112 / 159
異世界居住編
第110話 王として
しおりを挟む
ムツキは家族の時間を過ごして、女性達が仲良く風呂に行った頃に、シュナイゼルに今日の出来事を打ち明けた。
シュナイゼル達も勿論侵入者がいた事に気づいていない。
賊が貴族と口にしなければ内密のまま衛兵に突き出して終わりにしていたであろう。
ただ、貴族となると衛兵につきだしていいものか。なんのお咎めもなく出てこられたらまたちょっかいをかけてくるかもしれない。
なのでシュナイゼルに今後の対応について相談したのだ。
シュナイゼルはまずはどこの貴族であるかの確認が必要だと言い、明日の朝にたまに見に行く事になった。
そして翌日、朝からムツキとシュナイゼルは賊をとらえてある宿へと向かった。
一晩立っているのでもう目覚めている様で、部屋に入ると猿轡をはめた口で何かを言っているのは「んーんー」とうなっていた。
シュナイゼルは犯人の1人の顔を見て貴族の名前を出した。
「オスカール男爵か……」
ため息が出そうになるのをグッと堪え、ムツキに向かって頭を下げた。
「ムツキ、申し訳なかった。これはエクリアの貴族だ」
頭を下げるシュナイゼルに、ムツキは反応を返さなかった。
この話は簡単に許してはいけないのだと分かる。
今後この様なことが起こらない様に対策をしてもらわなければいけない。
エレノアの家族ではなく、エクリア帝国の王として、ムツキの傘下にいる国として、信頼を取り戻さなければいけない。なあなあにしてはいけない案件なのだ。
「オスカール男爵は派閥内でエレノアの婚約者候補と言われていた男です」
ムツキの手がピクリと反応したが、シュナイゼルはその事に気付かずに話を続ける。
「この件について前後関係をキッチリと調べ上げ、今後この様なことが起こらない様にさせていただきます」
シュナイゼルの言葉に、ムツキは昨日の晩に晩酌の酒を注いだ時の様な優しい返事はしない。
「失望させないでくださいね」
語尾が強くならないのはムツキの癖なので仕方がない。
ムツキの言葉を聞いて、シュナイゼルはすぐに待機させていた兵士を呼びつけると、オスカール男爵と他2名を護送用の馬車に乗せて、滞在の期間を大幅に切り上げて帝都へと帰って行った。
ムツキはぶつけようの無い怒りを堪える為に手を握りしめた。
王ではなく、エレノアの父親として家族団欒を過ごすシュナイゼルの笑顔はこの事件によって奪われた。
家族を思い、いつかは第二夫人や他の家族も呼んで団欒したいと言っていた優しい父親の顔を見てしまったから、完全ではないとはいえその幸せな時間が奪われた事に憤りを感じる。
しかし、この件はシュナイゼルに任せたのだ。
ムツキができる事は何もない。
モヤモヤした気持ちを胸に閉じ込めながら、ムツキは家へと帰る道を歩む。
帰った後に、シュナイゼルが急用で帰ってしまったと言う悲報をつげる役目が残っているのだから。
シュナイゼル達も勿論侵入者がいた事に気づいていない。
賊が貴族と口にしなければ内密のまま衛兵に突き出して終わりにしていたであろう。
ただ、貴族となると衛兵につきだしていいものか。なんのお咎めもなく出てこられたらまたちょっかいをかけてくるかもしれない。
なのでシュナイゼルに今後の対応について相談したのだ。
シュナイゼルはまずはどこの貴族であるかの確認が必要だと言い、明日の朝にたまに見に行く事になった。
そして翌日、朝からムツキとシュナイゼルは賊をとらえてある宿へと向かった。
一晩立っているのでもう目覚めている様で、部屋に入ると猿轡をはめた口で何かを言っているのは「んーんー」とうなっていた。
シュナイゼルは犯人の1人の顔を見て貴族の名前を出した。
「オスカール男爵か……」
ため息が出そうになるのをグッと堪え、ムツキに向かって頭を下げた。
「ムツキ、申し訳なかった。これはエクリアの貴族だ」
頭を下げるシュナイゼルに、ムツキは反応を返さなかった。
この話は簡単に許してはいけないのだと分かる。
今後この様なことが起こらない様に対策をしてもらわなければいけない。
エレノアの家族ではなく、エクリア帝国の王として、ムツキの傘下にいる国として、信頼を取り戻さなければいけない。なあなあにしてはいけない案件なのだ。
「オスカール男爵は派閥内でエレノアの婚約者候補と言われていた男です」
ムツキの手がピクリと反応したが、シュナイゼルはその事に気付かずに話を続ける。
「この件について前後関係をキッチリと調べ上げ、今後この様なことが起こらない様にさせていただきます」
シュナイゼルの言葉に、ムツキは昨日の晩に晩酌の酒を注いだ時の様な優しい返事はしない。
「失望させないでくださいね」
語尾が強くならないのはムツキの癖なので仕方がない。
ムツキの言葉を聞いて、シュナイゼルはすぐに待機させていた兵士を呼びつけると、オスカール男爵と他2名を護送用の馬車に乗せて、滞在の期間を大幅に切り上げて帝都へと帰って行った。
ムツキはぶつけようの無い怒りを堪える為に手を握りしめた。
王ではなく、エレノアの父親として家族団欒を過ごすシュナイゼルの笑顔はこの事件によって奪われた。
家族を思い、いつかは第二夫人や他の家族も呼んで団欒したいと言っていた優しい父親の顔を見てしまったから、完全ではないとはいえその幸せな時間が奪われた事に憤りを感じる。
しかし、この件はシュナイゼルに任せたのだ。
ムツキができる事は何もない。
モヤモヤした気持ちを胸に閉じ込めながら、ムツキは家へと帰る道を歩む。
帰った後に、シュナイゼルが急用で帰ってしまったと言う悲報をつげる役目が残っているのだから。
47
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる