ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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脳は騙されやすい!?

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そろそろかな。たぶん、これで今日のプレゼンに参加する人たちは、
揃ってると思う。大きな会議室だったから、かなりの人が
集まるんだろうなって思ってはいたけど、いざ、集まってみると
壮観だね(笑)

さっき、トイレに行って、マーキングっていう意味でも良かったと
思うけど、理沙ちゃんと智美ちゃんと話したことで、
意識してなかったけど、今、私たちは、充分に満たされているんだって
ことが分かった。これって、意外と大きいんだよね。

だって、もう既に満たされてるんだから、頑張るとか、無理をするとか、
しなくて良いってことなんだもん。楽しむためだけにここに居る。
今までの成果を発表させてもらうって感じ?夏休み明けに自由研究の発表を
するじゃない?あんな感じかな。ワクワクした時間を再体験するみたいな(笑)
そう思うと緊張よりもワクワク感の方が大きくなってくるよね。

時計の針が13時になったところで、再び芳村部長と藤崎さんが
会議室に入ってきた。私たちは既に聞いている、プレゼンの順番の話とか、
終わったら帰っても良いこととかの説明があって、すぐに最初にプレゼンを
する会社が、会議室から退出した。

大体、1つの会社が30分くらいなのかな?ウチも30分くらいで収めた方が
良いのかな?模擬プレゼンの時、1時間くらいかかってたんだよね(汗)
でも、今から30分に収めるなんてことは出来ないし、このままで良いかなって
思ってる。

「チーフ、大体どこの会社も30分くらいですよね?っていうか、
呼びに来るのが、大体30分後ってことは、プレゼン自体は、
もっと早く終わってるってことじゃないですか。
ウチは、模擬プレゼンの時、大体1時間くらいかかってましたけど、
どうしますか?」

「いいんじゃない?だって、今から30分に縮めるなんて出来ないし、
迎合する必要もないでしょ。ウチには、ウチのスタイルがあるし、
それで、ダメだって言うんだったら、そこまで話だったんだよ。
今は、やり残し、伝え残しがないように、最善を尽くすことが大事!
このままで行くよ」

「はい!分かりました。これで、迷いが無くなりました」

「それは、良いことだね。迷いながらやると後で絶対に後悔が残るから」

「ホント、このチームのチーフが久遠さんで、ミウさんで、良かったって、
今、改めて思いました。たぶん、他のチーフだったら、この場所で、
こんなに落ち着いていられないと思います。

それに、他の会社が30分くらいで終わらせてることが分かったら、
慌てて30分に縮めようとするんじゃないかな(苦笑)」

「私は、自分とメンバーのみんな、そこには協力してくれた
プロダクションの人たちや部長も含まれてるけど、全部、信じてるから。
それで、負けても悔いは残らないよ。自分で決めたことだしね。
みんなはどう?今から縮めたいと思う?みんなも納得して臨めないとダメだと
思うから、みんなの考えも聞かせてくれる?」

「私は・・・今のままでやりたいです。だって、今から縮めるなんて、
しかも半分にするってことですよね?無理です。それに・・・。
それじゃ楽しくないと思う」

「うん、私も同じです。このままで行きたいです!」

「僕は、さっき、チーフに言われて迷いが消えたので、
このままってことで納得してます」

「僕も、っていうか、他の会社がどのくらいの時間かなんて、
気にしてなかったので、気がつきませんでした(笑)」

「レオンくんは、どう思う?」

「僕もミウさんやみんなの意見と同じです。このままで行きましょう。
とにかく、楽しく!これを忘れずにプレゼンしましょう。
準備していた時の気持ちを思い出せば、自然と楽しくなるはずですから」

「そっか!準備していた時の気持ちね。なんか、忘れてたかも。
大変だったけど、めっちゃ楽しくて、家に帰ってからも、お風呂に
入ってる時も、ベッドに入ってからも、ずっと考えてたなぁ。
でも、それが全然、イヤじゃなくて、むしろ、楽しくて、考え出すと
ドキドキとワクワクで、自然と顔が緩んでヤバかった(笑)」

「じゃ、そういうことで。最後だから、まだ時間があると思うし、
休憩スペースに行っても良いし、また、トイレに行っても良いし、
リラックスして過ごしましょう」

「じゃ、僕、飲み物買ってきます」

「えっ、レオンくん、外に行くの?」

「いいえ、自販機です」

「自販機なんてあるの?」

「はい。トイレの少し先にありましたけど」

「気がつかなかったぁ(汗)じゃ、私も行く。
ついでにトイレも行っとこうかな(笑)」

「じゃ、僕も!」

「あっ、私も!」

ってことで、みんなで、トイレに行きながら、自販機に行くことになった。
緊張してるワケじゃないんだけど、やっぱり、落ち着かないよね(苦笑)
ま、初めて来た場所だから仕方がないのかもしれないけど。

でも、ここが自分の会社だったら・・・。
う~ん、なんか、やっぱり落ち着かないような気がする。なんだろう?
私が持ってるエネルギーとは合わないような気がするんだよね(汗)
明確な理由はないけど、たまに来るから良いけど、毎日は、ちょっと勘弁って
感じかな(苦笑)

って考えると、私、今いる自分の会社のこと、好きなのかも。
あ~、これも意識してなかったなぁ。今日だけで、まだプレゼンしてないけど、
いっぱい気づくことがあって、新しい発見もあって、実り多い日になったと
思う。ここに大型プレゼンも加わるワケでしょ?スゴイ日になるね。
私史上、記憶に残る日になるね。

そういえば、今日って新月なんだよね。
新月は、物事をスタートさせるのに適した日。
藤崎さんが月とご縁が深い天使だったことを踏まえて、新月の日にって
お願いしたんだけど、私たちにとっても良かったんだね。

あっ、私、採用される気になってる、それも自然に。
これは、アルかもしれないね。っていうか、こういう感じなんだろうな。
こうなって欲しいと思うことを妄想?想像して、先取りするって感覚。
また1つ大きな収穫!今日って、ホントにスゴイ日だ!
たぶん、一生忘れられない日になることは間違いないね。

トイレも二度目だとさっきほどの感動はなくて。
人って、慣れるの、早いんだね(苦笑)あれ?理沙ちゃんも智美ちゃんも
まだ少し感動してる?ってことは、慣れるのが早いのは私だけって
ことなのかな?(笑)

自販機なんてあったかな?あっ、あった!街中にある自販機とは違って、
壁と同化するようにしてるんだ!オッシャレ~!大きな会社は、
こういう工夫もするんだね。

あっ、レオンくんは、大きな会社で働いた経験もあるから気づいたのかも!
これも来てみないと分かんないことだよね。やっぱり、色んなところに
行った方が良いってことだね。これもまた1つ勉強になったな。
ここに来ただけでも意味があったってことだね。

控え室の会議室に戻ると、あと2つの会社が残ってた。ってことは、
1時間ちょっとで順番が回ってくるってことだよね。

谷くんと三神くんは、机に突っ伏してるけど、もしかして寝てるの!?
リラックスするのは良いことだけど、それはちょっと・・・(汗)

近くに行ってみると寝てるワケではないんだね。
私が近づいてビックリしたのか、二人共、ガバッと顔を上げた。

「寝てませんよ!」

「うん、分かってるよ。プレゼンする前から疲れちゃった?」

「っていうか、飽きちゃったって感じですかね(苦笑)
でも、お陰で、緊張もすっかり無くなりました。
最後にして頂いて良かったと思います」

「あっ、そういう心遣いっていうか、気遣いで最後にして
くれたのかな?だとしたら、本当に有り難いね」

「それもチーフが好印象だったってことじゃないですか?」

「このプレゼンに参加できたこともそうですけど、
マジでチーフの功績大きいですよね」

「当たり前じゃない!私を誰だと思ってるの!?(笑)」

「俺、チーフの女王様キャラ、嫌いじゃないです(笑)」

「こうやってると自然と自信が湧いてくるんだよね(笑)
脳って騙されやすいって言うじゃない?なんか、それ、
分かるような気がするんだよね。だから、『もうダメだぁ~!』って
思った時こそ、強気の態度で、強気な言葉を言ってみると
良いと思うよ。きっと、自然と元気になるから」

「メモっときます!」

「うん、覚えておくと良いよ」

こんなバカみたいな話をしてたら、いつの間にか、控え室には
私たちだけになった。あ~、次、あの扉が開いたら、私たちの番なんだな。
うわ~、なんかちょっとだけドキドキしてきた!でも大丈夫!
今の私なら、ううん、今の私たちなら、きっと上手く行く!


<次回へ続く>
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