ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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自分にしかない魅力?

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昨日のシネコン巡りの報告とプレゼン内容の変更を伝えて終わるはずが、
思いがけない方向に話が発展してしまった(汗)

でも、これで、チーム内が良い方に変わってくれたら良いし、何より、
一人ひとりの意識が変わってくれて、みんなが自分を愛することを覚えて
くれたら、これに勝るものはないとも思ってる。それが、回り回って、
仕事にも必ず影響してくるから。ちょうど大きなプレゼンを
控えている今だからこそ、宇宙が用意してくれた試練?なのかもしれないね。

「じゃ、本題に入っても良いかな?」

「はい、なんか、違うことで時間を取らせてしまって、すみません」

中川理沙子が恐縮している。

「もう、いいから。理沙ちゃんもみんなも気持ち切り替えていくよ」

「それで、昨日、シネコン巡りをして思ったんだけど、
ロビープロモーションだけじゃなくて、イベントもやりたいなって思ったの」

「え~っ、イベントですかっ!?」

「そう。でも、イベントもってことになると、うちのチームだけじゃ無理だから、
部を上げてってことで、出来ないかなと思ってるのね。
だから、まずはみんなの意見を聞いて、みんながイベントにもトライする意思が
あるなら、この後、部長に相談してみようと思ってる。どうかな?」

「イベントって、どんな感じのを考えてるんですか?」

「ブルータイガーで新発売になる女性向けエナジードリンクのキャンペーンだね。
買ってくれた人なのか、買わなくても良いのか、それは、これから決めるとして、
抽選で選ばれた人を招待して、映画鑑賞を行ってもらうの。

映画は、女性に人気がある過去の作品。新商品のCMに起用された
タレントさんだか、女優さんが出演している映画でも良いとは思うけど、
まぁ、内容によるところもあるよね。それに誰が起用されるか、
分からないから、女性人気の過去作品で進めていこうと思ってます。

それで、映画上映の前にCMを流して、そのCMに関するアンケート調査も
お願いしようと思ってます。それで、協力してくれた人には、
図書カードとかじゃなくて、新商品をプレゼントするの。

場所は、新宿の〇〇を考えてるんだよね。大通り沿いだし、駅からも近いから、
良いかなって。それに、あんまり大きくないから、その日は、シネコン全体が
ブルータイガーで、染まるって感じになるよね。っていうか、
そんな感じの見せ方をしたいんだよね」

「スケールでかっ!(笑)でも、そんなことが出来たら、面白いですよね。
大変そうだけど、想像しただけでワクワクします。俺は、やってみたいかな」

「めちゃめちゃ大変そうですね(汗)
でも、こんなこと、出来るチャンスなんて、なかなかないだろうし・・・
やりたいです!」

「女性向けのプロモーションだから、化粧室もジャックしちゃう感じですか?」

「うん。そうしようと思ってる」

「うわっ、なんか、ワクワクする。やってみたい!です(笑)」

「想像しただけで、私もワクワクもするし、ドキドキします。やってみたい!」

「じゃ、その方向で、話を進めても良いかな?」

「はい!お願いします」

「じゃ、部長に相談します。それで、もし、部を上げてというのは難しいって
ことになったら、当初の予定通り、ロビープロモーションだけにする?
それとも、私たちだけでイベント含めた内容で作る?」

「う~ん・・・とりあえず、今、チーフが提案してくれた方向性で考えてみて、
どうしても人手が足りないってなったら、イベント部分をなしにして、
ロビープロモーションだけにするっていうのは、どうですか?」

「あっ、部を上げてって感じじゃなくて、プロダクションから人を
出してもらうことって出来ないんですか?」

「それも考えたんだけど、そうなるとプロダクションへの払いが
大きくなるから、出来れば、うちの部でやりたいんだよね(苦笑)」

「なるほど・・・。大人の事情ってやつですね(笑)
じゃ、潤也が言ったみたいに、ロビープロモーションとイベントの両方で考えて、
内容を精査してから決めましょう。それが、一番良いと思います」

「分かった。それで進めましょう。じゃ、ロビープロモーションとイベントで、
それぞれ担当を決めて考えた方が良いと思うんだよね。男女ペアってことで、
ロビープロモーションは優一くんと智ちゃん、イベントは潤也くんと理沙ちゃん
ってことで良いかな?化粧室ジャックは、ロビープロモーションチームに
お願いしたいかな。智ちゃん、興味ありそうだったし(笑)」

「やった!ところで、今、レオンくんの名前が出なかったんですけど、
レオンくんは?」

「レオンくんは、私の補佐とみんなのサポートって感じでお願いしたいんだけど、
レオンくん、どうかな?」

「分かりました。では、僕は、今、向こうで流行っているプロモーションに
ついて、調べてみます。あと、向こうにいる友人にも聞いて、それらを参考に
しながら、自分たちの色を出せるようにサポートさせて頂きます」

「うわっ、心強い!レオンくんが居てくれて、本当に良かった」

「じゃ、これで決まりね。っていうか、今の感じからすると、うちのチームだけで
行けそうかな?」


「そう・・・ですね。ただ、当日だけ手伝ってもらえれば問題ないかな?」

「そうだね。じゃ、部長には報告を上げて、発注が取れた時に、当日のお手伝いを
お願い出来ないか相談してみます」

「はい、お願いします!」

「じゃ、席に戻ったら、早速、取り掛かってください。あまり時間がなくて
申し訳ないけど、なんとか、良いものを創っていきましょう!」

「はい!なんか、楽しくなってきましたね」

「でも、極力、残業はしないでね」

「もちろんです!うちのチームには、優秀な人間しかいないので、
残業なんかしなくても良いもの創りますよ」

「おおっ!言ったね(笑)でも、その通りだよ。私も両方のサポートするから、
ブルータイガーもあっと驚くような企画を持っていこうね!」

なんか、最初、思いついた時、『大変そうで無理かなぁ』って思ったけど、
こうして言葉にして発信してみると、案外イケそうな気になってきた(笑)
チェリーだっけ?アトランティーナだっけ?私は、考えるよりも言葉にして
発信した方が、考えがまとまるタイプだって言ったのは。確かにその通り
だなって、今、思った。「えっ?今かよ!」ってツッコミが入りそうだけど、
こうやって、少しずつ自分への理解が深まっていくのも悪くないね。

会議室から自席に戻ってすぐ、部長のところに相談に行った。

「部長、少しお時間よろしいですか?」

「はい、大丈夫ですよ。何かありましたか?」

「相談なんですけど・・・」

会議室で話したことを部長に言って、協力してもらえるかどうかを聞いた。
そしたら、

「スゴイですね!そんなに話が大きくなってるとは・・・。
でも、もし、プレゼンが通って、実現するなら、ぜひ、部として
取り組みましょう!それで、プレゼンはいつですか?」

「23日です」

「月曜日ですね」

「はい、なので、週の始まりでバタバタしてしまうかもしれないから
ということで、13時になりました」

「分かりました。では、結果が分かり次第、教えて頂けますか?」

「はい、もちろんです」

「結果が出るまでは、他のチームには言わないでおきましょう。
先に話して、久遠さんのチームにプレッシャーがかかってはいけませんからね」

「ご配慮ありがとうございます」

「良い結果が出るよう、祈ってますね」

「部長の祈りって、効果がありそうですね(笑)ありがとうございます。
よろしくお願いします」

部長への報告と相談を終え、チームに戻って、部長が協力してくれることを
伝えた。そして、結果が出るまでは、うちのチームにプレッシャーが
かかってはいけないからと、他のチームには言わないでくれることも伝えた。

「部長って、分かってますよね」

「そうだね。これで、何の心配もなく、取り組めるね」

「あとは、発注を取りに行くのみ!ってことですよね?なんか、燃えてきたー!」

「さっきも言ったけど、残業はしない。それから、無理もしない。
この2つは守ってね。あと、家に帰ってから考えるのは良いけど、
ちゃんと睡眠とってね」

「は~い。チーフ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
自分たちのこと、信じてください」

「もちろん、信じてるよ。信じてるんだけど、なんか無理しちゃいそうな気も
するんだよね(苦笑)」

「それ、チーフが無理するタイプだからでしょ?」

「えっ!?」

「あっ、図星ですか?(笑)思うんですけど、周りから見たら無理してるように
見えても本人的には、全然、無理じゃないってことあるじゃないですか。
楽しいから、ついつい張り切っちゃうみたいな。そんな感じなんですよね。
だから、たぶん、チーフもそんな感じで、今まで無理しちゃってたんじゃ
ないかなって。だから、俺たちのこと、心配になるんじゃないですか?」

「う~ん・・・そういうとこ、あるのかもしれないね(苦笑)」

「っていうか、現在、一番無理してるの、チーフだったりして(笑)」

「あっ、今ね。今は、申し訳ないくらい、まったく無理してません(笑)
サッサと家に帰ってるし、家でものんびり過ごしてるしね」

「それなら良かった。実は、ちょっとだけ、チーフのこと、心配してたんです。
自分で背負っちゃってないかなぁって。直帰の時とか、実は遅くまで、
何かしてるのかも!?とか」

「大丈夫、大丈夫。レオンくんに聞いてくれても良いけど、
真っ直ぐ家に帰ってるから」

「レオン、そうなの?」

「うん。終わったら、すぐに家に帰るって言って、帰ってるよ。お茶とか、
ご飯に誘っても断られてる」

「え~っ、チーフって、レオンくんの誘いを断るの!?」

「いつも断られてるけど」

「女性陣は、きっと今、心の中で『もったいな~い!』って
叫んでたと思うよ(笑)」

「えっ、何がもったいないの?」

「レオンは、自覚ないかもしれないけど、レオンほどのイケメンに誘われるなんて
ことは、一生のうちでも数えるくらいしかないだろうし、もしかしたら、
一度もないかもしれないからな。だから、その誘いを断るなんて、もったいない
って思うんだよ(笑)」

「ちょっとぉ!それって、私たちに失礼じゃない?」

「でも、本当のことだろ?」

「ま、強く否定は出来ないけど・・・」

「えっ、僕ってイケメンなんですか?」

「えっ、言われたことないの?だって、レオンくんが来た時だって、
局会で女性たちが色めきだってたじゃない!」

「えっ、そうだったんですか?ミウさん、知ってました?」

「知ってたも何も・・・だって、隣りの部の女の子たちから、
ランチに誘われてたじゃない?」

「あ~、あの失礼な人たち。僕は、誰とでも仲良くすることが良いことだと
思っていないし、そのつもりもないので、自分が興味のある人とだけ、
仲良くできれば良いかなと思っているんです。

だから、あまり周りを見ていないのかもしれませんし、周りが僕のことを
どう思っているのかも興味がないのかもしれません」

「そのキッパリした態度がまた、女子ウケするんだよ」

「そういうものなんですか?でも、自分が興味のない人から好かれても、
モテてるとは言わないと思うんです。自分がステキだなと思う人から
好かれなければ意味がないと思いませんか?」

「まぁな。なんとも思ってない人から良いって言われて、こっちが良いなって
思ってる人からは見向きもされないっていうこと、よくあるからな(苦笑)」

「男の人でも、そういうことってあるんだ」

「あるよ!あるに決まってるじゃん」

「いや、決まってはいないと思うよ(苦笑)
たぶんね、自分が良いなって思う人の前では、本当の自分を見せられて
ないんだと思うよ。でも、なんとも思ってない人の前では、
『どう思われてもいいや』って思うから、ありのままの自分でいられるんだよ。

だから、学ばなきゃ。良いところを見せようとすると好かれないけど、
ありのままでいると好かれるってことは、そのままの自分が一番魅力的だって
ことでしょ?飾らなくて良いってことだよ。自分の魅力を一番知らないのは、
自分ってこと。さっき、チーム会でも言ったけど、それぞれ、他の人にはない、
自分だけの魅力があるんだから、カッコつけたり、着飾ったりする前に、
それを知ることの方が先だし、大切なんだよ」

「チーフ・・・深いっすね」

「一応、みんなより少しだけ長く生きてるからね(笑)」

「長く生きてるって、ほんの少しだけじゃないですか(笑)」

「まあ、そうなんだけど。だから、まずはみんな、自分の魅力を
知るところから始めてみて。仕事でも同じことだから。誰かと自分を比べる前に、
自分の力を知って、それを信じてみて。その方が、良いものが創れると思うよ」

「見事な着地ですね。さすが、チーフ!」

「いいから、仕事して」

「は~い」

「じゃ、私は、藤崎さんに定期便の電話をしま~す」

「お願いしま~す」


<次回へ続く>
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