

シリシアンが最後に更に力を込める。

「ぐ、ぐぉぉぉおおお‼︎」

マホブフも耐えようとするがシリシアンの魔力に押し負け、首から下が全て氷漬けになった。

シリシアンとマホブフはお互いに魔力を出し切ったのかその場に倒れ込む。

「…お前…のような…女に…やられるとは…」

「…あの子の前で…負けれる訳、ないでしょ。」

シリシアンが不敵に言い放つ。

「ふっ…貴様の命も…もう尽きるではないか…フハハハッ‼︎」

マホブフはシリシアンの言葉に対して皮肉を言う。

「…煩いわね…早く、死んでよ…」

シリシアンは睨みつけながら言う。

「…フッ…大悪魔の討伐…見事…なり。」

マホブフはその言葉を最後に身体が消滅した。

「ふぅ…何とか…なったわね…」

シリシアンもその場から動けないでいたが、倒れたままでいる訳にもいかないと考え近くの瓦礫に寄りかかる。

「お母さんっ‼︎」

遠くに離れていたアーシェンリファー涙を浮かべながらこちらに走ってくる。

「アイ…ファー」

シリシアンは力を振り絞りアーシェンリファーの元へ向かおうとするが、自分の身体に感覚が無いことに気付く。

やっぱり…もう駄目かぁ…

シリシアンは先ほどの戦いで、自分の命の魔力…つまり、寿命を使い果たしていた事を察していた。
もう、これ以上生きられない。あと数日でも、数時間でも、時間があれば、アーシェンリファーと話をすることが出来たのに、と自身の力不足を感じていた。
シリシアンのそんな考えなぞ知る由もなくアーシェンリファーが近づく。

「お母さんっ⁈大丈夫っ⁈」

「えぇ…お母さん…ちゃんと負けなかったよ…。」

シリシアンはアーシェンリファーの頭を撫でる。

「うん…うん…。お母さん…凄い…私の自慢のママだよ…」

アーシェンリファーがそう言うとシリシアンに抱きついた。

「ありがとう。」

シリシアンもアーシェンリファーを抱きしめ返す。

アイファー…貴方は本当に賢い子ね。私の身体の事…分かってるんだね…。ごめんね…。

「アイファー…ごめんね。」

「ううん。謝らないで…。」

「うふふ…それでも、謝りたいの…お母さん、ここまでみたい」

自分の言葉にアーシェンリファーは目を見開くも、やはり覚悟をしていたようで涙を流した。
シリシアンはアーシェンリファーの涙を指で拭う。

(あぁ…可愛い、娘…貴方の過去に…どんなことがあっても…アーシェンリファーは、私の可愛い娘…。)



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