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101.虫虫いくない!
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「おお、それは本当か? それならすぐに管理者権限の取得と地脈のリンクを頼む」
「んん、そうだな。名称決めだよな。……では、『ケンシン』でいこう」
今行なっていたやり取りは、新しく見つかったダンジョンによるものだ。
念のために、近くに別のダンジョンがないか聞いてみたところ、範囲内に1ヶ所だけ確認することができたのだ。
それも、目の前にあるザルツ島にだ。
これは正に朗報で、この発見によりダンジョンの力を十分に発揮することが出来るはずだ。
地脈のリンクも明日には張ることが出来るということだ。
そして ここに来て、『地脈のリンク』に関してだが興味深い話を聞くことができたのだ。
それは、同じ者が管理するダンジョンにおいては、双方から地脈ラインを伸ばしてリンクを組むことが出来るということだ。
んん、まあ、どちらからリンクを組んでもいいわけだしな……。
何を今さら、とこの時は思っていたのだが、のちのちこれが ”画期的な事” なのだと気付かされることになるのだ。
僕たちは、再度ダンジョンの上空へ転移した。
1000mの高度を保ったままザルツ島を目指して進んでいくと、おびただしい数の船舶が島の沿岸に展開している。
ざっと数をあたってみたのだが、大小合わせて約200隻の大船団である。おそらく複数ある他の港にも同じように展開されているのであろう。
そして、沿岸から攻撃を続けていき敵が降伏するのを待っているのだ。
一方、ザルツ島の防衛側は港の入り口に船を並べ徹底抗戦の構えだ。
それでは、軽く行きがけの駄賃を稼ぐとしますか。
見れば、どの船も木造船のようだ。帆船も混じっているようだが、ほとんどの船が魔道エンジンで航行しているのだろう。
よく見れば空母のような形の船も何隻かいるよな。平甲板のヤツと、昔の赤城のように3段式甲板のヤツも見受けられる。
しかし、航空機なんかこの世界には無かったはず。それなら、何を乗せているのだろう。
僕たちが高度を下げていくと、次第に全容が明らかになってきた。
甲板に配置されているもの、それは『虫』であった。蜂の魔獣であるハニービーをはじめカブトン、そしてクワガッタンまで。
なるほど。魔獣使いやテイマーなどを訓練して乗せているのだろう。
うぁー、甲板にギッチリへばりついている虫たち見ていると鳥肌が立ってきたよ。
あれはダメだろ。虫虫いくない!
汚物は消毒だ――――! バカ野郎!
気が付くとシロはファイヤーボールを、僕はライズボール (電気玉) を打ちまくっていた。
ふうふう、はぁはぁ。どうだ、この野郎!
しばらくして、落ち着いてきた僕はピーチャンの背から下の船団を覗き込んだ。
すると、4割の船は炎上、2割は沈黙、そして虫虫は全滅したようだ。
……少々やり過ぎてしまっただろうか?
しかし、これは戦争である。仕掛けてきたのはあちらの『スラミガ帝国』なのだ。
予想外の攻撃を受け、混乱の中で撤退していく船団を僕はしばらくあいだ見ていた。
さーて、此方はこんなものでいいだろう。
僕たちは進路を北へ取りザルツの町を目指した。
それから一刻 (2時間) 、僕たちはザルツの町の門を潜った。
犬人族の門番に冒険者ギルドの場所を訪ね町中を進んでいく。
このザルツの町は獣人族が多く暮らしているようだ。いや、このザルツ島自体に多いのかもしれないな。
そういえば、バランの町では見かけなかった。それは、あのバランの町だけなのだろうか? はたまたローザン王国全体の風潮がそうなのかは分からない。
ただ、アンリエッタを見る限りではそのような『人族第一主義』を匂わせるようなものは何もなかったと思うが……。
などと考えながら歩いていると、
「ワン!」
シロである。
どうしたのかと、うしろを振り返るとシロは建物の前でお座りして尻尾を振っていた。
おおっと いけない、通り過ぎてしまったようだ。
僕はシロの首をひと撫でし、共に冒険者ギルドの中へ入った。
するとそこは、作りこそ他の冒険者ギルドと変わらないのだが、右を向いても左を向いても獣人族ばかり。
それは、ギルド職員においても変わることはなかった。
受付カウンターでは、それぞれに特徴のある獣耳を生やした受付嬢が笑顔で対応していた。
僕はシロを連れ、受付カウンター前の列に並んでいた。
するとそこに、如何にもガラの悪そうな3人組の狼人族が近づいてきた。
「おうおう、ここは子供の遊び場じゃねぇぞー」
「だよなー、犬コロ連れてるからって粋がってんじゃねぇ」
「なに、ボク。ビビっちまったかー。わかったんならおとなしく順番代わって帰りな」
あーあ、来ちゃったよ。止めときゃいいのに……。
相手するのも面倒なので、僕がシカトを決め込んでいると、
「ああ~、聞こえねーのか? どけって言ってんだろーが」
そいつは 事もあろうに、シロを蹴ろうとしてきたのだ。
シロはもちろんそのような蹴りをもらうはずもなく、右前足でソヤツの足を払いすっころばしていた。
そしてさらに、シロが威圧を放ったのだ。
蹴ろうとしていたヤツは失神。
ギルドホールに居た冒険者達の半数は、床にコロンと転がりお腹を見せていたのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ザルツ島にもダンジョンがありました。「シンゲン」とは距離の関係で無理でしたが、「ムラカミ」とリンクを組めました。これは大きいですね。リンクしている地脈上でもダンジョンの力を及ぼすことが出来るのですから。 どうやら獣人族が中心になってザルツ島を納めているようです。
「んん、そうだな。名称決めだよな。……では、『ケンシン』でいこう」
今行なっていたやり取りは、新しく見つかったダンジョンによるものだ。
念のために、近くに別のダンジョンがないか聞いてみたところ、範囲内に1ヶ所だけ確認することができたのだ。
それも、目の前にあるザルツ島にだ。
これは正に朗報で、この発見によりダンジョンの力を十分に発揮することが出来るはずだ。
地脈のリンクも明日には張ることが出来るということだ。
そして ここに来て、『地脈のリンク』に関してだが興味深い話を聞くことができたのだ。
それは、同じ者が管理するダンジョンにおいては、双方から地脈ラインを伸ばしてリンクを組むことが出来るということだ。
んん、まあ、どちらからリンクを組んでもいいわけだしな……。
何を今さら、とこの時は思っていたのだが、のちのちこれが ”画期的な事” なのだと気付かされることになるのだ。
僕たちは、再度ダンジョンの上空へ転移した。
1000mの高度を保ったままザルツ島を目指して進んでいくと、おびただしい数の船舶が島の沿岸に展開している。
ざっと数をあたってみたのだが、大小合わせて約200隻の大船団である。おそらく複数ある他の港にも同じように展開されているのであろう。
そして、沿岸から攻撃を続けていき敵が降伏するのを待っているのだ。
一方、ザルツ島の防衛側は港の入り口に船を並べ徹底抗戦の構えだ。
それでは、軽く行きがけの駄賃を稼ぐとしますか。
見れば、どの船も木造船のようだ。帆船も混じっているようだが、ほとんどの船が魔道エンジンで航行しているのだろう。
よく見れば空母のような形の船も何隻かいるよな。平甲板のヤツと、昔の赤城のように3段式甲板のヤツも見受けられる。
しかし、航空機なんかこの世界には無かったはず。それなら、何を乗せているのだろう。
僕たちが高度を下げていくと、次第に全容が明らかになってきた。
甲板に配置されているもの、それは『虫』であった。蜂の魔獣であるハニービーをはじめカブトン、そしてクワガッタンまで。
なるほど。魔獣使いやテイマーなどを訓練して乗せているのだろう。
うぁー、甲板にギッチリへばりついている虫たち見ていると鳥肌が立ってきたよ。
あれはダメだろ。虫虫いくない!
汚物は消毒だ――――! バカ野郎!
気が付くとシロはファイヤーボールを、僕はライズボール (電気玉) を打ちまくっていた。
ふうふう、はぁはぁ。どうだ、この野郎!
しばらくして、落ち着いてきた僕はピーチャンの背から下の船団を覗き込んだ。
すると、4割の船は炎上、2割は沈黙、そして虫虫は全滅したようだ。
……少々やり過ぎてしまっただろうか?
しかし、これは戦争である。仕掛けてきたのはあちらの『スラミガ帝国』なのだ。
予想外の攻撃を受け、混乱の中で撤退していく船団を僕はしばらくあいだ見ていた。
さーて、此方はこんなものでいいだろう。
僕たちは進路を北へ取りザルツの町を目指した。
それから一刻 (2時間) 、僕たちはザルツの町の門を潜った。
犬人族の門番に冒険者ギルドの場所を訪ね町中を進んでいく。
このザルツの町は獣人族が多く暮らしているようだ。いや、このザルツ島自体に多いのかもしれないな。
そういえば、バランの町では見かけなかった。それは、あのバランの町だけなのだろうか? はたまたローザン王国全体の風潮がそうなのかは分からない。
ただ、アンリエッタを見る限りではそのような『人族第一主義』を匂わせるようなものは何もなかったと思うが……。
などと考えながら歩いていると、
「ワン!」
シロである。
どうしたのかと、うしろを振り返るとシロは建物の前でお座りして尻尾を振っていた。
おおっと いけない、通り過ぎてしまったようだ。
僕はシロの首をひと撫でし、共に冒険者ギルドの中へ入った。
するとそこは、作りこそ他の冒険者ギルドと変わらないのだが、右を向いても左を向いても獣人族ばかり。
それは、ギルド職員においても変わることはなかった。
受付カウンターでは、それぞれに特徴のある獣耳を生やした受付嬢が笑顔で対応していた。
僕はシロを連れ、受付カウンター前の列に並んでいた。
するとそこに、如何にもガラの悪そうな3人組の狼人族が近づいてきた。
「おうおう、ここは子供の遊び場じゃねぇぞー」
「だよなー、犬コロ連れてるからって粋がってんじゃねぇ」
「なに、ボク。ビビっちまったかー。わかったんならおとなしく順番代わって帰りな」
あーあ、来ちゃったよ。止めときゃいいのに……。
相手するのも面倒なので、僕がシカトを決め込んでいると、
「ああ~、聞こえねーのか? どけって言ってんだろーが」
そいつは 事もあろうに、シロを蹴ろうとしてきたのだ。
シロはもちろんそのような蹴りをもらうはずもなく、右前足でソヤツの足を払いすっころばしていた。
そしてさらに、シロが威圧を放ったのだ。
蹴ろうとしていたヤツは失神。
ギルドホールに居た冒険者達の半数は、床にコロンと転がりお腹を見せていたのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ザルツ島にもダンジョンがありました。「シンゲン」とは距離の関係で無理でしたが、「ムラカミ」とリンクを組めました。これは大きいですね。リンクしている地脈上でもダンジョンの力を及ぼすことが出来るのですから。 どうやら獣人族が中心になってザルツ島を納めているようです。
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