ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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答えは自分の中にある

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この流れを止めたくない。でも、そう強く思えば思うほど、
空回りしそうな自分もいたりして・・・。

今回みたいに大きな案件は、チャレンジしたくても、
そうそう出来るもんじゃないって知っているからこそ、
いけないってわかってるんだけど、どうしても力が入っちゃう。

力が入れば入るほど、アイデアも浮かばなくなる。チームのみんなには、
余裕があるみたいなことを言ったけど、内心はバクバクなんだよね。
きっと、レオンくんには、バレてるんだろうな(汗)
私の内側が、グチャグチャになってるって。

なって欲しくないことを考えちゃダメだってことは、充分すぎるくらい
分かってるんだよ。でも、もし、ここまで盛り上げておいて、
いざ発注が取れなかったらって、ちょっと油断すると頭を過ぎってしまう。

その度に、『そんなこと考えちゃダメ!』って振り払うんだけど、
そこから完全には抜け出せない。つい、「もうっ!」って、
言ってしまいそうになるのを必死で抑えてる。

なんとかしたいのに・・・どうしたら良いんだろう。ブレない自分軸と自信?
ぶっちゃけ、いつもそんなスタンスでいるのって、難しいよね(苦笑)

いや、大丈夫。一旦、落ち着こう。深く息を吸って、ゆっくり息を吐いて。
ここで、尻込みしちゃうなんて、私じゃない!大丈夫、私なら出来る!
私が信じなくて、誰が信じるの。そうでしょ?怖がってる場合じゃないぞ!
ここで、ほっぺをパンパンってして、気合い入れたい気分だけど、
それは・・・さすがに変だよね(笑)

「ミウさん、そろそろ11時半ですけど、もう行きます?」

レオンくんが、声を掛けてくれた。めっちゃ良いタイミング。
ちゃんと自分軸は立ってる?地に足はついてる?
うん、どちらもOK!よし、行こう!

「あっ、レオンくん、ありがとう!じゃ、そろそろ出かけようか!
じゃ、みんな、行ってくるね。何かあったら、携帯鳴らして」

「はい、いってらっしゃい!」

「今日も直帰ですか?」

「う~ん、たぶん、そうなると思う。終わってから、プロダクションの人と
打ち合わせになるかもしれないし」

「そうですよね。じゃ、二人共、直帰ということで。お疲れさまでした」

「まだ早いってば!(笑)」

「でも、帰りに言えないので(笑)」

「じゃ、みんな、お疲れさま(笑)残業しないでね」

「は~い!」

「じゃ、レオンくん、行こうか」

「はい。一応、僕がまとめた資料を持参しましたけど、
他に何か必要なものはありますか?」

「レオンくん、名刺、持った?」

「あっ、忘れてました!ちょっと待っててください」

仕方ないよね。海外では、日本みたいに名刺交換が習慣化されてないから。
レオンくんを待っている間に改めて名刺を見てみた。
名刺って、色々な情報が載ってて、便利グッズだったんだ。
たまに顔写真が載ってるのもあるしね。うちの会社の名刺には、
顔写真はないけど、もし載せるって言われたら、全力で拒否するだろうな(笑)

「すみませんでした。昨日から言われていたのに」

「ううん。文化の違いだから、仕方ないよ。日本みたいに、海外では、
絶対に初対面で名刺交換をするってこと、ないんでしょ?」

「はい。一応、持ってはいますけど、必ず名刺交換をするということは
ないですし、日本みたいに重要視されていないと思います」

「そうだよね。色々、不便なこともあると思うけど、郷に入っては郷に従え
っていう諺もあることだし。あっ、意味は、よその土地へ行ったら、
その土地の風習、文化に従いなさいって感じなんだけどね」

「分かっています。英語にも似たような諺がありますから」

「えっ、そうなの!?」

「はい。When in Roma,do as the Romans do.って言って、
ローマではローマ人のようにしなさいっていう意味です」

「あっ、おんなじだね」

「有名な諺って、言い方は違いますけど、万国共通なものが多いですよ。
知っていたのに、言われていたのに、名刺を忘れてしまったのは、
僕のミスです。ごめんなさい」

「そんなに謝らないで。大丈夫だから。それに事前に気がついたワケだしね」

「僕が気がついたんじゃなくて、ミウさんが言ってくれなかったら、
忘れていましたから、やっぱり謝らないと・・・」

「レオンくんのこと、責めてないよ。私は、名刺交換なんてどうでも良いって、
ちょっと思ってるところもあるし。ただ、先方に、レオンくんのことを
誤解されちゃうのは、イヤだっただけだから」

「誤解?」

「ほら、初対面なのに、名刺も持たないで来てとか、仕事なのに、
名刺を持ち歩いてないのか!?とかね。日本人って、実際の仕事よりも、
そういうところで人を判断するところがあるからさ。

レオンくんは、優秀なのに、そんなことで、話を聞いてもらえないなんて
ことがあったら、もったいないし、私の気分が悪くなるから」

「えっ、僕が悪く思われることで、ミウさんの気分が悪くなるんですか?」

「そりゃそうでしょ!だって、レオンくんは、ウチのチームの人間で、
大切な仲間なんだから、悪く思われたくないよ。確かに人の判断や評価を
気にする必要はないのかもしれないけど、それで、仕事がしづらくなるのは、
また、ちょっと別の話かなとも思うし。

さっきも言ったけど、何より優秀なレオンくんが誤解されて、
勘違いされるのは、もったいないことだからね。
それは、チーフとして避けたいよ」


「ありがとうございます。日本でも仕事をしたことはありますけど、
僕の中に日本の文化が染みてこないというか・・・。
それに、ミウさんみたいに言ってくれる上司もいなかったかもしれません。
外国人なんだから、仕方がないって思われていたんでしょうね(苦笑)

厳密にいうと、僕は、外国人ではなくて、ハーフなんですけど、
この顔だから、色々なことで圏外だったのだと思います。
ミウさんみたいに、仲間として扱われたことはなかったように思います。

チーフのミウさんが、僕を仲間として扱ってくれるから、
チームのメンバーも僕のことを同じメンバーとして接してくれるんだと思います。
それが、とても嬉しくて、ハートの真ん中がいつも温かいです。
ありがとうございます。だから、これからは、今まで以上に気をつけます」

「そっかぁ、そういうもんなんだね。日本って、島国だし、歴史を紐解けば
鎖国とかして、外国人を排除したりもしてたから、そういうのが、
根っこの部分にあるのかもしれないね。つまんない価値観だと思うけど(苦笑)
私は、日本人も外国人も、みんな同じ人間でしょ?って思ってるから、
あんまり気にしたことないけどね。

そういえば、幼稚園の時、お父さんが日本人で、お母さんがアメリカ人の女の子が
いたの。やっぱり、みんなから「外人!」って言われて、いじめられてた。
私は、なんで、いじめるのかが全然、分かんなかったんだよね。背が高くて、
色が白くて、アメリカ人みたいな顔をしてる彼女のこと、キレイな女の子だなって
羨ましかったから、仲良くしてたよ(笑)弟くんもいて、めっちゃ可愛かったの!
なんで、外国の赤ちゃんって、あんなに可愛いんだろうね?

でも、レオンくんの話を聞いて、ちょっとガッカリした。子供の頃は、
世界も狭いから、自分と違うことで、阻害してしまうことも
あるのかもしれないけど、大人になっても同じようなことがあるなんてね(苦笑)

ま、そういう大人が子供を育てて、その子供が大人になってっていう連鎖で
この国は出来上がってるから、意外なことでもないのかもね。
そうは思っても、やっぱり残念だと思うわ。ま、そういう国だから、
ここに居る間は、ちょっとだけ合わせてみてね」

「はい。ミウさんが日本人っぽくない考え方をするのは、日本に居たことが
少ないからだと思います。ミウさんは、ヨーロッパや南米に居たことが
多いですからね」

「そういうのって、関係してくるの?」

「ええ、多少は・・・」

「そうだよね。スピリットには、過去の色々な記憶が刻まれてるワケだし、
そういう記憶が残ってるもんね。今は西洋人でも、日本に居たことが多い人も
いるだろうし、私みたいに日本に居たことが少ないけど、現在、日本人って
いう人も私だけじゃなくて、いるだろうしね。でも、やっぱりそうだったんだね
っていうか、今まで『なんで?』って思ってたことの理由が分かって、
ちょっとスッキリした」

「それは良かった。でも、差別意識については、日本人が特別強く持っている
ということでもないと思います。どこの国でも差別はあります。
本当は、みんな一つで、誰かを差別して虐げることは、自分のことを差別して、
虐げているのと同じことなんですけどね」

「そうだよね!自分と他者を切り分けて考えないで、みんな一緒って思ったら、
もっと自分にも人にも優しくすることが出来るようになるんだろうなって思うし、
それができたら、もっと、平和になって、争いも無くなって、
みんなが幸せになるのにね」

「本当に、そうですね」

たかが名刺、されど名刺。名刺の話から思わぬ方向に話が展開しちゃった(汗)
でも、そのお陰で、今まで疑問に思ってたことの理由も分かったから良かった。
レオンくんと話してると、どんどん話が広がっていくから面白いんだよね。

それにしても、資料は忘れないのに、名刺は忘れるって、
なんかレオンっぽいなぁって思った。確かに仕事的には、
名刺よりも資料の方が大事だもんね。

レオンくんって、いつも冷静で、しっかりしてるんだけど、こういう、
ちょっと抜けてるところがあるのが、また良いのかもしれない。
じゃないと、完璧すぎて、一緒に居て疲れちゃうもんね。

でも、本人にとっては、抜けてるところって欠点に見えるのかもしれない。
自分にとって欠点に見えても、人から見たら、良いところになることもあるんだ!
私もそうなのかもしれない。ん?その逆もあるのかも!?自分にとっては、
良いところだと思ってるところが、実は、人から見たら欠点っていうこと。
だから、なんでも決めつけない方が良いってことだよね。
また一つ、気づかされちゃった。

会社を出た後、レオンくんとランチしてから、プロダクションの人が待つ
六本木に向かった。予定通り、六本木から渋谷、そして、新宿に向かって、
シネコン巡りは滞りなく完了。それぞれのシネコンで、説明を受けながら、
ロビーだけでなく、化粧室まで念入りにチェックした後、
プロダクションの人たちと軽く打ち合わせ。プロダクション側からも情報を
幾つか頂いて、なんとなく方向性が見えてきた。なかなかの手応えを
感じられたっていうところかな。

あとは、明日、メンバーに報告しながら、企画を詰めていく感じ。会社の中に
ずっと缶詰になってるより、実際に回ってみて本当に良かったと思う。
『こんなことが出来たら良いな』とか、『こんな感じのイベントがあったら
行ってみたい』とか、イメージやアイデアが泉の如く湧いてきたんだもん。
楽しくなってきたし、ワクワクしてきた。最近ちょっと疲れてきてたから、
めっちゃ良い刺激になったよ。

プロダクションの人には、協力をお願いして別れた。私以上にワクワクしてるのが
伝わってきて、同じ会社じゃないのに、同じ目線で、向き合って、考えてくれる
ことが嬉しかった。改めて、私は人に恵まれているんだなって思った。
ホント、有り難いことだよね。

「ミウさん、今日、思い切って回ってみて良かったですね」

「うん。ホントに!プロダクションっていう専門分野の人たちを味方につける
ことが出来たのは、大きいよね。それに、実際、その場に行くとイメージも、
アイデアもどんどん湧いてきて、楽しくなったし、ワクワクした!」

「そうですね。僕も楽しくなりました。明日、みんなに報告するの、
楽しみですね」

「うん。このワクワク感、伝われば良いな」

「大丈夫ですよ。ミウさんが話せば、きっと伝わります」

「えっ、そうかな?」

「はい。だって、明日になっても、ミウさんなら、きっと今の気持ちのままで
いられると思うから。そのテンションで、いつものように話せば、伝わりますよ」

「うん。ありがとう!じゃ、また明日ね」

「えっ?ご飯とか、お茶は?」

「だって、もう18時を回ってるから帰るよ」

「あっ、そうですか・・・。じゃ、お疲れさまでした」

「お疲れさまでした。また明日ね!」

レオンくんは、お茶くらいしてから帰りたかったのかな?
でも、アトランティーナがご飯の用意して待っててくれてるんだもん。
今日のことも報告したいし、今の私には、レオンくんよりアトランティーナの方が
大事かな。それに、アトランティーナに早く報告したいしね。

今日は、ちょっとだけ気分が良いから、ケーキ買って帰ろう。
今日は、どこのケーキにしようかな?「ね、どんなケーキが食べたい?」
食事だけじゃなくて、ケーキも身体に聞いてみたら、答えてくれるよね?

えっ!チョコレートケーキ!?なんか、意外。って、自分の身体に聞いて、
返ってきた答えを意外って思うってのもどうなんだろうって思うけどね(苦笑)
ふぅ~ん、チョコレートケーキなんだ。うん、分かった!
じゃ、大好きなチーズケーキのお店にしよう!

あのお店、チーズケーキだけじゃなくて、チョコレートケーキも
美味しいんだよね♪っていうか、元々はチョコレートケーキで
有名になったお店なんだもんね(笑)

「アトランティーナ、ただいま!」

「おかえり、ミウ。今日の午後は、レオンとシネコン巡りじゃなかった?」

「うん、巡ってきたよ。レオンくんと、あとプロダクションの人も一緒に」

「えっ、それで、レオンとお茶とか、ご飯には行かなかったの?」

「うん。だって、全部終わった時、18時回ってたから、そのまま帰って来た」

「レオンは?お茶とか、ご飯、誘われなかったの?」

「誘われたっていうか、<じゃ、また明日ね>って言ったら、
<ご飯とか、お茶は?>とは言われた」

「それで?」

「もう18時を回ってるから帰るって言って、帰って来た。
それでね、ケーキが食べたかったからケーキ買って来たの。
ご飯の後で食べよう!」

「ははは(笑)レオン、可哀想に(笑)」

「可哀想って言いながら笑ってるけど(笑)」

「ミウに帰るって言われた時のレオンの顔が浮かんで、可笑しく
なっちゃった(笑)レオンには悪いけど。
それで、ケーキは何を買って来たの?」

「食事だけじゃなくて、ケーキも身体に何が良いか聞いてみようと思って
聞いたら、チョコレートケーキって返ってきたから、チョコレートケーキに
した。ちょっと意外な答えだったんだ。自分の身体に聞いたのに意外って
こともあるんだなぁって思ったら、ちょっと可笑しかった(笑)
それで、いつもチーズケーキを買うお店で、チョコレートケーキ買って来た」

「あのお店、本当はチョコレートケーキのお店だものね。
やっとミウがチョコレートケーキ、買ってくれたって思ったんじゃない?(笑)」

「えっ、チョコレートケーキも買ったことあるよ!
あのお店のチョコレートケーキ、胡桃が入ってて美味しいんだよね」

「そうね。それに、チョコレートケーキなのに、甘すぎないし、
しつこくないのよね」

「うん、そうそう。じゃ、手洗って、着替えてくるね」

「はい。じゃ、食べる用意しちゃうわね」

「お願いしま~す!」 

今夜もご飯は、早めにサクッと食べて、片付けもチャッチャと終わらせて、
これからお喋りタイム。コーヒーだけは、丁寧に、ゆったりと淹れるけど、
それも終了。ふぅ~って感じで、寛ぎモードに突入する。

「それで、シネコン巡りはどうだった?

「会社を出る時にレオンくんが名刺を忘れて、取りに戻ったりしたけど、
順調だったよ」

「レオン、名刺持たずに出かけるつもりだったの!?」

「うん。事前に何度も名刺のことを言ってたんだけど、資料は忘れずに
持ってたんだけど、最終確認で名刺は持った?って聞いたら、
案の定、忘れてた(苦笑)」

「まったく、しょうがないわね」

「でもさ、海外では名刺交換ってしないこともあるんでしょ?
慣れない習慣だから、仕方ないってこともあるでしょ」

「ミウ、ずいぶん優しいじゃない」

「もちろん、ちゃんと注意はしたよ。慣れないかもしれないけど、
郷に入ったら郷に従えっていう諺もあるから、気をつけてって。

そしたら、英語でも同じ意味の諺があるって言ってた。
それで、何度も謝ってたよ」

「ふぅ~ん。そうだったのね」

「でね、そこから色々と話が発展して、差別の話とか、私が日本に居たことが
少ない話とかになったんだ」

「なんで、名刺から差別の話とか、ミウの過去生の話になるのよ」

「レオンくん、今回だけじゃなくて、前にも日本で働いたこと、あるでしょ?
でも、その時は、腫れ物に触るような扱いだったみたいだよ。レオンくん曰く、
外国人扱いされてたって言ってたけど。だから、私みたいに、指摘してくれる人が
いなかったみたいだね。そのせいかどうかは分かんないけど、
日本の文化が染みてこないって言ってた」

「それで、ミウはなんて言ったの?」

「日本人とか、外国人とか、私は気にしたことがないけど、日本は、島国だし、
歴史を紐解けば鎖国とか、外国人排斥とかもあったから、根っこの部分に
そういうのが残ってるのかもしれないねって言ったら、差別意識を持ってるのは、
日本人だけじゃないってレオンくんが言ってた。

だから、そういう区別を取っ払って、みんな一緒だって思えるようになったら、
平和になるし、争い事もなくなるし、みんな幸せになるのにねって話してたの」

「確かにそうよね。みんな一つに繋がっているんだけどね。
ただ、目で見て確認することが出来ないから、分からないわよね。
そもそも自我っていうのがあって、その自我は、自分と他者を
区別させるものだからね。

でも、その話からミウが過去生で、日本に居たことが少ないって、
どう展開したら、そうなるのかしら?」

「私が幼稚園の時に、日本人とアメリカ人のハーフの女の子がいて、
みんなにいじめられてたっていう話をしたの。私は、彼女と仲良く
してたんだけどね。

それで、子供の頃は、世界が狭いから、自分と違うってことでいじめちゃうのも
分からないでもないけど、レオンくんが日本の会社で、疎外感を感じていた
って聞いて、大人になっても、子供と同じようなことをするって、残念だよね
って話したの。

でも、そういう大人が子供を育てて、その子供が大人になって、また子供を
育てるワケだから、そういう連鎖の中で成り立ってる国なんだよねって。
だから、この国に居る間は、合わせてみてねって話をしたら、
私が日本人っぽくない考え方をするのは、過去、日本に居た頃が
少ないからだって言われたの」

「なるほど、そういう展開ね」

「私もなんとなく、日本に居たことって少ないんだろうなぁって思っては
いたんだけど、実際、どうなの?レオンくんは、私は、ヨーロッパや南米に
居たことが多かったって言ってた」

「ええ、その通りよ。チャクラが終わってから、ミウが取り組みたいって
言ってた過去生の癒しだけど、その過去生も南米での過去生だもの」

「やっぱり、そうだよね!見える景色からして、南米っぽいなって思ってた」

「でも、日本に居たことが少ないことで、何か問題があるの?」

「ううん。問題はないけど、私の中で、理解できない日本の文化っていうか、
民族性っていうか、そういうのがあって、『なんで?』って思うことが
多かったから、その理由が分かって、ちょっとスッキリしたかなって。
それだけのことだよ」

「なるほどね。少しでもミウがスッキリしたのなら、それは良かったわね。
それで、シネコン巡りの方はどうだったの?」

「プロダクションの人も同行してくれたから、色々と説明も聞けたし、
ロビーだけじゃなくて、化粧室とか、念入りにチェックすることも出来たし、
情報も頂けたし、良かったよ。それに、何より直接、見に行くと臨場感って
いうか、イメージもアイデアも湧くし、ホント、行って良かったって思った。
やっぱり、会社に居るだけじゃなくて、実際に動いてみないと分からないことも
あるなって感じだった」

「じゃ、方向性が見えた感じ?」

「うん!ロビープロモーションだけじゃなくて、イベントも加えられたら
良いなって思った。でも、イベントとなると、うちのチームだけじゃ無理だから、
部を揚げて取り組めないかなって思った。だから、明日、部長にも相談して
みようと思ってる」

「なんか、大掛かりになってきたわね。でもミウ、とっても楽しそう。
本当に行って良かったみたいね」

「うん!あとね、また一つ、気づいたことがあるんだ」

「えっ、何?どんなことに気づいたの?」

「レオンくん絡みなんだけど、レオンくんって、普段は冷静で、
しっかりしてるんだけど、ちょっと抜けてるところがあるでしょ?
本人的には、そういう抜けてるところは欠点に見えちゃうかもしれないけど、
周りから見たら、そういう抜けてるところが意外性で、
魅力になったりするじゃない?

だから、自分にとっては欠点に見えても人から見たら、良いところだったり、
魅力に映ることもあるのかもなぁって。逆に、自分では良いところだと
思ってるところが、人から見たら、良くないところっていうことも
あるのかもしれないって思ったの。

人のこともそうだけど、どんなことでも決めつけない方が良いって、
こういうことなんじゃないかなって思ったワケ。
ね、大切な気づきだと思わない?」

「確かに大切な気づきね。どうしても決めつけたくなっちゃう
みたいだからね。きっと、決めつける方が楽なんだと思うの。
方程式みたいに、こういうことをする人は、良い人で、ああいうことをする人は
悪い人みたいな感じ?本当は、その時々で、状況が違うから、決めつけることは
出来ないんだけど、決めつけちゃった方が考えなくて良いものね」

「でも、それで、誤解が生じたりしちゃうワケじゃない?
それに、その時々で状況を鑑みることを面倒がってちゃダメだよね。
だって、そのせいで、大きな見落としをして、もの凄く良いことが
埋もれちゃうことだってあるかもしれないじゃん。
それって、すっごくもったいないことだよね」

「その通りね。でも、みんな考えないでしょ?自分と向き合わないことも
同じことだと思うわよ。自分の中で『なんで?』って思ったり、感じた時に、
しっかりと向き合って、考えて、自分と対話していたら、トラウマなんてものは
無くなるんじゃないかしらね」

「うっ、耳が痛いです」

「ミウは、自覚があるから良いわよ。でも、ほとんどの人が、
今、私が言ったことを聞いても自分のことだとは思わないでしょうね。
自覚があれば、改善の余地があるけど、自覚がないと改善の余地はないからね。
ま、困るのは、自分自身だから、これ以上のことを言うつもりはないけど」

「うわっ、出た!天使目線!あっ、宇宙目線もそうか(笑)」

「ちょっと、オバケみたいに言わないでよ(笑)
だって、どんなに言っても、本人にその意思がなければ何も変わらないんだもの、
仕方ないでしょ。私たちが強制することは出来ないんだし」

「自由意志が与えられているからでしょ?」

「そう。だから、自分で気づいて、自分で何かしらの働きかけをしないと
何も変わらないの。苦しいんだったら、自分で苦しいと思う、感じる原因を
取り除いていかないと誰も代わりに取り除いてはくれないんだから」

「それは、私も分かる。自分で気づいて、行動すれば、大概のことは
なんとかなるもんね。あとね、私、分かっちゃったんだ」

「何が分かっちゃったの?」

「願ったことが全部、漏れなく叶うことはないってこと。叶わない方が良いことも
あるってこと。だから、逆に叶いそうな時は、ちゃんと分かるし、
追い風が吹いてるなって感じた時は、その流れに素直に乗った方が良いってこと」

「何?何かあったの?」

「うん。ブルータイガーの企画で、エナジードリンク推しをしてるんだけど、
なんとなく、私の中で、女性ターゲットっていう言葉が浮かんだの。
みんなに話したら、否定的だったんだけど、今日、藤崎さんに電話で話したら、
<なんで知ってるんですか!?>って言われたの。ブルータイガーで、今度、
女性をターゲットにしたエナジードリンクが発売されるらしいんだよね。
それをみんなに話したら、<予知能力があるんですか!?>って
大騒ぎになっちゃった」

「スゴイじゃない、ミウ!」

「でしょ?いつもアトランティーナが言ってるように、答えはいつも自分の中に
あるんだなって、実感した。

でもね、トントン拍子に進んで行くと、慣れないから、ちょっと腰が引けそうに
なるっていうか、疑うっていうか、上手く乗り切れない感じもあったりするの。
ちょっと怖くなるっていうのかな。

でもね、宇宙は、叶った方が良いものは叶えてくれるっていうのを思い出したの。
それで、こういう時こそ、地に足をしっかりとつけて、ブレない自分軸と自信を
忘れないようにしようって思い直したの。怖がってる場合じゃないぞ!って、
自分に喝を入れた(笑)」

「上出来よ、ミウ!成長したわね。今日、一番嬉しい報告よ」

「ありがとう、アトランティーナ。アトランティーナのお陰だよ。
アトランティーナがいつも、何度も教えてくれるから、やっと、私の中に
定着し始めた感じ。でもね、まだ、弱気になりそうな時もあると思うから、
そういう時は、お願い!私の背中を押して欲しいの」

「分かったわ。ミウの背中なら、何度でも押してあげる。
ミウは、ちゃんと自分で考えて、自分で動くって分かってるから、
押し甲斐もあるわ。ドーンと押してあげる」

「力は加減してね(笑)」

「それは、どうかしらね(笑)」

「え~っ、気がついたら、うつ伏せに倒れてたりして(笑)」

「あら、良いじゃない。転ぶ時は仰向けじゃなくて、うつ伏せが良いって
聞いたことない?」

「ないよ、そんなの(笑)」

「仰向けで倒れるのは、後ろ向きになっているから。
でも、うつ伏せで倒れる時は、何かを掴もうとして倒れるから、
前向きなのよ」

「なんか、強引な感じがしないでもないけどね(苦笑)
でも、覚えておく。倒れる時は、うつ伏せだね」

「そう!でも、本当に倒れないでね」

「もう、どっちなの!(笑)」

「倒れないで、掴み取って欲しい。それが、私の願いよ」

「ありがとう、アトランティーナ。私は倒れないし、欲しいものは、
ちゃんと自分の手で掴み取るよ」

「頼もしいわ、ミウ。楽しみにしているわね」

「うん。いつもありがとう、アトランティーナ。
そして、ここまで私を動かしてくれた私にも感謝」

「よく出来ました。じゃ、今夜は、もう休みましょうね」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ、ミウ」


<次回へ続く>
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