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108.マシェリ王妃
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俯いて顔を真っ赤にしているアンリエッタ。ルシード国王の発言『アンリエッタが惚れこむのも……』に反応してのことだ。
隣りにいるマシェリ王妃は自分の娘のそんな姿を見て、ハンカチで口を押さえて笑っていらっしゃる。
「それで、カルロ殿。今回はザルツ島に押し寄せていたスラミガ帝国の艦隊を追っ払ってくれたそうではないか。それに、アンリエッタが申すにダンジョンを発見してくれたとか。それも2ヶ所も」
「これが本当の事なら我が国はカルロ殿には頭が上がらなぬな。真にそうであろう。スラミガ帝国のザルツ島侵略を見守ることしか出来ないような我が軍だ、ザルツ島の次はおそらくこのローザン王国であったであろう。しかも、こちらがスラミガ軍の攻撃を受ければ甚大なる被害を被るかたちになっていたと思う。それを未然に防いでいただき、かつ2ヶ所のダンジョン発見である。この恩に報いるためには何をすれば良いのかも分からない程だよ」
「はあ、僕としては隣国の者として当然のことを行ったに過ぎません。ダンジョンも元々この国に備わっていたものです。大したことはしておりませんよ」
「うう、しかしだな、カルロ殿にはいろいろお返しせねば……王国の対面もあるしのう。本当に我が国に欲しいぐらいだよ。う~ん、どうしたものかのぅ」
「あの、よろしいかしら」
「おお、マシェリか珍しいのう。何ぞあるのか? 申してみよ」
「はい。それでは、まずカルロ様。カルロ様はこの子のこと どう思っていらっしゃるの? 4年前にクルーガーに行ってからこっち、この子もずいぶんと変わりました。前にも増して身体を鍛え剣を磨き色恋沙汰にはまるで興味が無いものとばかり思っておりましたの。それが、昨日帰って来てからは明らかに『女の顔』になっておりましてよ」
「お、お母様! そんなことは……」
「そんなことは、な~に? あなたは自分でも気づいているはずですよ。フフフッ!」
「カルロ様、この子はおそらくあなた無しでは自分の力を発揮することが出来ないでしょう。ですからこの子を、アンリエッタを貰って頂けないかしら。もちろん今すぐになどと申すつもりはありませんよ」
「陛下。陛下もそのつもりで動いてくださいませ」
「お、おい、そんな強引に大丈夫なのか。もしカルロ殿がだな……」
「いいえ、カルロ様はちゃんと考えていらっしゃいますよ。
そうでなければ、こちらにお出でになられてはいませんよ。……そうですよねカルロ様」
「フフッ、参りました、流石ですマシェリ様。あとのことはお任せいたしますので、どうぞ良しなに」
「うっ、うううっ…………」
「あらあら、この子ったら」
マシェリ様の隣に座るアンリエッタは、手で口を覆い俯き 大粒の涙を膝に落としていた。
「あ、えっ、決まったのか? 決まってしまったのか…………」
「はいはい、そうですよ陛下。あなたに息子が出来ましたよ」
そこで お茶が用意され、 場を落ち着かせるためにティータイムを挟むことになったのである。
僕はお近づきの印として、プリン、いちごのショートケーキ、そしてこの前お披露目した芋ようかんをお配りした。
初めは『なんじゃ?』という顔をしていた国王様も 一口食べればもう止まらない。無言で次々と口に運んでいた。
「カルロさん、クルーガー王国にはこんな様々なスイーツが有りますの? 羨ましいですわ」
「お母様、カルロさまはご自分でもいくつかのスイーツを作っておいでですのよ」
「まあ、そうなの! それは作って頂けると嬉しいですが、はたしてその材料がこの国に有るのかしら」
「材料の方は僕が作る分ぐらいは持っておりますし、これからはダンジョンにて獲得出来るようになるはずです」
「そうであったか。それは楽しみだのう……」
と言いながら、国王様の視線が ほんの一瞬だが僕の手元のプリンに向いていたのを見逃さなかった。
そして、さりげなく プリンのおかわりを全員に配ったのは言うまでもないことだろう。
それからも懇談は和やかにおこなわれていき、お昼前に解散となった。
お昼はアンリエッタに誘われたので一緒に昼食を頂くことにした。
そして、部屋に戻るべくメイドさんに付いて廊下を歩いていると、僕らの前方を1匹の茶トラ猫がのそりのそりと廊下を横切っていった。
「すいません。今のは……」
「ああ、今の猫でございますか? あの猫は第2王女のミルキィ様が飼っておいでの『チャト』でございます」
やっぱりチャトだったか。あんなデカ猫、そうそう居ないだろうしな。
あいつが亡くなってから しばらくして居なくなったんだよなぁ。
どこかで生きているだろうとは思っていたけど、隣国のこんなところに居やがったのか。
まあ、元気にやっているのなら、それはそれでいいのかな。
部屋に戻ってきた僕をシロが尻尾を振って迎えてくれる。
そう、食事の方なのだが今はシロと別々にとっている。
これは仕方がないだろう。ここは他国で、しかも王宮内だからね。
しかし、今日各位に通達がいっているようなので、夕食からは一緒に食事をすることが出来るようになるということだ。
あと、ピーチャンはというと、モコモコに連れられ城を案内してもらっている。お外を元気に飛び回っていることだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
もうね。ときめいているアンリエッタの様子は母親でなくても、「あらあら、まあまあ」だったでしょうね。それにしても、マシェリ王妃は鋭い観察眼を持っているようですね。これは単に娘の幸せを願うだけではなく……。いろいろとあるのでしょうね。
隣りにいるマシェリ王妃は自分の娘のそんな姿を見て、ハンカチで口を押さえて笑っていらっしゃる。
「それで、カルロ殿。今回はザルツ島に押し寄せていたスラミガ帝国の艦隊を追っ払ってくれたそうではないか。それに、アンリエッタが申すにダンジョンを発見してくれたとか。それも2ヶ所も」
「これが本当の事なら我が国はカルロ殿には頭が上がらなぬな。真にそうであろう。スラミガ帝国のザルツ島侵略を見守ることしか出来ないような我が軍だ、ザルツ島の次はおそらくこのローザン王国であったであろう。しかも、こちらがスラミガ軍の攻撃を受ければ甚大なる被害を被るかたちになっていたと思う。それを未然に防いでいただき、かつ2ヶ所のダンジョン発見である。この恩に報いるためには何をすれば良いのかも分からない程だよ」
「はあ、僕としては隣国の者として当然のことを行ったに過ぎません。ダンジョンも元々この国に備わっていたものです。大したことはしておりませんよ」
「うう、しかしだな、カルロ殿にはいろいろお返しせねば……王国の対面もあるしのう。本当に我が国に欲しいぐらいだよ。う~ん、どうしたものかのぅ」
「あの、よろしいかしら」
「おお、マシェリか珍しいのう。何ぞあるのか? 申してみよ」
「はい。それでは、まずカルロ様。カルロ様はこの子のこと どう思っていらっしゃるの? 4年前にクルーガーに行ってからこっち、この子もずいぶんと変わりました。前にも増して身体を鍛え剣を磨き色恋沙汰にはまるで興味が無いものとばかり思っておりましたの。それが、昨日帰って来てからは明らかに『女の顔』になっておりましてよ」
「お、お母様! そんなことは……」
「そんなことは、な~に? あなたは自分でも気づいているはずですよ。フフフッ!」
「カルロ様、この子はおそらくあなた無しでは自分の力を発揮することが出来ないでしょう。ですからこの子を、アンリエッタを貰って頂けないかしら。もちろん今すぐになどと申すつもりはありませんよ」
「陛下。陛下もそのつもりで動いてくださいませ」
「お、おい、そんな強引に大丈夫なのか。もしカルロ殿がだな……」
「いいえ、カルロ様はちゃんと考えていらっしゃいますよ。
そうでなければ、こちらにお出でになられてはいませんよ。……そうですよねカルロ様」
「フフッ、参りました、流石ですマシェリ様。あとのことはお任せいたしますので、どうぞ良しなに」
「うっ、うううっ…………」
「あらあら、この子ったら」
マシェリ様の隣に座るアンリエッタは、手で口を覆い俯き 大粒の涙を膝に落としていた。
「あ、えっ、決まったのか? 決まってしまったのか…………」
「はいはい、そうですよ陛下。あなたに息子が出来ましたよ」
そこで お茶が用意され、 場を落ち着かせるためにティータイムを挟むことになったのである。
僕はお近づきの印として、プリン、いちごのショートケーキ、そしてこの前お披露目した芋ようかんをお配りした。
初めは『なんじゃ?』という顔をしていた国王様も 一口食べればもう止まらない。無言で次々と口に運んでいた。
「カルロさん、クルーガー王国にはこんな様々なスイーツが有りますの? 羨ましいですわ」
「お母様、カルロさまはご自分でもいくつかのスイーツを作っておいでですのよ」
「まあ、そうなの! それは作って頂けると嬉しいですが、はたしてその材料がこの国に有るのかしら」
「材料の方は僕が作る分ぐらいは持っておりますし、これからはダンジョンにて獲得出来るようになるはずです」
「そうであったか。それは楽しみだのう……」
と言いながら、国王様の視線が ほんの一瞬だが僕の手元のプリンに向いていたのを見逃さなかった。
そして、さりげなく プリンのおかわりを全員に配ったのは言うまでもないことだろう。
それからも懇談は和やかにおこなわれていき、お昼前に解散となった。
お昼はアンリエッタに誘われたので一緒に昼食を頂くことにした。
そして、部屋に戻るべくメイドさんに付いて廊下を歩いていると、僕らの前方を1匹の茶トラ猫がのそりのそりと廊下を横切っていった。
「すいません。今のは……」
「ああ、今の猫でございますか? あの猫は第2王女のミルキィ様が飼っておいでの『チャト』でございます」
やっぱりチャトだったか。あんなデカ猫、そうそう居ないだろうしな。
あいつが亡くなってから しばらくして居なくなったんだよなぁ。
どこかで生きているだろうとは思っていたけど、隣国のこんなところに居やがったのか。
まあ、元気にやっているのなら、それはそれでいいのかな。
部屋に戻ってきた僕をシロが尻尾を振って迎えてくれる。
そう、食事の方なのだが今はシロと別々にとっている。
これは仕方がないだろう。ここは他国で、しかも王宮内だからね。
しかし、今日各位に通達がいっているようなので、夕食からは一緒に食事をすることが出来るようになるということだ。
あと、ピーチャンはというと、モコモコに連れられ城を案内してもらっている。お外を元気に飛び回っていることだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
もうね。ときめいているアンリエッタの様子は母親でなくても、「あらあら、まあまあ」だったでしょうね。それにしても、マシェリ王妃は鋭い観察眼を持っているようですね。これは単に娘の幸せを願うだけではなく……。いろいろとあるのでしょうね。
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これからもガンバって執筆していきますので、またいらして下さい。φ(ΦωΦ )
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