転生先では幸せになります

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幼少期 クラレンス王国編

15 ミズキside

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アーシェンリファー達が森林地帯でダークウッドに襲われていた頃王都内はいつも通り人で賑わっていた。

その中でミズキはベンチに座り、先程店のおばちゃんに貰った3つの飴玉を眺めていた。

「アルク達、いつ帰ってくるのかなぁ…早く会いたいなぁ。」

ミズキは独り言を呟き足をプラプラさせている。
いつも通りの日常に変わり映えのない毎日。家に帰れば家のお手伝いや店番でミズキは新しい事をやりたいと考えていた。

私も、ギルドの依頼、もっと頑張ろう。

ミズキはそんな事を考えながら空を見つめる。憎いくらいに綺麗な晴天だ。
そんな綺麗な空に一筋の光が流れる。

?何か光った?流れ星みたいだった…

ミズキは空に流れた赤い光が気になり空をジッと見つめる。すると赤い光が幾つも流れており、最初は細くて目を凝らさないと見えなかった光が徐々に太くなり、数が増えて、心なしからだんだんこちらに向かってきているようにも見える。


(…?あの赤いの…こっちに近づいてきてる…)

ミズキの考えは当たっていたようで空に流れる赤い光は徐々に王都に近づいてきていた。その光はどんどん大きくなって行く。やがて光が空を照らしてくる程になり、ミズキ以外の人も徐々に光に気付き出し皆が空を見上げている。
ミズキも他の人と同じように赤い光に注目していると光の中に何かが居るのがわかる。それが近づくにつれ中に居る何かがミズキには見えてしまった。

「え…怪物?」

ミズキがそう呟いたとほぼ同時に人々が叫びだす。

「ま、魔物だっ‼︎」
「キャーッ‼︎」

「え…」

ミズキが呆然としている間に赤い光の中にいた魔物が王都内に振り注ぐように着陸する。


グゥォォオオォォオォ
グルグゥゥゥウウ

魔物の鳴き声が王都に響く

魔物は王都の入るなり側にある建物を破壊する。

「「「「キャーー!!!!!」」」」

街の人達が凄い勢いで逃げて行く。ミズキはそんな人達の姿を呆然と眺めることしかできなかった。
魔物はそんな逃げ惑う人々の存在などお構いなしに周囲に破壊の限りを尽くしている。その破壊活動の中で人が巻きこまれ怪我をしたり建物に潰されたりしている。

ガシャーーーン

バゴォーン

ミズキは破壊されていく街の姿を見て恐怖の余りその場に膝から崩れるようにへたり込む。

(怖い…怖い…怖いよっ!お父さんっ!お母さんっ!助けて!死んじゃうよ!アルク…怖いよ…。)

ミズキは大粒の涙を流しながら助けを願う。しかし、そんなミズキの願いが誰かに届くわけもなく、手を差し伸べる人などおらず、皆が自分や自分の子供が逃げ切る事だけを考えて行動していた。

幸い魔物はミズキの姿など目もくれず暴れまわりミズキからは遠ざかって行く。ミズキは放心状態で魔物がいた場所を眺める。
先程まで平和だった街が一気に崩壊し、崩れた建物の周りには大勢の人が倒れていた。

(アルク…アーシャちゃん…助けて…でも、2人がここにいなくて、良かった…。)

ミズキはその場から動く事が出来なかった。
王都内のあちこちで建物が破壊される音と人々の叫び声が響き渡る。
ミズキは動かない身体になんとか力を入れて立ち上がりる。
「動かないと。」
ミズキはそう呟くと1人歩いた。




クラレンス王国の王都内ギルドでは当選の魔物到来に大混乱をしていたが、Dランク以上の冒険者を中心にチームを混んで魔物を討伐しようと試みていた。冒険者達はチームを組み、急いで戦闘の準備を行いギルドを出る。外には多くの魔物と混乱している人たちで溢れていたが、冒険者達は協力して住民の避難誘導と魔物の討伐に尽力していた。
現在王都にはSランクの冒険者ら全員出払っていたためAランクの冒険者が数人で指揮を取っていた。

「お前達はあっちを頼む!」
「「了解!」」

「王城の側も気にしておけ!」
「住民には一旦王城に避難して貰うぞ!城まで行けば入れてくれるだろう!てか、城に押し込むぞ!責任は…取れないが人命優先で行くぞ!」
「おう‼︎」

冒険者達同士でお互いの士気を高めてそれぞれが動く。

魔物の数が多く苦戦しているが、一体一体がそこまで、強いわけではないようで冒険者何人かで何とか討伐が出来ている。

しかし、魔物は空からどんどん降ってきており減少する兆しがない。

「クソっ!どうなってやがるんだ。」

1人の冒険者が呟く。

「わからん…原因はわからんが、このままでは不味い。魔物が増える一方だ…。」

冒険者達も必死になって戦っているが、中々数が減らず、怪我人も増え城から派遣されたのであろう救護班も手一杯の状態になっている。

冒険者達が魔物と戦っていると倒壊した建物の裏から1人の女の子が顔を覗かせて居るのが見える。

「⁈おい!女の子がいるぞ!」

1人の冒険者が女の子、ミズキの存在に気づくとミズキの方へ駆け寄る。

「君っ!こんな場所で1人かっ⁈こっちに来なさい!」

「うん…。」

中年の風貌をした冒険者がミズキの手を引きギルドの建物の中まで案内する。

「さぁ…君は危ないから、絶対に此処から出たら駄目だよ。アカツキちゃん!この子を頼む!」

「っ!ミズキちゃん⁈無事で良かった!わかりました!ダンバンさん!ミズキちゃんは任せてください!」

「おう!」

ダンバンと呼ばれた中年の冒険者はアカツキにミズキを託すとそのままギルドを出て行った。

「あぁ…ミズキちゃん!無事で良かったわ。」

アカツキはそういうとミズキの元によりしゃがみ込む。

「アカツキさん…うん。怖かった。」

ミズキは言葉を言うや否顔をクシャとさせながら涙を流した。

「うんうん…怖かったわね。」

アカツキはミズキを優しく抱きしめる。

「さ…奥の部屋に隠れてて。他の人もいるから。」

「うん…。分かった。」

ミズキはそう言うとアカツキから離れてギルドの奥の部屋に入る。
すると老若男女問わず避難してきた人たちで溢れかえっていた。

「お父さん…お母さん。」

ミズキは自分の両親を探したが、どうやらギルドには避難していないようだ。

会いたい

ミズキは再び不安に駆られ、その場に座り込むことしか出来なくなってしまった。




クラレンス王国王城の窓からセリオンが魔物に襲われている城下町を見つめる。

「どうなっているんだ…。」

セリオンは呆然としている。

「セリオン王子。ここも安全とは言い切れませんので、地下の結界の中に移動しましょう。」

執事が声をかけ、近いまで先導する。

「あぁ…」

セリオンは返事をし執事の後に続く。
セリオンは城の窓から見える地獄のような光景を目の当たりにしながら数ヶ月前に出会った1人の少女を思い浮かべるが直ぐに頭から消し去る。

今は私的な感情を持つ暇はない。

セリオンは気持ちを切り替えて今は生き延びる事を考える。

「父上は?」

「国王様はこの事態を治めるため玉座で必死に国民の受け入れの準備をされてみえます。」

「っ!ではっ!俺も手伝うべきでは?」

セリオンが執事に言葉を返すが

「いえ、セリオン王子には結界の中で身の安全を確保して頂きます。後継者にいなくなられては、困ります。」

「っ!そうかもしれないが…」

セリオンがやるせないような顔で呟く。

「…それに、結界の中には他の国民達も入ります。その人達を治めるのも王子の責務です。」

「…そうか。」

セリオンはそれ以上何も言わなかった。

どうか…1人でも多く生き残ってくれ。

セリオンが地下の結界の前まで到着すると既に中には多くの人が入っていた。

「王子…」  「…」
「セリオン様」

セリオンを視界に捉えた人達のリアクションは様々であったが特に気にすることもなく結界の中に入るセリオン。執事もそれに続き結界に入る。

「怪我は?」

セリオンが近くにいたお婆さんに話しかける。

「王子様…私は無事にございます。」

「そうか…無理はするな。」

「はい…ありがとうございます。」

セリオンはお婆さん以外の人たちにも順番に声をかけて行く。
とりあえずこの結界の中に避難できた人達は大きな怪我はしていないようだった。

「あの…この結界の外に出る事は出来るのでしょうか?」

一組の夫婦と見える男女が話しかけて来る。

「…出来なくもないが、ここを出てどうするのだ?」

「っ!そうですか⁈私達…実は一人娘と別行動をしていたので…娘の安否が分かっていません。ですので、娘を探したいのです!」

男の方がセリオンの肩を掴みながら言う。

「っ‼︎そうか…。気持ちはわかるが、ここを出ると言う事はかなり危険だぞ。娘を見つける前に自分たちがただでは済まされない可能性もあるんだぞ?」

「えぇ!百も承知です。しかし、娘が1人で泣いていると想像したらジッとはしてられません!」

「そうか…そこまで言うなら止めはしない。ただ、現在父上が他国にいる上級の冒険者を要請している。それまで辛抱してくれないだろうか?」

「その方達はいつ来るのでしょうか?」

「正確な時間はわからないが、数時間後だろう…」

「そんなっ‼︎じゃあ、その間娘は…」

母親の方は泣き崩れる。それを男が慰めている。

「今も街にいたギルドの冒険者や城の騎士団を中心に魔物の鎮圧化を進めている。子供という事であれば誰かが保護しているだろう。騎士が保護すればこの城だし、冒険者に保護されていればギルドだろう。」

セリオンは夫婦にそう説明する。

「お2人が焦って出たところで娘さんを見つける可能性は限りなく低いだろう。王子としては国民は1人でも失いたくない。」

「王子…」「うぅうぅぅ…」

夫婦は黙る。

いずれにしてもしばらく時間が経過したら外の様子を確認しなくてはいけないとセリオンは考えていた。

アーシェンリファーさんは無事なのだろうか…。

セリオンはひっそりと考えながらこの事態の解決を祈った。


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