僕とシロ

マネキネコ

文字の大きさ
上 下
86 / 137

82. ミュウ

しおりを挟む
 あれから僕たちは、シロと共に魔獣まじゅうが進行している各地を廻り、大森林の方へ押し返していた。

 具体的には、魔獣たちの先頭に回り込んで シロが威圧いあつをかけ敗走させていたのだ。

 それから ”ミニ龍” をクロナたちへ預けた後、2日かけて『青の岩場』からアズライト鉱石をせっせと ダンジョン・スパンク へ運び入れていた。

 といっても、僕とシロ 両方のインベントリーを使用することができたし、持っていく場所はダンジョン間の ”地脈” の上までで良かったのだ。

 そして3日目の午後。ここ ダンジョン・サラ にみんなをむかえに来たのだった。

 僕が海の家に入っっていくのが見えたのだろう。クロナをはじめ、エマ、ポンタ、ミニ龍とみんなが集まってきた。

 ん、キリノさん?

 中のちゃぶ台で、練乳たっぷりの氷イチゴを食べていたよ。

 コリノさんは冒険者なので、1人でリマの町に残っている。

 「カルロ様、お帰りなさいませ!」

 と、クロナは頭を下げて挨拶あいさつをしてくれる。――嬉しそうだ。

 ――ひしっ!

 これはエマである。

 後ろからは、ポンタに乗ったミニ龍も一緒に追いかけてきていた。

 ……なるほどな。

 これなら、”はいはい” しかできないミニ龍も普通に移動することができるからね。





 そしてエマは、ミィー、ミィー、鳴いているミニ龍を両手で抱えあげると、

 「カルロ兄さま、『ミュウ』はとっても可愛いのです。エマが育ててもいいですか?」

 「へっ、育てる。エマがか? それに、もう名前まで付けたのか」

 「ダメですかぁ~?」

 ううっ。……誰だよ! エマに『上目づかい』なんか教えたのは?

 僕はクロナを見た。……普通だな。

 って、ことは。振り返ってキリノさんを見た。……確定!

 キリノさんはスプーンを前に突きだしニヤニヤしていた。サムズアップのつもりだろうか。

 「ダメですかぁ~?」
 
 うううっ。なんという破壊力はかいりょく! ――あざと可愛い!

 「み、みんなに手伝ってもらって、大事に育てるんだぞ」

 「やたっ!」

 まあ、実家の方が目立たなくて良いかもな。

 アズライトは向うに運んであるし、温泉もある。エマと泥風呂で遊びそうだが……。





 さてと、後はこれだな。

 「エマ、『ミュウ』を連れておいで。この台の上に乗せるんだ」

 「はーい、カルロ兄さま。これで良いですか?」

 「いや、逆だ。仰向あおむけにな」

 「おし、では、始めるぞ」

 ミニ龍の『ミュウ』は訳もわからず仰向けにされ、うねうねしている。

 「よしよしミュウ。少しの間 大人しくしているんだぞ」

 僕はミュウの体を触診しょくしんと鑑定を使いながら調べていく。

 う~ん、退化たいかではなさそうだ。後ろの腕が有るべき所にはうろこが無いな。

 つまり、生まれ持っての奇形きけいなのだろう。

 さて、上手くいくと良いが。前には腕が生えているのでイメージはつけやすいか。

 ……よし!

 「シロ、いくぞ! リカバリー!」

 ”リカバリー” が発動したと同時に 腕の有るべき箇所かしょまばゆい光につつまれた。

 そして光が、じわじわと体に吸い込まれていく。

 すると 、さっきまで存在しなかった二本の腕が、始めからそこにあったかのように生えていた。

 ミィー、ミィー、

 ミュウは、鳴きながら元気よく4本の腕を動かしている。





 ふぅ、どうやら上手くいったようである。

 「ほれっ! もう、行っていいぞ」

 ミュウの体を腹ばいに戻してやった。

 「あー、浮いたー。ミュウちゃんスゴイ!」

 喜んでいるエマ。

 ミュウの方も、まだ体の制御せいぎょがうまく利かないようだ。おたおたしながらエマに向かって飛んでいる。

 ただ、今回の ”リカバリー” 使用において、僕はとんでもない事をやらかしているのだが。

 この時点では、まだ知るよしもなかった。

 そのあと僕らはというと。

 エマの希望で、各階層に下り駄菓子だがしやスイーツ集めに精を出し。

 夕刻には、リマの町の領主邸へ足を運んだ。





 大人数で押し掛けてきたにもかかわらず、快く夕食をご馳走ちそうしてくれた。

 そして、食事の後は 待ってましたとばかりに応接室へ呼ばれた。

 僕は用意してもらった客室にみんなを残し、シロだけを連れて指定された部屋をたずねた。

 「カルロきょう、今回はお疲れ様。無事に帰れてよかった」

 「恐れ入りますフランツ様。この度は大事な時に留守をしてしまって心苦しい限りです」

 「いやいや魔獣の進行もこれからが本番だからね。それに、南の草原ではとんでもない魔獣がいるそうじゃないか」

 「本当に心配したんだからね!」

 いやいや、そんなことヤローに言われても全然嬉しくない。

 「そうですか、ご心配をおかけました。そして、やるべき事も やってきましたよ」

 「やるべき事って、具体的には何をやってきたんだい?」

 「はい、端的たんてきに言ってスタンピードを起こしたと思われる起点きてんとなった脅威きょうい排除はいじょ。それから、出てきた魔獣の大森林への追い戻しです」

 「ま、まさか本気で言っているのかい。ちなみに脅威とは何だったの?」

 「龍でした。鱗が青いヤツです。今回、時期が早かったのは卵の孵化ふかが原因だったようです」

 「おそらくですが、卵がかえるのをちょくちょく見に来ていたのかもしれません」

 「ということは、龍が2匹に増えるのかい? それは大変じゃないか!」

 「大丈夫です。排除済ですから、何も問題ありません」

 「じゃあ何かい。その龍たちは始末したのかい?」

 「いいえ、こちらの事情をわかって頂きました」

 本当の事を報告しているのに、何故なぜわかってもらえないんだ?

 フランツ伯爵はくしゃくと僕は しばらくのあいだ堂堂巡りどうどうめぐりを続けた。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――
通常の龍は基本は3本指である。そして、さらに強い龍になると前の腕だけが4本指となるのである。しかし、今回の「ミュウ」の場合はカルロの強い思いで前後共に4本になっているのである。(汗)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...