転生先では幸せになります

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幼少期 クラレンス王国編

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あれからシリシアンとギルドに冒険者登録をしてから毎日修行と依頼、そして食事の準備と忙しくも充実した日々を送っていた。
ギルドでの依頼も年齢の割には多くこなしているようで気がついたらランクもFランクになっており、初級冒険者の中でもベテランランクになっていた。

「アカツキさん!こんにちは!今日も依頼を受けに来ました!」

「アーシェンリファーさん。こんにちは。今日は何を受けますか?」

「今日はリンダさんの家の掃除を受けます!」

「わかりました。では、Fランク冒険者のアーシェンリファーさん、《家の掃除》の依頼を受理しました。頑張ってきて下さい。」

「いつもありがとうございます!」

ギルドの受付から離れる。

ギルドの依頼も慣れてきたと感じていた。

「よっ!」
「うわっ!」

急に後ろから声をかけられ驚きながら後ろを振り向くと見知った少年がいた。

「なんだぁ…アルクかぁ…」

「ハハッ!ごめん。驚かせるつもりは無かったんだ。」

この人懐っこそうな笑顔が特徴の素朴な少年はアルクという。アルクは、私より前にギルド登録をした少年で、歳は現在8歳、私の2つ上だ。子供の冒険者は少なく、年が近い冒険者はこの少年アルクともう1人の少女しか知らない。依頼を受ける中でアルクと、もう1人ミズキという少女と同じ依頼を受けることが多く、一緒に依頼をこなしているうちに仲良くなった。

「アーシャは今日なんの依頼を受けたんだ?」

「今日は早く家に帰りたいからリンダさんの家の掃除だけ受けてきた!」

「そっか!てか、リンダさんまた依頼出してるのか…。本当、少しは自分で家の掃除をしたらいいのに…あの人、なんであんなに家が汚くなるんだ…。」

アルクは少し呆れたように言う。

「それはわかる。でも依頼として出してきてくれるおかげで、私たちも稼げてるから強くは言えないよね。」

「だな。」

2人は笑い合う。

「あ、ところでミズキは?」

「あぁ…ミズキのやつは今日は家の用事があるとかでいないぞ。だから今日は俺1人だ。」

アルクは頬を掻きながら言う。

「そっかぁ…じゃあ、寂しいね?」

自分でもわかるくらい意地の悪い顔をして揶揄う。

「別に、寂しくないから!」

アルクは少し居心地が悪そうに返す。

「アハハっ!ごめんね?意地悪しちゃった?」

「本当だよ…。あ、そういえばアーシャ、もうすぐEランクの試験、受けられるよな?」

「え?うん。多分そうだと思う。」

ギルドに登録してから最速のスピードでFランクになり、アカツキさんからももっと上を目指すならEランクの昇級試験を受けてもいいと許可は出ている。シリシアンにも相談をして、普段の修行の姿を見ていてもEランク程度なら大丈夫だと思うとも許可は貰っていた。

「俺にも、Eランクの昇級試験の話が出てきてさ。良かったら一緒に受けないか?」

「いいね!1人でやるより2人でやった方がいいよね!…でもミズキはいいの?」

「ミズキはまだEランクの試験の話しが来てないんだ。俺よりも依頼をこなした件数もまだ少ないし。戦闘が得意というわけでもないしな。」

「そっかぁ…確かに、ミズキがモンスター倒す姿は想像出来ないなぁ…。」

「あ、でもミズキにもアーシャと試験を受けようと思うって言ってあるし、別にいいと思うぞ!」

「流石!将来の旦那様だね。」

「おい…もうイジるな。」

アルクとミズキが両思いなのを知っていたので、とことんイジっていた。アルクも止めろと口では言うが実は満更でもない顔をしているのも面白いな、とか考えていた。

「…まぁ、話を戻して、Eランクの試験を受けたいから、アーシャの都合を教えてくれ。」

「そうだなぁ…一緒に受けてくれるのは嬉しい誤算だけど、私の予定では、明後日受ける予定だった!」

「あ、明後日⁈随分急だな。」

アルクは少し驚いていた。

「そうかなぁ?昇級試験の打診を貰ってから1週間も経ってるし…そこまで急っていう感覚はなかったなぁ…。」

「アーシャって…結構無茶苦茶だよな…本当に6歳か怪しくなってくる。」

アルクって…地味に鋭いんだよねぇ。

アルクは何気なく言った言葉だか、アーシェンリファーには効果抜群であった。

「ま、俺もギルドの依頼じゃない所で魔物の討伐経験はあるからEランクの依頼なら大丈夫か…?」

「そうなの?」

「あ、うん。言ってなかったか?俺の家、父さんが城の騎士だから、訓練の一環で弱い魔物なら倒した事あるんだ。」

「そうだったんだ…。じゃあ安心だね!」

「おう!掲示板にあるEランクの魔物なら大丈夫そうだったし、アーシャの予定通り明後日一緒に受けようぜ!」

「うん!よろしく!」

「おう!じゃあ、俺も今日は自分の依頼を受けるから、また明後日な!」

「うん!またね!」

2人は会話を終わらせて解散する。

とうとう明後日にEランクのクエストか…魔物の討伐が出来るようになれば、力をつける修行ももっと捗るな!

内心昇級試験が楽しみであった。

今日も1日頑張ろう、とご機嫌にギルドを後にした。




そしてEランク昇級試験を受ける日がやってきた。

「お母さん!今日はとうとうEランク昇級試験だよ!」

シリシアンと朝食をとりながら今日の試験の話をした。

「あら、もうそんな日になったのね。」

シリシアンもそんな私に対して微笑みながら返事をしてくる。

「うん!初めてのモンスター討伐だけど、大丈夫かな?」

「大丈夫よ…。アイファーなら出来るわ。お母さんも自分の依頼をやりながら応援してるわ。」

「えへへ。ありがとう!私、頑張る!」

「えぇ。」

朝食を食べ終わり片付けをする。

「じゃあ、お母さん!行ってきます!」

「いってらっしゃい。」




家から真っ直ぐに冒険者ギルドに向かい、アルクと合流した。

「よっ!アーシャ!今日はよろしくな!」

「アルク!おはよう!こちらこそ、よろしくね。」

2人は駆け寄って挨拶をする。

「いいなぁ…2人はもうEランクの試験かぁ…私ももっと依頼、頑張れば良かった!」

アルクの横にいたミズキがひょっこりと顔を出して羨ましそうに言う。

「何言ってんだよ!仮に試験に合格したってミズキとだって依頼はうけるぞ?」

アルクはそんなミズキを慰めるように言う。

「そうだよ!別に一緒に居られなくなるわけじゃないんだしさ!ね?アルク?」

ミズキにフォローを入れつつアルクに話しかける。

「そうだな。」

3人でそんな会話をしていると後ろから話しかけられる。

「君たちがアーシェンリファーさんとアルク君かな?」

3人は振り向くとそこには優しそうな男性が立っていた。

「「はい、(そうです。)」」

「良かった。僕は、今日のEランク試験の試験監督を勤めます、Sランク冒険者のクラークと申します。」

「私は、アーシェンリファーです!よろしくお願いします。」

「俺は、アルクです。よろしくお願いします。」

アルクは2人でクラークに頭を下げる。

「えぇ、よろしくお願いします。」

クラークはそう言うとニコリと微笑む
その笑顔に対して、優しそうな人で良かったなと安心していた。

「あの…Eランクの依頼にSランクの方って…。」

一つの疑問を口にする。

「あ、そうですね。普段ですとBからDランクくらいの方に試験監督が入るのですが、今回はたまたま僕が空いていたので担当させて頂きました。では、今回のEランク昇級試験についてもぼくの方から説明させていただきますね。」

はぁ…とアルクが同じ反応をする。

「Eランクの試験内容はこの王都領内から外に出て頂き、西の右方にある森林地帯にてスライム系統のモンスターをそれぞれ3体ずつ討伐し、ギルドの受付に討伐の証としてモンスターの部位を提出すれば無事試験合格です。期限は開始から24時間以内です。ですので…今の時刻が11時30分ですので…12時から開始でどうでしょうか?」

「「はい!(大丈夫です!)」」

「いいお返事ですね!では、開始時刻は12時としましょう。12時に王都の正面入り口に集合しましょう。」

「「わかりました!」」

「はい。では、一旦解散です。」

クラークはギルドから出ていった。

「とうとう試験だな!」

「うん!そうだね。」

「アーシャは昼飯食べたか?」

「ううん。正面の門に向かう途中でなんか食べようかなって思ってる。」

「そっか。じゃあ俺もそーしよ。」

「2人共、頑張ってきてね!弱いモンスターだからって油断しちゃダメだよ!」

ミズキが応援してくる。

「うん。ありがとう!帰ったらまた、一緒に依頼受けようね!」

「うん!アーシャも気をつけてね!」

「よし、アーシャ、俺達も門に向かおう。」

「うん。」

アルクは2人でギルドを出た。

「いってらっしゃい!」

ミズキはギルドからそれを見送る。

うん!今日も張り切って行こう!

両腕を上に身体を伸ばす。

「アーシャ、頑張ろうなっ!」

どうやら隣にいるアルクも気合いが入っているようだ。

「帰ったらミズキにもどんなモンスターを倒したから話をしないとね。」

「だなっ!」

2人は正門に向かいながら他愛のない話をする。

しかし、2人はまだ知らない。クラレンス王国の平和が、簡単に崩れ去ってしまう事を。




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