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異世界新婚旅行編
第152話 シーランド王国の事情
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ムツキ達はシーランド王国の王都にやって来て、国王に謁見を申し込んだ。
この頃になると慣れたもので、いつもの2人のサイン入りの書状を使えば、すぐに謁見できる事になった。
いつものように、謁見の広間などではなく、応接室へと通されると、そこでは国王が既に待っていた。
立場的に、平民ではあるが目上のムツキを待たせるわけにはいかないといった配慮であろう。
「ようこそおいで下さいました。それで、我が国にはどういった用事で?」
国王が緊張した様子でムツキに質問をする。ムツキが拠点としているエクリアから見れば世界の端の国だ。特別な用もなければ来るところではないと思っている。
「妻達と新婚旅行に海に行きたいと思いましてね」
「新婚旅行、ですか?」
ムツキには馴染みの言葉だがこの世界には新婚旅行という習慣はない。
「そうですね。妻達とゆっくりとした時間をいつもと違う場所で過ごしたいと思い、エクリアではみられない景色の海を見に来たのですよ。しかし、前の町で海には立ち入り禁止と聞きましたので、確認の為にこうしてこちらによらせていただいたんですよ」
ムツキの説明に、国王は旅行をよく理解できていないまでも、目的が海である事だけはりかいして成程と頷いた。
「はい。海には立ち入り禁止とさせて頂いております。というのも、海はシードラゴンの縄張り、棲家でして、立ち入るとシードラゴンの怒りを買って国が滅ぶ恐れがあるのでございます」
その話にムツキ達は立ち入り禁止の理由も納得した。
エルフの森やドラゴニアはドラゴンと友好関係にあった。
エクリアのボロネが住む火山は魔物が強く、火山に立ち入る人などいなかったので禁止する必要はなかった。
しかし、ドラゴンというのは人が敵わない天災の一種である。
なんの障害もなく立ち入れてしまう海という場所にバカが入ってドラゴンにちょっかいを出して国が滅んだなどとなっては笑い話にもならない。
「なるほど、そうなると私達も入るのは難しいかな」
ムツキはそのような理由ならば諦めなければいけないと思って発した言葉であったが、国王はムツキの機嫌を損ねたのだと勘違いをした。
「その、あの、一つ提案なのですが、ムツキ様の従えるドラゴン様が一緒ならシードラゴンと交渉できるやもしれません。 いえ! ムツキ様のお力ならばシードラゴンも従えられるかも知れませぬが、私もこの国の王として守らねばならぬものもあるのです」
国王は、恐縮しながら打開案を提案してくれた。
ムツキの力を見たことがない国王にとって、ドラゴンを従える力があるのはお披露目で理解しているが、従えりる為の戦闘になれば、国に多大な影響が出るであろうと予測したのであった。
その為、ボロネとペトレが並び立っていたお披露目の場を思い出して、ドラゴン同士による対話を提案したのであった。
ムツキとしても、その手があったのかという提案だったので、一度ボロネ達に相談して、行動に移す事、この国には迷惑をかけない事を伝え、この日は城を後にする事になった。
馬車に乗って一度王都を出て、周りに何もないひらけたところへと移動すると、ムツキのスキル《糸電話》が進化した《通信》のスキルでボロネに連絡を入れるのであった。
この頃になると慣れたもので、いつもの2人のサイン入りの書状を使えば、すぐに謁見できる事になった。
いつものように、謁見の広間などではなく、応接室へと通されると、そこでは国王が既に待っていた。
立場的に、平民ではあるが目上のムツキを待たせるわけにはいかないといった配慮であろう。
「ようこそおいで下さいました。それで、我が国にはどういった用事で?」
国王が緊張した様子でムツキに質問をする。ムツキが拠点としているエクリアから見れば世界の端の国だ。特別な用もなければ来るところではないと思っている。
「妻達と新婚旅行に海に行きたいと思いましてね」
「新婚旅行、ですか?」
ムツキには馴染みの言葉だがこの世界には新婚旅行という習慣はない。
「そうですね。妻達とゆっくりとした時間をいつもと違う場所で過ごしたいと思い、エクリアではみられない景色の海を見に来たのですよ。しかし、前の町で海には立ち入り禁止と聞きましたので、確認の為にこうしてこちらによらせていただいたんですよ」
ムツキの説明に、国王は旅行をよく理解できていないまでも、目的が海である事だけはりかいして成程と頷いた。
「はい。海には立ち入り禁止とさせて頂いております。というのも、海はシードラゴンの縄張り、棲家でして、立ち入るとシードラゴンの怒りを買って国が滅ぶ恐れがあるのでございます」
その話にムツキ達は立ち入り禁止の理由も納得した。
エルフの森やドラゴニアはドラゴンと友好関係にあった。
エクリアのボロネが住む火山は魔物が強く、火山に立ち入る人などいなかったので禁止する必要はなかった。
しかし、ドラゴンというのは人が敵わない天災の一種である。
なんの障害もなく立ち入れてしまう海という場所にバカが入ってドラゴンにちょっかいを出して国が滅んだなどとなっては笑い話にもならない。
「なるほど、そうなると私達も入るのは難しいかな」
ムツキはそのような理由ならば諦めなければいけないと思って発した言葉であったが、国王はムツキの機嫌を損ねたのだと勘違いをした。
「その、あの、一つ提案なのですが、ムツキ様の従えるドラゴン様が一緒ならシードラゴンと交渉できるやもしれません。 いえ! ムツキ様のお力ならばシードラゴンも従えられるかも知れませぬが、私もこの国の王として守らねばならぬものもあるのです」
国王は、恐縮しながら打開案を提案してくれた。
ムツキの力を見たことがない国王にとって、ドラゴンを従える力があるのはお披露目で理解しているが、従えりる為の戦闘になれば、国に多大な影響が出るであろうと予測したのであった。
その為、ボロネとペトレが並び立っていたお披露目の場を思い出して、ドラゴン同士による対話を提案したのであった。
ムツキとしても、その手があったのかという提案だったので、一度ボロネ達に相談して、行動に移す事、この国には迷惑をかけない事を伝え、この日は城を後にする事になった。
馬車に乗って一度王都を出て、周りに何もないひらけたところへと移動すると、ムツキのスキル《糸電話》が進化した《通信》のスキルでボロネに連絡を入れるのであった。
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