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102.ト連送
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僕たちは今、ザルツの町の冒険者ギルドに来ている。バランの町で受けた『郵便物』配達の為でもある。
そこで、相手の力量も測れず絡んできた3人組の冒険者がいた。
故あってシロが怒ってしまい威圧を放ったのだが、それからが大変であった。
威圧の余波を受けてしまったギルドに居た冒険者達は、その場で服従のポーズをとり床に転がっている。
あ~あ、やっちゃったよ。どーするんだよ本当に……。
するとシロが僕の目を見てきた。
うん、何か解決策でもあるのか? 僕は大きく頷き、後はシロに任せることにした。
どーして、こーなった!
今、僕とシロはギルド長室に連れて来られていた。
僕たちの座っている対面にはここのギルドマスターがどっしりと腰を下ろしている。
頭に見えているのはピンと立った三角の耳。彼もまた狼人族であるという。
それにしてもデカい! 歴戦の勇士を思わせる大きく鍛えあげられた身体は貫禄十分である。
「あのバカどもが、いろいろ迷惑をかけて申し訳ない」
「いえいえ、もう、頭を上げてください。それにしても、よくシロをご存知でしたね」
「はい、私も小さい時分にひい婆さまに聞いただけで、実際お会いするのは今日が初めてです」
「ひい婆さまにですか?」
「ああ、いや、私は元もとは『ジェリー島』の出身でして、地元では『海竜殺しのシロ』として昔から語り継がれていたのです」
海竜? ……ああ、あったなぁそんなこと。たしか、あの時は倒すまでに結構な時間がかかったよな。
あの『リバイアサン』、あの界隈をあっちこっちで暴れていたのだな。――懐かしい。
ん、ああ、今の状況ね……。
あの後、服従のポーズをとったまま動かない冒険者の所をシロが順に回っていたのだ。
何をしていたのかシロに聞いてみたところ、一人一人を舎弟にしていたという。
そこへ、騒動に気づいて駆けつけてきたギルドマスターがシロと対面。そして、即コロン。
ギルマスも見事舎弟にされてしまった。――まぁそんな話。
だから、こうして対面で座ってはいるが、シロを有する僕たちの方が上座《かみざ》に座っているのだ。
「それで、今日のご用向きは何かありましたかな?」
「はい、依頼で。バランの冒険者ギルドから この郵便物をこちらに届けるようにと」
「おお、これは正に! しかし、よく此方に渡してくれる船がありましたなぁ」
「その辺はいろいろとありましてね。詳しくは申せませんが」
「はい、承知していますとも。冒険者ですからな……。それでは、こちらからの分もお願い出来ますかな」
「ええ、そのつもりで来ました。あちらのギルドからも良しなにと」
「そうですか! すぐ準備させましょう。結構溜まっておりましてな」
そして、新たに郵便物の配達依頼を受領し、今回の報酬を受け取った。
報酬は大銀貨が3枚。
う~ん、少なくはないと思うがそれは船や馬車を使わない場合だ。
あと、宿泊費や食事代などを考えると……。片道と考えても結構な赤字になるな。
これでは誰もやらないだろう。塩漬けになるはずである。
まあ、僕の場合はダンジョンのリンクさえ完成してしまえば、移動は一瞬で済むようになるしな。
それから、スラミガ帝国の侵攻の話になったのだが、冒険者ギルドとしては人々による紛争や戦争に対しては基本的に不介入を貫くということである。
ただ、依頼が減ってしまったり 仕事が滞ることもしばしば起こり、ギルドとしては早期の終結を願うばかりだとか。
あと、港についても少しだが聞くことができた。
主要の大きい港は3ヶ所あり、北側の港は隣りの島とを結んでいるザルツ連邦の生命線。
南側の港はローザン王国の各港を幅広くカバーしており、遠くは最南の港町『コンペイ』まで結んでいる。
そして最後が南西方面にある港だ。ここは言わずと知れたバランの町とを結んだ重要拠点になっている。
現在は、スラミガ帝国の侵攻により、南と南西にある2ヶ所の港が完全に包囲された状態にある。
これにより、ザルツ島の流通は完全にストップしているらしいのだ。
冒険者ギルドを出た僕たちは宿も取らずに町を出ることにした。
ザルツの町の西門を出たあと、適当な茂みに入り光学迷彩を掛け飛び立った。
街道はガラガラというか誰も通っていない。そんな街道に沿って1刻 (2時間) 程進むと目的の海と港町が見えてきた。
下りて確認の必要はないな。なぜなら、沿岸に船が固まっているのが見えているからな。
あれは、来る時に見たスラミガ帝国の船団だよな。それに、僕の嫌いな『虫虫空母』が何隻も見えているのだから。
よーし、ト連送だ! 全軍突撃!!
って、家はピーチャン号 1機だけど、いっくよ――――!
そして、またしてもシロはファイヤーボールを、僕はライズボール (電気玉) を打ちまくっていた。
ふうふう、はぁはぁ。どうだ参ったか! このヤロー。
今回も見事に『虫虫』は全滅し、汚物の消毒は終わった。
これで、しばらくの間はスラミガ帝国もおとなしくなることだろう。
さて、お腹も空いたし今日はこの港町に泊りますかね。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ト連送はモールス信号の伝達における暗号で、トを3回づつ続けて打つという意味です。日本が真珠湾を攻める時分に、「総員突撃せよ!」を表す符号として使われました。ザルツの町の冒険者は狼人族が多いようですね。ギルマスでもシロには頭が上がらないようです。
そこで、相手の力量も測れず絡んできた3人組の冒険者がいた。
故あってシロが怒ってしまい威圧を放ったのだが、それからが大変であった。
威圧の余波を受けてしまったギルドに居た冒険者達は、その場で服従のポーズをとり床に転がっている。
あ~あ、やっちゃったよ。どーするんだよ本当に……。
するとシロが僕の目を見てきた。
うん、何か解決策でもあるのか? 僕は大きく頷き、後はシロに任せることにした。
どーして、こーなった!
今、僕とシロはギルド長室に連れて来られていた。
僕たちの座っている対面にはここのギルドマスターがどっしりと腰を下ろしている。
頭に見えているのはピンと立った三角の耳。彼もまた狼人族であるという。
それにしてもデカい! 歴戦の勇士を思わせる大きく鍛えあげられた身体は貫禄十分である。
「あのバカどもが、いろいろ迷惑をかけて申し訳ない」
「いえいえ、もう、頭を上げてください。それにしても、よくシロをご存知でしたね」
「はい、私も小さい時分にひい婆さまに聞いただけで、実際お会いするのは今日が初めてです」
「ひい婆さまにですか?」
「ああ、いや、私は元もとは『ジェリー島』の出身でして、地元では『海竜殺しのシロ』として昔から語り継がれていたのです」
海竜? ……ああ、あったなぁそんなこと。たしか、あの時は倒すまでに結構な時間がかかったよな。
あの『リバイアサン』、あの界隈をあっちこっちで暴れていたのだな。――懐かしい。
ん、ああ、今の状況ね……。
あの後、服従のポーズをとったまま動かない冒険者の所をシロが順に回っていたのだ。
何をしていたのかシロに聞いてみたところ、一人一人を舎弟にしていたという。
そこへ、騒動に気づいて駆けつけてきたギルドマスターがシロと対面。そして、即コロン。
ギルマスも見事舎弟にされてしまった。――まぁそんな話。
だから、こうして対面で座ってはいるが、シロを有する僕たちの方が上座《かみざ》に座っているのだ。
「それで、今日のご用向きは何かありましたかな?」
「はい、依頼で。バランの冒険者ギルドから この郵便物をこちらに届けるようにと」
「おお、これは正に! しかし、よく此方に渡してくれる船がありましたなぁ」
「その辺はいろいろとありましてね。詳しくは申せませんが」
「はい、承知していますとも。冒険者ですからな……。それでは、こちらからの分もお願い出来ますかな」
「ええ、そのつもりで来ました。あちらのギルドからも良しなにと」
「そうですか! すぐ準備させましょう。結構溜まっておりましてな」
そして、新たに郵便物の配達依頼を受領し、今回の報酬を受け取った。
報酬は大銀貨が3枚。
う~ん、少なくはないと思うがそれは船や馬車を使わない場合だ。
あと、宿泊費や食事代などを考えると……。片道と考えても結構な赤字になるな。
これでは誰もやらないだろう。塩漬けになるはずである。
まあ、僕の場合はダンジョンのリンクさえ完成してしまえば、移動は一瞬で済むようになるしな。
それから、スラミガ帝国の侵攻の話になったのだが、冒険者ギルドとしては人々による紛争や戦争に対しては基本的に不介入を貫くということである。
ただ、依頼が減ってしまったり 仕事が滞ることもしばしば起こり、ギルドとしては早期の終結を願うばかりだとか。
あと、港についても少しだが聞くことができた。
主要の大きい港は3ヶ所あり、北側の港は隣りの島とを結んでいるザルツ連邦の生命線。
南側の港はローザン王国の各港を幅広くカバーしており、遠くは最南の港町『コンペイ』まで結んでいる。
そして最後が南西方面にある港だ。ここは言わずと知れたバランの町とを結んだ重要拠点になっている。
現在は、スラミガ帝国の侵攻により、南と南西にある2ヶ所の港が完全に包囲された状態にある。
これにより、ザルツ島の流通は完全にストップしているらしいのだ。
冒険者ギルドを出た僕たちは宿も取らずに町を出ることにした。
ザルツの町の西門を出たあと、適当な茂みに入り光学迷彩を掛け飛び立った。
街道はガラガラというか誰も通っていない。そんな街道に沿って1刻 (2時間) 程進むと目的の海と港町が見えてきた。
下りて確認の必要はないな。なぜなら、沿岸に船が固まっているのが見えているからな。
あれは、来る時に見たスラミガ帝国の船団だよな。それに、僕の嫌いな『虫虫空母』が何隻も見えているのだから。
よーし、ト連送だ! 全軍突撃!!
って、家はピーチャン号 1機だけど、いっくよ――――!
そして、またしてもシロはファイヤーボールを、僕はライズボール (電気玉) を打ちまくっていた。
ふうふう、はぁはぁ。どうだ参ったか! このヤロー。
今回も見事に『虫虫』は全滅し、汚物の消毒は終わった。
これで、しばらくの間はスラミガ帝国もおとなしくなることだろう。
さて、お腹も空いたし今日はこの港町に泊りますかね。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ト連送はモールス信号の伝達における暗号で、トを3回づつ続けて打つという意味です。日本が真珠湾を攻める時分に、「総員突撃せよ!」を表す符号として使われました。ザルツの町の冒険者は狼人族が多いようですね。ギルマスでもシロには頭が上がらないようです。
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