僕とシロ

マネキネコ

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106.ランデブー

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 僕とアンリエッタは例の倉庫の中で最終的な打ち合わせをおこなっていた。

 各ダンジョンの稼働確認かどうかくにん後、状況報告じょうきょうほうこく引継ひきつぎをしている。

 「後は転移門の設置だけだね。そこに地図をいといたから、今度来たときに指定してくれれば対応していくからね」

 「うん、ありがとう。……でも、何でここまでしてくれるの? スラミガ帝国を追っ払ってもらっただけでも大助かりなのに、ダンジョンが2ヶ所に その段取だんどりまでしてくれて」

 「まあ、ここだけの話、ダンジョンの方は使命みたいなものだからあまり気にしなくていいよ」

 「お父様にはお話するけど、間違いなく腰抜かすでしょうね。というか、信じてもらえないかもしれないでしょ。だから、……その、ねっ、いっしょに来て!」

 顔を真っ赤にして。……可愛いな。

 あれから4年だからアンリエッタは20歳。

 身体もしっかりきたえていたみたいでレベルも結構上がっている。

 これなら『姫騎士』と呼ばれても恥ずかしくない域に達していると思う。

 てして、『姫騎士』とか呼ばれているような姫様は見かけ倒しの『へなちょこ騎士』であることが多いのだがアンリエッタは違う。

 もう、1~2年鍛えれば誰も勝てなくなるだろう。

 しかし、根が真面目だからそればかりに熱中していたのであろう。――まだまだ純だよな。





 僕はローザン王国の王都マルゴーまでアンリエッタに同行することにした。

 スラミガ帝国のザルツ島撤退てったいとダンジョンの発見を王宮に報告すためである。

 まあ、こちらもいろいろと予定があったのだがな……。

 アンリエッタのヤツ、みかん箱に入れられた捨犬のような顔をしているのだ。

 これは捨て置くわけにはいかないだろ。――やれやれ。

 と、その前にモコモコのことを話しておかないとな。

 「わかった、わかったからそんな顔をするな。一緒に行くよ王都まで」

 「ホント! ホントよね。嬉しい! あなたが来てくれたらお父様も喜ぶわぁ」

 なぜ? と聞こうとしたが止めた。考えてみれば ”エリクサー” だけ渡してパッと消えているわけで、見かたによっては無礼だったのかもしれないのだ。

 「それにね、大変だったのよ。お礼に行くとか言いだしちゃって。なだめるのも大変だったのよ」

 「でも、あれは側で見ていた私も言葉が出なかったわね。飲んだ瞬間に身体が発光していたもの、正に神の御業かみのみわざって感じだったわぁ」

 神の御業もなにも、正真正銘女神さまに頂いたものだからね。――言わないけど。





 「それで話は変わるんだけど、1日だけモコモコを貸してくれないか?」

 「えっ、モコちゃんを? 別にいいけど、……ああっ、モコちゃんに愛をささやかせるつもりね。それなら、私も……」

 「スト――――プ! 違うから、そうじゃないから」

 「な~んだ、ちがうんだ。まあ、何するかわかんないけど私は良いわよ」

 「お、おう、それじゃ、借りてくぞ。また、明日ここで待っていてくれ」

 「はい! うふふっ」

 「なんだ? どうかしたのか」

 「うん、なんていうか、こうして先に来てあなたを待っていることが こんなにドキドキするなんて知らなかったのよ」

 『かならず行くからそこで待っていてくれ』とは言わない。フラグだから……。

 そのあと、午後からはシロ、ピーチャン、モコモコを連れてダンジョンへもぐった。

 ズバリ、パワーレベリングのためである。鑑定によりモコモコの幸運値が97%だったのだ。

 たしか進化の条件は『女神さまの加護』+『幸運値100』だったよな。

 これなら、レベルを1もしくは2上げれば進化可能になるはずだから。

 さーてみんな、ガンガン行っくよぉー!






 みんなが頑張ってくれたお陰でモコモコはその日の内に幸運値が100に到達。

 無事、チルチットから『チルチタス』へ進化をげた。

 スキルの方も無事に獲得かくとくしており、待望の「空を飛ぶ!」が使用可能になった。

 そして、この「空を飛ぶ!」というスキル、各町だけでなくダンジョンにも飛ぶことが出来るようなのだ。

 これにより、ダンジョンの近くや地脈の上に居なくともダンジョン転移がどこからでも使用できるようになった。

 あとは、そうそう、変身サングラスを渡しておかないとな。

 モコモコにはこの足に着けるリングだな。これはマジックリングだから大きさが変わっても大丈夫だし、光学迷彩を発動させるにはリングに魔力を通すだけなのだ。 





 そして、翌日。

 「うわー、うわー、モコちゃん大きいすごーい! それにフワッフワで気持ちいい!」

 「そのモコモコの背中で寝てみな マジで最高だから」

 「この足にはまっているリングは何?」

 「ああ、それは魔力を通すと光学迷彩が発動する魔道具だよ」

 「一度見ておくといい。モコモコやってみてくれ」

 …………。

 「あっ、消えた! あのサングラスみたい。凄い」

 「うん、これが出来ないと大騒ぎになるからね。スキルを使うと必ず町門の前に出るんだよ」

 「それでは実際に外に出て飛んでみようか?」

 「えっ、ホント! やったー。ついに飛べるのね。お空をそして雲の上を」

 それから、ピーチャンとモコモコは仲よく横に並ぶと、しばらくの間ランデブー飛行を楽しんだ。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
カルロは中身がおっさんだから女の子の『おねがい』にはすこぶる弱いです。あんまりデレデレしてるとエマに怒られそうですね。モコモコもついに進化しました。これで町やダンジョンへ飛べるようになりましたが、これってカルロはどこにも逃げられないのでは……。(汗)
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