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126.八つ当たり
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コンコンコン! ドアをノックする音が聞こえてきた。これに応対しているのはクロナである。
いまだに、王宮かくやといった高級メイド服を身に纏っている。
「カルロさま、お客様がお見えですが如何いたしましょうか?」
客室リビングのソファーに座っている僕に、姿勢を正したクロナが問いかけてくる。
「如何も何も、また例の二人でしょ。ここにお通しするように言って」
「はい。では、そのように」
しばらくすると、ホテルの従業員に先導されティファニアとお銀が部屋に入って来る。
これで、かれこれ5日目だな。
もう、勝手に入って来れば~ と言いたいところであるが 貴族が泊るような高級ホテルではそうもいかないのである。
昼過ぎからだけど、ホントに毎日来ているからね。
まあ、お菓子と飲み物に釣られて来ていることは明らかであるのだが。
それでも、しっかりと情報も用意しているところが この二人の凄いところでもある。
「うん、いらっしゃい。暑いのに毎日ありがとう。どうぞ適当に座って」
「はーい、おねーちゃんも会えて嬉しいわぁ。今日もよろしくね~」
「はい、カルロ様。お気遣い感謝いたします」
暑い中の移動は本当に大変なのである。
額の汗を拭っている二人に、まずは僕が作った特製スポーツドリンクを出してあげる。
すると、二人はそれをゴクゴクと喉を鳴らしながら流し込んでいる。
空になったグラスに自らドリンクを注ぎながらお銀が口を開いた。
「昨晩はどうだったのですか? まだ、続いているのでしょうか」
「ああ、昨日ね。8人だったかな? これで合わせると24人だね。そろそろ諦めてくれると助かるんだけどね」
「そんな連日の襲撃では、おちおち眠ってもいられないのでは?」
「ん~、その辺は心配ないよ。家の子たちが暑いからって表で寝ているんだよ。それで朝になったらテラスに積んであるんだよね」
「あうっ、うう~ん。痛た、痛たたた。カルロくん助けてぇ~」
来たそうそう氷小豆をかき込んでいたティファニアが おでこをトントンしながら訴えかけてくる。
だから、初っ端からは止めておけっていったのに、言うこと聞かないからなぁ。この人は。
「それで、おね-ちゃん頑張って調べてみたんだけど、すごーい事が分かっちゃったの。フフフッ! 聞きた~い?」
どっからのそれだよ! あんた今日来てから「かき氷」を食べていただけだろっ。
そんな突き出したスプーンをキランと光らせても おかわりは出しませんよ。
「それは、どういったことでしょう? ぜひ、お聞きしたいものです」
「いいわ~、聞かせてあげる。そのかわり、また後で……ねっ」
「…………」
――やれやれ。
僕がしぶしぶ頷くと、ティファニアはにっこり笑顔で話し始めた。
ティファニアの ”おね-ちゃん言葉” をずっと聞いていると次第にダレてしまうので、ここは僕が解説することにしよう。
話とは王弟のヌレビルワ公爵についてであった。
彼はこの3年の間、港町であるコンペイを度々訪れているという。
回数にして4回。上手くごまかしているようでだが、ひとたび自領を離れると60日前後は帰らないということからも、かなり怪しい行動をしていたようだ。
さらに、王宮の情報網で入手した物の中には、あのスラミガ帝国へ宛てた手紙が何通も見つかっている。
スラミガ帝国との間で何か密約が交わされていた形跡もあるということだ。
すると、前回のスラミガ帝国・海軍によるザルツ島侵攻も、今回の大規模侵攻もヌレビルワ公爵が手引きしているということであろうか。
しかし、スラミガ帝国・海軍の敗走についても調査はしているだろうが、『原因不明』で処理されることだろう。
あの渦潮についても、どのような扱いになるのかは不明だが まさか天災とは思っていないだろう。
ただ、ここで言えることは、
ヌレビルワ公爵が実際に『スラミガ帝国侵攻の手引き』を行なっているとするならば、非常に危うい立場になっているはずである。
場合によっては責任問題に発展し、『暗殺』されたとしてもおかしくはないだろう。
そういう状況を鑑みれば……。
僕が狙われたのも仕方がないのだろうか? ――八つ当たり的に。
こういった事は貴族であれば日常茶飯事だし、僕が積極的に動く必要はないだろう。
ということで、今回は降りかかってくる火の粉を払うだけでいいようだ。
そして案の定、連日来ていた闇ギルドの連中はまったく姿を見せなくなった。
襲ってきた者は、片っ端から捕らえて王宮に引き渡していたからな。もう、自分達では手に追えないと諦めたのだろう。
かといって、その闇ギルドを潰すようなこともしていない。
ここは他所の国だし、一つ潰したところで 縄張り争いによる抗争が勃発して町が荒れるだけだからである。
それからも、ティファニアたちの訪問は続いているし、アンリエッタとミルキィによるダンジョン探索のお誘いなどもあり 数日は忙しく過ごした。
そして、ようやくローザン王国の王宮より『5日後に登城されたし』と連絡が入ってきたのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『王宮かくや』とは、『王宮もこのようであろうか?』 といったニュアンスです。 氷小豆は白いかき氷の上に粒あんが盛ってあるヤツです。宇治金時と違い、ソースは掛かっていません。(基本) 『鑑がみれば』とは、『他を参考にして考えてみれば』ということです。 『日常茶飯事』は字の如くです。 『案の定』=『思ったとおり』
いまだに、王宮かくやといった高級メイド服を身に纏っている。
「カルロさま、お客様がお見えですが如何いたしましょうか?」
客室リビングのソファーに座っている僕に、姿勢を正したクロナが問いかけてくる。
「如何も何も、また例の二人でしょ。ここにお通しするように言って」
「はい。では、そのように」
しばらくすると、ホテルの従業員に先導されティファニアとお銀が部屋に入って来る。
これで、かれこれ5日目だな。
もう、勝手に入って来れば~ と言いたいところであるが 貴族が泊るような高級ホテルではそうもいかないのである。
昼過ぎからだけど、ホントに毎日来ているからね。
まあ、お菓子と飲み物に釣られて来ていることは明らかであるのだが。
それでも、しっかりと情報も用意しているところが この二人の凄いところでもある。
「うん、いらっしゃい。暑いのに毎日ありがとう。どうぞ適当に座って」
「はーい、おねーちゃんも会えて嬉しいわぁ。今日もよろしくね~」
「はい、カルロ様。お気遣い感謝いたします」
暑い中の移動は本当に大変なのである。
額の汗を拭っている二人に、まずは僕が作った特製スポーツドリンクを出してあげる。
すると、二人はそれをゴクゴクと喉を鳴らしながら流し込んでいる。
空になったグラスに自らドリンクを注ぎながらお銀が口を開いた。
「昨晩はどうだったのですか? まだ、続いているのでしょうか」
「ああ、昨日ね。8人だったかな? これで合わせると24人だね。そろそろ諦めてくれると助かるんだけどね」
「そんな連日の襲撃では、おちおち眠ってもいられないのでは?」
「ん~、その辺は心配ないよ。家の子たちが暑いからって表で寝ているんだよ。それで朝になったらテラスに積んであるんだよね」
「あうっ、うう~ん。痛た、痛たたた。カルロくん助けてぇ~」
来たそうそう氷小豆をかき込んでいたティファニアが おでこをトントンしながら訴えかけてくる。
だから、初っ端からは止めておけっていったのに、言うこと聞かないからなぁ。この人は。
「それで、おね-ちゃん頑張って調べてみたんだけど、すごーい事が分かっちゃったの。フフフッ! 聞きた~い?」
どっからのそれだよ! あんた今日来てから「かき氷」を食べていただけだろっ。
そんな突き出したスプーンをキランと光らせても おかわりは出しませんよ。
「それは、どういったことでしょう? ぜひ、お聞きしたいものです」
「いいわ~、聞かせてあげる。そのかわり、また後で……ねっ」
「…………」
――やれやれ。
僕がしぶしぶ頷くと、ティファニアはにっこり笑顔で話し始めた。
ティファニアの ”おね-ちゃん言葉” をずっと聞いていると次第にダレてしまうので、ここは僕が解説することにしよう。
話とは王弟のヌレビルワ公爵についてであった。
彼はこの3年の間、港町であるコンペイを度々訪れているという。
回数にして4回。上手くごまかしているようでだが、ひとたび自領を離れると60日前後は帰らないということからも、かなり怪しい行動をしていたようだ。
さらに、王宮の情報網で入手した物の中には、あのスラミガ帝国へ宛てた手紙が何通も見つかっている。
スラミガ帝国との間で何か密約が交わされていた形跡もあるということだ。
すると、前回のスラミガ帝国・海軍によるザルツ島侵攻も、今回の大規模侵攻もヌレビルワ公爵が手引きしているということであろうか。
しかし、スラミガ帝国・海軍の敗走についても調査はしているだろうが、『原因不明』で処理されることだろう。
あの渦潮についても、どのような扱いになるのかは不明だが まさか天災とは思っていないだろう。
ただ、ここで言えることは、
ヌレビルワ公爵が実際に『スラミガ帝国侵攻の手引き』を行なっているとするならば、非常に危うい立場になっているはずである。
場合によっては責任問題に発展し、『暗殺』されたとしてもおかしくはないだろう。
そういう状況を鑑みれば……。
僕が狙われたのも仕方がないのだろうか? ――八つ当たり的に。
こういった事は貴族であれば日常茶飯事だし、僕が積極的に動く必要はないだろう。
ということで、今回は降りかかってくる火の粉を払うだけでいいようだ。
そして案の定、連日来ていた闇ギルドの連中はまったく姿を見せなくなった。
襲ってきた者は、片っ端から捕らえて王宮に引き渡していたからな。もう、自分達では手に追えないと諦めたのだろう。
かといって、その闇ギルドを潰すようなこともしていない。
ここは他所の国だし、一つ潰したところで 縄張り争いによる抗争が勃発して町が荒れるだけだからである。
それからも、ティファニアたちの訪問は続いているし、アンリエッタとミルキィによるダンジョン探索のお誘いなどもあり 数日は忙しく過ごした。
そして、ようやくローザン王国の王宮より『5日後に登城されたし』と連絡が入ってきたのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『王宮かくや』とは、『王宮もこのようであろうか?』 といったニュアンスです。 氷小豆は白いかき氷の上に粒あんが盛ってあるヤツです。宇治金時と違い、ソースは掛かっていません。(基本) 『鑑がみれば』とは、『他を参考にして考えてみれば』ということです。 『日常茶飯事』は字の如くです。 『案の定』=『思ったとおり』
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