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105.しっかりね
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あの後、アンリエッタが帰る帰らないで押し問答。
まあ、何とか説得して領主邸に帰ってもらったのだが、少しは考えてほしいものだ。良いお年の王女様が男性の部屋に入るだけでも問題があるというのに……。
これが問題にならずに済んでいるのは、皆がスラミガ帝国の撤退処理に追われているからである。
こちらに出張って来たものの、まったく出番のないアンリエッタは今日も僕に会いに来ているのだ。
しかし、なんとか場所だけは変えさせてもらった。
そう、ここは初めて落ち合った第3倉庫 (仮) 。
ダンジョン開発の説明や工事の見学はさせているが、基本 昼までには帰ってもらっている。
そんなこんなで、ひと手間掛かっているものの開発の方は至って順調に進んでいた。
最初5日間で、『ダンジョン・シンゲン』への街道を通しダンジョン周りの整地をおこなった。
囲んでいた山の一部を切り崩し、でっかい街道をバランの町まで一気に敷いてきた。
地脈の上なので殆ど手間がかからずに作業を終えられ、バランからは馬車に乗れば3日で行けるようなった。
ついでに、ローザン王国の王族用にと温泉施設を作らせた。
こちらが場所の指定をすると、『ダンジョン・スパンク』をベースにして翌日には完成させていた。
これも、ダンジョン間の地脈リンクのお陰だな。
ただ、ウォータースライダーが一回りデカくなっているような気もするのだが。
まあ、シロとピーチャンの仕業であろうが ここは目を瞑っておくことにした。
そして、2日程カルロ邸に戻りみんなに癒されてから後半戦へ突入した。
今回は ダンジョン・ムラカミ なのだが、当初計画を立てていた『釣り堀』なのだが以外に大変であった。
生け簀や中に入れる魚などはすぐ用意出来たのだが、問題は釣り具の方であった。
この世界には釣り具屋はないのだ。竿やリール、たも網に至るまで何もない。
釣り具の開発は…………無理だ! 勘弁してもらいたい。開発したところで使うのは素人なのだ。
ここは、リール無しの竹竿で勝負するしかないが、この世界に竹なんかあったか?
僕は悩んだ末、ここは『餅は餅屋』だろうとの思いで、先日お世話になったザルツ島の港町ルダンにやって来ていた。
伝手がない僕は昼間にも関わらず、あの飲み屋のマスターを訪ねることにした。
……誰? このおっさん。
甚平のようなよれよれの部屋着を着崩した狼人族の男が、胸元をボリボリかきながら、
「どちらさん?」
夜を生きる人間というものは、昼間に会うと どーしてこうも違うのだろうか?
以前、熱をあげて通った飲み屋の照子ちゃん、偶然 昼間にパチンコ屋で出くわした時は『えっ、誰?』となり……。遠い昔の思い出だな。
簡単に事情を話し漁師を紹介してもらった。
別れ際に、「ありがとう」と銀貨を渡すと彼は満面の笑顔で、
「またのご来店心よりお待ちしております!」
だと、顔だけシュっとされて言われてもなぁ~。
でもまぁ、あの『パラダイス・メニュー』は そのうち制覇してやるからな。――サムサム抜きで。
漁師に会った僕はさっそく竿を見せてもらうことにした。
もちろん一本釣り用のだ。サムサムは関係ない。
おお、あるじゃないですか~。
これこれ、このしなり具合。なかなか宜しい!
そこでその漁師に、
「これ100本欲しいんだけど、用意できない?」
「いやいや、これは大事な商売道具だ。そう易々と教えられねーよ」
…………。
…………。
市価の倍の値で交渉成立!
「5日で準備するから、また、その時取りに来な」
「それでは、5日後にお伺いしますね」
僕は半金をその漁師に渡し港町ルダンを後にした。
後は転移門の設置だが、これはアンリエッタと協議しないと僕にはわからない。
また、利用料をどうするのか、管理は誰がするのか等も決めていく必要があるだろう。
とはいえ、この短期間のうちに2ヵ所のダンジョンは稼働状態にすることが出来た。
「これで、何とか枠組みも出来たよね。後はそちらの努力次第だよ。しっかりね」
「師匠、いえっ、カルロ様は……私のことがお嫌いなのですか?」
「えっ、ええっと、話が見えないのですが。それにアンリエッタは王位を継ぐんだよね?」
「いえ、……それが、ご存知のように父はすこぶる健康になりまして、政務も精力的にこなしております」
「更に険悪であった王弟様とも和解されております。そして、その王弟様には9歳になる嫡男がおられるのですが、此度はその方を次の王にという流れになっているのです」
ふ~ん、今はそんな流れになっているんだねぇ。
アンリエッタは責任感が強いからいろいろ悩んでいるのかな?
「アンリエッタは王になりたくなかったの?」
「いえ、それなりの教育は受けてきましたが進んでなりたいという訳では……」
「そうなんだ。でも、婚約はしてるんだよね?」
「……はい、許嫁はおりましたが、それが……王位を継がないのであればと、その、『破棄』されてしまいました。ですから、今の私は ”根無し草” なのです。どこに流されて参りますやら」
いろいろ、織り込み済みの婚約なら仕方のないことかもしれないな。
そうすると、逆に邪魔者扱いされたりするのかなぁ……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
シンゲン と ムラカミ 2ヵ所のダンジョンは稼働状態になり、「僕の役目は終わり」とばかりに帰ろうとしているカルロ。国王を救ったために変わっていく未来。アンリエッタのしあわせは何処に? 王様を救い、スラミガ帝国を追っ払い、ダンジョン2ヵ所発見、おまけにお膳立て。 さて、王宮がどう動きますやら……。
まあ、何とか説得して領主邸に帰ってもらったのだが、少しは考えてほしいものだ。良いお年の王女様が男性の部屋に入るだけでも問題があるというのに……。
これが問題にならずに済んでいるのは、皆がスラミガ帝国の撤退処理に追われているからである。
こちらに出張って来たものの、まったく出番のないアンリエッタは今日も僕に会いに来ているのだ。
しかし、なんとか場所だけは変えさせてもらった。
そう、ここは初めて落ち合った第3倉庫 (仮) 。
ダンジョン開発の説明や工事の見学はさせているが、基本 昼までには帰ってもらっている。
そんなこんなで、ひと手間掛かっているものの開発の方は至って順調に進んでいた。
最初5日間で、『ダンジョン・シンゲン』への街道を通しダンジョン周りの整地をおこなった。
囲んでいた山の一部を切り崩し、でっかい街道をバランの町まで一気に敷いてきた。
地脈の上なので殆ど手間がかからずに作業を終えられ、バランからは馬車に乗れば3日で行けるようなった。
ついでに、ローザン王国の王族用にと温泉施設を作らせた。
こちらが場所の指定をすると、『ダンジョン・スパンク』をベースにして翌日には完成させていた。
これも、ダンジョン間の地脈リンクのお陰だな。
ただ、ウォータースライダーが一回りデカくなっているような気もするのだが。
まあ、シロとピーチャンの仕業であろうが ここは目を瞑っておくことにした。
そして、2日程カルロ邸に戻りみんなに癒されてから後半戦へ突入した。
今回は ダンジョン・ムラカミ なのだが、当初計画を立てていた『釣り堀』なのだが以外に大変であった。
生け簀や中に入れる魚などはすぐ用意出来たのだが、問題は釣り具の方であった。
この世界には釣り具屋はないのだ。竿やリール、たも網に至るまで何もない。
釣り具の開発は…………無理だ! 勘弁してもらいたい。開発したところで使うのは素人なのだ。
ここは、リール無しの竹竿で勝負するしかないが、この世界に竹なんかあったか?
僕は悩んだ末、ここは『餅は餅屋』だろうとの思いで、先日お世話になったザルツ島の港町ルダンにやって来ていた。
伝手がない僕は昼間にも関わらず、あの飲み屋のマスターを訪ねることにした。
……誰? このおっさん。
甚平のようなよれよれの部屋着を着崩した狼人族の男が、胸元をボリボリかきながら、
「どちらさん?」
夜を生きる人間というものは、昼間に会うと どーしてこうも違うのだろうか?
以前、熱をあげて通った飲み屋の照子ちゃん、偶然 昼間にパチンコ屋で出くわした時は『えっ、誰?』となり……。遠い昔の思い出だな。
簡単に事情を話し漁師を紹介してもらった。
別れ際に、「ありがとう」と銀貨を渡すと彼は満面の笑顔で、
「またのご来店心よりお待ちしております!」
だと、顔だけシュっとされて言われてもなぁ~。
でもまぁ、あの『パラダイス・メニュー』は そのうち制覇してやるからな。――サムサム抜きで。
漁師に会った僕はさっそく竿を見せてもらうことにした。
もちろん一本釣り用のだ。サムサムは関係ない。
おお、あるじゃないですか~。
これこれ、このしなり具合。なかなか宜しい!
そこでその漁師に、
「これ100本欲しいんだけど、用意できない?」
「いやいや、これは大事な商売道具だ。そう易々と教えられねーよ」
…………。
…………。
市価の倍の値で交渉成立!
「5日で準備するから、また、その時取りに来な」
「それでは、5日後にお伺いしますね」
僕は半金をその漁師に渡し港町ルダンを後にした。
後は転移門の設置だが、これはアンリエッタと協議しないと僕にはわからない。
また、利用料をどうするのか、管理は誰がするのか等も決めていく必要があるだろう。
とはいえ、この短期間のうちに2ヵ所のダンジョンは稼働状態にすることが出来た。
「これで、何とか枠組みも出来たよね。後はそちらの努力次第だよ。しっかりね」
「師匠、いえっ、カルロ様は……私のことがお嫌いなのですか?」
「えっ、ええっと、話が見えないのですが。それにアンリエッタは王位を継ぐんだよね?」
「いえ、……それが、ご存知のように父はすこぶる健康になりまして、政務も精力的にこなしております」
「更に険悪であった王弟様とも和解されております。そして、その王弟様には9歳になる嫡男がおられるのですが、此度はその方を次の王にという流れになっているのです」
ふ~ん、今はそんな流れになっているんだねぇ。
アンリエッタは責任感が強いからいろいろ悩んでいるのかな?
「アンリエッタは王になりたくなかったの?」
「いえ、それなりの教育は受けてきましたが進んでなりたいという訳では……」
「そうなんだ。でも、婚約はしてるんだよね?」
「……はい、許嫁はおりましたが、それが……王位を継がないのであればと、その、『破棄』されてしまいました。ですから、今の私は ”根無し草” なのです。どこに流されて参りますやら」
いろいろ、織り込み済みの婚約なら仕方のないことかもしれないな。
そうすると、逆に邪魔者扱いされたりするのかなぁ……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
シンゲン と ムラカミ 2ヵ所のダンジョンは稼働状態になり、「僕の役目は終わり」とばかりに帰ろうとしているカルロ。国王を救ったために変わっていく未来。アンリエッタのしあわせは何処に? 王様を救い、スラミガ帝国を追っ払い、ダンジョン2ヵ所発見、おまけにお膳立て。 さて、王宮がどう動きますやら……。
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