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95. ウイスキー
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今日の僕たちは ダンジョン・スパンク の上方に建っている蒸留所に来ている。
昨日、邸にガンツから連絡が入ってからというものソワソワして仕方なかったのだ。
何をソワソワって? 決まっている。いよいよ3年物を解禁する時が来たのだ。
僕が従魔たちを連れ、蒸留所…………ああ、もう、言いづらい!
何か呼びやすい名称はないものか?
蒸留所が英語で「distillery」。読み方としては「ディスティラリィ」なんだよな。
カルロ・ディスティラリィ……ますます言いづらい。
うう~ん、もう、ウイスキー蒸留所だから『カルロウイスキー』でいいか!
これから、『カルロウイスキー』にしよう。
僕たちが入口に転移してくると、待ってましたとばかりにガンツが飛び出してきた。
「おお、ようやく来たか。待ちかねておったぞ」
いやいや、ガンツはここの工場長かよ! ……まあ、当たらずも遠からずなのか?
昨年、あまりにしつこく言うもので、ガンツの鍛冶工房とここを転移陣で繋げてやったのだ。
そうしたら、ご覧のとおりに入り浸っている状態なのだ。
まあ、用がある時はジョルジュが呼びに来ているみたいだが。本当にそれでいいのか……。
ガンツと共に僕たちは地下にあるウイスキー貯蔵庫へ向かった。
地下蒸留所に併設されたウイスキー貯蔵庫。
天井は高く10m程あり、足元はコンクリートで固められている。
そこには、木製の枠組みを利用し上下2段になったウイスキー樽が、通路の左右に規則正しく並んでいた。
そして、ウイスキー樽の一つ一つにはカルロの文字と樽詰めされた日時、蒸留器ナンバーなどの詳細が書き記してあった。
「こっちじゃ」
ガンツに案内されるまま付いていくと、貯蔵庫の奥の方に3m程の長テーブルが置かれていた。
貯蔵用の大樽の前に置かれたテーブルの上には、幾つかのグラスと水差しそして小さな小樽が置かれていた。
「まずはこっちじゃな」
ガンツは慣れた手つきでグラスを持つと、大樽のコックをひねり琥珀色の液体を注いでいく。
すると辺りにはウイスキー特有のアルコールの匂いが一瞬立ち込めた。
そうしてガンツは、2個のグラスにウイスキーを注ぎ終わると、
「ほれ、お前さんが最初じゃ」
と、片方のグラスを僕に差し向けてくる。
「うん、ありがとう」
…………
…………
「どうじゃ?」
「悪くない! 色も香りも。間違いなくウイスキーだな」
「じゃな、ワシも初めは半信半疑だったが変わるものじゃな」
「だろ! これが5年、9年、12年と経つうちにまろやかになり そして深みが出てくるんだ」
「ほほう、それはまた楽しみじゃわい。クククククッ、ハァーハハハハッ」
あまりの嬉しさに僕とガンツはふたりで大笑いするのであった。
そして僕は、テーブルに置かれている小さな樽が気になっていた。
「なぁガンツ、これは何だ?」
「おお、それもあったわい。だが、ちーと待ってくれるかのう」
ガンツはそう言うとテーブルの下に置いてあった木の器を手にした。
そして、目の前の大樽からウイスキーを注ぎ始めた。
「ほれっ、おめーさんも ”いける口” じゃろ」
そう言って、シロの前に器を置いていた。そして、もうひとつはヤカンの前。
「おお、1匹増えたのじゃな。しかし器が足りんのう……」
そこへ すかさずシロが前に出ると、インベントリーから自分のフライパンを出してガンツに渡していた。
そして、みんなの目の前に3つ器が揃ってから一斉に酒を舐めはじめた。
おー、みんな尻尾をブンブン振りながら スゴイ勢いで舐めているなぁ。――可愛い。
そうして、シロたちを眺めているところへ、
「ほれ、コイツをやってみるといい」
僕は、ガンツから1脚のグラスを受けとった。
んん、この香りは……やはりブランデーだよな。
「ガンツ、これ!」
「そうじゃ、以前お主が言っておったじゃろう。その白ワインが手に入ったんじゃ」
「しかし量が無くての、これだけしか出きなんだわ」
「でもスゴイよ! 手探りでだろう」
「まあ、そうじゃが。やる事はほとんど変わらんのでな」
ほほう、さすがガンツ。酒造りに対する情熱が違うよな。
そうして、酒瓶2本にウイスキーを詰めてもらった後 隣の温泉へ寄っていくことにした。
温泉施設の玄関に出てくると、そこには馴染みの護衛騎士が2名立っていた。
「これは、カルロ様。お久しぶりです」
「うん、こんにちは。……ああ、今日はお見えなのですね。セーラ様はご一緒ですか?」
「はい、今日はお二方のみです。よろしくお願いします」
「うん、了解。また後でね」
そして、身体を洗い露天風呂に行こうと表に出ると。
――ひしっ!
もう、お分かりセーラである。
僕が来たと連絡があったのだろう。表で出待ちしていたようだ。
僕はセーラを抱き上げシロに乗せてあげると、横にならんで露天風呂を目指した。
「おお、カルロ卿 久しいのう。元気であったか」
「はい、おかげさまで。国王様こそご健勝のこととお慶び申し上げます」
「うむ、そのぐらいで良い。さあ、入られよ」
「おーおー、セーラはシロ殿に乗せてもらったのか。良かったのう」
「はい! セーラはとても楽しいです」
「そうかそうか、……おや、一匹増えておるようだが?」
「こっちはユキだそうです。お父様」
「それでは、ユキ殿もよろしくな」
こうして、ユキもみんなに受け入れられていくのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
醸造所⇒蒸留所に変えております。そして、まんまカルロウイスキーって、もう少し捻りなさいな! ウイスキー貯蔵庫は雑誌やテレビに出てくるような感じです。ブランデーの原料は白葡萄です。発酵させて白ワインにしてから蒸留する形になります。後は樽に入れて寝かせるようです。 次回からいよいよ動き出すのか……な?
昨日、邸にガンツから連絡が入ってからというものソワソワして仕方なかったのだ。
何をソワソワって? 決まっている。いよいよ3年物を解禁する時が来たのだ。
僕が従魔たちを連れ、蒸留所…………ああ、もう、言いづらい!
何か呼びやすい名称はないものか?
蒸留所が英語で「distillery」。読み方としては「ディスティラリィ」なんだよな。
カルロ・ディスティラリィ……ますます言いづらい。
うう~ん、もう、ウイスキー蒸留所だから『カルロウイスキー』でいいか!
これから、『カルロウイスキー』にしよう。
僕たちが入口に転移してくると、待ってましたとばかりにガンツが飛び出してきた。
「おお、ようやく来たか。待ちかねておったぞ」
いやいや、ガンツはここの工場長かよ! ……まあ、当たらずも遠からずなのか?
昨年、あまりにしつこく言うもので、ガンツの鍛冶工房とここを転移陣で繋げてやったのだ。
そうしたら、ご覧のとおりに入り浸っている状態なのだ。
まあ、用がある時はジョルジュが呼びに来ているみたいだが。本当にそれでいいのか……。
ガンツと共に僕たちは地下にあるウイスキー貯蔵庫へ向かった。
地下蒸留所に併設されたウイスキー貯蔵庫。
天井は高く10m程あり、足元はコンクリートで固められている。
そこには、木製の枠組みを利用し上下2段になったウイスキー樽が、通路の左右に規則正しく並んでいた。
そして、ウイスキー樽の一つ一つにはカルロの文字と樽詰めされた日時、蒸留器ナンバーなどの詳細が書き記してあった。
「こっちじゃ」
ガンツに案内されるまま付いていくと、貯蔵庫の奥の方に3m程の長テーブルが置かれていた。
貯蔵用の大樽の前に置かれたテーブルの上には、幾つかのグラスと水差しそして小さな小樽が置かれていた。
「まずはこっちじゃな」
ガンツは慣れた手つきでグラスを持つと、大樽のコックをひねり琥珀色の液体を注いでいく。
すると辺りにはウイスキー特有のアルコールの匂いが一瞬立ち込めた。
そうしてガンツは、2個のグラスにウイスキーを注ぎ終わると、
「ほれ、お前さんが最初じゃ」
と、片方のグラスを僕に差し向けてくる。
「うん、ありがとう」
…………
…………
「どうじゃ?」
「悪くない! 色も香りも。間違いなくウイスキーだな」
「じゃな、ワシも初めは半信半疑だったが変わるものじゃな」
「だろ! これが5年、9年、12年と経つうちにまろやかになり そして深みが出てくるんだ」
「ほほう、それはまた楽しみじゃわい。クククククッ、ハァーハハハハッ」
あまりの嬉しさに僕とガンツはふたりで大笑いするのであった。
そして僕は、テーブルに置かれている小さな樽が気になっていた。
「なぁガンツ、これは何だ?」
「おお、それもあったわい。だが、ちーと待ってくれるかのう」
ガンツはそう言うとテーブルの下に置いてあった木の器を手にした。
そして、目の前の大樽からウイスキーを注ぎ始めた。
「ほれっ、おめーさんも ”いける口” じゃろ」
そう言って、シロの前に器を置いていた。そして、もうひとつはヤカンの前。
「おお、1匹増えたのじゃな。しかし器が足りんのう……」
そこへ すかさずシロが前に出ると、インベントリーから自分のフライパンを出してガンツに渡していた。
そして、みんなの目の前に3つ器が揃ってから一斉に酒を舐めはじめた。
おー、みんな尻尾をブンブン振りながら スゴイ勢いで舐めているなぁ。――可愛い。
そうして、シロたちを眺めているところへ、
「ほれ、コイツをやってみるといい」
僕は、ガンツから1脚のグラスを受けとった。
んん、この香りは……やはりブランデーだよな。
「ガンツ、これ!」
「そうじゃ、以前お主が言っておったじゃろう。その白ワインが手に入ったんじゃ」
「しかし量が無くての、これだけしか出きなんだわ」
「でもスゴイよ! 手探りでだろう」
「まあ、そうじゃが。やる事はほとんど変わらんのでな」
ほほう、さすがガンツ。酒造りに対する情熱が違うよな。
そうして、酒瓶2本にウイスキーを詰めてもらった後 隣の温泉へ寄っていくことにした。
温泉施設の玄関に出てくると、そこには馴染みの護衛騎士が2名立っていた。
「これは、カルロ様。お久しぶりです」
「うん、こんにちは。……ああ、今日はお見えなのですね。セーラ様はご一緒ですか?」
「はい、今日はお二方のみです。よろしくお願いします」
「うん、了解。また後でね」
そして、身体を洗い露天風呂に行こうと表に出ると。
――ひしっ!
もう、お分かりセーラである。
僕が来たと連絡があったのだろう。表で出待ちしていたようだ。
僕はセーラを抱き上げシロに乗せてあげると、横にならんで露天風呂を目指した。
「おお、カルロ卿 久しいのう。元気であったか」
「はい、おかげさまで。国王様こそご健勝のこととお慶び申し上げます」
「うむ、そのぐらいで良い。さあ、入られよ」
「おーおー、セーラはシロ殿に乗せてもらったのか。良かったのう」
「はい! セーラはとても楽しいです」
「そうかそうか、……おや、一匹増えておるようだが?」
「こっちはユキだそうです。お父様」
「それでは、ユキ殿もよろしくな」
こうして、ユキもみんなに受け入れられていくのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
醸造所⇒蒸留所に変えております。そして、まんまカルロウイスキーって、もう少し捻りなさいな! ウイスキー貯蔵庫は雑誌やテレビに出てくるような感じです。ブランデーの原料は白葡萄です。発酵させて白ワインにしてから蒸留する形になります。後は樽に入れて寝かせるようです。 次回からいよいよ動き出すのか……な?
0
これからもガンバって執筆していきますので、またいらして下さい。φ(ΦωΦ )
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