僕とシロ

マネキネコ

文字の大きさ
上 下
104 / 137

98. バランの町

しおりを挟む
 僕たちは ダンジョン・シンゲン にて、出現モンスターの統一化とういつかや5階層かいそうおきの転移台座てんいだいざの設置など基本的な事のみ先に決めていった。

 そして、ここから南東方面にあるバランの町に向け出発した。

 えっ、ダンジョン転移はどうしたのか?

 残念なことに、ダンジョン同士のリンクを組むためには1日~2日程の時間が掛かるのだ。

 まあ、ここからならピーチャンで半刻|(1時間)というところだろうか。

 今日も天気が良いので、上空から景色をながめながらのんびり行こうと思う。

 それに町や海岸線かいがんせんの地形なんかも頭に入れておきたいしね。





 町が見えるようになってからは、ゆっくりと旋回せんかいしながら付近の地形を把握はあくしていった。

 すると南の街道かいどうから騎馬きば荷馬車にばしゃの集団がこちらに向かって来ているのが目に入った。

 バランの町への増援部隊ぞうえんぶたいであろうか?

 そして、正面へ視線を戻してみると シロの頭には見覚えのある ”黄色い鳥” が止まっていた。

 ――おお、なつかしいなぁ。

 モコモコであった。

 ご存知、アンリエッタ王女の使い魔である。

 そうすると、あの騎馬軍団の中にアンリエッタもいるのだろう。

 これから戦場になるかもしれない場所に王女が出張って来ても大丈夫なのだろうか?

 こちらも、そろそろ下りて町に入るとしますかね。

 僕たちは上空で光学迷彩こうがくめいさいを掛けると、静かに北門の方へ回り込んだ。

 騎馬隊だか騎士団だか知らないが、あれに巻き込まれると時間かかりそうだしな。

 そういう訳で、僕たちは一足先にバランの町へ入った。





 今は、門番に教えてもらった冒険者ギルドに歩いて向かっているところだ。

 時間にしたら30分、ようやく町の中央にやってきた。

 そこは、大きな円形の広場になっているようだが、人が多すぎて何が何だか分からない。

 このまま南へ抜けたいところだが道も沿道えんどうも人だらけ、みんなで何かを待っているような感じだ。

 まあ、だいたい予想はついているが聞いてみることにした。

 「すいませ~ん。これって誰か来られるんですか?」

 「は~、あんた何言ってるのさぁ。姫騎士ひめきしさまに決まっているだろう」

 「姫騎士さま? アンリエッタ様ですよね」

 「そーだよ、決まってるじゃないのさー」

 へぇ~、あのアンリエッタが姫騎士ね。

 王都マルゴーで別れてもう4年かぁ。少しは強くなったのかな。

 すると、南のメインストリートの先から歓声が聞こえてくる。

 行進している先頭の騎馬が見えてきた。

 上にはプレートアーマーを着た騎士だろうかかぶとはかぶっていないようだ。

 そして……おお、居た! アンリエッタは5列目だな。

 相変わらずの美人さんではあるが。

 なかなか凛々りりしい顔になっているではないか。





 パレードも終わり、町の人々も三々五々散っていった。

 僕はシロを連れて南通りを進んでいき冒険者ギルドへ入った。

 今日のところは移動の手続きだけをやっておこう。

 それと同時に商業ギルドの場所を聞き、おススメの宿も紹介して頂いた。

 僕たちは冒険者ギルドを後にして、今度は商業ギルドへ向かった。

 お金を両替するためである。

 国境こっきょうの町ならともかく、ここバランでは現地の通貨しか使えない。

 とりあえず金貨2枚を両替し、紹介を受けた宿に向かうことにした。

 しかし、この黄色い鳥さんはシロの頭から離れようとはしないのである。

 帰らなくても大丈夫なのだろうか?

 しかし、宿を見つけ入ろうとした瞬間、モコモコは飛び上がり青い空へと消えていった。

 何か、いやな予感がするのだが……。

 まあ、こっそり会いに来てくれる分にはぜんぜんOKなのだ。――情報も集められるしな。





 そしてローザン王国に来て3日目の朝をむかえた。

 町の感じはいつもと変わらないおだやかなものである。

 昨日は夕食のあとエールを頼み、少しねばってみたのだが『東の海』や『スラミガ帝国』についてはこれと言って話題にあがることはなかった。

 本当に来るのか? といった感じなのだろうか、実際に戦闘が起きているのは『ザルツ島』であってここではないのだ。

 まあ、ニュースや新聞がある訳でもなし 一般住民の認知度にんちどなんてものはこの程度だろう。

 では、アプローチの仕方を変えてみるしかない。

 軍部の人間や実際に海に出ている漁師あたりに話が聞ければ早いのだろうが。

 しかし、話を聞くと言ったところで、僕の知り合いといえばアンリエッタ王女ぐらいなものだし。ホントどうすんのよ!

 などと、考えながらも朝食を終え、冒険者ギルドにでも行ってみるかと宿を出たところが、

 ――ひしっ!

 知らないですねぇ? 烈風ではないようだ。

 「カルロ様でございますね? 私はアンリエッタ様付きの侍女じじょでティファニアと申します。アンリエッタ様がお呼びになられています。私と一緒に来てください」

 「はぁ、あっ、おい!」

 と、言うあいだも ティファニアは僕の腕にしがみつきグイグイ引っ張っていく。

 引っ張られるのはいいのだが、その……腕にものすごい物が……。

 な、なんというか、驚異の胸囲きょういのきょうい?? ではなく、……パラダイス!?

 「あ、あの~ティファニアさん? 離していただいても逃げはしませんよ。だから、その、みんな見てますし……」

 「あっ、あわわわわわ、私は何を。す、すみません!」

 「いえいえ、わかって頂ければ問題ありませんから」

 「ひ、姫様が腕をふんづかまえてでも連れて来いって……その、ごめんなさい!」

 何かまた、いろいろ凄い人が迎えに来ちゃったみたいだな……。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
おお、黄色い鳥モコモコ久々の登場ですね。アンリエッタも凛々しくなっちゃって、「姫騎士」か~強くなっているでしょうね。一応、異世界でも外国なので両替は必要ですよね。言葉はこちらの大陸には共通語があるようです。ティファニア! もちろん別人ですが、共通点ももももも。そしてドジっ子のような香りが~。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...