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幼少期 クラレンス王国編

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私達が城の方に近づくとミズキとアルクの母さんが一緒にいた。
アルクが2人の姿を見ると再び涙を流す、

「母さんっ!ミズキっ!」

アルクが2人を呼び駆け寄る。
そのままアルクの母とミズキに飛び込んだ。

「!アルクっっ!無事で良かった!」

「アルクぅぅう…。」

アルクの母とミズキも涙を流しながらアルクに寄り添う。
そんな3人の姿に安心した。

アルク…良かった。ミズキも…無事で良かった。

「アーシャちゃん!」

ミズキが私の姿に気付き声を出す。

「ミズキが無事で良かったよ。」

「うん!私も、アーシャちゃんが無事で良かった。」

「うん。」

「あら、噂のアーシェンリファーちゃんね?私がアルクの母のエレナです。」

「はじめまして。アーシェンリファーです。アルク君と、ミズキさんにはいつも仲良くしてもらってます。」

「本当にしっかりした子ねぇ…うちの馬鹿息子とは大違い…」

アルクの母ことエレナが茶化すように言う。

「母さんっ!」

アルクがエレナに詰め寄る。

「ウフフ。」

「母さん…父さんなんだが…」

アルクが言いづらそうにする。

「えぇ…知っているわ…あの人らしい最期よね。」

エレナがそう言うとアルクを抱きしめる。

「ごめんね…辛い思いをさせて…。」

「ちが…俺だけじゃない…母さんだって…」

「そうね…でも、辛いのは私たちだけじゃない…今回、多くの人が亡くなったの…家族を失ったのは、私達だけじゃないわ。」

「うん…」

アルクとエレナさんは抱き締めあっている。

お母さんってやっぱり強いんだな。

「…私、まだお父さんとお母さんに会ってないの。無事だと良いんだけどね…。」

ミズキが呟く。

「…じゃあ、ミズキのご両親、探そっか。向こうもミズキを心配して探しているかもしれないし!」

ミズキに声をかける。

「いいの?」

「勿論!むしろ、アルクとお母さんは、暫く2人にしてあげよ。」

「…そうだね。」

ミズキを連れてアルク達から離れた。



それから私はミズキと2人でミズキの両親を探し、割とすぐにミズキは両親と再開することが出来た。
ミズキは涙を流しながら両親の元に駆け寄る。両親もそんなミズキを受け止めて3人で寄り添っていた。

良かった…ミズキの家族は無事だった。

邪魔をしないようにとミズキ達の元から離れた。

「お母さん…どうしているから…さりげなく探してるけど居ないし、まだこっちに戻ってないのかも…」

1人街を歩きながらそんな事を考えた。



ミズキと別れた後、自身の修行も兼ねて、魔力を身体に纏い身体を強化しながら瓦礫の片付けをしていた。

今回の襲撃…やっぱり前世と同じ襲撃だと思う…でも、見かける魔物の死骸はそこまでハイランクじゃないCランクの冒険者クラスなら難なく討伐できる…前世ではもっと強い魔物が数体…あと、あの大悪魔…マホブフがいたはず…

街の復興を手伝いながらも前世で自分が見た魔物達を探していた。

(街の惨劇は似ている…でも、なんで?襲撃のタイミングがズレたから未来が変わってる?いや…でも…なんだろう…凄く嫌な予感がする。)

不安は消えなかった。

(マホブフは知力の高い大悪魔で、人を食す。そして、食した人間の力を付ける。そして、その性悪さは人間が油断したタイミングを狙う…。つまり…)

そこで1つの答えに辿り着く。

(この襲来は陽動っ!本体であるあのハイランクの魔物とマホブフは…また来るっ!)

瓦礫の片付けを急いで行い。周囲を警戒する。

いや、私の気のせいであって欲しい。この不安は、自分の杞憂であって欲しい。

辺りの気配を探る。しかし、辺りでは何も変わった事はない。

「どうされました?」

「え?」

驚いて後ろを振り向く。すると若く見える男性が話しかけてきた。

何この人?全く気配がしなかった。

「は、はい…さっきまで魔物がいたので、気が動転してました。」

おかしいと思いつつも誤魔化すように言葉を発する。

「…そうですねぇ…。」

男は辺りを見渡しながら口を開く。表情が読めず、何を考えているのかがわからない。でもなぜかその男性から目が離せなくなっていた。すると男がまた話し出す。

「人間って…凄いですよね。」

「はぁ…」

によって、魔力の量が全然違う…。あそこの人間なんかは、全然魔力がありません!」

妙な言い方をするな。

男は離れた所で瓦礫を運んでいる男性を指差す。

「…」

「でも、あちらの人間からは少し魔力を感じる…そして…貴方からは…とても人間とは思えない底知れない力を感じます!」

男の言葉に額から冷や汗が滴れるのを感じる。

「…貴方みたいな人間は…マホブフ様の害になりそうですね、だから…」

「っ‼︎」

マホブフってまさかこいつっ!

「みんなっ‼︎逃げ」「邪魔になる前に死ねぇぇええ!」

私が周りに声を発した時には遅く、男は私の言葉に重ねるように声を上げた瞬間、身体から魔力派を出し、辺りの空気を数段にも重くする。そして、重くした空気の中で男の背中からは魔族の羽が出てきており、先ほどまで人間の風貌をしていたが、今では面影もないくらい魔物化していた。

「ま、魔物だぁぁあ!!!!」
「イ、イヤァァァアア!!!!」
「こ、今度こそ、終わりだ!」
「逃げろっ!」

周りにいた人達が一斉に声を上げて逃げ出そうとする。

「邪魔ですねぇ…ゴミどもが。」

目の前の魔物がそう呟くと無作為にレーザー攻撃を放つ。
その攻撃を避けるが、周りにいた人達にはどんどんレーザーが当たり倒れて行く。辺りは断末魔が響き渡り再び地獄のような光景が広がる。

やはり。クラレンス王国での魔物襲来事件の最悪はこっからなんだ…大悪魔マホブフは…今日、来る!

目の前の悪魔を睨みつける。
悪魔はそれに対して好戦的な眼で返す。

マホブフが1番だけど、まずはこいつをなんとかしないといけない。前世では見覚えがないけど、きっと前世でも王都に来ていたんだと思う。今日、ここで何とか討伐をしなくてはいけないと考える。

悪魔の攻撃を避けるように動くが、周りの被害が悪化して行くのが分かる。

「中々素早いんですね…でも、いいんですか?ここに来てるの、自分だけではないですよ?」

悪魔の言葉とほぼ同時に私から少し離れた所の複数箇所からも爆音と悲鳴が出てきた。

分かってるよ!

被害が大きくなる王都を見る。

「おや?余所見している場合ないですよ?」

悪魔がそう呟くとレーザーを放ちながらアーシェンリファーに向かって無数の火球を飛ばす。自身の身体に魔力を纏いながら火球を避けるが、幾つかが腕や足を掠める。

「っっ‼︎」

やっぱり全部は避けきれないか、と額から汗を流す。避けてるだけじゃ、拉致があかない。目の前のコイツはおそらくBランク相当、つまり、ダンジョンモンスターレベル。今の私では…自信は無い。しかし、何もしなければ、ここで死ぬ。そんな訳にはいかない。

悪魔に向かって走り出す。

「ごめんだけど、貴方はここで倒す!」

「【水の射撃ウォーターショット】」

走りながら水属性の基礎魔法を詠唱する。【水の射撃ウォーターショット】が悪魔の出した火球を打ち消して行く。

「チッ…相殺とは…やってくれますね?しかし、この数はどうですか?」

悪魔が火球の数を先程までの数の何倍も繰り出す。

「ほんとっ!悪魔って嫌い!」

私も【水の射撃ウォーターショット】の数を増やす。

「数勝負なら、私も負けないからっ!」

「では、どっちが魔力切れを起こすか、根比べでもしましょうか?」

「は?そんないつまでも貴方の相手をしている暇はないの!もっと早く、倒してあげる!」

悪魔の誘いをキッパリ断る。

「へぇ…小娘が…舐めた口を聞くなよ?」

悪魔は今まで丁寧な言葉をしていたが、ここにきてその化けの皮が崩れ出す。
それに構う事なく、悪魔の元へ駆け出し魔力を込めた脚で悪魔の横腹を蹴り飛ばす。

「ガァアッッ‼︎」

悪魔が建物へ吹き飛ぶ。

当てた…、けどこんなんじゃ全然ダメだ。まだやらないと

動きを止める事なく更に悪魔に打撃を打つ。
しかし、途中で悪魔に足を掴まれ動きが止まる。

「っっ‼︎」

「いつまで俺に足を向けているっ!」

「キャアッッ‼︎」

悪魔に投げ飛ばされ向かい側の建物に突っ込む。
建物に当たる直前で全身に魔力を込め自身への反動を緩和するが建物に当たった身体はだいぶ痛い。

やっぱり…殺りきれてない。

すぐさま立ち上がる。

「はぁ…まだ立つのか…鬱陶しい小娘が…」

「頑丈さが、取り柄なんでね…」

悪魔の呟きに対して返す。

「俺も暇じゃない。マホブフ様があと数刻でここに着く。それまでに可能な限り破壊したい。」

「そんな事、させない。」

「お前はやはり、邪魔だよ。死ね。」

悪魔は更に魔力を放出し自身の身体にかける。

やっぱりまだ力を出すのか。

負けじと自身への魔力を強める。

前世で使ってた力…今使えるかわかんないけど…。やるしかないっ!

悪魔が凄まじい速度で動くと目の前に現れ、大きな拳を振り下ろす。
ギリギリの所でその拳を避けるが拳から放たれる衝撃波により頬を掠める。

(かなりギリギリだけど!)

前世の自分が使っていたオリジナル魔法を思い浮かべる。
あれは、炎属性と光属性を織り交ぜた魔法…今の私では魔力がギリギリかもしれないど、まずは自分の魔法による周りへの被害を抑える為にあいつを空に浮かせないといけない。

私は真っ直ぐ悪魔に向かって地面に地割れが生じるほどの力で拳を振り下ろすが、悪魔がそれを避けるように空へ飛び出す。

「随分の怪力だなっ⁈お前…餓鬼の癖にそんな力を付けて…。」

今だっ‼︎

悪魔の言葉などに聞く耳を持たずそのタイミングを見逃さないように両手を悪魔の方に向ける。

(成功してくれっ‼︎今、このタイミングであれを討伐しないとっ!)

手に膨大な魔力が集まる。

「?何をしている…ほう…力比べと行こうか‼︎」

悪魔も私に向けて魔力を溜める。

悪魔からは巨大な火の玉が、こちらからは火に光の粒子が纏われた魔力がある溜まる。
先に魔法を放ったのは悪魔の方だ。
こちらに巨大な火球が飛んでくる。

(あれに当たったらきっと私は焼き焦げて死ぬし、街の被害も凄いことになるっ‼︎でもっ‼︎私だって…ここで負ける訳にはいかない!)

「グハハハッッ‼︎死ねぇえ‼︎」

悪魔の言葉により火球に更に魔力が集まる。

まだだ…まだ足りないっ‼︎

更に力を込める

「どうした?もう終わりかっ⁈そのまま死ね‼︎」

悪魔が更に追い討ちをかける。

(有りったけを込めるっ‼︎)

「【爆閃ばくせん】」

両手から光り輝く火炎の光線が放たれる。

「なっ‼︎‼︎」

その光線は悪魔の放った巨大な火炎を丸呑みしそのまま悪魔の方は飛ぶ。

「このっ‼︎餓鬼の皮を被った化物がぁぁあっ‼︎」

放った巨大な光線が悪魔に直撃し雲を貫通するように空を突っ切った。
光線が放たれた空は憎たらしいくらいに晴れ晴れとしていた。悪魔は首だけを残した。そして残った首がのすぐ目の前に転がり落ちる。

「ハァ…ハァ…」

(か、勝てたっ…かなりギリギリだったけど…。)

フラフラになりながら地面に両膝をつく。この悪魔を倒した所で他の場所では未だ甚大な被害が出ている。

「頑張ったけど…こんなのが他にもいる…もう…今の私では…」

視界がグラつく

(あ…限界だ…)

意識はそこで途切れた


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