ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

文字の大きさ
上 下
65 / 297

強気なドラゴンレディー

しおりを挟む
まだ21時。ホント、少しどころじゃなくて、かなり早いね(苦笑)
でも、明日に備えて、ベッドに入ろう。
それにしても、何がそんなに気がかりなんだろう?
初めてのことに、ここまでナーバスになることって珍しいよね。

そういえば、お昼は、お弁当を持って行くか、
買いに行くかしないとだなぁ・・・。お弁当作るのは面倒だから、
コンビニとかに買いに行けばいっか。ふぅ~。
ま、考えても何も変わらないんだし、何も考えないで寝た方が
良いよね。ん?そんなことないか。考えたこと、思ったことが
現実になるのなら、なって欲しいことを考えるのはアリだよね。

私は明日、どんな1日になって欲しいんだろう?
まずは、ブルータイガーへのプレゼンに向けて・・・。
あれっ?私、企画書を送るって言っちゃってたよね?ダメじゃん!
ちゃんとプレゼンさせてもらわないとっ!今頃、気がつくなんて、
ホントに今日の私は、舞い上がっちゃってたんだね(苦笑)
明日の電話で、伝えないとだね。でも、気がついて良かった。

それで、明日は企画案の叩きが欲しいから、10個くらいは出して
おきたいよね。なって欲しいことの1つ目はこれに決まりだね。

それから、お昼の英語研修。楽しく、充実した時間にしたいかな。
テルっていう人も話しやすい人で、笑いが絶えないレッスンが
良いかなぁ。私だけじゃなくて、チームのみんなも楽しめるレッスン。
それで、レッスンを通じて、また、チームの絆っていうか、
そういうのが強まったら良いよね。うん。
これがなって欲しいことの2つ目。

あとは、明後日、レオンくんとシネコン巡りをしたいから、
レオンくんの資料作成がスムーズに進んでくれたら良いかな?
でもこれは、レオンくんマターのことだから、私が関わることは
出来ないかぁ・・・。でも、明後日のことは、私にも関係が
あるんだから、明後日、レオンくんが、何の問題もなく、
同行できるように明日中に片付けてもらわないと困るよね。
じゃ、どういうふうに考えたら良いんだろう?

う~ん・・・。あっ、こういうのはどうかな?明後日、レオンくんが
何の問題もなく、シネコン巡りに同行してくれて、そのお陰で、
たくさんのヒントを得ることが出来る。
その上、いろんなアイデアも浮かんで、満足のいく企画書を
作ることが出来る。これなら良くない?うん!これで行こう!

ベッドに入りながら、こんなことを考えていたんだけど、
お陰で、身体に入っていた力も抜けて、気がついたら眠ってたみたい。
身体に入っていた力が抜けて、リラックスした状態で眠れたせいか、
寝る前のどんより感が抜けて、今朝は、スッキリ目覚めることが出来た。
ホント、眠る前の時間って大事だよね。なんか、眠りも深かったみたいだし、
良質な睡眠っていうの?そんな感じ。

サクッと起きて、支度をして、家を出る。電車も座れたし、しかも今日は、
端っこの席をGET出来たから、寄り掛かりながら、
よりリラックスモードでいられる。良かった。

「チェリー、おはよう」

「おはよう、ミウ。昨夜は、よく眠れたみたいだね」

「うん。お陰さまで。最初は、いろんなこと考えちゃって、
ちょっとヤバかったんだけど、考えたこと、思ったことが現実になるのなら、
なって欲しいことを考えるのはアリだなと思って、なって欲しいことを
考えてたら、いつの間にか寝てたの。

なって欲しいことを考えてると自然と身体に入ってた力が抜けて、
リラックスした状態になるんだね!知らなかった。
お陰で、目覚めスッキリで、今も気持ち良いの。
そしたら、こうして端っこの席にも座れて、良いこと尽くめで・・・。
やっぱり、内側って大事なんだなぁって、改めて感じてたとこなんだ」

「そっか。それは良かった。私も安心した」

「ありがとう!でもね、意識してないと、まだ外側に
働きかけちゃうから、油断できないんだけどね(苦笑)」

「でも、自覚できているから大丈夫だと思う。ミウも話してたでしょ?
分からないところが分かれば、あとは解けたも同然って。
それと同じだよ。改善点が分かれば、あとは、そこに注意を
向けるだけなんだから、もう出来たも同然ってことだよ」

「なるほどね!チェリー、上手いこと言うね。そっか、じゃ、慣れるまで、
私が自然に出来るようになるまで、意識を向けることを
止めないようにしよう」

「そうだね。そうすると良いよね。最初は、キツイなって
感じるかもしれないけど、少しずつ楽になって行くから、
続けてみたら良いと思うよ」

「うん。やってみる」

「今日は、英語研修の初日なんだよね?」

「うん。そのことで、昨夜は、ちょっと気分が沈んだんだ・・・。
でも、そのお陰で、寝る前になって欲しいことを考えようって
思ったから、それも良かったのかも!?今、気がついたよ、チェリー!」

「ミウらしいね。どんなことでも、ちゃんと最後には、前向きに
捉えられるところ、ホント、スゴイと思うよ」

「私独りじゃ、無理だよね。チェリーやアトランティーナが
いつも傍でアドバイスしてくれて、会社ではレオンくんが
サポートしてくれて、やっとって感じだもん(苦笑)」

「でもね、アトランティーナもレオンくんも私もミウだからなんだよ。
ミウだから、助けたいって思うの。
だから、ミウは、そんな自分をちゃんと認めてあげてね。

アトランティーナが、レオンくんやハヤトくんにミウの良いところを
聞くようにって言う理由もそう。ミウには、たくさん良いところがある
ということをミウに分かって欲しいからなんだよ。

レオンくんもハヤトくんもミウのことが大好きだから、きっと、ミウが
自信を持てることを言ってくれるだろうと思ってね。
ただ、レオンくんに関しては、ミウも知っている通り、
言葉が足りないところがあるから、アトランティーナにとっては、
少々不満だったみたいだけどね(笑)」

「そういうことだったんだ!だって、アトランティーナ、
全然、言ってくれないし、言わないどころか、

<私は、なんで、彼らがミウのことをどう思っているのか、
気になるのかしらね>

なんて言い出す始末だもん(苦笑)アトランティーナがやることには、
必ず意味があるってことは分かるんだけど、いっつも誤魔化すっていうか、
とぼけるっていうか、その意図を掴ませないよねぇ」

「その方が、ミウのために良いと思っているからだよ。
だって、ミウに自信を持たせるために、ミウの良いところを聞きなさいって
言ったら、ミウは身構えちゃって、何を言われても素直に受け留めることが
出来なくなるんじゃない?」

「・・・う~ん、そうかなぁ?」

「うん、きっとね。だから、アトランティーナは、はぐらかすんだよ」

「なんかね、私の周りに居る人たち、みんな、私のことをとっても大事に
してくれるでしょ?すっごく嬉しいんだけど、
恐縮しちゃうところもあるんだよね(汗)」

「そこだよ!そこが問題なの!」

「えっ、なんで!?」

「もっと自信を持つんでしょ?いつも強気でいるんでしょ?
自分のこと認めてあげるんでしょ?全然、出来てないよ、ミウ」

「あっ、ホントだね(苦笑)だってさ、自信を持つって言っても
何に自信を持ったら良いのか、分かんないんだもん」

「人は、生まれてきただけで、生きているだけで、価値があるの。
何が出来るとか、何を持っているとか、何をしているとか、そういうことは
一切関係ないんだよ。だって、考えてみて!何にも価値がない存在を
創造主が地球に送り込むと思う?そんな無駄なことをすると思う?

ミウもそうだけど、他の人たちもみ~んな、創造主が地球に贈った
大切なギフトなんだよ!みんな生きているだけで、貢献しているの。
だから、自信を持って欲しいんだよね。

神殿の儀式で、聖母マリアに会ったんでしょ?何の価値も無い人のところに、
わざわざ来てくれると思う?そうやって、これまでミウに起こったことを
振り返ってみて。そうすれば、ミウがどれほど価値がある存在なのかが、
分かると思うよ。客観的に考えてみてね。自分のことだと思うと、
また、よく分からない理由をつけて、否定的になると思うから(苦笑)」

「なんか、今日のチェリー、ちょっと手厳しいね(汗)
そうだよね、手厳しくもなるよね。私、何度も同じこと言われてるのに、
<なんで、そこまで頑固なの?>っていうくらい、
出来ないんだもんね(苦笑)」

「ミウ、ごめんね。言い方がキツかったのなら謝るよ。
でも、みんな、ミウのことが大好きで、大切で、幸せになって欲しいって、
本気で思っているっていうことだけは、忘れないで欲しいの」

「うん、それは、痛いほど伝わってる。だから、いつも感謝してる。
アトランティーナにも、チェリーにも、レオンくんにも。
それに、ハヤトくんにも。誰か一人欠けただけでも、今の私は、
いなかったからね。本当に感謝してる。ありがとう。

私ね、アトランティーナに出会う前、自分のことが嫌いだったの。
自分のこと、今以上に信じられなかったし認めることも出来なかったし。
『なんで、生きてるんだろう?生きてる意味なんて、あるのかな?』って
思うこともしょっちゅうだったんだ。でも、今は違う。

あの頃の私より、今の私の方が断然良いと思うし、好きなんだよね。
そう思えるのも、みんなのお陰。本当に、どれだけ<ありがとう>って
言っても足りないくらい、<ありがとう>の気持ちでいっぱいなの。
チェリー、ありがとう」

「アトランティーナにも言われていると思うけど、ミウを幸せにすることが
出来るのはミウだけ。ミウの人生を生きることが出来るのもミウだけなの。
どんなにミウに幸せになって欲しくても、私たちは何も出来ないのよ。
だから、ミウに気づいて欲しくて、つい、しつこく何度も言ってしまうの」

「うん。分かってる。私を変えることが出来るのは、私だけだからだよね。
分かってるんだけどねぇ。もしかしたら、私の中に自信を持っちゃいけないって
思ってることがあるのかもしれないね。だから、いつまで経っても
自信を持つことへの抵抗を拭い去ることが出来ないのかもしれない。

アトラン国に居た頃の私は、強気だったってレオンくんが言ってたから、
アトラン国の後、生まれ変わった時、どの時代か、どの国か分かんないけど、
その時の記憶が残ってて、現在の私の足を引っ張ってるのかもね。
一つ、思い当たる記憶があるから、まずは、その記憶を癒すことから
初めてみないとだね。

でも、何をどうしたら良いのかが、少しだけ見えた気がする。
ありがとう、チェリー。じゃ、そろそろ着くから、またね」

「うん。なんか、今日はごめんね」

「ううん。謝らないでよ!チェリーは、何にも悪くないんだから!
それに、チェリーに言われたことで、私の中に残っている負の記憶と
向き合う覚悟も出来たんだし。チェリー、本当にありがとう。
いつも心配かけてごめんね」

「ミウは、本当に優しいね。ありがとう、ミウ。いってらっしゃい。
今日も良い日になりますように」

「ありがとう、チェリー。いってきます」

チェリーの本気の愛情を感じた。きっと、アトランティーナも
同じなんだろうな。じれったくなるよね(苦笑)
それでも、私が自分で動くまで待っててくれる。
それって、なかなか大変なことだと思うんだよね。

もし、私がアトランティーナやチェリーの立場だったら、
もうとっくにイヤになって、離れちゃってると思うもん。

私が願いを叶えられなくても、幸せになれなくても、アトランティーナや
チェリーに何か悪いことが起こるワケじゃないのに、一生懸命になってくれる。
本当に有り難いって思う。だから、その思いに応えたいとは
思ってるんだけどね。私も本気で取り組まなきゃいけないね。

やっと、過去と向き合う覚悟が出来たかもしれない。
チャクラの勉強が終わったら、星のことを教えてもらう前に、
過去の記憶を癒すためにアトランティーナの力を借りよう!

まずは、今日を乗り切ることに意識を向けて行こう!いや、違うね。
自分の内側に意識を向けるよ。ほら、大丈夫。もう忘れないよ。

「おはようございま~す!」

「おはようございます!」

忘れてたけど、三橋部長や高梨がいた頃は、私が、どんなに大きな声で
挨拶しても、大きな声で挨拶が返って来ることがなかったのに、
部長がアトランティーナに変わってからは、大きな声で挨拶が返って来るように
なったんだよね。それは、アトランティーナが去って、真田部長になってからも
続いてる。小さなことかもしれないけど、こうやって、少しずつでも
変わって行ってる。こういう、良いことに目を向けて、少しずつ周りが良い方向に
変わっていくことを目指して、強気で進んで行こうって、改めて思った。

「みんな、おはよう!今日の昼から英語研修が始まるから、
お昼になる前に会議室に集合するようにしようね」

「あっ、そうでしたね。すっかり忘れてました」

「おいおい、困るよ(笑)せっかく、部長がセッティングしてくれたんだから」

「そうですよね。でも、チーフ、リマインドありがとうございます!」

意外とみんな、そんなもんなんだね。私なんて、ずっと憂鬱だったのに。
ま、少しだけだけどね(苦笑)そういえば、他のチームからの参加者って
いるのかな?部長に聞きに行こう。

「部長、おはようございます。今、よろしいですか?」

「久遠さん、おはようございます。大丈夫ですよ」

「あの、今日のお昼から英語研修が始まると思うんですけど、
他のチームからの参加者っているんですか?」

「それが・・・。残念ながら、久遠さんのチームだけなんですよ。
他のチームからの参加者もいるかなって思っていたんですけどね(苦笑)」

「あっ、そうなんですね。ま、そういうものかもしれませんね」

「そうだ!お昼は、皆さん、用意されてますか?」

「私は、後でコンビニで買って来ようと思ってたんですけど・・・。
ねぇ、みんな、お昼の用意ってした?」

「いいえ、まだです!」

「特に用意はしてないみたいですね」

「良かった。実は、お弁当を頼んでおいたんですよ」

「えっ!そうなんですか?」

「はい。昨日、言うのを忘れてしまって、皆さんがお弁当を作って来たり、
途中で買ってきてしまったら、どうしようと内心、焦っていました(苦笑)」

「そうだったんですね!ありがとうございます」

「いいえ。半ば無理矢理に決めてしまったことなので、初回くらいは、
私の方で、お弁当の用意をさせて頂こうと思ったものですから・・・」

「ということは、来週以降は、各自で、用意するということですよね?」

「そうして頂けますか?」

「もちろんです。じゃ、今日は、特別ということで(笑)」

「はい。今日は、私のポケットマネーから出させて頂きました」

「えっ、それは・・・。会社に請求しても良いんじゃないんですか?」

「いいえ。今日だけは、私の気持ちということで、受け取ってください」

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、喜んで受け取らせて
頂きます。それで、講師の方の分は、どうされるんですか?」

「一応、講師の分は、会社から出ますので、ご安心ください」

「今日の分も?」

「はい。講師の分は、会社に請求します」

「分かりました。じゃ、チームのみんなには、こっそり伝えておきますね」

「そうして頂けると助かります。何卒、こっそり、お願いしますね(笑)
あっ、あと、今日の初回だけは、私も参加しますので、
よろしくお願いします」

「はい、畏まりました(笑)」

席に戻ってすぐに、チームのみんなを集めた。

「さっき、部長のところから聞いた時、まだですって言ってたけど、
みんな、お昼の用意してないよね?」

「はい、してません」

「今日の昼に英語研修があることも忘れてたくらいですからね(苦笑)」

「昼前にコンビニで買って来ようと思ってました」

「食べながら勉強って、しづらいなと思ったので、ダイエットにもなるし、
水曜日は昼抜きにしようかなって思ってました(笑)」

「会社で用意してくれるもんだと思ったので、してないです」

「OKです。あのね、今日だけなんだけど、部長がポケットマネーで
私たちのお昼を用意してくれたんだって。だから、後でお礼言ってね。
ただ、他のチームからの参加者がいないっていうから、こっそりね(笑)」

「やった!」

「しーっ!」

「あっ、すみません」

「みんな、ちゃんとお礼言ってね」

「はい、了解です」

「じゃ、解散ってことで」

久しぶりにナイショ話をした(笑)悪口じゃないナイショ話って、
結構、好きかも。あっ、部長が参加すること、言うの忘れた!
まっ、いっか(笑)そんなことより、どんなお弁当なんだろう?
っていうか、来週以降もお弁当、頼んだ方が良いのかもなぁ。
終わってから、みんなに聞いてみよう。

「チーフ、資料作成、レオンくんに丸投げしちゃったから、
自分たちは、企画案を考えるってことで良いですよね?」

「あっ、それなんだけどね。明日、シネコン巡りをしようと思ってるの。
この仕事をするようになってから、それなりに色々なシネコンに足を運んだし、
ロビーも見てきたつもりなんだけど、具体的な案件があって見てた
ワケじゃないから、アイデアが浮かばないんだよね(苦笑)
だから、今、このタイミングで、実際に行って、見て来ようと思ってる。
現場に行かなきゃ分かんないこともあるしね。

それで昨日から、叩きになる企画案を考えてるのね。
だから、みんなも叩きになる企画案を考えて欲しい。
何もないところで、考えるより、何か叩きがあった方が良いでしょ?」

「あっ、実際に見に行くっていうのは良いかも。シネコンによって、
ターゲットも違うし、作りも違うし、演出も違いますもんね。
スクリーンもあるものとないものがあるし。
あと、今、上映されてる映画も分かるしね。
あっ、それは、ネットでも分かるか(笑)」

「現在のブルータイガーの一押し商品って何?」

「今はエナジードリンクですかね」

「ってことは、やっぱり会社帰りの人が行くような場所が良いのかなぁ?」

「そうとも限らないんじゃないですか?スポーツやってる人とか、
身体を使う仕事をしてる人なんかも飲むと思うんですよね」

「でも、家族向けではないでしょ?」

「ですね。じゃあ、商業施設に入ってるシネコングループは、
候補から外しても良いかもしれませんね」

「エナジードリンクを飲む人って、どんな人が多いのかな?」

「調べたところ10代~30代の男性が中心みたいですね」

「よく調べてあるじゃん!ってことは、若い男性がよく行く街にある
シネコンってことだよね。
となると・・・六本木、新宿、渋谷って感じなのかな」

「その3ヶ所は、鉄板ですよね。金額もその分、張っちゃいますけど」

「良いんじゃない?安くても、ターゲットから外れてるエリアだったら、
プロモーションやる意味ないでしょ」

「でも、企業広告なんですよね?」

「そうだよ。でも、今一番力を入れてる商品がエナジードリンクだったら、
そのエナジードリンクの購入者層を狙わないとダメなんじゃないの?」

「確かに・・・。おっしゃる通りです」

「なんか、エリアが絞られると自ずと企画の方向性も見えてくるね。
じゃ、明日は、六本木、渋谷、新宿にあるシネコン巡りで良いかな。
で、時間があったら、池袋くらいまで足を伸ばせば良いよね」

「そんな感じで、大丈夫だと思います。
明日は、チーフだけで行くんですか?」

「ううん。レオンくんに同行をお願いしてるけど・・・。
レオンくん、資料作成の方は、どんな感じ?明日、出られる?」

「はい、ほぼ出来上がってるので、大丈夫です」

「チーフとレオンくんなら、安心だね」

「一応、プロダクションに連絡して、明日、六本木、渋谷、新宿にある
シネコン巡りをすることを伝えておこうと思ってる。
それで、もし、時間があるようだったら、同行をお願いしてみるわ。
プロダクションの人間がいた方が、何かと動きやすいしね」

「確かに。チーフさすがです!」

「ありがとう!じゃ、みんなは、企画の叩き、お願いね。
私もこれからやるけど、その前にブルータイガーの藤崎さんに
電話しなきゃね。言い忘れてたこともあるし」

そう!企画書を送るんじゃなくて、プレゼンをさせてもらえるように
交渉しなくちゃなんだよね。私としたことが、うっかりしてたわ(汗)

「お世話になっております。シネムンドの久遠です。
藤崎さんですよね?今、少しよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「あの、昨日、企画書を2週間後くらいにお送りするというお話を
させて頂いたんですが、企画書をお送りするのではなくて、
プレゼンをさせて頂ければと思っております。いかがでしょうか?」

「ですよね?僕も企画書を送るって言われて、思わず<それで大丈夫です>
って答えてしまいましたが、電話を切った後で、
『あれっ?プレゼンはしないのかな?』って思ってました(笑)」

「そうですよね!なんか、ブルータイガーさんに企画を出せるということで、
舞い上がってしまったみたいで、大変失礼いたしました。
それで、プレゼンの日程を決めさせて頂きたいんですが、
芳村部長のご都合の良い日が良いですよね?」

「そ・・・うです・・・ね。一応、芳村にも聞いてみますが、
この件については、僕が一任されているので、
芳村は出席しないかもしれません。それでもよろしいですか?」

「もちろんです!プレゼンする機会を頂けるのでしたら」

「では、先に日程を決めましょう。その上で、芳村に話をします」

「分かりました。いつがよろしいでしょうか?」

「じゃ、明日」

「えっ!?」

「ウソです(笑)昨日、2週間後っておっしゃってたので、
2週間後辺りのところで決めませんか?」

「では、(え~っと、新月は何日だっけ?あっ、あった!)
今日が11日なので、23日の月曜日はいかがでしょうか?
(これなら新月の翌日だ!)」

「23日ですね。少しお待ちください。・・・午前中と午後では、
どちらがよろしいですか?」

「藤崎さんのご都合の良い方で、構いませんが」

「では、月曜日ですし、午前中は、バタバタしてしまう可能性があるので、
午後にしましょう。13時で、いかがですか?」

「分かりました。では、23日月曜日の13時ということで、
伺わせて頂きます」

「はい、お待ちしております」

「ありがとうございました。では、失礼いたします」

ふぅ~。良かった。プレゼンさせてもらえる!
それに、今日の藤崎さんって、昨日までとは印象が違うんだけど・・・。
私が変わったってこと?自分では、よく分かんないけどね(苦笑)
とりあえず、みんなに伝えないとね。

「みんな、ちょっと良い?今、ブルータイガーの藤崎さんに電話して、
プレゼンの日が決まりました!23日月曜日13時です」

「わっ!なんか、プレゼンの日が決まると現実感が増しますね」

「そうだね。悔いが残らないプレゼンにしよう!
そのためにも、今、私たちが出来ることを全部やって臨もうね」

「はい!」

う~ん、士気が上がってて、良い感じ。みんなイキイキしてるし、
イイ顔してる。きっと、私もイイ顔してるんだろうな。
だって、今、めっちゃ楽しいし、嬉しいから。
そんなふうに喜びを感じてると、レオンくんが、スッと近づいて来て、

「お帰りなさい。強気なドラゴンレディー」

って、小さく微笑みながら囁いて、通り過ぎたの。
どんな褒め言葉よりも嬉しくて、充実感で満たされて、胸の奥の深い
ところから、喜び?嬉しさ?の泉が湧き上がってきたような気分に
なった。

さっき、どのシネコンを回るのかを話してた時もよく分かんないけど、
強気な女って感じだったよね?(笑)

客観的目線で私を見てる、もう一人の私が居て、

『おっ、強気な感じでイイじゃん』

って、言ってたような気がするんだ。この感じが続くように、
これからも自分の内側から目を離さないようにしていこう。


<次回へ続く>
しおりを挟む

処理中です...