ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

文字の大きさ
上 下
252 / 297

ありのままと自分軸

しおりを挟む
食事の後片付けも3人でワイワイしながら済ませた。なんだか楽しいな、
こういうの。『弦ちゃんがここに来て、3人で暮らしたら、今以上に
楽しくなるかも!?』なんて思っちゃった(笑)

食器を洗う人、洗った食器を拭く人、拭いた食器を片付ける人って
分担したら、あっという間に終わって、今は、コーヒーを淹れてる。
もちろん、コーヒーを淹れるのは私。アトランティーナは、弦ちゃんが
買って来てくれたデザートをお皿に並べてる。弦ちゃんは、私たちの傍に居て、
ニコニコしながら様子を見守ってる。こういう穏やかな感じ、心が
満たされるよね。本当の幸せって、こういう感じなのかもって、改めて
思っちゃった。

私がまだ小さい時にママが死んじゃったから、家族のぬくもりっていうの?
よく分かんないまま育っちゃったからね。パパが一生懸命、私を育ててくれた
ことは分かってるけど、やっぱり、家にはお母さんが必要なんだなって
痛感してる。

だからといって、パパが再婚して、新しいお母さんが来て欲しかったのかって
聞かれたら、それもまた違うし。なんか、ムズカシイよね(苦笑)
何が正解なのか、人によって、家族によって違うだろうし、そもそも正解も
不正解もないんだよね(汗)

って考えると、全てにおいて、そうなんじゃないかなって思うんだ。
家族のことだけじゃなくて、仕事のことにも、恋愛にも、結婚にも、
暮らし方や生き方にも、正解も不正解もないんだよ。

だって、人によって、感じ方も価値観も違うんだから、世の中的な成功とか、
幸せなんて、ある方がおかしいんじゃない?誰が決めるのって感じでしょ?
自分が幸せだって感じたら、それが自分の幸せだし、自分の心が満足して、
満ち足りてたら、それが、自分の成功なんだよね。

恋愛もそう。世の中的に見た理想の関係なんて、何の役にも立たないって
いうか、それに当てはまる人の方が実は少ないんだと思う。

<週に一度くらいは会わなきゃつきあってるとは言わない>なんて
言ってる人がいたけど、そんなことはないと思うんだよね。人それぞれで
良いと思う。自分のペースを知って、そのペースに合う人とつきあえば
良いんだよ。そんな世の中が提示した無責任な物差しで自分を測ってたら、
いつまで経っても、自分にとっての幸せとは出会えないと思う。

きっとね、これが、ありのままの自分で生きるってことなんだと思う。
化粧したら、ありのままじゃないとかって思ってる人がいるみたいなんだけど、
そうじゃないと思う。すっぴんで過ごしてても、ありのままの自分で
生きていない人がいると思うから。

自分軸で、自分の心のままに生きること、それが、ありのままで生きること
なんだと思う。自分軸っていうのは、自分が思う、感じる、心地良い自分のこと。
誰かに聞く必要なんてなくて、自分が良いと思う自分、自分が心地良いと
感じる自分で居ることを貫くことが、自分軸を確立させることなんだと思うんだ。

恋をする相手も異性じゃなきゃいけないってこともないだろうしね。
大多数の人と違うと差別されたりするじゃない?あれも変な話だよね(汗)
だって、みんながみんな同じ価値観でいたら、新しいことなんて何一つ
生まれないんだよ!

たぶん、歴史に名を残している人たちも当時の社会では、変わり者とかって
言われてたと思うんだよね(笑)それでも、それを貫くことで、新しいものを
発見したり、生み出したりして、後世になって賞賛されてるんだと思うの。

だから、他の人と一緒である必要はないんだよね。自分の思いとか、考えとか、
もっと一人一人が大事にした方が良いんだよ、絶対!他の人と考え方や感じ方が
違ったとしても、それは自分の個性であって、否定されることじゃないでしょ?

あとさ、国籍のこともそう。前に派遣社員として働いてた人で、仲良くなった人が
居たの。何がキッカケで仲良くなったのかは忘れちゃったんだけど、会社帰りに
ご飯食べに行ったりとかしてたんだよね。

その彼女と最初に仕事帰りにご飯に行った時に、ちょっとビックリすることが
あったの。お店に入って、席に座った途端、彼女が、いきなり真面目な顔になって
背筋を伸ばしたの。『えっ、何!?』って思ってたら、信じられない話を
聞かされたんだよね(汗)

「あの、最初に話しておきたいことがあるんですけど、良いですか?」

「う、うん、何?」

「あの、私・・・実は、国籍が韓国なんです。ただ、生まれたのも育ったのも
日本なので、韓国語は話せないんですけどね(笑)」

「へぇ~、そうなんだ。で、何を話しておきたいの?」

「だから、あの、私が韓国人だっていうことを話しておかないとって
思ったんです」

「あっ、そうなんだ。ごめん(苦笑)でも、なんで?だって、韓国人とかって
関係ないでしょ?」

「ありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです!」

「えっ、なんで?だって、何か関係ある?」

「実は、もう5年以上前の話なんですけど、私、つきあっていた人がいて、
結婚の話になった時、相手のご両親から、私が韓国籍だということが理由で、
反対されてしまったんです。それで、そのまま別れてしまったことが
あって・・・。

だから、これからは、私が韓国籍だということを最初に伝えようって
決めたんです。久遠さんは、私が韓国籍だって分かっても、またご飯とか、
一緒に行ってくださいますか?」

「えっ、もちろんだよ!だって、さっきも言ったけど、韓国籍だろうが、
日本国籍だろうが、関係なくない?何が問題なのか、私には、さっぱり
分かんないよ。それより、韓国といえばチマチョゴリ。あれ、可愛いよね。
実は私、結構好きなんだ(笑)」

「ありがとうございます!でも、私、着たことないんですよ(汗)
でも、本当にありがとうございます。世の中には、国籍を気にする人って、
割と多いんですよ(苦笑)久遠さんみたいな人の方が、もしかしたら少ない
かもしれません」

「ふぅ~ん、そういうもんなんだ。ごめん、私は日本人で、ずっと日本に
居るから、そういうの、全く分からなくて・・・。でも、気にする必要はないと
思うよ。私は、仮に相手が宇宙人だったとしても、一緒に居て楽しければ、
問題ないって思う方だからさ(笑)」

今でも、あの時のことが忘れられないんだよね。もう、かなり前の話
なんだけどね。だって、国籍が違うだけで、何か問題があるのかな?って
私は思うの。

そういえば、少し前にも国籍の話が出たことがあったなぁ・・・。
後輩の男性が中国人の女性とつきあってるんだけど、彼のお父さんが、
<中国人なんかと結婚させない!>って言ったらしいんだよね(苦笑)
それで、その彼は悩んじゃってて、相談されたの。でもさ、相談されても
明快な答えなんて無いと思わない?価値観の問題だからね(苦笑)

それで、例え話として、10代後半のお嬢さんがいる人に、<お嬢さんが
中国人や韓国人とつき合ってて、結婚したいって言ったら、どうしますか?>
って聞いたの。そしたら、<そんなの反対するに決まってるでしょ!>って
言うから、<どうして?>って聞いたら、<育った環境も文化も違うんだよ。
何されるか分かんないでしょ!?変な理屈を押しつけられでもしたら、
どうするの?>だってさ(苦笑)

でも、それって、国籍とは関係ないと思わない?日本人同士でも、変な理屈を
押しつけてくる人はいるし、育った環境も同じ国でもみんな違うし、文化だって、
全く同じってことは無いと思うんだよね(苦笑)もし、同じ国籍同士だったら
幸せになるって言うなら、どこの国でも国際結婚以外では離婚がないってことに
なるよね?でも、そんな国は、一つもないワケじゃない?どうして、自分と何かが
違うっていうだけで、差別するんだろう?私には、全く理解できないし、マジで、
サッパリ分かんない。

「アトランティーナ、ミウさん、どうしちゃったんですか?」

「あ~、あの子ね、私との会話、今日は弦夜もいるけど、その会話を自分の中で、
反芻するのよ。それで、自分の中に落とし込んでいくのね。

あとは、会話から派生して色々なことが頭の中を巡るみたいよ(笑)それを
自分なりにまとめていくという作業をしているんだと思うわ。本人は、気づいて
いないんだけどね(笑)」

「考え込んでいるという自覚が無いということですか?」

「ま、そういうことね(笑)だから、そっとしておくことにしているの。
そのうち、戻ってくるから(笑)」

「なるほどですね。覚えておきます」

「うん、覚えておくと良いわよ。たまに、あんな感じになるから(笑)
でね、<何を考えていたの?>って聞くと、ちゃんと教えてくれるから」

「そうなんだぁ・・・。でも、それで、アトランティーナから教わったことが
ミウさんに浸透していくんですね」

「たぶん、そうなんだろうね。弦夜にもそういうところがあると思うけど、
蠍座って、しっかり深いところで消化しないと自分のものに出来ないところが
あるでしょ?それが如実に現れているケースよね」

「ふぅ~ん、そうなんだ。でも、それだけミウさんが真面目ってこと
ですよね?」

「真面目っていうより、分析好きの乙女座の影響が強いってことじゃない
かしら?でも、悪いことではないし、あれがミウのスタイルだと思うから、
私は尊重しているのよ」

「さすが、アトランティーナは、ミウさんの理解者ですね」

「これからは、弦夜もミウの良き理解者になってあげてね」

「はい、もちろん、そのつもりです」

「頼んだわよ」


<次回へ続く>
しおりを挟む

処理中です...