113 / 137
107.王都マルゴー
しおりを挟む
あれから、王都マルゴーに行くことは決まったのだがそれほど急いでいる訳でもない。
僕は一旦カルロ邸に戻ってきた。
1日、邸でゆっくり過ごした後 次の日に王城へ向かった。
その時に、『ローザン王国』及び『ザルツ島』に関する報告書を王太子のアースレット様に直接お渡しすると共に補足説明もおこなっていた。
「うん、なるほどね。だいたいの流れは分かったよ。『東の海』はだいぶ落ち着いたということだね。」
「はい、今のところは。……これで、諦めてくれるといいのですが、こればかりは」
「だね、もう一度ぐらいは来そうだよね。次は本腰入れて大艦隊なんて事にならなければいいけど」
「よし! 今回はこんなところだね。報告書は後でゆっくり目を通すことにするよ。他は何かあるかい」
「……それが、じつはですね……」
…………
「なるほど、ダンジョンの発見を……。でも、それは今後『東の海』の安定には欠かせないのだろう。それなら、クルーガー王国にとっても利はあるのか」
「それでですね、近々あちらの王宮ヘ参内することになっておりまして…………」
「なるほど、よく話してくれたね。3日程待っててよ、ローザン王国に『親書』を出すから持っていってくれるかい」
クルーガー王国の王宮にて親書を預かった僕は、再びローザン王国へ渡ってきた。
そして今、ダンジョン・シンゲン を経由して ダンジョン・イエヤス へ辿り着いたところだ。
ここでも転移台座の他、基本的なことを取り決めていきダンジョン内の利便性を向上させていく。
そうすることで、ダンジョンの来場者は増えるし 管理もしやすくなるのだ。
ん、何故こんな時にやっているのか? ――暇なのだ。
この迷宮都市でアンリエッタと待ち合わせをしているのだが、こちらに来るのが少々早かったのだ。
彼女もモコモコが居るのだし、一気に ”転移” や ”快適な空の旅” も出来るのだが、彼女の立場がそれを許さない。
『行きました』という事実が有るなら、『無事に帰りました』という事実も必要になるのだ。
窮屈であろうがこればかりは仕方ないのである。
そして翌日、無事に到着したアンリエッタに労いの言葉をかけ、王都まで同行することになった。
ローザン王国の王都マルゴーに入った。王都の門、貴族街の門、王城の各門すべて顔パス。
まあ、先触れを出しているからでもあるが、これはなかなか気持ちが良い。
そして、王都でもアンリエッタの人気ぶりは凄い。
沿道や広場では みんな笑顔で手を振っている。
これが王都の門を潜って貴族街に入るまでずっと続くのだ。
王城に到着してからはアンリエッタと僕たちは別行動になった。
ただ、親書を預かっている僕は『勅使』と同じ扱いになるようで丁重にもてなされている。
こうなってくると親書を託されたことに正直感謝しかない。まさか、これを見越してのことだったとか……アースレット様なら十分考えられるな。
今度、また王宮に何か持っていってやるか。
彼はマヨラーだから、僕が秘蔵している『明太マヨネーズ』をプレゼントしてもいいかもな。
このあと特に予定が入っていないので、通された客室でシロやピーチャンをもふりながら のんびりと過ごすことにした。
こうして豪華な部屋で一晩過ごした僕たちに、朝食をとった後呼び出しがかかった。
メイドの案内で応接室に通されて待つことしばし。
すると、ほどなく扉が騎士が2名現れて両脇に別れる。
その後をグレーの髪に口髭を生やした初老の男性が続き、同年ぐらいの女性がすぐ後ろを追う。そして最後に入ってきたのはアンリエッタであった。
僕はソファーから立ち上がって皆さんをお迎えしていた。
そして、そのまま貴族礼へ移ろうとしたのだが、急に近よってきた初老の男性は僕の手をとり、
「ありがとう、ありがとう、カルロ殿。君にもらった『エリクサー』のお陰でこの通り元気になることができたよ。アンリエッタから話を聞いてから ずっと君に会いたいと思っていたのだよ」
その男性は、少し興奮しているようで声もうわずっていた。
「陛下、もうその辺りで……。カルロ様が困っておいでですよ。それに親書を携えた方に失礼があってはなりません」
「ん、おお、そうであったな。儂としたことが……すまぬカルロ殿」
「いえいえ、私も 陛下がお元気になられたことはとても嬉しく思っています。まずは、ご挨拶をさせて頂きたいのですが」
それから、しっかりと貴族礼を取り挨拶と自己紹介をおこなった。
そして、陛下と呼ばれていた男性は ルシード・ジ・ローザン国王陛下。隣の女性は マシェリ・ローザン第一王妃。この二人が共にアンリエッタの両親ということになる。
それぞれが自己紹介も終わり、落ち着いたところで 僕は懐に入れていたクルーガー王国からの親書を手渡した。
すると、ルシード国王は受け取った親書の封蝋を割り中の文章に目を通していく。
そして親書を読み終わると、その内容を熟考するように目を閉じてしまった。
「フフフッ! ハ―ハハハッ! いやいや、失礼。カルロ殿はよほど ヴァルサン国王に気に入られているようだね」
「ここに書いてあるぞ、『絶対渡さない』とね! おもしろい、実におもしろいよ。アンリエッタが惚れこむのも無理はないねぇ」
「お父様、何てことを。私はカルロ様に惚れてなど……」
僕は王宮にあがって親書を受け取って来ただけで、ヴァルサン国王と話もしていないし中の内容も知らない。いったい何て書いてあったのだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
まあ、内容はともかく「親書」を託されるというのはかなり名誉な事なのです。「勅使」とは天皇が派遣する使者のことをいうのですが、国王が出す親書もそう変わらないだろうと思います。
※第1部 資料1.★ローザン王国・ザルツ島★を新たに追加! 今回のダンジョンの配置等がまるっと分かります。U•ɷ•)ฅ
僕は一旦カルロ邸に戻ってきた。
1日、邸でゆっくり過ごした後 次の日に王城へ向かった。
その時に、『ローザン王国』及び『ザルツ島』に関する報告書を王太子のアースレット様に直接お渡しすると共に補足説明もおこなっていた。
「うん、なるほどね。だいたいの流れは分かったよ。『東の海』はだいぶ落ち着いたということだね。」
「はい、今のところは。……これで、諦めてくれるといいのですが、こればかりは」
「だね、もう一度ぐらいは来そうだよね。次は本腰入れて大艦隊なんて事にならなければいいけど」
「よし! 今回はこんなところだね。報告書は後でゆっくり目を通すことにするよ。他は何かあるかい」
「……それが、じつはですね……」
…………
「なるほど、ダンジョンの発見を……。でも、それは今後『東の海』の安定には欠かせないのだろう。それなら、クルーガー王国にとっても利はあるのか」
「それでですね、近々あちらの王宮ヘ参内することになっておりまして…………」
「なるほど、よく話してくれたね。3日程待っててよ、ローザン王国に『親書』を出すから持っていってくれるかい」
クルーガー王国の王宮にて親書を預かった僕は、再びローザン王国へ渡ってきた。
そして今、ダンジョン・シンゲン を経由して ダンジョン・イエヤス へ辿り着いたところだ。
ここでも転移台座の他、基本的なことを取り決めていきダンジョン内の利便性を向上させていく。
そうすることで、ダンジョンの来場者は増えるし 管理もしやすくなるのだ。
ん、何故こんな時にやっているのか? ――暇なのだ。
この迷宮都市でアンリエッタと待ち合わせをしているのだが、こちらに来るのが少々早かったのだ。
彼女もモコモコが居るのだし、一気に ”転移” や ”快適な空の旅” も出来るのだが、彼女の立場がそれを許さない。
『行きました』という事実が有るなら、『無事に帰りました』という事実も必要になるのだ。
窮屈であろうがこればかりは仕方ないのである。
そして翌日、無事に到着したアンリエッタに労いの言葉をかけ、王都まで同行することになった。
ローザン王国の王都マルゴーに入った。王都の門、貴族街の門、王城の各門すべて顔パス。
まあ、先触れを出しているからでもあるが、これはなかなか気持ちが良い。
そして、王都でもアンリエッタの人気ぶりは凄い。
沿道や広場では みんな笑顔で手を振っている。
これが王都の門を潜って貴族街に入るまでずっと続くのだ。
王城に到着してからはアンリエッタと僕たちは別行動になった。
ただ、親書を預かっている僕は『勅使』と同じ扱いになるようで丁重にもてなされている。
こうなってくると親書を託されたことに正直感謝しかない。まさか、これを見越してのことだったとか……アースレット様なら十分考えられるな。
今度、また王宮に何か持っていってやるか。
彼はマヨラーだから、僕が秘蔵している『明太マヨネーズ』をプレゼントしてもいいかもな。
このあと特に予定が入っていないので、通された客室でシロやピーチャンをもふりながら のんびりと過ごすことにした。
こうして豪華な部屋で一晩過ごした僕たちに、朝食をとった後呼び出しがかかった。
メイドの案内で応接室に通されて待つことしばし。
すると、ほどなく扉が騎士が2名現れて両脇に別れる。
その後をグレーの髪に口髭を生やした初老の男性が続き、同年ぐらいの女性がすぐ後ろを追う。そして最後に入ってきたのはアンリエッタであった。
僕はソファーから立ち上がって皆さんをお迎えしていた。
そして、そのまま貴族礼へ移ろうとしたのだが、急に近よってきた初老の男性は僕の手をとり、
「ありがとう、ありがとう、カルロ殿。君にもらった『エリクサー』のお陰でこの通り元気になることができたよ。アンリエッタから話を聞いてから ずっと君に会いたいと思っていたのだよ」
その男性は、少し興奮しているようで声もうわずっていた。
「陛下、もうその辺りで……。カルロ様が困っておいでですよ。それに親書を携えた方に失礼があってはなりません」
「ん、おお、そうであったな。儂としたことが……すまぬカルロ殿」
「いえいえ、私も 陛下がお元気になられたことはとても嬉しく思っています。まずは、ご挨拶をさせて頂きたいのですが」
それから、しっかりと貴族礼を取り挨拶と自己紹介をおこなった。
そして、陛下と呼ばれていた男性は ルシード・ジ・ローザン国王陛下。隣の女性は マシェリ・ローザン第一王妃。この二人が共にアンリエッタの両親ということになる。
それぞれが自己紹介も終わり、落ち着いたところで 僕は懐に入れていたクルーガー王国からの親書を手渡した。
すると、ルシード国王は受け取った親書の封蝋を割り中の文章に目を通していく。
そして親書を読み終わると、その内容を熟考するように目を閉じてしまった。
「フフフッ! ハ―ハハハッ! いやいや、失礼。カルロ殿はよほど ヴァルサン国王に気に入られているようだね」
「ここに書いてあるぞ、『絶対渡さない』とね! おもしろい、実におもしろいよ。アンリエッタが惚れこむのも無理はないねぇ」
「お父様、何てことを。私はカルロ様に惚れてなど……」
僕は王宮にあがって親書を受け取って来ただけで、ヴァルサン国王と話もしていないし中の内容も知らない。いったい何て書いてあったのだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
まあ、内容はともかく「親書」を託されるというのはかなり名誉な事なのです。「勅使」とは天皇が派遣する使者のことをいうのですが、国王が出す親書もそう変わらないだろうと思います。
※第1部 資料1.★ローザン王国・ザルツ島★を新たに追加! 今回のダンジョンの配置等がまるっと分かります。U•ɷ•)ฅ
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
流れ者のソウタ
緋野 真人
ファンタジー
神々が99番目に創ったとされる世界――ツクモ。
"和"な文化と思想、感性が浸透したその異世界には、脈々と語り継がれている、一つの伝承があった。
『――世、乱れる時、光の刀持ちて、現れる者、有り。
その者、人々は刀聖と呼び、刀聖、振るう刀は、乱れを鎮め、邪を滅し、この地を照らす、道しるべを示さん――』
――その、伝承の一節にある、光の刀を持つ旅の青年、ソウタ。
彼が、ひょんなコトから関わったある出来事は、世界を乱す、大戦乱への発端となる事件だった。
※『小説家になろう』さんにて、2016年に発表した作品を再構成したモノであり、カクヨムさんでも転載連載中。
――尚、作者構想上ですら、未だ完結には至っていない大長編となっておりますので、もしも感想を頂けるのでしたら、完結を待ってではなく、章単位や話単位で下さります様、お願い申し上げます。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる