僕とシロ

マネキネコ

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87. 東の海

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 僕たちは、王都からアークへつながる街道沿かいどうぞいのヤカンが待機している場所に転移してきた。

 「ヤカン、ご苦労さん。それで様子はどうなんだ?」

 ――ねぎらいのなでなで!

 するとヤカンは、僕に頭と耳をでられ くすぐったそうにしながらも戦況せんきょうを報告してくれた。

 「はい、先程までお互いに激しくやり合っていたのですが、双方何人か倒されたのち 再び膠着状態こうちゃくじょうたいに入ったようです」

 僕は道路脇の茂みの中からおそわれている現場の方を観察した。

 …………。

 襲われているのは幌馬車ほろばしゃが2両。

 その周りに護衛ごえいと思われる冒険者? 身なりが統一されているので傭兵ようへい? が7名、馬車の上にはアーチャーと……もう一人は魔法士かな?

 なるほど、盗賊とうぞくが攻めあぐねているはずだ、こいつらはかなり強いな。

 はじめは数で押し切ろうとして、手痛いしっぺ返しを喰らった状態だよな。

 盗賊の方は35人か、4人が地面にしているようだ。

 このままでも、じわじわ押し返して何とかなりそうではある。

 だが、逃げられると厄介になるし、さっさと片付けますかね。





 僕はクロナとリンに ”変身サングラス” を渡すと、小さな声で指示を出した。

 「ピーチャンは上空から警戒けいかい。特に森から出てくるものに注意を払ってくれ。僕とシロ、ヤカンで援護えんごに向かうぞ」

 「シロは盗賊の後ろに回り込んで、森にひそんでいる者がいないかチェックを。ヤカンは光学迷彩こうがくめいさいを掛けて僕についてきてくれ」

 「クロナとリンはここで待機な。人には見えないけど魔獣まじゅうなんかも出るから周りには気を配ること」

 「では、行ってくる!」

 僕は街道に出て、盗賊に囲まれている馬車に歩いて近寄っていく。

 そして、馬車まで20m程になった所で盗賊の後ろから馬車へ向けて話かけた。

 「僕はバースの冒険者でカルロと言います! 助けは必要ですかー?」

 デカい声で話かけた僕に皆の視線が突き刺さる。

 おーおー、殺気立さっきだっているな。

 「なんだ~てめーは? どっから現れた!」

 「何処どこからって、ここは街道でしょ。通行の邪魔じゃまなんだけど」

 「何ほざいてやがる。ガキはすっこんでろ!」

 「…………」

 盗賊の戯言ざれごとは無視して、僕は馬車に向けてもう一度話かけた。

 「助けはいりませんかー?」

 「はーい! 無理のない程度でお願いしまーす」

 と、今度は馬車の上にあがっている女の子から返事が飛んできた。





 お、返事がきたな。だが、そこまで緊迫感きんぱくかんは伝わってこない。

 やはり、そうとう ”デキる” 護衛のようだな。

 でも、許可は下りてるから シロさん、ヤカンさんらしめてあげなさい。

 その結果、5分足らずで35人いた盗賊はすべて倒れ伏した。

 その早業はやわざを前に、馬車を守っていた護衛たちは口をポカンと開けて ただ見守るのみであった。

 「終わりましたー。こいつらどうしましょう? 良かったらなわかけを手伝って頂きたいのですが」

 「あ、ああ、そうだな。……馬車の周りに3名残して、後の者は縄かけに行くぞ!」

 「「「「おう!」」」」

  それから半刻 (1時間)後、縄をかけられた盗賊は一ヶ所に集められた。

 そして、馬車の皆さんは僕の前にひざいている状態だ。

 「カルロ子爵ししゃく様とは存じ得ず、重なる無礼の段ひらに……」





 それから、半刻 は馬車の荷崩にくずれを直したり馬たちの世話などを行っていくようだ。

 その準備じゅんびの間、みんなでお茶を頂きながら 今回の事情について聞いてみることにした。

 この者たちは、隣の国であるローザン王国の商人なんだそうな。

 それで今回は、クルーガー王国の王都に向かっていたところを盗賊に襲われたそうだ。

 目的はこちらに移住する為で、王都バースにいる縁者えんじゃを頼って来たのだという。

 まあ、商人なので各地で行商ぎょうしょうを行ないながらも はるばる此処までやってきたのだろう。

 『ローザン王国』と言えば、アンリエッタ王女とモコモコは元気でやっているだろうか?

 あの、屈託くったくのない笑顔が思い出されるなぁ。――なつかしい。

 そして、あまりくわしくは話してくれなかったが『東の海』が荒れている。

 確かにそう聞こえたが、この時僕はさほども気に留めてはいなかった。





 その後、盗賊の身柄みがらは王都にて衛兵えいへいに引き渡した。

 これに関しては、以前のように練兵場れんぺいじょうを使用しているため特に大きな混乱はなかった。

 そして、冒険者ギルドで依頼いらい終了の手続きと魔獣素材の買い取りなどを行い、僕たちはカルロていに帰ってきた。

 ――ひしっ!

 エマである。

 いつまでこうして甘えてくれるだろうか?

 夕食まで時間があったので、みんなで温泉へ行くことにした。

 ここまで来ると、どうしても隣の醸造所じょうぞうしょが気になって仕方がないのであるが、今はエマに拘束こうそくされている。

 やれやれ、今日はあきらめてみんなで露天風呂だな。

 掛かり湯をして湯舟につかる……。

 「ふぁ~~~。やっぱこれだわ。いつ入っても温泉は最高!」

 「にゃにゃ、ご主人様見つけたニャ。クロニャーンこっちニャ、早く来るニャン」

 すると、僕がいる目の前でニャンニャンたちは掛かり湯をして中に入ってきた。

 そして、いつものようにクロナがくっついてくる。

 んん、視線を感じて隣りを見やると、クロナは組んだ腕で胸を持ち上げ、

 「温泉は き、気持ちいいニャン」

 「…………」

 僕は、そのあとリンに教育的指導おしおきを行なうのであった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
商人と盗賊。テンプレな展開なのですが、隣の国であるローザン王国の商人と『東の海』が荒れているとはどういう事なのか? まあ、隣の国のことを言われたところで、「はあ、そうなんですね」(*´▽`*) で終わってしまいますよね。 そして、リン、クロナに何てものを…………いい。もっと教えなさい! おしおきされるのリンだし。無問題!
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