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異世界転移編
第53話交友パーティー1
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その日、ドラゴニア聖国ではパーティーが開かれていた。
あるドラゴニア聖国とある青年との友好を願ってのパーティーである。
パーティーには、ドラゴニアの貴族達が自分の妻や子供達を連れて沢山出席していた。
貴族達にとって、自分の息子や娘の顔をムツキに覚えてもらうチャンスであったからだ。
貴族達は派閥や他のグループに分かれて会話しており、ご婦人達は婦人達。次代の子供達も、自分達で仲のいいグループに分かれてパーティーを楽しんでいた。
そのパーティー会場には、シャーリーも出席していた。
ムツキは後から第一夫人であるエレノアと共にやってくる為に、1人先に会場入りしたのだ。
父や兄と共に来たのだが、2人は自分達の派閥の方に行ってしまい、シャーリーは壁際の花となっていた。
シャーリーは壁際に立って飲み物を飲んでいた。
特に仲のいい友達もいない為、パーティーの際はこうして壁際の花となっていることが多かった。
もう少し若い時は話しかけてくる殿方も多少は居たが、周りの子達よりも年齢が上になり、女性としての魅力に欠ける自分に話しかけて来る殿方もいなくなった。
しかし、ふと、ムツキに言われた言葉が頭に浮かんできた。
『シャーリー、君はとても綺麗だ。私には勿体無いくらいに』
面と向かって愛の言葉など囁かれたことのないシャーリーはその言葉を思い出して顔を赤くした。
落ち着く為に飲み物を飲もうとしたが、グラスが空になっていた。
ウェイターに声を掛けて新しい飲み物の入ったグラスと交換してもらって、一息ついた所で、シャーリーに声が掛けられた。
「シャーリーさん、ご機嫌はいかがかしら?」
「トリエ様…」
正直、今日1番声を掛けられたくなかった人だ。
今の私の状況だと、対応が難しい人ナンバーワンなのだ。
ムツキ様はこの国を傘下に納められたので立場的にはアグニール王よりも上。
その妻になる予定の私もそれなりの立場と言うことになる。
しかし、その正式な発表は今日のこのパーティーで行われるのだ。
だから、今現状はいつもの様にトリエ様が私にちょっかいをかけて来ても問題はない。
私としても、年下のトリエ様に絡まれるのは負けず嫌いな妹を見ている様で可愛い物なのだが、この後、発表になった後にトリエ様が恥をかいてしまわないかがとても心配である。
実は自分より立場が上の人に絡みに行っていましたとなっては、今連れている取り巻きの方達も離れて行くかも知れない。
シャーリーがそんな事を考えてるとはつゆしらず、いつもの様にトリエの取り巻きの貴族の子供達もトリエをヨイショする為にシャーリーに話し始めた。
「シャーリー様、今日のドレスは少し変わっていますよね。なんだが、鮮やかさに欠けてとても貧相ですわ」
今日のシャーリーが着ているドレスはいつもと違っていた為、壁際の花だろうと目を引いたのであった。
パーティー会場に居る女性が着ているドレスは、貴族のドレスと言った風にスカートに膨らみを待たせた物で、色もクリーム色から鮮やかな物が多い。
それに対してシャーリーのドレスは、クールで綺麗なシャーリーのイメージに合う様なタイトドレスに羽やマントの様にオーガンジーの生地が重ねられたこの世界では斬新な黒のドレスだった。
そして、その黒が唯一身につけた手首の蒼白い綺麗な宝石の付いたブレスレットの輝きを際立たせた。
ドレスを馬鹿にした発言に、シャーリーはイラッとした。
これは、ムツキがシャーリーにはふんわりしたドレスよりもカッコいいドレスが似合うと言って作ってくれた物だ。
黒い色も、エレノアがムツキの髪と同じ黒を纏う様にアドバイスをくれたお気に入りの色だ。
いつもは笑って流す様な言葉に、反射的に反論してしまっていた。
「これは、私の旦那さまが下さった大切な物ですから」
「なによ、トリエ様に文句でも言おうって言うの?」
反論したのは同じ伯爵位の家の娘であり、トリエに行ったわけではないのだが、この人の中ではそうなってしまった様だ。
それとも、トリエに口を出させる為にわざとかな?
でも、ムツキの事は皆も知っているはず。
このパーティーはその為に開かれている訳だし、正式な発表はまだとしても、あの時に紹介されている訳だから、貴族の間ではシャーリーの嫁入りは周知の事実である。
だから、ムツキが贈ってくれたこのドレスをこれ以上馬鹿にしたりできない。
そのはずであった。
「へえ。もしかして、そのよく分からない宝石のブレスレットも?」
「はい。ムツキ様が贈って下さいました」
「貧相なドレスによく分からない宝石とは、やっぱり、平民の贈り物はセンスが無いな」
「な…」
取り巻きの貴族の公子の発言にシャーリーは言葉が出なかった。
それは、心の中で思っていたとしても口に出してはいけない発言だったからだ。
「そんな事を言っては失礼よ。クククッ」
先程の伯爵家の娘が煽る様に笑っている。
「まあ、シャーリーを選ぶ様な変わり者なら仕方がないのかも?いえ、私と話せば簡単に心変わりするかもね」
咎めなければいけないはずのトリエまでもニヤニヤと笑ってこの発言である。
シャーリーはこれ以上、目の前の集団に口を開かせたら最悪の場合、ドラゴニアが滅ぶ可能性を感じて咎める為に口を開こうとした。
「貴方達___」
「シャーリー、やっぱりそのドレスは良く似合うね。待たせてすまない。君の綺麗な姿を早く見たくて早めにここまで来てしまったよ」
言葉の途中で話しかけられ、驚いて振り向いたシャーリーの瞳には、優しく微笑むムツキの顔が飛び込んできたのだった。
あるドラゴニア聖国とある青年との友好を願ってのパーティーである。
パーティーには、ドラゴニアの貴族達が自分の妻や子供達を連れて沢山出席していた。
貴族達にとって、自分の息子や娘の顔をムツキに覚えてもらうチャンスであったからだ。
貴族達は派閥や他のグループに分かれて会話しており、ご婦人達は婦人達。次代の子供達も、自分達で仲のいいグループに分かれてパーティーを楽しんでいた。
そのパーティー会場には、シャーリーも出席していた。
ムツキは後から第一夫人であるエレノアと共にやってくる為に、1人先に会場入りしたのだ。
父や兄と共に来たのだが、2人は自分達の派閥の方に行ってしまい、シャーリーは壁際の花となっていた。
シャーリーは壁際に立って飲み物を飲んでいた。
特に仲のいい友達もいない為、パーティーの際はこうして壁際の花となっていることが多かった。
もう少し若い時は話しかけてくる殿方も多少は居たが、周りの子達よりも年齢が上になり、女性としての魅力に欠ける自分に話しかけて来る殿方もいなくなった。
しかし、ふと、ムツキに言われた言葉が頭に浮かんできた。
『シャーリー、君はとても綺麗だ。私には勿体無いくらいに』
面と向かって愛の言葉など囁かれたことのないシャーリーはその言葉を思い出して顔を赤くした。
落ち着く為に飲み物を飲もうとしたが、グラスが空になっていた。
ウェイターに声を掛けて新しい飲み物の入ったグラスと交換してもらって、一息ついた所で、シャーリーに声が掛けられた。
「シャーリーさん、ご機嫌はいかがかしら?」
「トリエ様…」
正直、今日1番声を掛けられたくなかった人だ。
今の私の状況だと、対応が難しい人ナンバーワンなのだ。
ムツキ様はこの国を傘下に納められたので立場的にはアグニール王よりも上。
その妻になる予定の私もそれなりの立場と言うことになる。
しかし、その正式な発表は今日のこのパーティーで行われるのだ。
だから、今現状はいつもの様にトリエ様が私にちょっかいをかけて来ても問題はない。
私としても、年下のトリエ様に絡まれるのは負けず嫌いな妹を見ている様で可愛い物なのだが、この後、発表になった後にトリエ様が恥をかいてしまわないかがとても心配である。
実は自分より立場が上の人に絡みに行っていましたとなっては、今連れている取り巻きの方達も離れて行くかも知れない。
シャーリーがそんな事を考えてるとはつゆしらず、いつもの様にトリエの取り巻きの貴族の子供達もトリエをヨイショする為にシャーリーに話し始めた。
「シャーリー様、今日のドレスは少し変わっていますよね。なんだが、鮮やかさに欠けてとても貧相ですわ」
今日のシャーリーが着ているドレスはいつもと違っていた為、壁際の花だろうと目を引いたのであった。
パーティー会場に居る女性が着ているドレスは、貴族のドレスと言った風にスカートに膨らみを待たせた物で、色もクリーム色から鮮やかな物が多い。
それに対してシャーリーのドレスは、クールで綺麗なシャーリーのイメージに合う様なタイトドレスに羽やマントの様にオーガンジーの生地が重ねられたこの世界では斬新な黒のドレスだった。
そして、その黒が唯一身につけた手首の蒼白い綺麗な宝石の付いたブレスレットの輝きを際立たせた。
ドレスを馬鹿にした発言に、シャーリーはイラッとした。
これは、ムツキがシャーリーにはふんわりしたドレスよりもカッコいいドレスが似合うと言って作ってくれた物だ。
黒い色も、エレノアがムツキの髪と同じ黒を纏う様にアドバイスをくれたお気に入りの色だ。
いつもは笑って流す様な言葉に、反射的に反論してしまっていた。
「これは、私の旦那さまが下さった大切な物ですから」
「なによ、トリエ様に文句でも言おうって言うの?」
反論したのは同じ伯爵位の家の娘であり、トリエに行ったわけではないのだが、この人の中ではそうなってしまった様だ。
それとも、トリエに口を出させる為にわざとかな?
でも、ムツキの事は皆も知っているはず。
このパーティーはその為に開かれている訳だし、正式な発表はまだとしても、あの時に紹介されている訳だから、貴族の間ではシャーリーの嫁入りは周知の事実である。
だから、ムツキが贈ってくれたこのドレスをこれ以上馬鹿にしたりできない。
そのはずであった。
「へえ。もしかして、そのよく分からない宝石のブレスレットも?」
「はい。ムツキ様が贈って下さいました」
「貧相なドレスによく分からない宝石とは、やっぱり、平民の贈り物はセンスが無いな」
「な…」
取り巻きの貴族の公子の発言にシャーリーは言葉が出なかった。
それは、心の中で思っていたとしても口に出してはいけない発言だったからだ。
「そんな事を言っては失礼よ。クククッ」
先程の伯爵家の娘が煽る様に笑っている。
「まあ、シャーリーを選ぶ様な変わり者なら仕方がないのかも?いえ、私と話せば簡単に心変わりするかもね」
咎めなければいけないはずのトリエまでもニヤニヤと笑ってこの発言である。
シャーリーはこれ以上、目の前の集団に口を開かせたら最悪の場合、ドラゴニアが滅ぶ可能性を感じて咎める為に口を開こうとした。
「貴方達___」
「シャーリー、やっぱりそのドレスは良く似合うね。待たせてすまない。君の綺麗な姿を早く見たくて早めにここまで来てしまったよ」
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