114 / 137
108.マシェリ王妃
しおりを挟む
俯いて顔を真っ赤にしているアンリエッタ。ルシード国王の発言『アンリエッタが惚れこむのも……』に反応してのことだ。
隣りにいるマシェリ王妃は自分の娘のそんな姿を見て、ハンカチで口を押さえて笑っていらっしゃる。
「それで、カルロ殿。今回はザルツ島に押し寄せていたスラミガ帝国の艦隊を追っ払ってくれたそうではないか。それに、アンリエッタが申すにダンジョンを発見してくれたとか。それも2ヶ所も」
「これが本当の事なら我が国はカルロ殿には頭が上がらなぬな。真にそうであろう。スラミガ帝国のザルツ島侵略を見守ることしか出来ないような我が軍だ、ザルツ島の次はおそらくこのローザン王国であったであろう。しかも、こちらがスラミガ軍の攻撃を受ければ甚大なる被害を被るかたちになっていたと思う。それを未然に防いでいただき、かつ2ヶ所のダンジョン発見である。この恩に報いるためには何をすれば良いのかも分からない程だよ」
「はあ、僕としては隣国の者として当然のことを行ったに過ぎません。ダンジョンも元々この国に備わっていたものです。大したことはしておりませんよ」
「うう、しかしだな、カルロ殿にはいろいろお返しせねば……王国の対面もあるしのう。本当に我が国に欲しいぐらいだよ。う~ん、どうしたものかのぅ」
「あの、よろしいかしら」
「おお、マシェリか珍しいのう。何ぞあるのか? 申してみよ」
「はい。それでは、まずカルロ様。カルロ様はこの子のこと どう思っていらっしゃるの? 4年前にクルーガーに行ってからこっち、この子もずいぶんと変わりました。前にも増して身体を鍛え剣を磨き色恋沙汰にはまるで興味が無いものとばかり思っておりましたの。それが、昨日帰って来てからは明らかに『女の顔』になっておりましてよ」
「お、お母様! そんなことは……」
「そんなことは、な~に? あなたは自分でも気づいているはずですよ。フフフッ!」
「カルロ様、この子はおそらくあなた無しでは自分の力を発揮することが出来ないでしょう。ですからこの子を、アンリエッタを貰って頂けないかしら。もちろん今すぐになどと申すつもりはありませんよ」
「陛下。陛下もそのつもりで動いてくださいませ」
「お、おい、そんな強引に大丈夫なのか。もしカルロ殿がだな……」
「いいえ、カルロ様はちゃんと考えていらっしゃいますよ。
そうでなければ、こちらにお出でになられてはいませんよ。……そうですよねカルロ様」
「フフッ、参りました、流石ですマシェリ様。あとのことはお任せいたしますので、どうぞ良しなに」
「うっ、うううっ…………」
「あらあら、この子ったら」
マシェリ様の隣に座るアンリエッタは、手で口を覆い俯き 大粒の涙を膝に落としていた。
「あ、えっ、決まったのか? 決まってしまったのか…………」
「はいはい、そうですよ陛下。あなたに息子が出来ましたよ」
そこで お茶が用意され、 場を落ち着かせるためにティータイムを挟むことになったのである。
僕はお近づきの印として、プリン、いちごのショートケーキ、そしてこの前お披露目した芋ようかんをお配りした。
初めは『なんじゃ?』という顔をしていた国王様も 一口食べればもう止まらない。無言で次々と口に運んでいた。
「カルロさん、クルーガー王国にはこんな様々なスイーツが有りますの? 羨ましいですわ」
「お母様、カルロさまはご自分でもいくつかのスイーツを作っておいでですのよ」
「まあ、そうなの! それは作って頂けると嬉しいですが、はたしてその材料がこの国に有るのかしら」
「材料の方は僕が作る分ぐらいは持っておりますし、これからはダンジョンにて獲得出来るようになるはずです」
「そうであったか。それは楽しみだのう……」
と言いながら、国王様の視線が ほんの一瞬だが僕の手元のプリンに向いていたのを見逃さなかった。
そして、さりげなく プリンのおかわりを全員に配ったのは言うまでもないことだろう。
それからも懇談は和やかにおこなわれていき、お昼前に解散となった。
お昼はアンリエッタに誘われたので一緒に昼食を頂くことにした。
そして、部屋に戻るべくメイドさんに付いて廊下を歩いていると、僕らの前方を1匹の茶トラ猫がのそりのそりと廊下を横切っていった。
「すいません。今のは……」
「ああ、今の猫でございますか? あの猫は第2王女のミルキィ様が飼っておいでの『チャト』でございます」
やっぱりチャトだったか。あんなデカ猫、そうそう居ないだろうしな。
あいつが亡くなってから しばらくして居なくなったんだよなぁ。
どこかで生きているだろうとは思っていたけど、隣国のこんなところに居やがったのか。
まあ、元気にやっているのなら、それはそれでいいのかな。
部屋に戻ってきた僕をシロが尻尾を振って迎えてくれる。
そう、食事の方なのだが今はシロと別々にとっている。
これは仕方がないだろう。ここは他国で、しかも王宮内だからね。
しかし、今日各位に通達がいっているようなので、夕食からは一緒に食事をすることが出来るようになるということだ。
あと、ピーチャンはというと、モコモコに連れられ城を案内してもらっている。お外を元気に飛び回っていることだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
もうね。ときめいているアンリエッタの様子は母親でなくても、「あらあら、まあまあ」だったでしょうね。それにしても、マシェリ王妃は鋭い観察眼を持っているようですね。これは単に娘の幸せを願うだけではなく……。いろいろとあるのでしょうね。
隣りにいるマシェリ王妃は自分の娘のそんな姿を見て、ハンカチで口を押さえて笑っていらっしゃる。
「それで、カルロ殿。今回はザルツ島に押し寄せていたスラミガ帝国の艦隊を追っ払ってくれたそうではないか。それに、アンリエッタが申すにダンジョンを発見してくれたとか。それも2ヶ所も」
「これが本当の事なら我が国はカルロ殿には頭が上がらなぬな。真にそうであろう。スラミガ帝国のザルツ島侵略を見守ることしか出来ないような我が軍だ、ザルツ島の次はおそらくこのローザン王国であったであろう。しかも、こちらがスラミガ軍の攻撃を受ければ甚大なる被害を被るかたちになっていたと思う。それを未然に防いでいただき、かつ2ヶ所のダンジョン発見である。この恩に報いるためには何をすれば良いのかも分からない程だよ」
「はあ、僕としては隣国の者として当然のことを行ったに過ぎません。ダンジョンも元々この国に備わっていたものです。大したことはしておりませんよ」
「うう、しかしだな、カルロ殿にはいろいろお返しせねば……王国の対面もあるしのう。本当に我が国に欲しいぐらいだよ。う~ん、どうしたものかのぅ」
「あの、よろしいかしら」
「おお、マシェリか珍しいのう。何ぞあるのか? 申してみよ」
「はい。それでは、まずカルロ様。カルロ様はこの子のこと どう思っていらっしゃるの? 4年前にクルーガーに行ってからこっち、この子もずいぶんと変わりました。前にも増して身体を鍛え剣を磨き色恋沙汰にはまるで興味が無いものとばかり思っておりましたの。それが、昨日帰って来てからは明らかに『女の顔』になっておりましてよ」
「お、お母様! そんなことは……」
「そんなことは、な~に? あなたは自分でも気づいているはずですよ。フフフッ!」
「カルロ様、この子はおそらくあなた無しでは自分の力を発揮することが出来ないでしょう。ですからこの子を、アンリエッタを貰って頂けないかしら。もちろん今すぐになどと申すつもりはありませんよ」
「陛下。陛下もそのつもりで動いてくださいませ」
「お、おい、そんな強引に大丈夫なのか。もしカルロ殿がだな……」
「いいえ、カルロ様はちゃんと考えていらっしゃいますよ。
そうでなければ、こちらにお出でになられてはいませんよ。……そうですよねカルロ様」
「フフッ、参りました、流石ですマシェリ様。あとのことはお任せいたしますので、どうぞ良しなに」
「うっ、うううっ…………」
「あらあら、この子ったら」
マシェリ様の隣に座るアンリエッタは、手で口を覆い俯き 大粒の涙を膝に落としていた。
「あ、えっ、決まったのか? 決まってしまったのか…………」
「はいはい、そうですよ陛下。あなたに息子が出来ましたよ」
そこで お茶が用意され、 場を落ち着かせるためにティータイムを挟むことになったのである。
僕はお近づきの印として、プリン、いちごのショートケーキ、そしてこの前お披露目した芋ようかんをお配りした。
初めは『なんじゃ?』という顔をしていた国王様も 一口食べればもう止まらない。無言で次々と口に運んでいた。
「カルロさん、クルーガー王国にはこんな様々なスイーツが有りますの? 羨ましいですわ」
「お母様、カルロさまはご自分でもいくつかのスイーツを作っておいでですのよ」
「まあ、そうなの! それは作って頂けると嬉しいですが、はたしてその材料がこの国に有るのかしら」
「材料の方は僕が作る分ぐらいは持っておりますし、これからはダンジョンにて獲得出来るようになるはずです」
「そうであったか。それは楽しみだのう……」
と言いながら、国王様の視線が ほんの一瞬だが僕の手元のプリンに向いていたのを見逃さなかった。
そして、さりげなく プリンのおかわりを全員に配ったのは言うまでもないことだろう。
それからも懇談は和やかにおこなわれていき、お昼前に解散となった。
お昼はアンリエッタに誘われたので一緒に昼食を頂くことにした。
そして、部屋に戻るべくメイドさんに付いて廊下を歩いていると、僕らの前方を1匹の茶トラ猫がのそりのそりと廊下を横切っていった。
「すいません。今のは……」
「ああ、今の猫でございますか? あの猫は第2王女のミルキィ様が飼っておいでの『チャト』でございます」
やっぱりチャトだったか。あんなデカ猫、そうそう居ないだろうしな。
あいつが亡くなってから しばらくして居なくなったんだよなぁ。
どこかで生きているだろうとは思っていたけど、隣国のこんなところに居やがったのか。
まあ、元気にやっているのなら、それはそれでいいのかな。
部屋に戻ってきた僕をシロが尻尾を振って迎えてくれる。
そう、食事の方なのだが今はシロと別々にとっている。
これは仕方がないだろう。ここは他国で、しかも王宮内だからね。
しかし、今日各位に通達がいっているようなので、夕食からは一緒に食事をすることが出来るようになるということだ。
あと、ピーチャンはというと、モコモコに連れられ城を案内してもらっている。お外を元気に飛び回っていることだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
もうね。ときめいているアンリエッタの様子は母親でなくても、「あらあら、まあまあ」だったでしょうね。それにしても、マシェリ王妃は鋭い観察眼を持っているようですね。これは単に娘の幸せを願うだけではなく……。いろいろとあるのでしょうね。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる