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117.縁(えにし)
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ザルツ島東の海上から、大小あわせて1300隻にもおよぶ正体不明の艦船を確認したとの報を受け、僕たちはローザン王国の町であるバランに入り状況を確認していた。
そうして、冒険者ギルドに顔を見せたところ、この国の第2王女であるミルキィに出くわしたのである。
シロに念話で会話のジャミングを頼んだあと、
「よう、しばらくぶり。何でこんな所にいるんだ?」
「ひさしぶりね。もうすぐ王宮に来るから楽しみに待っていたのだけど、緊急連絡が入ったから様子を見にきたの。たぶん、あなたも来るだろうと思ったから ここで待ってたのよ」
「なるほど、こっちの行動パターンはお見通しということだね」
「まあ、それなりに長いつきあいだしね。来なかったら、あちら (クルーガー王国) まで迎えに行ってたわよ」
「しかし、よくこんなに早く動けたな。王都マルゴーは ”地脈” は通っていないだろう? かと言って、1日に何回もダンジョンに行っていることもないよな?」
「フフフッ、緊急時には超音波の信号が届くようにしたのよ。人間には聞こえないけどね」
「へ~、それは また考えたなぁ。その信号をチャトがキャッチするのか」
「で、状況はどうなっているのよ。こんなところで悠長にしていても良いの?」
「ああ、スラミガ帝国の艦船ね。今頃、ほとんどの船が渦潮に捕まっているだろうから問題ないよ」
それを聞いたミルキィは、ふぅ~と肩の力を抜くと、
「なるほどね、あとは料理するだけのようね。……っと、そちらのお嬢さんはどちら様なのかしら?」
「ああ、こっちはクロナだ。僕の婚約者の一人だな」
「はぁ~、あなたは また、いろんな子にちょっかいかけて……」
「何が『また』なんだよ! 人聞きの悪いこと言うなし」
「カルロさま、こちらの方は……」
「おう、こいつはミルキィ・ローザン。このローザン王国の第2王女だな」
「クロナさん、よろしく。クルーガーの王族の方かしら、ロイヤルグリーンは懐かしいわ」
「ああ、そのロイヤルグリーンも今はほとんど居ないぞ。クロナは偶々だな」
「あ、あの、その、カルロさま?」
「クロナ、ごめんな。こいつとは何というか……くされ縁だ! 今度ゆっくり話すから」
「そうよクロナさん、カルロとは深い縁で繋がっているのよ。趣味とか好みとかもよく知っているから何でも聞いてね」
「おい! 余計なこと言ってんじゃねーよ。なにが深い縁だ。くされ縁だよ、くされ縁!」
いくら会話にジャミングを掛けているとはいえ、これ以上は目立つだろうと僕たちは連れ立って冒険者ギルドを出た。
向かった先は例の倉庫街。慣れたもので鍵の隠し場所も分かっている。
「へ~、って倉庫じゃない! なんで、こんな所を知っているのよ。……ははーん、さてはここでお姉ちゃんとチュッチュしてたんでしょ」
「い、いや、その、アンリエッタとは会っていたよ。会っていたけどそれは打ち合わせのためだぞ!」
「ふふ~ん、そうなの。怪しいわねぇ? お姉ちゃんに聞くわよ。わたしには何でも話してくれるんだから」
「カルロさま、アンリエッタ様と……本当にしたのですか?」
「うっ、し、してないです。サイゴマデハ。ハハハッ」
「さ い ご ま で は!?」
ひっ、ひょぇ――――!
クロナ、お、おちつけ! 全身より凄まじいオーラが立ち昇り、髪の毛は金色になり逆立っている。
おっ、おおー、戦闘民族キタ――――!!
「まっ、そのくらいで良いんじゃない。この人もかなり参っているはずだから。それよりも、従魔を呼ぶのでしょう」
ふっ、ふぅー。まったくよく言うよ、思いっきり焚きつけやがってぇ~。
と言いたいところだが、口では負けるよなぁ。
僕はすなおに従魔召喚を行なうことにした。
ヤカン、ユキと家に残っていた従魔たちを倉庫に召喚した。ピーチャンは元々シロの頭の上だな。
ちびちゃんはようやく縮小化できるようになったので、ユキに銜えられての登場だ。
「あっ、ヤカンじゃない! 従魔が長生きでよかったわね。ボッチにならなくて」
「主様のお知りあいですか? いえ、チャトが居ますねぇ。そうすると……」
「そうよ、わたしも転生してきたのよ。今はミルキィ。このローザン王国の第2王女なのよ」
「さようでしたか、ミルキィ様お久しぶりです。しかし、また王女なのですねぇ」
「そうなのよぉ、隣の国だけどね。カルロに出会ってようやく自由に動けるようになったのよ。たまに、そちらへ遊びに行くからよろしくね」
「はい、いつでもお寄りください。ミルキィ様なら大歓迎です」
「そして何なの。もしかしてシロの家族なの!? フフフッ! シロもやるもんね~」
「おう、そうだぞ。こっちがユキで、そっちが ”ちびちゃん” まだ名前がないんだ」
「そう、可愛いわねぇ。じゃなくて、みんなフェンリルってことでしょう。はぁ~、国が2つ 3つ吹っ飛びそうだわ」
「しないよ、そんなこと。だいたい面倒な事はお断りだからな」
「分かっているわよ、近くで見てきたのだし。ホント前から欲がないのよね~」
「それにしても、ダンジョンの力を存分に使えるなんて、敵が知ってたら 絶対に近寄らないでしょうね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
会話のジャミングとは、周りに結界を張って会話の内容を聞き取りにくくします。周りで聞いている者は『何語で話しているんだ?』という感じになります。 ロイヤルグリーンはその昔クルーガー王国の王族だけが翠眼であったことから、一般に”ロイヤルグリーン”と呼ばれていました。 ちびちゃん、そろそろ名前を決めなくては。
そうして、冒険者ギルドに顔を見せたところ、この国の第2王女であるミルキィに出くわしたのである。
シロに念話で会話のジャミングを頼んだあと、
「よう、しばらくぶり。何でこんな所にいるんだ?」
「ひさしぶりね。もうすぐ王宮に来るから楽しみに待っていたのだけど、緊急連絡が入ったから様子を見にきたの。たぶん、あなたも来るだろうと思ったから ここで待ってたのよ」
「なるほど、こっちの行動パターンはお見通しということだね」
「まあ、それなりに長いつきあいだしね。来なかったら、あちら (クルーガー王国) まで迎えに行ってたわよ」
「しかし、よくこんなに早く動けたな。王都マルゴーは ”地脈” は通っていないだろう? かと言って、1日に何回もダンジョンに行っていることもないよな?」
「フフフッ、緊急時には超音波の信号が届くようにしたのよ。人間には聞こえないけどね」
「へ~、それは また考えたなぁ。その信号をチャトがキャッチするのか」
「で、状況はどうなっているのよ。こんなところで悠長にしていても良いの?」
「ああ、スラミガ帝国の艦船ね。今頃、ほとんどの船が渦潮に捕まっているだろうから問題ないよ」
それを聞いたミルキィは、ふぅ~と肩の力を抜くと、
「なるほどね、あとは料理するだけのようね。……っと、そちらのお嬢さんはどちら様なのかしら?」
「ああ、こっちはクロナだ。僕の婚約者の一人だな」
「はぁ~、あなたは また、いろんな子にちょっかいかけて……」
「何が『また』なんだよ! 人聞きの悪いこと言うなし」
「カルロさま、こちらの方は……」
「おう、こいつはミルキィ・ローザン。このローザン王国の第2王女だな」
「クロナさん、よろしく。クルーガーの王族の方かしら、ロイヤルグリーンは懐かしいわ」
「ああ、そのロイヤルグリーンも今はほとんど居ないぞ。クロナは偶々だな」
「あ、あの、その、カルロさま?」
「クロナ、ごめんな。こいつとは何というか……くされ縁だ! 今度ゆっくり話すから」
「そうよクロナさん、カルロとは深い縁で繋がっているのよ。趣味とか好みとかもよく知っているから何でも聞いてね」
「おい! 余計なこと言ってんじゃねーよ。なにが深い縁だ。くされ縁だよ、くされ縁!」
いくら会話にジャミングを掛けているとはいえ、これ以上は目立つだろうと僕たちは連れ立って冒険者ギルドを出た。
向かった先は例の倉庫街。慣れたもので鍵の隠し場所も分かっている。
「へ~、って倉庫じゃない! なんで、こんな所を知っているのよ。……ははーん、さてはここでお姉ちゃんとチュッチュしてたんでしょ」
「い、いや、その、アンリエッタとは会っていたよ。会っていたけどそれは打ち合わせのためだぞ!」
「ふふ~ん、そうなの。怪しいわねぇ? お姉ちゃんに聞くわよ。わたしには何でも話してくれるんだから」
「カルロさま、アンリエッタ様と……本当にしたのですか?」
「うっ、し、してないです。サイゴマデハ。ハハハッ」
「さ い ご ま で は!?」
ひっ、ひょぇ――――!
クロナ、お、おちつけ! 全身より凄まじいオーラが立ち昇り、髪の毛は金色になり逆立っている。
おっ、おおー、戦闘民族キタ――――!!
「まっ、そのくらいで良いんじゃない。この人もかなり参っているはずだから。それよりも、従魔を呼ぶのでしょう」
ふっ、ふぅー。まったくよく言うよ、思いっきり焚きつけやがってぇ~。
と言いたいところだが、口では負けるよなぁ。
僕はすなおに従魔召喚を行なうことにした。
ヤカン、ユキと家に残っていた従魔たちを倉庫に召喚した。ピーチャンは元々シロの頭の上だな。
ちびちゃんはようやく縮小化できるようになったので、ユキに銜えられての登場だ。
「あっ、ヤカンじゃない! 従魔が長生きでよかったわね。ボッチにならなくて」
「主様のお知りあいですか? いえ、チャトが居ますねぇ。そうすると……」
「そうよ、わたしも転生してきたのよ。今はミルキィ。このローザン王国の第2王女なのよ」
「さようでしたか、ミルキィ様お久しぶりです。しかし、また王女なのですねぇ」
「そうなのよぉ、隣の国だけどね。カルロに出会ってようやく自由に動けるようになったのよ。たまに、そちらへ遊びに行くからよろしくね」
「はい、いつでもお寄りください。ミルキィ様なら大歓迎です」
「そして何なの。もしかしてシロの家族なの!? フフフッ! シロもやるもんね~」
「おう、そうだぞ。こっちがユキで、そっちが ”ちびちゃん” まだ名前がないんだ」
「そう、可愛いわねぇ。じゃなくて、みんなフェンリルってことでしょう。はぁ~、国が2つ 3つ吹っ飛びそうだわ」
「しないよ、そんなこと。だいたい面倒な事はお断りだからな」
「分かっているわよ、近くで見てきたのだし。ホント前から欲がないのよね~」
「それにしても、ダンジョンの力を存分に使えるなんて、敵が知ってたら 絶対に近寄らないでしょうね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
会話のジャミングとは、周りに結界を張って会話の内容を聞き取りにくくします。周りで聞いている者は『何語で話しているんだ?』という感じになります。 ロイヤルグリーンはその昔クルーガー王国の王族だけが翠眼であったことから、一般に”ロイヤルグリーン”と呼ばれていました。 ちびちゃん、そろそろ名前を決めなくては。
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