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異世界転移編
第17話 玉座の間
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ムツキとリフドンはキャニーに連れられて玉座がある部屋へとやって来た。
貴族であろう人達が並ぶ光景は圧巻の一言である。
もしかしたら召喚された時もこんな状況だったのかもしれないが、あの時は仕事の疲れでぼうっとしていてあまり記憶にない。
通された場所は貴族の人達とは離れた場所で、少し目立ってしまうのだが、貴族でない者が同列に並ぶのはまずいのだろう。
ムツキは始まるのをワクワクしながら待っていた。
まるでゲームで始まりに勇者が王様に言葉をもらう様な光景をこの解像度、いやリアルで見れるのだから。
少し時間を待つと始まる様で、貴族達は先程まで話していたのに途端に静かになった。
この玉座の間の大きな扉が開いて、主役の騎士が入場して来た。
中央を真っ直ぐに歩いて玉座を見上げる位置にまで来ると、鎧のフルフェイスの兜をとって膝をついた。
ムツキは騎士の顔にどこか見覚えがある様な気がしたが、気のせいだろうと成り行きを見守った。
そして、玉座の後ろの扉から王族の入場が始まった。
まず、王子王女であろう人達が玉座の後ろに分かれて立ち、そして、王妃が玉座から一つ空けて隣の席に腰を下ろした。
そして、シュナイゼル王が入場して玉座に座る。間の空席は空いたままである。
そしてシュナイゼル王が貴族達を見渡し、跪く騎士を見て頷き口を開こうとした所で玉座にかわいい声が響き渡った。
「あの方は!」
___________________________________________
私は今日は朝から憂鬱だった。
今日は私を危機から救った事になっている騎士が叙爵され貴族の仲間入りを果たす。
功績を上げていない人が叙爵されてしまう。
私は不正の片棒を担いでいる様で嫌だった。
何度かお父様に説明しようとしたのだが、その度にユリーネは盛りに盛った騎士の話で割って入って来て、お父様は苦笑いだが、お義姉様が騎士物語を楽しそうに聞いていて、私が口を挟もうとすればお義姉様やお義母様から睨まれてしまうので、ずるずると言うに言えず、遂にはこの日を迎えてしまった。
そして、お兄様やお義姉様、お義弟、お義妹、お義母様とと一緒に玉座の間の王族待合室にて出番を待つ。
何処かへ行かれていたお父様が戻ると、玉座の間の入場が始まり、順番を待ってしきたり通りに私も入場した。
お父様が貴族達を見回すのに釣られて私も玉座を見渡す。
小さい頃から式典等でここに立つのは慣れた物だ。ただただマナー講習で習った様に綺麗な立ち方で笑顔で立っていればいい。
勿論、お父様の話をしっかりと聞いていなければいけないが。
見渡した光景はいつもの式典とさほど変わらない物だったが、貴族席から離れて、いつもは人がいない所に人が居た。
いつもと違う違和感にそちらを注視すると、なんとそこに立っていたのはあの時の黒髪、そしてあの服。あの時は後ろ姿しか解らなかったが珍しい黒髪は忘れもしなかった。
「あの方は!」
気づいたら私はそう叫んでしまっていた。
お父様が、ギョッとしてこちらを見ている。
私のマナー違反な態度を見て、反対側にいるお義姉様がニタニタと笑っているのが見えた。
「エレノア、どうしたんだい?」
お父様の声は優しい声だった。式典の時にこの様な失態、怒られても仕方がないのに。
しかし、その優しい声のおかげで萎縮せずに済んだ。
そして、言わなければいけないと覚悟を決めた。
助けてくださった彼がここにいるなら、その功績を間違った人に渡してはいけないと思った。
今なら、ユリーネやお義姉様に発言を邪魔されない。
私は、覚悟をもって真実を話す為に口を開いた。
貴族であろう人達が並ぶ光景は圧巻の一言である。
もしかしたら召喚された時もこんな状況だったのかもしれないが、あの時は仕事の疲れでぼうっとしていてあまり記憶にない。
通された場所は貴族の人達とは離れた場所で、少し目立ってしまうのだが、貴族でない者が同列に並ぶのはまずいのだろう。
ムツキは始まるのをワクワクしながら待っていた。
まるでゲームで始まりに勇者が王様に言葉をもらう様な光景をこの解像度、いやリアルで見れるのだから。
少し時間を待つと始まる様で、貴族達は先程まで話していたのに途端に静かになった。
この玉座の間の大きな扉が開いて、主役の騎士が入場して来た。
中央を真っ直ぐに歩いて玉座を見上げる位置にまで来ると、鎧のフルフェイスの兜をとって膝をついた。
ムツキは騎士の顔にどこか見覚えがある様な気がしたが、気のせいだろうと成り行きを見守った。
そして、玉座の後ろの扉から王族の入場が始まった。
まず、王子王女であろう人達が玉座の後ろに分かれて立ち、そして、王妃が玉座から一つ空けて隣の席に腰を下ろした。
そして、シュナイゼル王が入場して玉座に座る。間の空席は空いたままである。
そしてシュナイゼル王が貴族達を見渡し、跪く騎士を見て頷き口を開こうとした所で玉座にかわいい声が響き渡った。
「あの方は!」
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私は今日は朝から憂鬱だった。
今日は私を危機から救った事になっている騎士が叙爵され貴族の仲間入りを果たす。
功績を上げていない人が叙爵されてしまう。
私は不正の片棒を担いでいる様で嫌だった。
何度かお父様に説明しようとしたのだが、その度にユリーネは盛りに盛った騎士の話で割って入って来て、お父様は苦笑いだが、お義姉様が騎士物語を楽しそうに聞いていて、私が口を挟もうとすればお義姉様やお義母様から睨まれてしまうので、ずるずると言うに言えず、遂にはこの日を迎えてしまった。
そして、お兄様やお義姉様、お義弟、お義妹、お義母様とと一緒に玉座の間の王族待合室にて出番を待つ。
何処かへ行かれていたお父様が戻ると、玉座の間の入場が始まり、順番を待ってしきたり通りに私も入場した。
お父様が貴族達を見回すのに釣られて私も玉座を見渡す。
小さい頃から式典等でここに立つのは慣れた物だ。ただただマナー講習で習った様に綺麗な立ち方で笑顔で立っていればいい。
勿論、お父様の話をしっかりと聞いていなければいけないが。
見渡した光景はいつもの式典とさほど変わらない物だったが、貴族席から離れて、いつもは人がいない所に人が居た。
いつもと違う違和感にそちらを注視すると、なんとそこに立っていたのはあの時の黒髪、そしてあの服。あの時は後ろ姿しか解らなかったが珍しい黒髪は忘れもしなかった。
「あの方は!」
気づいたら私はそう叫んでしまっていた。
お父様が、ギョッとしてこちらを見ている。
私のマナー違反な態度を見て、反対側にいるお義姉様がニタニタと笑っているのが見えた。
「エレノア、どうしたんだい?」
お父様の声は優しい声だった。式典の時にこの様な失態、怒られても仕方がないのに。
しかし、その優しい声のおかげで萎縮せずに済んだ。
そして、言わなければいけないと覚悟を決めた。
助けてくださった彼がここにいるなら、その功績を間違った人に渡してはいけないと思った。
今なら、ユリーネやお義姉様に発言を邪魔されない。
私は、覚悟をもって真実を話す為に口を開いた。
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