75 / 159
異世界転移編
第75話 戦争2
しおりを挟む
ムツキが戻ってきたのを見て、エレノアとシャーリーは揃って首を傾げた。
「どうなさいましたか?」
ムツキならば、戻って来るのは戦争が終わった時だと思っていたので、エレノアはそう質問した。
ダスティブ王家の軍行は止まったものの、見た様子で壊滅も撤退もしていない為、当然の欺瞞であった。
ここに来る時、ムツキは1人で来ようとしていたのだが、ボロネが「奥方はいいのか?」と聞いてきたのだ。
その理由は、ムツキであれば、戦争はすぐ終わるだろうから、終わった後に何処かに出かけて帰ってかればいいだろうとドライブに誘うかの様なセリフであった。
まあ、ボロネとしては、この前の移動でエレノアとシャーリーを背中に乗せたペトレから「奥方を任された私は信頼されている」とマウントを取られたので自分も背中に乗せたかったと言う理由があったのだが……
それはさておき、ボロネも自分勝手な竜を含んでいようとも、主の奥様を危険に晒す提案などする訳はないのだ。
なので、エレノアとシャーリーが付いてきても怪我もしない様な戦争。だと思っていた。
「ああ、ちょっとこの人達を避難させにね」
ムツキは、米俵を両脇に抱える様に2人の少女をクイッと持ち上げて皆に見せた。
「ムツキ様、女性はその様に抱える物ではありません」
2人の時とは違い、落ち着いた様子のシャーリーにそう言われて、ムツキは苦笑いでミサキとアキホを地面に降ろした。
「それで、そのお二人は?」
「ああ、同郷の人でね」
「それで助けて来られたのですね」
エレノアが納得と言った言葉を発したが、ムツキはゆっくりと首を振った。
「違うのですか?」
「ああ。この子達はね、やりたくもない事を奴隷の魔道具で無理矢理させられていたんだよ。 そう、日本での私の様に、労働基準法なんてあったもんじゃない何が働きがいのある職場だ、やる気のある人材を求めるだ、ただ都合のいい様に働くコマが欲しいだけじゃないか職場に出勤しなくていい自分のペースでできる仕事だと偽り蓋を開けてみればノルマノルマノルマ。出社していない事、自由にできりる事を理由にキャパオーバーの仕事を押し付けてノルマが終わらなければ減給、そりゃ労働時間は増えるでしょうよキャパオーバーだもの、他社より見た目の給料が高くとも時間で割れば時給は雀の涙じゃないか、最低賃金なんて上がっても時給計算じゃなけりゃそんなの関係ないんだよ、精神的に追い詰めて辞めると相談すれば何かにつけて他社のデメリットを上げて有耶無耶にする! ブラック企業反対! 私はブラックな状態が許せなかったのです!」
「そ、そうなのですね……」
エレノアは、ムツキの何か押してはいけないスイッチを押してしまったのだと口角がひくつくのを必死に堪えた。
そばで見ていたシャーリーも気をつけようと心に決めたのであった。
「そ、それでムツキ様、何かダスティブ兵の様子がおかしかったようですけと?」
話題を変える為に、エレノアはムツキにそう質問した。
「え、ああ、そうなんですよ。なんか吹き飛ばして骨が折れたりとか怪我もある筈なのに平気な顔で立ち上がって来るんですよね」
「あ、あの……」
ムツキの疑問の声に、ミサキが声を上げた。
「私のスキルで、痛覚を無効化して回復術で瞬時に回復しているんです。だから、慣れれば死ぬまで立ち上がる無敵の軍団が出来上がるんです」
「な、なんですって! またブラックな所が出て来たじゃありませんか、治るからと言って怪我をしても無限に戦わせるなんて……」
また、ムツキの変なスイッチが入ったようでる。
ムツキは言葉を区切ると、怒りのせいかプルプルと握った手を振るわせた。
「ブラックな働き方をさせて高みの見物なんていい度胸じゃないですか! そのブラック国家私が潰してあげましょう!」
まず、ムツキはミサキに麻酔と回復術を解除させた。
そして代わりに自分の回復術を使った。
ムツキの回復術はミサキのSSと違ってAである。
なので、瞬時に回復することはない。死なない程度である。そうして、先程と同じ様に下級風魔法で吹き飛ばす。
そうすれば、今度は地面への落下で骨が折れ、痛覚もあり、死屍累々のダスティブ兵の出来上がりである。
数回吹き飛ばせば、立ち上がれずに痛さで助けを求める仲間を見て、無敵では無くなった自分達の状況を理解したダスティブ兵達は敗走を開始する。
これまで痛さの耐性が無いからこそ、恐怖は膨れ上がり戦う気など無くなるのだ。
特に、前線に送られる若い兵士には効果的面であった。
ダスティブ兵の敗走を見ながら、ムツキはボロネに乗ってダスティブの王都まで移動する。
懐かしい、ここでリフドンに出会わなければ自分の今は無かっただろう。
感慨深いが、今はそんな事を考えている場合では無い。
「ムツキ様、ここで手心を加えると、またつけ上がる国が出て来るぞ。ムツキ様の庇護下に手を出せばどうなるかを知らしめなければいけない」
「そうですよね。私がいない時に手を出されれば、今回みたいに不死の軍団がやって来れば大切な人を失うかもしれない」
ムツキは、難しい顔でそう返事をした。
「まさか、自分がトロッコ問題の当事者になるとは思いませんでした」
トロッコ問題とは少し違うが、自分の大切な人達を守る為に、少数の命を奪う。本質は同じだ。
先程風魔法を使ったのはエクリアの田畑を守る為。
このダスティブ王国の王都なら気を使う必要はない。
ムツキは、以前にレベルを上げる為に、魔物を爆撃したのと同じ様に、ダスティブ王国の王城に向かって爆炎魔法を落とした。
その日、ダスティブ王国の王城は火柱が上がり、消滅した。
そして、戦争は終了したのであった。
「どうなさいましたか?」
ムツキならば、戻って来るのは戦争が終わった時だと思っていたので、エレノアはそう質問した。
ダスティブ王家の軍行は止まったものの、見た様子で壊滅も撤退もしていない為、当然の欺瞞であった。
ここに来る時、ムツキは1人で来ようとしていたのだが、ボロネが「奥方はいいのか?」と聞いてきたのだ。
その理由は、ムツキであれば、戦争はすぐ終わるだろうから、終わった後に何処かに出かけて帰ってかればいいだろうとドライブに誘うかの様なセリフであった。
まあ、ボロネとしては、この前の移動でエレノアとシャーリーを背中に乗せたペトレから「奥方を任された私は信頼されている」とマウントを取られたので自分も背中に乗せたかったと言う理由があったのだが……
それはさておき、ボロネも自分勝手な竜を含んでいようとも、主の奥様を危険に晒す提案などする訳はないのだ。
なので、エレノアとシャーリーが付いてきても怪我もしない様な戦争。だと思っていた。
「ああ、ちょっとこの人達を避難させにね」
ムツキは、米俵を両脇に抱える様に2人の少女をクイッと持ち上げて皆に見せた。
「ムツキ様、女性はその様に抱える物ではありません」
2人の時とは違い、落ち着いた様子のシャーリーにそう言われて、ムツキは苦笑いでミサキとアキホを地面に降ろした。
「それで、そのお二人は?」
「ああ、同郷の人でね」
「それで助けて来られたのですね」
エレノアが納得と言った言葉を発したが、ムツキはゆっくりと首を振った。
「違うのですか?」
「ああ。この子達はね、やりたくもない事を奴隷の魔道具で無理矢理させられていたんだよ。 そう、日本での私の様に、労働基準法なんてあったもんじゃない何が働きがいのある職場だ、やる気のある人材を求めるだ、ただ都合のいい様に働くコマが欲しいだけじゃないか職場に出勤しなくていい自分のペースでできる仕事だと偽り蓋を開けてみればノルマノルマノルマ。出社していない事、自由にできりる事を理由にキャパオーバーの仕事を押し付けてノルマが終わらなければ減給、そりゃ労働時間は増えるでしょうよキャパオーバーだもの、他社より見た目の給料が高くとも時間で割れば時給は雀の涙じゃないか、最低賃金なんて上がっても時給計算じゃなけりゃそんなの関係ないんだよ、精神的に追い詰めて辞めると相談すれば何かにつけて他社のデメリットを上げて有耶無耶にする! ブラック企業反対! 私はブラックな状態が許せなかったのです!」
「そ、そうなのですね……」
エレノアは、ムツキの何か押してはいけないスイッチを押してしまったのだと口角がひくつくのを必死に堪えた。
そばで見ていたシャーリーも気をつけようと心に決めたのであった。
「そ、それでムツキ様、何かダスティブ兵の様子がおかしかったようですけと?」
話題を変える為に、エレノアはムツキにそう質問した。
「え、ああ、そうなんですよ。なんか吹き飛ばして骨が折れたりとか怪我もある筈なのに平気な顔で立ち上がって来るんですよね」
「あ、あの……」
ムツキの疑問の声に、ミサキが声を上げた。
「私のスキルで、痛覚を無効化して回復術で瞬時に回復しているんです。だから、慣れれば死ぬまで立ち上がる無敵の軍団が出来上がるんです」
「な、なんですって! またブラックな所が出て来たじゃありませんか、治るからと言って怪我をしても無限に戦わせるなんて……」
また、ムツキの変なスイッチが入ったようでる。
ムツキは言葉を区切ると、怒りのせいかプルプルと握った手を振るわせた。
「ブラックな働き方をさせて高みの見物なんていい度胸じゃないですか! そのブラック国家私が潰してあげましょう!」
まず、ムツキはミサキに麻酔と回復術を解除させた。
そして代わりに自分の回復術を使った。
ムツキの回復術はミサキのSSと違ってAである。
なので、瞬時に回復することはない。死なない程度である。そうして、先程と同じ様に下級風魔法で吹き飛ばす。
そうすれば、今度は地面への落下で骨が折れ、痛覚もあり、死屍累々のダスティブ兵の出来上がりである。
数回吹き飛ばせば、立ち上がれずに痛さで助けを求める仲間を見て、無敵では無くなった自分達の状況を理解したダスティブ兵達は敗走を開始する。
これまで痛さの耐性が無いからこそ、恐怖は膨れ上がり戦う気など無くなるのだ。
特に、前線に送られる若い兵士には効果的面であった。
ダスティブ兵の敗走を見ながら、ムツキはボロネに乗ってダスティブの王都まで移動する。
懐かしい、ここでリフドンに出会わなければ自分の今は無かっただろう。
感慨深いが、今はそんな事を考えている場合では無い。
「ムツキ様、ここで手心を加えると、またつけ上がる国が出て来るぞ。ムツキ様の庇護下に手を出せばどうなるかを知らしめなければいけない」
「そうですよね。私がいない時に手を出されれば、今回みたいに不死の軍団がやって来れば大切な人を失うかもしれない」
ムツキは、難しい顔でそう返事をした。
「まさか、自分がトロッコ問題の当事者になるとは思いませんでした」
トロッコ問題とは少し違うが、自分の大切な人達を守る為に、少数の命を奪う。本質は同じだ。
先程風魔法を使ったのはエクリアの田畑を守る為。
このダスティブ王国の王都なら気を使う必要はない。
ムツキは、以前にレベルを上げる為に、魔物を爆撃したのと同じ様に、ダスティブ王国の王城に向かって爆炎魔法を落とした。
その日、ダスティブ王国の王城は火柱が上がり、消滅した。
そして、戦争は終了したのであった。
81
お気に入りに追加
256
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる