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91. 兵より情報
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「……ということで、これからみんなの仲間になる銀狼族のダイゴだよろしく頼む」
「じゃあ、挨拶な。ダイゴ――――――ウィッシュ! こんな感じだ。可愛がってくれ」
「キャー、可愛いダイゴくん。わたしはエマ、”エマ姉ちゃん” でいいからね」
「エ、エマ姉たん?」
「そうそう、エマ姉たんでもいいわ。わたしがいろいろ教えてあげるからね!」
「エマ、今日はエレノア母様と出かけるんだろう。そろそろ準備しないと遅れるぞー」
「あーん、もう! ダイゴ、帰ったらいっぱい遊んであげるから良い子にしててね」
このように、エマは朝からハイテンション。二人の乗った馬車を送り出すまで大騒ぎであった。
まあ、今まで年下の子といえばセーラであったが、たまにしか会えない上にあちらは王族なのだ。
いろいろ遊んでいたとしても常に数人のメイドが付いてまわるのだ。
きっとエマも、子供心に遠慮していた部分があったのかもしれない……。
え~とダイゴは? おお、ココにくっついているようだ。一緒に寝て安心したのだろうか?
それとも、ココが犬人族で耳の形などが似ているせいだろうか? ――尻尾もあるしな。
まあ邸に慣れるまで、しばらくはこんな感じでいいだろう。ココには迷惑をかけるが、僕からもメイド長に話を通しておこう。
さ~て、邸も建って今年から冬はこちらで過ごすことになる。
王都は広く プレゼントを配るのは大変なのだが、みんなで手分けしてやっていこう。
まあ、こちらにはクリスマスを祝う習慣はないのだけれど、冬の寒さに凍える中ささやかな幸せがあってもいいと思う。
邸のリビングに従魔たちを寄せて打ち合わせを行っていた。すると、
「あの、カルロ様。これは何の打ち合わせですか? それに、テーブルの上にあるのは "藁あみのブーツ" ですよね。それも小さいヤツ」
クロナである。後ろにはメイド長のマイヤーさん (29歳)邸の最年長者だ。――しかも独身。
「ああ、これは年が変わるすこし前におこなう、遠い異国の風習なんだよ」
「本来のものとはかなり違ってはいるけど、神に感謝して皆にささやかなプレゼントを送ったりする日なんだ」
「神に感謝をする素敵な日なのですね。ぜひ、わたしにも手伝わせてください。……いえ、手伝います!」
……ふう。クロナのヤツ、言い出したら聞かないからなぁ。
「私たちも何かお手伝いしとうございます。何でもお申し付けください」
まあ、クロナはいいとして、一般人を真夜中に駆り出すわけにもいかないし……。
よし、その日は家人達も含めて内々でパーティーをするか! 部屋の飾りつけや準備に動いてもらえればいいかな。
そして、迎えたクリスマス。
本家からも家族がみんな集まって大賑わい。これはクリスマスというより、年末の忘年会のようになってしまった。
それでも、本来の目的を忘れてはいけないと祭壇を作り女神さまの像を祀っている。
でも、んんっ、シロは何をしているんだ? 祭壇の横にお座りしているのだ。首からクリスマスリースなんかつけて。
すると、数人づつが膝を突いては祈りを捧げている。何かに引き寄せられるように……。
って、あれ? 会場が明るいため よく目を凝らさないと分からないのだが身体が光っているよな。
ああ、だからシロがあそこで見極めているのか。
ふ~ん、なるほど。……ってそうじゃない! 何でカルロ邸が教会みたいな聖域になっているんだよぉ。
あれか、聖なる夜だからとかいうオチなのかー? 教えてシロえも~ん。
いやいや、冗談はさて置きこれは凄いことになったのではないか?
みんなを『鍛えましょう』ってことだよね! 家のママンも含めて。
でもまあ、もともとカルロ邸の家人は強くしようとは思っていたのだけれど、本当にこれで良かったのか?
いや、シロが良いというのなら そういう事なのだろう。
「おお、カルロよ。確りやっておるようだな。こっちの胡椒や芋づくりは任せておけ」
「これは父上、お元気そうでなにより。畑が順調で良かったです」
「芋づくりは領主様も期待されておっての、ゆくゆくは ”ガルバドの名物” にしたいとおっしゃっておいでだ」
…………
…………
「それはそうと、父上。ローザン王国のことですが、『東の海』について何かご存知ではありませんか?」
「おお、そのことか。ワシも詳しくは知らんのだが、隣の大陸にな『スラミガ帝国』という国があっての。ここが近年 もの凄い勢いで方々に戦を仕掛けては領土を拡大していっておるのだ。そして、そのスラミガ帝国の原動力となっているのが『海軍』らしいのだ。噂が出だしたのが10年ほど前だったかのう。もしかすると、向うの大陸はすでに統一されておるやもしれん。であるから、『東の海』が荒れるというのは恐らく、その『スラミガ帝国』の海軍によるものと推察できるのではないか」
僕はアルバートお父様の言葉に舌を巻いた。
教えてもらえた情報もさることながら、あの片田舎においてこれだけの情報を保有していること自体にだ。
「ハハハハハッ、カルロよ。ワシらのような田舎貴族が生き残っていく術はな、なまじっかな兵の数よりどれだけ ”新鮮な情報” を持っているか否かなのだよ」
凄すぎる、『兵より情報』だと……。
この方が ”僕のパパン” で本当に良かったと思えるカルロであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
エマはダイゴが邸に来てすごく嬉しいようですね。末っ子のエマにとってはお姉さん呼びされるのが夢だったのでしょう。一緒にダンジョンに入ってもダイゴのためにお菓子をたくさん獲ってあげそうです。クリスマスはこちらの世界にはありませんので、炊き出し+サプライズですかね。いろいろ厳しい現実もあるようです。『東の海』で暴れているのは別大陸からの海軍のようですが……。
「じゃあ、挨拶な。ダイゴ――――――ウィッシュ! こんな感じだ。可愛がってくれ」
「キャー、可愛いダイゴくん。わたしはエマ、”エマ姉ちゃん” でいいからね」
「エ、エマ姉たん?」
「そうそう、エマ姉たんでもいいわ。わたしがいろいろ教えてあげるからね!」
「エマ、今日はエレノア母様と出かけるんだろう。そろそろ準備しないと遅れるぞー」
「あーん、もう! ダイゴ、帰ったらいっぱい遊んであげるから良い子にしててね」
このように、エマは朝からハイテンション。二人の乗った馬車を送り出すまで大騒ぎであった。
まあ、今まで年下の子といえばセーラであったが、たまにしか会えない上にあちらは王族なのだ。
いろいろ遊んでいたとしても常に数人のメイドが付いてまわるのだ。
きっとエマも、子供心に遠慮していた部分があったのかもしれない……。
え~とダイゴは? おお、ココにくっついているようだ。一緒に寝て安心したのだろうか?
それとも、ココが犬人族で耳の形などが似ているせいだろうか? ――尻尾もあるしな。
まあ邸に慣れるまで、しばらくはこんな感じでいいだろう。ココには迷惑をかけるが、僕からもメイド長に話を通しておこう。
さ~て、邸も建って今年から冬はこちらで過ごすことになる。
王都は広く プレゼントを配るのは大変なのだが、みんなで手分けしてやっていこう。
まあ、こちらにはクリスマスを祝う習慣はないのだけれど、冬の寒さに凍える中ささやかな幸せがあってもいいと思う。
邸のリビングに従魔たちを寄せて打ち合わせを行っていた。すると、
「あの、カルロ様。これは何の打ち合わせですか? それに、テーブルの上にあるのは "藁あみのブーツ" ですよね。それも小さいヤツ」
クロナである。後ろにはメイド長のマイヤーさん (29歳)邸の最年長者だ。――しかも独身。
「ああ、これは年が変わるすこし前におこなう、遠い異国の風習なんだよ」
「本来のものとはかなり違ってはいるけど、神に感謝して皆にささやかなプレゼントを送ったりする日なんだ」
「神に感謝をする素敵な日なのですね。ぜひ、わたしにも手伝わせてください。……いえ、手伝います!」
……ふう。クロナのヤツ、言い出したら聞かないからなぁ。
「私たちも何かお手伝いしとうございます。何でもお申し付けください」
まあ、クロナはいいとして、一般人を真夜中に駆り出すわけにもいかないし……。
よし、その日は家人達も含めて内々でパーティーをするか! 部屋の飾りつけや準備に動いてもらえればいいかな。
そして、迎えたクリスマス。
本家からも家族がみんな集まって大賑わい。これはクリスマスというより、年末の忘年会のようになってしまった。
それでも、本来の目的を忘れてはいけないと祭壇を作り女神さまの像を祀っている。
でも、んんっ、シロは何をしているんだ? 祭壇の横にお座りしているのだ。首からクリスマスリースなんかつけて。
すると、数人づつが膝を突いては祈りを捧げている。何かに引き寄せられるように……。
って、あれ? 会場が明るいため よく目を凝らさないと分からないのだが身体が光っているよな。
ああ、だからシロがあそこで見極めているのか。
ふ~ん、なるほど。……ってそうじゃない! 何でカルロ邸が教会みたいな聖域になっているんだよぉ。
あれか、聖なる夜だからとかいうオチなのかー? 教えてシロえも~ん。
いやいや、冗談はさて置きこれは凄いことになったのではないか?
みんなを『鍛えましょう』ってことだよね! 家のママンも含めて。
でもまあ、もともとカルロ邸の家人は強くしようとは思っていたのだけれど、本当にこれで良かったのか?
いや、シロが良いというのなら そういう事なのだろう。
「おお、カルロよ。確りやっておるようだな。こっちの胡椒や芋づくりは任せておけ」
「これは父上、お元気そうでなにより。畑が順調で良かったです」
「芋づくりは領主様も期待されておっての、ゆくゆくは ”ガルバドの名物” にしたいとおっしゃっておいでだ」
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「それはそうと、父上。ローザン王国のことですが、『東の海』について何かご存知ではありませんか?」
「おお、そのことか。ワシも詳しくは知らんのだが、隣の大陸にな『スラミガ帝国』という国があっての。ここが近年 もの凄い勢いで方々に戦を仕掛けては領土を拡大していっておるのだ。そして、そのスラミガ帝国の原動力となっているのが『海軍』らしいのだ。噂が出だしたのが10年ほど前だったかのう。もしかすると、向うの大陸はすでに統一されておるやもしれん。であるから、『東の海』が荒れるというのは恐らく、その『スラミガ帝国』の海軍によるものと推察できるのではないか」
僕はアルバートお父様の言葉に舌を巻いた。
教えてもらえた情報もさることながら、あの片田舎においてこれだけの情報を保有していること自体にだ。
「ハハハハハッ、カルロよ。ワシらのような田舎貴族が生き残っていく術はな、なまじっかな兵の数よりどれだけ ”新鮮な情報” を持っているか否かなのだよ」
凄すぎる、『兵より情報』だと……。
この方が ”僕のパパン” で本当に良かったと思えるカルロであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
エマはダイゴが邸に来てすごく嬉しいようですね。末っ子のエマにとってはお姉さん呼びされるのが夢だったのでしょう。一緒にダンジョンに入ってもダイゴのためにお菓子をたくさん獲ってあげそうです。クリスマスはこちらの世界にはありませんので、炊き出し+サプライズですかね。いろいろ厳しい現実もあるようです。『東の海』で暴れているのは別大陸からの海軍のようですが……。
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