上 下
154 / 159
異世界新婚旅行編

第152話 シーランド王国の事情

しおりを挟む
 ムツキ達はシーランド王国の王都にやって来て、国王に謁見を申し込んだ。

 この頃になると慣れたもので、いつもの2人のサイン入りの書状を使えば、すぐに謁見できる事になった。

 いつものように、謁見の広間などではなく、応接室へと通されると、そこでは国王が既に待っていた。

 立場的に、平民ではあるが目上のムツキを待たせるわけにはいかないといった配慮であろう。

「ようこそおいで下さいました。それで、我が国にはどういった用事で?」

 国王が緊張した様子でムツキに質問をする。ムツキが拠点としているエクリアから見れば世界人間の領域の端の国だ。特別な用もなければ来るところではないと思っている。

「妻達と新婚旅行に海に行きたいと思いましてね」

「新婚旅行、ですか?」

 ムツキには馴染みの言葉だがこの世界には新婚旅行という習慣はない。

「そうですね。妻達とゆっくりとした時間をいつもと違う場所で過ごしたいと思い、エクリアではみられない景色の海を見に来たのですよ。しかし、前の町で海には立ち入り禁止と聞きましたので、確認の為にこうしてこちらによらせていただいたんですよ」

 ムツキの説明に、国王は旅行をよく理解できていないまでも、目的が海である事だけはりかいして成程と頷いた。

「はい。海には立ち入り禁止とさせて頂いております。というのも、海はシードラゴンの縄張り、棲家でして、立ち入るとシードラゴンの怒りを買って国が滅ぶ恐れがあるのでございます」

 その話にムツキ達は立ち入り禁止の理由も納得した。

 エルフの森やドラゴニアはドラゴンと友好関係にあった。

 エクリアのボロネが住む火山は魔物が強く、火山に立ち入る人などいなかったので禁止する必要はなかった。

 しかし、ドラゴンというのは人が敵わない天災の一種である。

 なんの障害もなく立ち入れてしまう海という場所にバカが入ってドラゴンにちょっかいを出して国が滅んだなどとなっては笑い話にもならない。

「なるほど、そうなると私達も入るのは難しいかな」

 ムツキはそのような理由ならば諦めなければいけないと思って発した言葉であったが、国王はムツキの機嫌を損ねたのだと勘違いをした。

「その、あの、一つ提案なのですが、ムツキ様の従えるドラゴン様が一緒ならシードラゴンと交渉できるやもしれません。 いえ! ムツキ様のお力ならばシードラゴンも従えられるかも知れませぬが、私もこの国の王として守らねばならぬものもあるのです」

 国王は、恐縮しながら打開案を提案してくれた。

 ムツキの力を見たことがない国王にとって、ドラゴンを従える力があるのはお披露目で理解しているが、従えりる為の戦闘になれば、国に多大な影響が出るであろうと予測したのであった。

 その為、ボロネとペトレが並び立っていたお披露目の場を思い出して、ドラゴン同士による対話を提案したのであった。

 ムツキとしても、その手があったのかという提案だったので、一度ボロネ達に相談して、行動に移す事、この国には迷惑をかけない事を伝え、この日は城を後にする事になった。

 馬車に乗って一度王都を出て、周りに何もないひらけたところへと移動すると、ムツキのスキル《糸電話》が進化した《通信》のスキルでボロネに連絡を入れるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...